マイケル・ロップ氏の「リーダーの作法 ささいなことをていねいに」を読み解きながら、メモを残しています。
各章ごとにまとめていますが、章の原題ではなく私にとってのまとめをタイトルにつけなおしています。
この本との出会いと、アウトプットしながら読み解く経緯はこちらの記事で。
本文で登場する「ランズ」は、ロップ氏のネット上のハンドルネームです。
「はじめに」で、自身を「ロップ」とも「ランズ」とも呼ぶと宣言しています。
第I幕 『人の気持ちが分かる』基本的で難しいこと
「リーダーの作法 ささいなことをていねいに」は、大きくは3部構成になっています。
- 第I幕 Netscape:マネージャー
- 第II幕 Apple:ディレクター
- 第III幕 Slack:エグゼクティブ
今回は 「第I幕 Netscape:マネージャー」の1章~3章について学びメモを残します。
第I幕 Netscape:マネージャー
1章 誰からでも学ぶことがあると考える
2章 会議ボケ
2.1 抱えすぎ
2.2 リーダーとして卓越した仕事をするために
3章 難題
3.1 特に厄介な課題
3.2 難題に対する意思決定
あなたが手にしているこの本(紙であれ電子書歴であれ)は、私がマネジャーになった最初の数年間に、しっかりとしたサポートを受けられなかったことへの不満から生まれたものです。
なんとも痺れます。物事の原動力に正直とでも言いましょうか。
共感する気持ちが生まれることで、読み手の姿勢に『自分ごと化』が起こります。
だから、本の内容がよりいっそう大切なこととして入ってくるのかもしれません。
ロップ、君は優秀なエンジニアだけど、優れたマネージャーになれるよ。人の気持ちが分かるからね。
この一文を見て、私はこの基本があまりに語られなさ過ぎていると感じました。
たとえば私の身近で 『プロジェクト管理の議論』 を設定しても、おそらくほぼ語られない。
しかし一方で、エンジニアとして仲間と協働する場面を思い描くとき、この言葉はシンプルにして、ものすごい真理をついているように思います。
もうあまり思い出したくない、本能寺のように燃えるいくつかの過去の現場をふりかえれば、なおさらです。
1章 ストーリーを見つけ出して『主人公』に戻れ
ロップ氏は1on1を行い、重要なメッセージに耳を傾けることを推奨しています。
この章に限らず 「ストーリーを見つけ出す」 というフレーズがよく登場します。
その意味することは、まさに、
- 目の前の一見不条理な出来事を 『自分ごと化』してとらえなおす
ことであり、それこそがリーダーシップの本質でもあると。
一般的にはむしろ オーナーシップと呼ばれる姿勢です。
「リーダー」でなくても、良い意味で『主人公』 として学ぶには必要ですね。
2章 約束を守るために、自分を知る
ロップ氏は約束を守ることを推奨しています。
リーダーが約束を守れないことは 「約束を破っていい」メッセージを発信することです。
いわゆる士気の低下を招きます。
この章では、
- 約束を最初から守る気がない人が、まかり間違ってリーダーになっている
ようなことは問題にしていません。
(あるとすれば、それはもう別の構造的問題ですよね)
約束を守るつもりなのに、できなくなるとき。
その背景には、自分の能力を正しく俯瞰できていない問題がある。
だから、約束を守るために自分を知りましょうと。
これは、別にリーダーに限った心得ではなくて、本当に基本的なこと。
まさに「ささいなことをていねいに」だと思います。
知彼知己、百戦不殆。(彼を知り己を知れば、百戦して殆からず。) 孫子
3章 実力を高める一方で、運を受け入れる
ロップ氏はトラブル発生時の対応を慎重にすることを推奨しています。
この章は取り扱いが難しい。
理屈でわかっていても、なかなか実践できないことが書かれています。
たとえばバイアスについて具体的に知ることは、判断力を補強するかもしれません。
が、それだけで冷静な判断を100%保証するものでもなく。
ただ、ロップ氏が最後に運について言及していることは示唆に富んでいます。
目前の物事を実力のみでどうにかできると考えてしまう。
それは行き過ぎればおごりになり、判断の目を曇らせます。
実力を高める努力を積み上げる一方で、どうしようもない運を受け入れる。
このバランス感覚が大切だと思います。
この世界は、予想もしなかったことが最悪のタイミングで起きることもある。
自分は世界にとってその程度である。
よい意味での諦念を持つことが、自分ができる最善の判断を導きます。
ときには、誰かを頼って、協力して乗り越える姿勢も。
ここまでの雑感
学びメモとしてエッセンスのみ抽出すると、気づくこととして…。
大筋は、エンジニア以外の方にも普遍的に適用できることが書かれています。
それでもこの本は、エンジニアにこそふさわしい内容とも感じます。
それは、語られるエピソードがエンジニアに焦点の当たったものだからです。
この本の細部から、ゾクゾクした理屈抜きの臨場感を感じられるのは誰か?
やはり、エンジニアだと思います。そのゾクゾクが 『自分ごと化』 を推し進めます。
読み手になる私たちエンジニアの解像度を跳ね上げてくれるのですね。
だからこそ、おすすめです!
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