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Qiskit Advocateになるには

Last updated at Posted at 2024-04-28

はじめに

Qiskit Advocateはグローバルな認定制度で、Qiskitについて一定以上の技術的な理解があり、コミュニティへの貢献があった人をQiskit Advocateとして認定するものです。
私は2023年夏にQiskit Advocateの認定をいただきました。ここでは、私がQiskitコミュニティで活動してきた実績についてご紹介します。Qiskit Advocateに応募してみようと考えている方々の参考になれば幸いです。

量子コンピュータを学ぶきっかけ

私はIT技術者で、最近はプロジェクトマネジメントの仕事をしています。学生時代は有限要素法や数値解析に取り組み、就職後は燃焼などの数値シミュレーションの仕事をしていたこともありました。こんなバックグラウンドがあり、量子計算では最適化問題などへの応用があると聞き、計算手法などについて関心を持っていました。自分でも量子コンピュータを使ってみたいと思いましたが、量子力学などの知識も必要であり、独学ではハードルが高いと感じていました。

勤務先の上司が、IBM Community Japanが行っているナレッジモール研究への参加を勧めてくれたのですが、ナレッジモール研究では「量子コンピュータの活用研究」という研究テーマが設定されており、思い切って参加することにしました。ナレッジモール研究に参加したことが、量子コンピュータを学び、Qiskit Communityで活動する出発点となっています。

Qiskit Advocateについて

Qiskit Advocate Application Guide(以下、応募ガイド)が公開されており、Advocateになるメリットや、応募にあたっての要件、実際にAdvocateになった人の例がまとめられています。昨年の応募ガイドによると、全世界で400人以上が認定を受けています。

Advocateになるとどのようなメリットがあるかは応募ガイドに記述されていますが、私が経験している範囲では、Swagの贈呈(2023年認定のメンバーにはQiskit Advocateの刺繍入りのデイパックと書籍「The Quantum Decade」の最新版でした)、関係者限定のイベントへの招待、IBM Quantum Challengeへメンターとしての参加できることが挙げられます。
Advocateになるというのは、Qiskit Communityの「ナカの人」に仲間入りできることと私自身は感じています。

応募ガイドは本稿執筆(2024年4月末)時点では、2023年のものが掲載されています。いずれ2024年版に更新されると思いますが、こちらのサイトで内容の更新を確認したり、Qiskit Slackで最新情報を確認されることをお勧めします。

Qisikit Advocateに関連するサイトのURLは以下のとおりです:
Qiskit Advocate program のHP: https://qiskit.org/advocates
応募ガイド:https://github.com/qiskit-advocate/application-guide
Qiskit Slack: https://qisk.it/join-slack

Qiskit Advocateへの応募について

昨年は応募期間が2023年6月1日から7月1日に設定されていました。今年も同様の時期になるのではと推測しています。

Qiskit Advocateの応募には、
 ・Developer試験に合格していること
 ・Qiskit Communityへの貢献の実績があり、20ポイント以上であること
が要件となっています。

応募は専用のフォームに必要事項を入力して提出します。提出した情報はAdvocate squadにより、順次レビューが行われます。レビュアーのチームの構成はよく知りませんが、Advocateですぐれた経験・識見をもつ人のチームがあるのだろうと推測します。

Developer試験について

ナレッジモール研究では、Developer試験受験のための学習教材「虎の巻」を作りました。(「虎の巻」についてはQiitaの別記事で紹介しています)
当然のことながら、Developer試験を受験し合格することが目標の一つとなっていました。
Developer試験はIBMが実施する資格試験ですが、受験料が200ドル(日本円では2万円)かかります。
私はナレッジモール研究のアドバイザーから、期間や人数は限定されているが、Advocateに応募することを前提にDeveloper試験を無料で受けられるバウチャーをもらえるという情報を教えていただき、この機会をつかって受験をしました。

昨年も同様に無料受験バウチャーの配布がありましたが、時期や配布の条件は年によって変わるようです。Qiskit Slack等で最新情報を確認するのがよいと思います。

Qiskit Communityへの貢献

応募ガイドではコミュニティでの貢献内容の例示があります。貢献内容はTier 1からTier 4まで分かれており、それぞれポイントが設定されています。応募するには合計で20ポイント以上が必要です。
ポイントの設定は幅がありますが、レビュアーがどの程度のポイントであるか判断していると想像します。自己採点をするときには、該当するTierの最も低いポイント値で計算し要件を満たすか確認したほうが安全だと考えます。

私の貢献実績について

応募ガイドの例示にしたがって、提出した自分のQiskit Communityへの貢献実績を書いてみると以下のとおりです:

  • Tier 1(12ー15ポイント)
     ・該当する実績なし

  • Tier 2(8-12ポイント)
     ・Developer試験学習資料「虎の巻」の作成、公開
     ・勤務先で有志による「量子コンピュータ勉強会」を隔週で開催(22年12月~)
     ・Qiskit Documentの翻訳(ブロンズバッジ)

  • Tier 3(4-8ポイント)
     ・Quantum Tokyoの勉強会でのプレゼン(3件)
     ・Qiskit関連の記事のブログへの投稿(7件)
     ・IBM Quantum Challenge、Qiskit Global Summer Schoolへの参加(各1件)

  • Tier 4(1-4ポイント)
     ・該当する実績なし

実績は英語でなくても構いませんが、Githubやブログ等、公開している場所のリンクを示し、レビュアーが見て確認できる記載することが望ましいと考えます。自分の実績をしっかりアピールする記述を心がけるとよいと思います。
また、Quantum Challengeなどは、演習問題の正答数が基準以上であれば、オンラインバッジがもらえますので、そのリンクの情報を書くようにします。

また、応募時にネットで参照できない資料はSupporting Materialとして添付できるようになっていました。私の場合は、勤務先で行っていた「量子コンピュータ勉強会」はオンライン開催で様子がわかる写真を用意できなかったため、自分で作成した講師用ノートをスキャンして提出しています(手書きノートを浄書もせず提出し、レビュアーの方にはお手数をおかけしました)。

ポイントの計算は同じTierで複数の実績があれば、実績の回数だけ足し算をすればよいと考えて自己採点をしてみました。
上記の実績から、
   Tier2 8ポイント ×  3件 = 24ポイント
   Tier3 4ポイント × 12件 = 48ポイント
   合計              72ポイント
となっています。

応募開始となる前、2023年4月の時点で以下のような実績をまとめる表をつくり、自己採点してみました。その時点で申請の要件である20ポイントはクリアできる感触を持ちました。

20240428Qiita.png

また、応募の際は23年秋の公開イベントでのプレゼン予定があることや、Qiskitドキュメント翻訳の実績も応募時の実績の語数も書くようにしました。翻訳のバッジは年度末に申請して発行してもらうので、Advocate申請時点では23年分のバッジは手元にないためです。
これらは実績のポイントにはなりませんが、やってきたこと/今後の予定をしっかりアピールするという意味で、もしあれば書いておくとよいのではないでしょうか。

レビュアーによる審査の結果はメールで連絡がありますが、Advocateに認定するか/しないかの結果だけです。レビュアーがカウントしたポイント数のフィードバックなどはありません。

貢献内容については、私が応募ガイドを見た限りでは「X年前までの実績に限る」等の期間の制限はないようです。応募ガイドの要件が変わらなければ、例えばQiskitドキュメントの翻訳でバッジがもらえる実績を積んで申請要件をクリアすることもできると考えます。

まとめ

私の場合は、Quantum Tokyoの勉強会に参加し、プレゼンの発表など勧めていただいたことに取り組み、応募に必要な貢献実績をクリアできたというのが実感です。
Advocateというとかっこいいお兄さん、お姉さんがなるものという先入観がありましたが、私のようなIT技術者でもなれるということを実証できたことに喜びを感じています。
動画の投稿などは一人でやっていくのはなかなか大変です。こうした勉強会でプレゼンする機会を作れるとよいのではないかと思います。

私の主な仕事は勤務先企業内のITプロジェクトのマネジメントであり、量子コンピューティングとは直接の関わりはありませんが、数値積分やモンテカルロシミュレーションなどにも関心があり、量子コンピューティングではどのようなことができるか引き続き学んでいきたいと考えています。

以上、Qiskit Advocateにチャレンジしてみたいと思っている方に何か役立つことがあれば幸いです。

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