概要と目的
ライセンスフリーで比較的お手軽に利用できるデジタル簡易無線の実用性を検証するため、街中、海沿い、山中といった様々な条件の立地で通信試験を行いました。この記事は実際に試験を行ったロケーションごとに距離や高低差、周辺の構造物といった環境条件からデジタル簡易無線機がどのような条件に適しているのかを検討するものです。
これからデジタル簡易無線を始めようと考えている人や、新たなロケーションでの運用を検討している人向けの記事です。
なお、事前検証として、イベントを実施中の東京ビッグサイトで飛距離の検証を行い、東6ホールからの受発信の場合、会議棟へ向かう通路の会議棟側(伝われ)で交信が不可能となることが判明しています。
デジタル簡易無線については、Wikipediaの記事などを参考にしてください。
使用機器・アンテナ等
- 無線機 iCOM製 IC-DPR7S PLUS 5W対応モデル。検証では常に5Wで交信しています
- アンテナ1 付属品のこれ(FA-S06U) スペック不明
- アンテナ2 Amazonで売ってたこれ 波長=1/2λ(?)利得=2.15dBi
- 車載アンテナ ダイヤモンドアンテナ SLIM GAINER AZ350R 波長=1/2λ 2段 利得=5.15dBi
1.山中および、山頂と麓・街中
気象条件
| 1 | 2 |
|---|---|
| 天気 | 雨(小雨) |
| 気温 | 14.1℃ |
| 湿度 | 100% |
| 風速 | 1.1m/s |
湿度が高く、気温も低いため、霧が多い一日でした。
場所・行路
群馬県立ぐんま天文台にハンディ機を持った友人1名を放置し、山を挟んで反対側にあるみなかみ町方面へ進行しました。その後、沼田市方面へ進行、沼田市役所駐車場屋上まで行き、その後、ロックハート城前を通るような行路を取りました。
なお、この時点では車載アンテナを購入していなかったので、ハンディtoハンディで会話を行いました。(もちろん助手席着席者が交信担当です。安全には配慮して実験しています。)
当日の行路と天文台からの直線距離は次の通りです。
| 場所 | 天文台からの直線距離 | 標高 | 対天文台 標高差 |
|---|---|---|---|
| ぐんま天文台 | 0.0km | 866m | 0m |
| 赤根峠ポケットパーク | 5.7km | 720m | 146m |
| ファミリーマートJA利根沼田月夜野店 | 8.8km | 434m | 432m |
| JR上毛高原駅 | 10.7km | 435m | 431m |
| 沼田市役所駐車場 | 8.12km | 415m | 451M |
※1 標高は地理院地図による
※2 沼田市役所駐車場受信地点は駐車場屋上であるので実際の標高は+25mほど
結果
赤根峠ポケットパークの先にある、赤根トンネル進入後から、ファミリーマートJA利根沼田月夜野店までの山沿いの区間は、発信地と受信地の間にある山の影響で受信がしにくいorできないエリアがありました。
その一方で、みなかみ町から沼田市へ向かう県道61号線を南下するルートでは比較的良好な交信が可能でした。ここは、山と山の間の谷間になっているような地形で、標高的には最低のエリアです。
沼田市内では、かなり高度の高い台地になっている市役所へ向かいましたが、駐車場屋上のような周辺建造物よりも高度を上げられる箇所に行くまで受信が困難でした。
自動車車内では、窓ガラスを締め切った状態と、窓を開けた状態、窓からアンテナを出した状態を比較しましたが、窓を開けると受信できるようになることが多く、さらに窓からアンテナを出すとさらに受信感度は良好になる傾向がみられました。
今回の検証では、
- 高度の高低差が大きいと交信可能範囲が広がる
- 山を一つ挟んだ場合、山の直後では受信不可能、山から離れると受信できる
- 市街地は標高の高い台地であっても受信困難となる箇所がある
また、アンテナなど機材に関連する側面では、 - 付属品の中程度のアンテナ(アンテナ1)では長距離になる(=受信環境が悪い)ほど交信不可能になる
- 自動車の車内では電波は大きく減衰する
- ガラスの電波遮蔽性能が意外に高い
といったことが検証できました。
2.東京都街路部
気象条件
| 1 | 2 |
|---|---|
| 天気 | 晴れ |
| 気温 | 19.4℃ |
| 湿度 | 74% |
| 風速 | 1.4m/s |
過ごしやすい晴れの日でした。
場所・行路
代々木公園駐車場から、原宿駅方面へ二手に分かれ、徒歩で向かいました。

その後、ドッグラン方面(上矢印)へ向かった試験者は代々木八幡宮へ向かい、原宿駅方面へ向かった試験者は駅前の歩道橋で試験したのち、表参道方面へ下りました。

結果
代々木八幡宮から原宿駅前歩道橋周辺において、歩道橋の下にいるとき、電波受信状況を示すアンテナ表示が1本前後になるなど、不安定な側面も見られましたが、音声のやり取りを行うという観点からみると、行路すべてにおいて送受信良好でした。
アンテナ別の検証では、付属品であるアンテナ1は歩道橋周辺の時点で状況により通話不可能となる状態でした。
また、表参道方面へ進行した際には、ローソン神宮前四丁目店で完全に通話不可能となりました。(アンテナ2を利用、アンテナ1は通話不可能)
代々木八幡宮から原宿駅歩道橋までの直線距離は1.22kmで、標高差は3mです。
代々木八幡宮からローソン神宮前四丁目店までの直線距離は1.65kmで、標高差は17.8mです。
3.首都高代々木PAー東京駅
これまでの検証からアンテナの利得がかなり影響を及ぼすこと、また、自動車で交信する場合はアンテナを車外に出すとよいことがわかりました。
そこで、車載アンテナを搭載させ、首都高速代々木PAに試験者を放置し、東京駅まで走りました。

代々木PAと東京駅丸の内南口間の直線距離は、6.1km、標高差は、33.7mです。
結果
結果は惨敗でした。
首都高永田町トンネル付近から一切交信が不可能でした。
トンネル内は交信できないことはわかりますが、東京駅まで到着しても一切の反応がありませんでした。
なお、東京駅から代々木PAへ戻る際には、国道20号、国道246号、青山を経由し、代々木公園駐車場方面から戻ったのですが、この間には、交信できる箇所が何点かありました。
地図の画像を見るとわかりますが、代々木PAと東京駅の間は標高差があれど、ビルなどの建築物が非常に多くあり、また、代々木PAの建物自体も高さが高くないため、それらの遮られた可能性が考えられます。
なお、代々木PA側の試験者から、PAの建物(東京駅方面に向かってガラスがある、2階建ての建物)に入ると受信できないが、PAの駐車場に降りると交信できたという報告がありました。
これまでの検証から
群馬と東京の2か所の実証から、ビッグサイトのような鉄骨・鉄筋コンクリートの構造物や壁に阻まれた環境とは変わり、標高差と、道路という電波的に見通しの効く環境では飛距離が伸びる傾向にあることが判明しました。
一方で、間に建造物など障害物が挟まると、途端に交信可能距離が短くなること、ガラスの電波遮蔽能力の高さが交信へ強いマイナスの影響をもたらすことも判明しています。
3.東京湾アクアライン(海ほたる)
検証結果を踏まえて、間に何もない環境を関東近辺で探した結果・・・
海ほたると、木更津で検証を行うこととなりました。
(下田と館山でやれよとは言ってはいけない)
気象条件
| 1 | 2 |
|---|---|
| 天気 | 晴れ |
| 気温 | 15.6℃ |
| 湿度 | 78% |
| 風速 | 1.8m/s |
移動経路
友人を海ほたるへ放置し、アクアライン・アクア連絡道を木更津JCTまで直進、東関東道館山線進み、イオンモール君津の方面へ進みました。その後上総湊駅付近まで海沿いを移動し、最遠で地蔵ケ浜まで移動し、富津竹岡ICから海ほたるへ戻るルートを取りました。
富津岬と海ほたるの直線距離は18kmで、地蔵ケ浜と海ほたるは28kmです。
結果
東京湾側の経路では途切れることはほとんどありませんでした。
また受信レベルが低くなることもなく、非常に快適に交信できました。
一方、帰りの内陸側経路では、高速道路が山中を通っていることもあり、ほとんど交信できませんでした。
まとめ
やはり、「見通しの良い」という環境条件は飛距離に大きく影響を及ぼすようです。
また、ガラスや鉄、コンクリートといった障害物の電波遮蔽能力は非常に高く、建物内でしか交信できない場合がほとんどでしたし、車で走り回っている間も車内にアンテナ直付けだと受信できないものの、窓を開けると交信できるようになる事象も見られました。
これらのテストでテレビやラジオの送信所が山の上や鉄塔の上になる理由を身を持って体感し、ある程度電波の届く範囲や環境の理解に繋がりました。


