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「紙の山」が教えてくれた、検索できることの価値

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Last updated at Posted at 2025-12-07

この記事はウェブクルー Advent Calendar 2025 の8日目の記事です。
昨日は@kouki_kubotaさんの「 ZIOを使った適切なリソース管理について 」でした。

はじめに

全く違う業界に転職すると、前の職場の「当たり前」が、いかに特殊な文化だったかに気づかされます。
そして、その経験が意外な形で今の仕事に繋がっていると感じることも少なくありません。

まさに私自身がそうで、以前は市役所・区役所で8年間、公務員として働いていました。
税金、教育、生活保護のケースワーカーなど、様々な部署を経験し、そこは、何千件もの申請書が物理的に積み上がった「紙の山」と日々格闘するような世界でした。

その後、キャリアチェンジを決意し、現在はフロントエンドエンジニアとして働いています。

この業界でコードを書く日々を送る中で、ふと「行政の世界と、エンジニアの世界では、物事の進め方や文化が全く違うな」と、今更ながら感じることが多々あります。

エンジニアとしての経験はまだ浅く、皆さんに共有できるような技術的なTipsはありません。その代わり、「行政での8年間の経験を持つエンジニア」という少し珍しい視点から、私が感じた2つの世界の「違い」と「意外な接点」についてお話ししてみたいと思います。

この記事が、異業種からのキャリアチェンジを考えている方や、ご自身のキャリアを振り返るきっかけとして、少しでも参考になれば幸いです。

「紙の山」の世界で起きていたこと 〜行政のリアル〜

導入でお話しした「紙の山」。それは一体どんな世界だったのか、その一端をお見せしたいと思います。

① ひたすら続く、目視でのダブルチェック

住民の方から提出された何千件もの申請書。その一枚一枚をまず目視で確認し、PCの画面情報と照らし合わせる。そして、ミスがないか他の職員に紙を回してダブルチェックをお願いする。このミスが許されない地道な作業の繰り返しが、私の日常でした。

② 根回しとハンコリレーが支える意思決定

何か新しいことを進めるにも、まずは紙の「決裁書」ありき。そして、その決裁書がスムーズに通るように、関係各所への「根回し」や「横のつながり」が非常に重要でした。意思決定のプロセスもまた、紙を中心とした文化だったのです。

③ すべての記録は、巨大な書庫の中へ

処理が終わった大量の書類は、法律で定められた期間、書庫に保管されます。過去の事例について問い合わせがあれば、膨大なファイルの山から目的の一枚を探し出すのは、本当に一苦労でした。

IT業界のカルチャーショック 〜紙のない世界へ〜

そんな「紙の山」の世界からやってきた私にとって、エンジニアの働き方は衝撃の連続でした。

① 自動化と検索の文化

あの地道な目視チェックは「自動化された仕組み」に置き換えられ、書庫に眠っていた情報は誰でも「検索」できるデジタルデータになっている。このCtrl+F(検索)ができるという当たり前の事実に、どれだけ感動したか分かりません。

② オープンな議論とテキストベースの記録

根回しの代わりに、チャットツールやBacklogのようなプロジェクト管理ツールでオープンに議論が進む。誰が何を考えて、どういう経緯でその結論に至ったのかが、すべてテキストとして残っていく。この透明性は、まさにカルチャーショックでした。

③ スピードと改善のサイクル

年単位で動いていた制度改正の世界とは違い、週単位で機能がアップデートされていく。完璧を目指すより、まず試してみて改善していく。このスピード感も、行政の世界とは全く違うものでした。

「紙の山」から学んだ、ささやかな気づき

そんな戸惑いだらけの毎日ですが、ふとした瞬間に、あの「紙の山」での経験が今の自分を支えてくれていると感じることがあります。

気づき①:「誰でもわかる」言葉を選ぶ意識

行政の窓口には、老若男女、様々なITリテラシーの方が訪れます。専門用語や役所言葉をそのまま使えば、相手を混乱させてしまう。だから常に「この説明で、本当に伝わっているだろうか?」と自問自答し、平易な言葉に翻訳することを心がけていました。

その感覚は、エンジニアと非エンジニアが一緒に働く現在の環境で役立っています。技術的な内容を説明する際に、無意識に「この言葉は相手に伝わるか?」と考え、専門用語を避けたり、たとえ話を使ったりする癖がついています。これは、チーム内の円滑な情報共有に繋がっていると感じます。

気づき②:他人のコードを読むことへの抵抗のなさ

税法や条例の条文は、正直に言って、人が楽しく読めるようには書かれていません。乾燥した言葉で書かれた複雑なロジックを、感情を排して淡々と読み解く訓練を、仕事として毎日行っていました。

そのおかげか、他の人が書いたコードを読むことに対して、あまり精神的な抵抗がありません。一見すると複雑に見えるロジックでも、「書かれていることだけを、そのまま構造的に理解しよう」と冷静に向き合うことができます。これは、既存のコードを改修したり、レビューしたりする上で、大きな助けになっています。

気づき③:石橋を叩いて渡る、リスクへの嗅覚

税金や生活保護の現場では、1円の間違いや一つの判断ミスが、市民の生活に直接影響を与えてしまいます。「前例通りだから大丈夫」という安易な判断は許されず、常に「もし、こうなったらどうするか?」と最悪の事態を想定する癖がついていました。

その思考は、コードの品質に対する、ある種のこだわりとして現れます。仕様書を読んだり、自分の書いたコードを見直したりする際に、「本当にこれで全てのケースを網羅できているか?」と、細かい部分まで何度も確認する癖がついています。この地道なセルフチェックこそが、バグを未然に防ぎ、システムの安定性を高める第一歩だと信じています。

おわりに

行政とIT。水と油のように全く違う世界だと思っていましたが、そこで求められる思考の根っこには、意外な接点がありました。

転職当初は「これまでの8年間は無駄だったのかもしれない」という不安もありましたが、今では、あの経験があったからこそ見えている景色があるのだと、少しだけ思えるようになりました。

この記事が、同じようにキャリアチェンジに悩んでいる誰かの心に、少しでも寄り添えたなら嬉しいです。


明日は@ysawaさんの投稿になります。お楽しみに!

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