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いちマネージャーからみた チーム間・チームのふりかえりの効用

Last updated at Posted at 2019-12-25

はじめに

 どうも、みなさん、こんにちは。
 妻の批判はアドバイスとモットーとする エンジニアリングマネージャー @warumonogakari こと かとうです。
 本稿は、ふりかえり Advent Calendar 2019 12/23日目向の記事だったのですが遅れてすみません。わたしをはじめメンバが安心して無力になれる組織を目指してという記事でもふれましたが、ここでは、チーム間・チームのふりかえりについて、いちマネージャーからみてこんな効用があったと、感じたことをつらつらあげていきたいとおもいます。
 なお、あくまでも いちマネージャーである わたし からみた視点です。本稿は所属・関連する組織を代表するものではなく、一切関係ない個人的なものであることをご承知おきください。

職場の概観と導入する前の状況

 箇条書きで書くと、以下のような状況でした。

  • チーム4つ(設計チーム3つ、テストチーム1つ)から構成されるグループ、協力会社を除き総勢30人ほど
  • 導入する前は、チーム間、チーム内ともに ぎすぎすしていた。
  • グループ長・私はじめマネージャー陣が定期・不定期にメンバと 1on1したもの ぎすぎすは解消せず。
  • 半年に一度 チームごとに Kickoff と振り返りを繰り返していたが、マンネリ感がただよっていた。主催者のマネージャーの負担になるがメンバの記憶に残らない。
  • 振り返りの結果もふまえ、交流をふかめるためにも、組織構造やチーム間移動を試みていたが、正直効果なし。
  • マネージャー間もぎすぎすしていた。
  • 実際、配属直後の新人に「このグループ みんな 表情暗いですね」と言われる始末だった。

導入

 今年1月から やり方を根本的に見直しました。
 組織構造をいきなり変えることはせず、以下の施策をとることにより、マネジメントチームとメンバ、マネージャとメンバ、メンバ同士のインターフェイスを改善することを試みました。

  • チーム間、主要メンバとマネジメントチームからなるふりかえり
  • チーム内でのふりかえり
  • 1on1

 このうち、1on1は、上長である わたし とメンバとの年齢差が10歳以上と違い、世代・経験が違いすぎてうまくいきませんでした。ただ、話を聴いていくうちに、自己の成長の悩みよりも外部利害関係者との関係性の苦しさが主な課題であることが判明したので、現在別のアプローチである「関わり方の研究」に変化しています。1

導入の際の狙い

 上記の3つは、皆グループ内関係者の関係性の向上をめざして導入したものです。導入当時はまだ信頼関係をあげたいね程度でしたが、関係性をあげると組織パフォーマンスがあがることは少しだけ期待していました。2
 プログラムにたとえると、モジュール間のI/Fに焦点をあて対話をうながし、I/F間が自己組織的にかわっていくことを狙いました。それにより、組織の見通しがよくなり、外部環境の変化があっても適切かつ必要最小限な改良ですみます。なによりも「なぜこの組織(構造)になっているのか」という「理解しがたさ」から脱却できます。

導入の際の進め方

 外部の支援を仰ぎました。2019年4月よりプロジェクト案件が目白おしで、立て直すなら1-3月だけしかなかったことと、わたしがこの期間集中して対応する自信がなかったのと、なによりも早く現状を変えたかった。
 ちょうど運がよいことに ふりかえり実践会を通じて知り合った びばさんこと森一樹さんを外部講師に仰ぎ、約2か月半 週1回 1日のトレーニングを行いました。
 その中には、ふりかえりのやり方だけでなく

  • お互いの価値観をしるワーク、価値観ババぬきや Personal maps
  • モティベーションを高める 期待マネジメントやデリゲーションポーカー
  • その他、ふりかえりをすすめるためのファシリテーション

といったアジャイル界隈で普及しているワークもお願いしました。

 びばさんの ふりかえりの優れた点は、ふりかえり手法の引き出しの多さもさることなら、インセプションデッキをつかって定期的に むきなおりし、そのコンテキストでふりかえりをすることに、優れた特長があるようにおもえています。これにより、成し遂げたい何か漠然としたもののを定期的に徐々に具体化しながら、組織変化を促す意味でポジティブにふりかえりをしていく。
 わたしの目からは、ちょうどサイバネティクスのいうポジティブフィードバックを与え、それによりシステム(=組織)を活性化するように受け取りました。3

 また、いきなりグループ全員約30人にふりかえりをやりましょう!といっても、導入するのは困難です。そこで、チーム主要メンバとマネージャー、全員9名からなるチーム間チームをつくり、チーム主要メンバのみなさんには、各チームに持ち帰っては びばさんの ふりかえり手法やワークを普及するという役割をもってもらうことにしました。

活動状況

 チーム間とチーム内各々1週間ごと・1時間半~2時間でやっています。マネージャーさんと各チーム主要メンバは3時間~4時間ふりかえりに時間をかけていることになります。
 ファシリテーターは輪番制です。

チーム内のふりかえりは基本 TimelineY+WT

 流れは概ねこんな感じです。

  1. アイスブレーク(だいたい Good&New)
  2. おおよそ1か月ごと、インセプションデッキの「われわれはなぜここにいるのか」を使い、1か月後・3か月~半年後・1年後の姿 の見直し(むきなおり)を行う。
  3. まず、Timelineで やったことをあげていきます。その際に、先週の Next Action の結果もまじえながら、うれしかったこと・楽しかったことと、つらかったこと・悲しかったことで、付箋紙の色を分け、やったことをあげていきます。
  4. 次に、タイムラインの出来事をながめて、わかったことをあげていきます。わかったことが一杯でてきた場合は共通点を抽出しながらグループ化し、つぎやることの対象をしぼりこみます。
  5. つぎやることをあげていきます。これも一杯でてきた場合は共通点を抽出しながらグループ化し絞り込みます。
  6. 最後に、Next Actionと次週のファシリテーターを決め、プラスデルタでふりかえりのふりかえりを行います。

チーム間のふりかえりは、上記のTimelineY+WTを中心に、ファシリテーターがやりたい ふりかえり方法の併用

 TimelineY+WTを中心にしているのは、グループの課題を拾い出すためです。その他に拾い上げた課題と Next Actionについてふりかえりをしています。
 チーム主要メンバはファシリテーションがだいぶ手馴れてきており 4、アイスブレークや ふりかえりのふりかえりだけでなく、特にとりあげた課題については、ふりかえり自体も ふりかえり読本を参考に、目的に即した手法はなにか自ら考え、場にもってきてくるようになりました。
 わたしも含むマネージャー陣もファシリテーションする回があります。わたしの場合は、オープンダイアローグの手法を中心に臨床心理から つかえそうなやり方をピックアップしては実験しています。

実際おこった効用

 実際におこった効用をまとめると、ざっと以下の10項目になるとおもいます。

  1. 何か行動に躊躇した際、小さくカイゼン ダメだったら ふりかえればいいよね が合言葉に
  2. 本当の状況・進捗がわかるようになった
  3. 今まで年齢差が大きいためか孤立していたベテランが活躍しだした
  4. 想像以上に多様な考えや、その場その場でいろんな感情を想起することがわかってきた
  5. メンバ間の交流が増えた
  6. チーム間で協力が必要な案件によっては、円滑に協力し合えるようになってきた
  7. マネージャー同士の協力がしやすくなった
  8. グループ全体の定例会でも、簡単なふりかえり(プラス・デルタ)を行い、次回の運営の改善につながるようになってきた
  9. 言いたくても言えなかったこと・やりたくないことの合意ができるようになった
  10. 1か月後・3か月後の姿のイメージがそろってきた

何か行動に躊躇した際、小さくまわす ダメだったら ふりかえればいいよね が合言葉に

 今までは、あれやこれやを考えすぎて結局何もしないケースや、なんとなく惰性で継続しているケースもままありました。ふりかえりを取り入れることで、まずは試してみよう、ふりかえってダメだったらやめればよいじゃないか、それを含め行動してみようというマインドが形成されるようになりました。

本当の状況・進捗がわかるようになった

 うれしかったこと・つらかったことが外在化することで、本当に苦労していること・フリーズしていることが浮き彫りになってきました。これにより、声かけがスムーズになりました。

今まで年齢差が大きいためか孤立していたベテランが活躍しだした

 若いメンバが何に苦労しているわかってきたためか、今まで孤高な状態だった50代の超ベテランさんが適宜フォローしたり、自発的にレビュー・指導に入ってくれるようになってきました。

想像以上に多様な考えや、その場その場でいろんな感情を想起することがわかってきた

 特にチーム間のふりかえりの場合、当初よりなかなか チームのNextActionが定まらず苦労していました。そこで、一度、頭に思い浮かべた自動思考を付箋にだすワークを繰り返ししやってみました。その結果、想像以上に思い浮かべたことが多様なことがわかってきました。最終的には、お互いがお互いのことを決めつけることが減ってきたと思います。
 実際、無理に全員一致・本音の合意を目指さないが、最近の DPA(Design the Partnership Alliance)となっています。不思議なことにこの DPAにしてから、Next Action の実施が楽になりました。

メンバ間の交流が増えた

 特にチーム間では、今までは「だれそれさんのやっていることはわからない」で話が止まっていたことが、お互いやっていることを理解するようになってきました。今まで全く交流がなかったメンバが共同して Next Actionをおこなうシーンが増えてきました。

チーム間で協力が必要な案件によっては、円滑に協力し合えるようになってきた

 特に10月以降の案件で、チーム間協力が必要な案件は順調に進んでいます。ほとんどグループ内に閉じることと、ありがたいことにグループ外の支援も明確で積極的なことも大きいのですが、それでも昨年の状況だったらきっとうまくいかなかっただろうなと感じています。

マネージャー同士の協力がしやすくなった

 なによりも、身構えて話を聞いたり話したりすることが少なくなりました。これでかなり心理的な負担がへったと感じています。

グループ全体の定例会でも、簡単なふりかえり(プラス・デルタ)を行い、次回の運営の改善につながるようになってきた

 具体的によかったことを中心に褒めあうことにより、会議の運営が円滑にすすむようになりました。また、今まで参加していなかったチームのメンバもでてくるようになり、グループ全体の一体感が高まってきました。

言いたくても言えなかったこと・やりたくないことの合意ができるようになった

 グループ長とわたしは、数年後には役職定年をむかえ、いやでも世代交代をはかる必要があります。今まではそうしたことさえ話しにくかったのですが、負担なく話せるようになりました。また、いろんな不安や情報不足から、今までは、やりたくないこと・スコープから除外したいことのコンセンサスをとるのが難しかったのですが、情報がすぐ集まり、決定が楽にすすむようになりました。

1か月後・3か月後の姿のイメージがそろってきた

 当初は「1か月の目標を何かひとつ1か月後にだす」という漠然とした目標だったのですが、今では「梅の花が咲いているころには、こんな連携ができていて、〇〇という相手へはあんな支援ができるようになっており、××な関係になっている」という関係性が明確になった目標をたてて ふりかえれるようになってきました。

その他、特筆すること

 価値観ババ抜きを部メンバをシャッフルしてやってみましょうといった、グループを超えて部全体に波及する活動がでてきました。これは、別に わたしを介在することなく、言わば自然発生的に起こった出来事です。お互いの価値観・文化形成を大事にしていこうという弊社の文化がこのような自発的な行動を後押ししたようです。

おわりに

 こうして、全般的にマネージャー陣の負担もさがり、おぼろげながら世代交代の道筋も徐々にみえてきました。今までできなかったことができる事例が、少しずつですが増えてきており、組織のパフォーマンスもあがってきました。
 それでもまだまだ道半ば。
 グループ内の足並みがそろってきたものの、グループの外をすこしでると、まだまだ苦労が多い状況です。
 今後とも、「小さくまわす ダメだったら ふりかえればいいよね」を合言葉に、これらの苦労に立ち向かっていく所存です。

謝辞

 アドベントカレンダーの機会と、そして名古屋にきていただいた際にいろいろとご指導していただいた びばさんこと森一樹さんに感謝します。どうもありがとうございました!

  1. 現在は、本当に困ったメンバがここぞで相談・活用できるようにドアを開けておく、いわば開店休業の時間になっています。

  2. なぜあがるのか(=適応課題の解消によりあがる)がはっきりわかってきたのは極最近のことです。

  3. なので、振り返りという単語ではなく あえて 平仮名の ふりかえり にしていると聞いています。

  4. わたしより はるかに上手です。

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