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【初学者向け】アジャイル開発/スクラム関連のおすすめ書籍

Last updated at Posted at 2025-02-26

はじめに

メディアテックに join して(研修含め)3 ヶ月ほどが経ちました。
もともとウォーターフォール畑にいた私ですが、
現在のチームではアジャイル開発/スクラムを推進しているので、
知識をキャッチアップしようといくつか関連書籍を読み漁っておりました。
テックブログが充実している世の中ですが、技術書でしか得られない養分もあります。
というわけで、参考になった書籍を 5 つほどご紹介します。

おすすめ書籍についてはすでに諸先輩方が良い記事をたくさんあげられていますので、
実務にどう活かせそうかなど、個人としての感想に重きをおいて記載します。
同様に初学者の方もそうでない方も、書籍を手に取る際のなにかの参考になれば幸いです。
※書籍は発売日順にならべています。

目次

まずは...

いきなり書籍以外になってしまいますが、まずは原典として以下を読み進めてから書籍に移るのをおすすめします。

アジャイルソフトウェア開発宣言を以前読んだことはありましたが、
改めてこの宣言が 2001 年であることと、今でも参照されていることに驚きます。
とりわけ 12 の原則にある以下の文言が好きです。

"情報を伝えるもっとも効率的で効果的な方法はフェイス・トゥ・フェイスで話をすることです。"
(出典: アジャイル宣言の背後にある原則

リモートワークが主となってからは Zoom や Teams などのカメラを on にするというのは
意外と軽視されがちだったりしますが、表情や動きによる情報はとっても大切だと感じます。

スクラムガイド含めたくさん書きたいことはありますが、ひとつひとつ掘り下げると長いのでさっそく書籍の紹介へ移ります。

アジャイルサムライ

  • タイトル:アジャイルサムライ − 達人開発者への道
  • 著者:Jonathan Rasmusson 著、西村 直人 監訳、角谷 信太郎 監訳、近藤 修平 訳、角掛 拓未 訳
  • 出版社:オーム社
  • 発売日:2011/7/16(原著:2010/11/02)

概要

"「アジャイルマニフェストの背後にある 12 の原則」の「なぜ」「なに」「どうやって」を(楽しく)解説することに全編を費やした 1 冊"
(出典:JonathanRasmusson; 西村直人; 角谷信太郎. アジャイルサムライ――達人開発者への道 (Japanese Edition) (p. 422). オーム社. )

とのことで "マスターセンセイと学ぶアジャイル開発の道" としていろんな考え方やプラクティスをマスターセンセイが "指南" してくれます。

感想

小粋なトークのような形式で、とにかく楽しく読み進められます。
挿絵も秀逸で開発者としてまさに "楽しく" アジャイル開発について学べます。

が、歴史をたどるようで読後の充実感としては一番高かったです。
他の書籍やスライドなどで紹介されていたお話・ツールがこのあたりからすでにあるんだ!みたいなものがたくさんでてきます。
第 Ⅴ 部ではリファクタリングや TDD などプログラミングの話まで出てくるので、かなり多くの要素が盛り込まれています。

特に印象的なのは、時間・予算・品質・スコープの荒ぶる四天王です。
この本に出てくることはなんとなく知ってはいたのですが、
改めて原典に触れることができて謎の興奮があり感激しました。品質大事。
(私は最初 t_wada さんの「質とスピード」のスライドで知りました。)

他で印象に残った点としては、第 2 章の以下の文です。

"典型的なアジャイルチームには、あらかじめ決まった役割分担が存在しない。誰もがどんな役割もこなしている。"
(出典:JonathanRasmusson; 西村直人; 角谷信太郎. アジャイルサムライ――達人開発者への道 (Japanese Edition) (p. 43). オーム社. )

"縦割りの組織" ではなく、"一丸となったチーム" として継続的に開発工程を進めることはとても大事だと感じます。
「あとはよろしく」と後工程に投げることはせず、
皆がすべての役割をもちチームとして責任をもつことで、自己組織化が進み、個々人の練度も高くなるものと思います。
縦割り組織からのギャップとしてもっとも大きかったのはこのあたりなので、納得感がありました。
このあたりは今のチームでもとても意識されているなぁと感じます。

あとがきにもある通り、全編を通して 12 の原則についてそれぞれ「なぜ」が語られているので、
原則を知るだけではなく、より深く理解できる助けとなり、非常に良い 1 冊でした。

カイゼン・ジャーニー

  • タイトル:カイゼン・ジャーニー たった 1 人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで
  • 著者:市谷 聡啓 著, 新井 剛 著
  • 出版社:翔泳社
  • 発売日:2018/2/7

概要

"現場のストーリー" に沿って、プラクティスなどの実践方法を学べる本です。
たった 1 人ではじめた業務改善から、1 人また 1 人と巻き込んでいき、どんどん 「越境」 していくお話です。

感想

上長にすすめていただいたので手にとりました。
なんといっても特徴的なのは、物語調になっていることです。
技術書というより小説みたいな感覚で読み進められました。

基本のキというよりは、「いろんなプラクティスがあるのはわかった、じゃあ実際どう困ったときにどう活用するの?」みたいな「もっと現場感を知りたい!」というときに読むと良い本だとおもいます。
個人・チームの成長に沿って段階的にプラクティスやツールを取り入れていく流れがわかりやすく書かれています。
一通りアジャイルプラクティスなどを知ってからだとより理解ができ、スムーズに読み進められるとおもいます。

印象に残った点としては、「むきなおり合宿」 です。
プロジェクト終盤になってステークホルダーから方向性の変更を余儀なくされ、
進むべき方向性をそろえるためにみなで合宿をする、といったストーリーになっています。
「むきなおり」の「ふりかえり」との違いとして以下のように記載されています。

  • ふりかえりは、過去を顧みて現在を正す
  • むきなおりは、進むべき先を捉えて現在を正す
    (出典:市谷 聡啓; 新井 剛. カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで (Japanese Edition) (pp. 177-178). 株式会社翔泳社.)

つまり、「むきなおり」とは未来の話になるんですね。
プロジェクトが行き詰ったときこそ、一度立ち止まって未来に焦点をあてて見つめなおす、というところがとても素晴らしいと感じました。
自分だったらなんとかプロジェクトを収拾させようと躍起になってそのまま仕事をしてしまいそうなので、よい気づきになりました。

余談ですが、物語調といえば似たような形式のものに The DevOps 逆転だ!(原題: The Phoenix Project) という書籍があります。
私はこれが大好きなので、カイゼン・ジャーニーもハマる感じがありました。DevOps 関連としてこちらもおすすめです。

いちばんやさしいアジャイル開発の教本

  • タイトル:いちばんやさしいアジャイル開発の教本 人気講師が教える DX を支える開発手法 「いちばんやさしい教本」シリーズ
  • 著者:市谷聡啓 著、新井剛 著、小田中育生 著
  • 出版社:インプレス
  • 発売日:2020/05/01

概要

"本書では、アジャイル開発の初学者がポイントをつかみ、実際にアジャイル開発を始めるための橋頭保となることを目指しています。"
(出典:市谷聡啓; 新井剛; 小田中育生. いちばんやさしいアジャイル開発の教本 人気講師が教えるDXを支える開発手法 「いちばんやさしい教本」シリーズ (Japanese Edition) (p. 5). 株式会社インプレス.)

「いちばんやさしい」とあるとおり、とにかくはば広くのイメージで、やさしく "レッスン" として始めの一歩を教えてくれます。

感想

その名の通りですが、始め手にとる 1 冊としてよいとおもいます。
第 1,2 章でソフトウェアを取り巻く環境やなぜアジャイル開発かを学び、
第 3 章~ 6 章で原則や実践方法を、さらに第 7,8 章で理解を深めるといった構成になっています。

印象に残った点として Lesson 30 の "インクリメンタルな開発" です。
常にリリース可能な状態を保ち、細かく軌道修正することでフィードバックをすぐに得て、調整・修正できるようにする、と。
ヶ月単位のリリース頻度からしたらなかなか慣れない考え方でしたが、この図は非常にわかりやすかったです。
当然テストも毎回必要なので、だからこそ自動化が必要である、といったことが書かれています。
このあたりも「なんか短い周期で繰り返し開発するんでしょ?」ぐらいだった自分の知識に対して、理解の助けとなりました。

他にも "なぜアジャイル開発か" から "質とスピードは両立する" などを含め、おもしろいトピックがいくつもでてきます。実務でアジャイル開発/スクラムへ触れる前にこの本を読んでいて良い下支えとなりました。

SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】

  • タイトル:SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発
  • 著者:西村 直人 著, 永瀬 美穂 著, 吉羽 龍太郎 著
  • 出版社:翔泳社
  • 発売日:2020/5/20(※改訂前は 2013/02/01)

概要

スクラムを実際の現場にどう適用すればよいのかを解説している書籍です。
スクラムガイドも何度か変更が行われており、初版(2013 年)からの 7 年間でこの書籍もアップデートされているようです。

本書籍はスクラムガイド 2017 年版をもとにして書かれています。本記事執筆時点の最新版は 2020 年版です。

感想

まずはとてもバランスがよい 1 冊だとおもいます。
適度に広く・深くスクラム全般について取り上げられています。
こちらも一部ストーリー仕立てになっており、各 Scene No のはじまりには、短い漫画で課題提起がされます。
該当課題に対して、主となる解説が続く形式です。
スクラムの基本のキをおさえるのによい 1 冊だとおもいます。

とくに印象に残った点は "スプリントレトロスペクティブ" です。

"スクラムチームの仕事の進め方をもっと良いものに変えていくためのイベントだ。"
(出典:西村 直人; 永瀬 美穂; 吉羽 龍太郎. SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発 (Japanese Edition) (p. 343). 株式会社 翔泳社.)

デイリースクラムやスプリントプランニングはさておき、このスプリントレトロスペクティブは一番馴染みがないものでした。
(実務でもまだ慣れず、試行錯誤中です。)

日々仕事をしていて、「こうしたらもっとうまくいくかも」「ここがうまくいった」などおもうことはたくさん出てきます。
忙しいからといってそういったことが浮かんで消えては、中長期的にチーム・組織の負債として溜まっていくイメージがあります。
スクラムではそういった "カイゼン" ができるよう仕組み化されており、かつチームで相談して取捨選択していけるのは素晴らしいと感じます。
また、ついつい開発の進め方などの活動だけに捉われがちですが、プロダクトを良くする活動もちゃんとしましょうといったことが書かれており、深く頷かされました。

本書では、そもそもの目的やこういったハマりそうな部分についても触れられており、より原理原則についてのイメージを深掘りすることができました。

まだまだ慣れない身としては、またじっくり読み返したいなとおもいます。

ここはウォーターフォール市、アジャイル町

  • タイトル:ここはウォーターフォール市、アジャイル町 ストーリーで学ぶアジャイルな組織のつくり方
  • 著者:沢渡 あまね 著、新井 剛 著
  • 出版社:翔泳社
  • 発売日:2020/10/14

概要

"ウォーターフォール vs. アジャイル
この虚しい論争をそろそろ終わりにしたい。そう思って、この本の執筆に至りました。"
(出典:沢渡 あまね; 新井 剛. ここはウォーターフォール市、アジャイル町 ストーリーで学ぶアジャイルな組織のつくり方 (Japanese Edition) (p. 328). 株式会社翔泳社.)

ウォーターフォール界隈の視点から、現場の問題解決をストーリー仕立てで書かれています。

感想

ウォーターフォール視点として、おもしろそうだったので読んでみました。
よく言われることですが、ウォーターフォールとアジャイルは別に対立する概念じゃないんだよーってことをこの書籍でも感じました。(タイトルからして既にですが。)

こちらもストーリー仕立てとなっており、現場の課題を解決していく様子が書かれています。
各章ごとに少しの物語のページと残りは解説のページといった構成になっています。
作者の方も "正直「やられた!」とも思いました" と書かれていますが、「カイゼン・ジャーニー」とどことなく似ていますね w

全体的にライトな内容になっており、物語部分だけであればそれほど長くはありません。
その分解説部分はわりと細かに書かれております。
Backlog やホワイトボードによるタスクの見える化や、
Slack によるコミュニケーションの円滑化など具体的な現場の活動も描かれています。

開発から運用に向けて壁越しに仕事を投げる(あとは運用でカバーして!)、といった体勢から徐々に開発・運用が協業していく関係性はまさに DevOps のそれでした。

どちらかというと管理者目線で描かれているので、
リーダー〜マネージャー層で「アジャイル開発ってなに?」みたいな方がはじめに手に取るにはよいかもしれません。

まとめ

私は「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」、「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」あたりのわかりやすいところから手をつけながら、
「アジャイルサムライ」、「カイゼン・ジャーニー」などで縦・横に知識の面を広げていくのが良いと感じました。

また、知識としてもっていたとしてもやはり実践は違うもので、
やってみてうまくいかないことはたくさんありました。
今のチームに最適はなにかを常に考えつつ、
確約・集中・公開・尊敬・勇気!を忘れずに改善し続けていけたらとおもいます。

今後も他でおすすめされている「アジャイル開発とスクラム 第 2 版」などいくつか読み進めていきたいと考えています。
新しめのもの(他であまり紹介されていないという意味で)でおすすめの書籍があればコメント欄などで是非教えてください。

参考サイト

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