はじめに
近年、プラットフォームエンジニアリング(PFE)という言葉が頻繁に語られるようになっています。しかし、その定義や考え方はまだ曖昧で、統一された見解は存在しません。関連書籍や「これこそがPFEだ」と断言する意見もありますが、実際には多様な解釈が混在しています。
そこで本記事では、和多志自身が考えるプラットフォームエンジニアリング(PFE)の本質についてお話ししたいと思います。
PFEとは、二元論的なIT要素を統合すること
和多志の考えるPFEとは、端的に言えば 「二元論的に対立してきたIT要素を統合すること」 です。
IT業界では、長らく分散型(自由型)と 一元型(統制型)が対立してきました。
例えば:
- 開発手法:ウォーターフォール vs アジャイル
- 組織文化:JTC文化 vs ベンチャー文化
- 技術要素:メインフレームやSVN(一元型) vs マイクロサービスやブロックチェーン、Git(分散型)
この二元論において、どちらか一方に偏ると必ず支障が出ます。
- 一元型に偏れば、開発スピードの低下や新技術導入の難易度上昇
- 分散型に偏れば、セキュリティリスクや信頼性低下、システムの複雑性増大
だからこそ、両者を統合するという発想から 「プラットフォームエンジニアリング」 が生まれたのではないでしょうか。
PFEはタロットの世界観と似ている
少し意外に思われるかもしれませんが、タロットを毎日一枚引いていく中で、スピリチュアルな世界とITという一見無関係に見える領域の間にも、深い関係性があることに気づきました。
タロットの本質とPFE
タロットには「二元性から統合へ」という強いメッセージがあります。
この世は二元性で成り立っていますが、本質はどちらかに偏ることではなく、両者を統合することにあります。二元性を学びながら、最終的に統合へと至ることこそが、人生のひとつのゴールであり、カードTHE WORLDが象徴するものです。
PFEもまた、このタロットの世界観と重なります。分散型(自由型)と一元型(統制型)の両方を経験し、それらを最終的に統合していく道のりこそが、プラットフォームエンジニアリングの本質だと考えます。
それは、IT業界におけるひとつの到達点とも言えるのではないでしょうか。
KubernetesとDevOpsの∞が示すもの
Kubernetesのアーキテクチャは、PFEの取り組みと深く関係しています。
Kubernetesは「k8s」と略されますが、これは「k」と「s」の間に8文字あることから生まれた表記です。興味深いのは、この「8」という数字です。数秘術では「8」は∞(無限大)や二元性の統合を象徴します。公式文書にスピリチュアルな意味は記されていませんが、どうしても「統合」を示唆しているように感じられます。
さらに、DevOpsのサイクルも∞の形で表されます。
この無限ループは、開発と運用という二元性を循環させ、最終的に統合するプロセスを象徴しているように見えます。こうした点からも、PFEは「二元性の統合」というテーマと強く結びついているのではないでしょうか。
統合とは「混ぜる」ことではない
ここで一つ、誤解を解いておきたいと思います。「統合」と聞くと、対立する両者を足して2で割る、いわばごちゃ混ぜをイメージする人が少なくありません。しかし、和多志の言う統合は、混合とはまったくの別物です。
混合とは、両極を薄めて中間を取ることです。「セキュリティも大事、スピードも大事、だから両方ほどほどに」――こうして生まれるのは、統制としては穴だらけで、自由としては窮屈な、両方が弱まった灰色です。案件ごとに綱引きと交渉が発生し、答えが毎回ブレるのも混合の特徴です。
統合とは、両極をどちらも薄めずに、働く「層」を分けて、それぞれを同時に全開で成立させることです。対立していた二つが、実は同じ軸の上で場所を取り合っていただけだと見抜き、軸をもう一本増やす。妥協が一次元上の中間点だとすれば、統合は次元の追加なのです。
分かりやすい例が、プラットフォームエンジニアリングにおける「ゴールデンパス(舗装された道)」です。開発者はポータルから数分でインフラを払い出せる――承認待ちもチケットもなく、自由は100%。一方その払い出しは、審査済みのモジュールを通り、Policy as Codeが暗号化やネットワーク境界を機械的に強制する――統制も100%。開発者は自由しか体験せず、組織は統制を一切妥協していない。対立が消えたのではなく、自由は「体験の層」に、統制は「基盤の層」に、それぞれ完全な形で配置されたのです。
Gitもまた同じ構造です。全員がリポジトリの完全なコピーを持つ徹底した分散(自由)と、protected branchやCIゲートによる収束点の統制。SVNは統制だけ、パッチのメール送付は自由だけでしたが、Gitは両方を全開にしています。
タロットのTHE WORLDが描くもの
この「混合ではなく統合」という視点は、実はタロットのTHE WORLDそのものです。THE WORLDは、光と闇を混ぜて灰色にした絵ではありません。すべての要素がそれぞれの位置で完全なまま、一つの円環に収まっている絵です。統合とは二元性を消すことではなく、二元性を保ったまま、それを包む一段高い視点に立つこと。灰色を作ることではなく、それぞれが全力を出せる場所を与えること――これが統合の本質だと和多志は考えます。
自分の設計が混合か統合かを見分ける問い
実務で自分の設計がどちらに転んでいるかは、次の三つの問いで確かめられます。
- どちらかの極を犠牲にしていないか?(「セキュリティのため多少不便に」と言い始めたら混合の兆候)
- 対立の解決が毎回の交渉になっていないか?(統合されていれば、構造が答えを出すので交渉は不要になる)
- 両極それぞれの担当者が、どちらも「勝った」と感じるか?(統合の成功は、妥協による痛み分けではなく、双方の全面勝利として体験される)
二元性を統合するということ
では、二元性を統合するにはどうすればよいのでしょうか?
結論としては、両方の側面を学び(外向性)、同時に自分の内側と深く対話し(内向性)、自分なりのやり方を模索することしかありません。
統合には明確な基準や唯一の答えはなく、その答えを探し続けても一生見つかりません。これはタロットでも示されている真理です。外側の知識や他人の考えだけを追い求めていては、永遠に迷い続けることになります。
大切なのは、外側の情報や経験を受け入れながら、常に自分と対話し、内側から湧き上がるものに目を向けることです。
このプロセスを繰り返すことで、やがて内側からインスピレーション(直観)が生まれ、それが自分なりの答えとなります。
つまり、意識の内側と外側を統合することこそが、二元性を超える鍵なのです。
自分なりの統合プロセス
ヒントとして、和多志なりの統合のプロセスを紹介します。あくまでも一例なので、参考程度にしてください。
和多志はインフラエンジニアとしてキャリアをスタートし、サーバやネットワーク、Pythonによるプログラミングやタスク自動化を経験しました。その後、クラウドセキュリティ(AWS、Azure)、コンテナセキュリティ、さらにIaCやCI/CD、Dev(Sec)Opsなど幅広い領域に携わりました。プライベートでも多様な技術を学び続けています。
一方で、幼少期から興味のあったスピリチュアルにも再び関心を持ち、1年間スピリチュアルスクールに通い、タロットを学びました。IT分野の探求と並行して、タロットで毎日一枚引きやスプレッドを行い、自分の内面と向き合う中で、ITにおいても「セキュリティ強化と利便性の両立」が不可欠であることに気づきました。
その過程でプラットフォームエンジニアリングに出会い、直観的に「この考え方こそ、バランスの追求に必要だ」と感じ、PFEについて深く模索するようになりました。Azureの製品知識(セキュリティ、AI、コンテナなど)を学びながら、タロットを通じて「自分にとってのバランスとは何か」を探求し、登壇機会をいただく中で、その模索をさらに深めました。
これまでの登壇資料は、まさにそのバランスを追求してきた歴史です。(まだ1年半ほどの登壇経験ですが)
個性と役割の統合 ― 自分に合ったポジションを引き寄せる
統合のもう一つの形として、和多志が最近強く感じているのが、エンジニア一人ひとりが、自分の個性に合ったポジションを用意する、あるいはそこを目指すこともまた統合だということです。
風の時代は個性を尊重する時代だと述べました。であれば、自分という個性(内側)と、社会の中で担う役割(外側)とを一致させていくこと――これもまた立派な二元性の統合です。「やりたいこと」と「求められる役割」がずれたまま働くのは、まさに混合的な灰色の状態。両者が重なるポジションに立てたとき、人は自由と貢献を同時に全開にできます。個性を殺して役割に合わせるのでも、役割を無視して個性を通すのでもなく、両方が生きる一点を見つける――これは、これまで語ってきた技術における統合と、まったく同じ構造です。
和多志自身の例を挙げます。正直に言えば、和多志はもう顧客システムを受託で作り続けることにこだわりを感じなくなりました。それよりも、内製化チーム(プラットフォームチームなど)の突破口や入り口になるような構成例を提供する――そんなポジションに立ちたいと思うようになったのです。
そのポジションに自分を近づけるために、以下のようなリポジトリを公開しています。
- apim-mcp-oauth ― API Management × MCP × OAuth による end-to-end セキュリティ構成のハンズオン
- msfoundry-docsacl-apim ― Microsoft Foundry × ドキュメント ACL × APIM の構成例
興味深いのは、これらのリポジトリを公開するに至るまでの過程が、誰かに強制されたわけでもないのに、まったく苦にならなかったことです。これは、量子力学とタロットや物理学×スピリチュアルで見る現実化の仕組みで述べた、潜在意識と引き寄せの話とそのままつながります。
「内製化の入り口になりたい」というポジティブな意識が心の奥(潜在意識)にあると、量子がそれに反応し、そこへ向かうプロセスそのものが自然と楽しくなっていきます。リポジトリを公開するまでには、技術検証を重ねたり、得た知見をナレッジとして書き起こしたりといった地道な工程があります。本来なら大変なはずのその一つひとつが、苦労ではなく面白くて仕方ない時間に変わっていく――この「プロセスが楽しくなる」という感覚こそが、潜在意識が現実を引き寄せているサインなのだと感じています。そして楽しみながら積み重ねた検証とナレッジが、やがて公開という形になり、望むポジションという現実を少しずつ引き寄せていく。潜在意識のポジティブマインドで現実を創っていく、まさにその実践です。統合とは机上の設計論だけでなく、自分自身の生き方や在り方そのものにも当てはまる考え方なのです。
内面と外面の融合
このように、外側の知識を得ながら、自分と対話し、内面と外面を融合させることで、物事は完成していきます。
なお、内面との向き合い方は人それぞれです。和多志の場合はタロットを使いましたが、ヨガや他の占いカードを使う人もいますし、道具を使わず自然にできる人もいます。
重要なのは、これらはあくまで手段であり、どの手段が良い悪いという発想自体が間違いだということです。自分に合った方法を見極めることが、本質です。
最後に
現代社会、そしてIT業界においても、和多志たちの意識はどうしても外側に向きがちです。
他人の評価や環境のせいにしてしまう「他人軸」や「他責思考」が蔓延しているだけでなく、異なる考え方を批判し排除する風潮も強まっています。
この二つの傾向は、和多志たちの成長や業界の発展を阻む大きな要因です。
何度も強調しますが、本当に大切なのは、外側の知識を得ながらも、自分の内側と向き合い、自分なりのインスピレーションを湧かせることです。
そして、良い悪いという発想を手放し、さまざまな考えを受け入れながら、自分なりの答えを模索すること。
IT業界の発展に必要なのは、単なる技術革新だけではありません。
異なる視点や価値観を統合し、バランスを取るという「考え方の進化」こそが、次のステージへの鍵です。
プラットフォームエンジニアリングは、その象徴的なアプローチであり、技術と思想の両面で「統合」を目指すことが、未来を切り開く力になると和多志は考えます。





