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スポーツ自転車の手元変速機を生成AIに聞きながら作ってみた(1) プロローグと結果編

Last updated at Posted at 2025-12-14

株式会社ブレインパッド の昼行燈おじさんです。

弊社は「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに、データ分析支援やSaaSプロダクトの提供を通じて、企業の「データ活用の日常化」を推進しております。

現在私は、お客様のデータを弊社各種サービスに接続するためのシステム支援を行なっております。

みなさん、自転車好きですか? 私は途中にブランクがありながら20年以上自転車を趣味にしております。MTB・BMX・折り畳み自転車・グラベル等々所有しておりますが自分で弄って節約し、ジャンクを好んで集めるタイプゆえ高級なバイクは一台もありません。いま欲しい自転車部品(新品)はシマノのQAUTOです。ハブダイナモから電源を取る充電不要の電気変速システム+自動変速には夢がありますね。巷に出ていた試乗車に乗りそびれてしまいどこかで体験できないかと思っております。

今回はタイトル通りスポーツ自転車の手元変速機を作ります。3Dプリンターを使い生成AI(ChatGPT、Google Gemini)と相談しながら作っていったのですが、その紆余曲折やAIとの共同作業そして決別に至るまでの経緯をお楽しみいただけますと幸いです。私は出自が文系で事務職やITエンジニア職を生業としているため機械・3DCADともに素人です。もしもっとうまく出来ると思った方はご自身で制作しましょう! DIY自転車部品が世の中に増えて楽しい世界になります。

制作環境

  • 3Dプリンター
    • Bambu Lab A1 mini
    • Bambu Lab AMS lite
    • 0.4mmノズル(純正)
    • eSUN PLA+ / サポート材フィラメント
  • スライスソフト
    • Bambu Studio
      • 2.4.0.70
  • FreeCAD
    • 1.0.1

※3Dプリンターの設定やテクニックは基本的に解説しておりません。基本的にBambuのプリセットです。さすがは3Dプリンター界のmacと呼ばれるだけあって優秀ですよ!

手元変速機(シフター)について

早速ですが、手元変速機というのはいわゆるシフターのことです。わかりやすさを優先して手元変速機と呼んでいましたが、今後はシフターで統一します。スポーツ自転車の大半は外装変速機という仕組みで変速をします。後輪にたくさんのギアが並んでいる自転車を見たことがある人も多いかと思いますが、チェーンの張りを保ちつつギアを脱落させて次のギアに掛けかえる主体がディレイラーという部品です。このディレイラーを遠隔で操作するのがシフターです。シフターの操作方法として、金属ロッド・ワイヤー・圧縮空気・電子信号などが挙げられますが今回はオーソドックスなワイヤー方式のシフターを作成します。

変速機にはインデックスとフリクションという仕様が存在します。インデックスは11段変速であれば10回の変速を行う方式で、こちらが現在圧倒的多数派です。特に説明も不要かと思いますがレバーやトリガーを動かせば正確かつ堅実に動く反面正確な整備が要求されます。それに対して、フリクションと呼ばれる方式はギアの枚数よりも細かく動いて操作者自身でギアとの位置を調整するアナログな方式です。こちらは故障を避ける旅行自転車や古い車体で見かけるくらいでして、自転車趣味の人以外は現状ほぼ見かけることがありません。こちらの方が素朴であり明確に不便なのですが、それもまた味や風情なのです。

今回作成するシフターはフリクション方式を採用します。インデックス方式は機械として高度で素人が初めて作成するにはハードルが高く、かつ機構を真似すればパテントなどを踏む可能性も高いためです。

シフターを自作して使用し事故に遭うことを懸念する方もいるかもしれませんが、この箇所は壊れても比較的安全です。自転車で注意すべきなのは操舵・チェーンの張り・減速・重量を支える部品で、壊れると転倒して大怪我または最悪死亡する可能性も考えられます。それらと比較してシフターは仮に走行中に損傷してワイヤーが外れても急に変速が変わってペダルを踏むのがかなり重くなるくらいです。市販されているフリクション式の変速機も仕組みとしては常に意図しない変速と隣り合わせであることを考えれば十分安全な範疇と考えています。

制作している自作シフターの現状

前置きが長くなりましたが、現在の姿はこちらです。
生成AIと対話しそして決別し、紆余曲折を経て試行錯誤を進めすでに約3ヶ月が経ちました。まだ道半ばです。


↑家にある適当なパーツで組んだ様子



↑強度計算などはもちろんしてないため雰囲気で形が決まっている

hoge2.gif
↑一人でクランクを回しながらリアメカ、スプロケ、シフターを同時に画角に収めるのが辛かったですw 変速レバーは現状使いにくいため要改良

  • 特徴
    • ワイヤーを止める機構はラチェットのみ
      • 伝統的なWレバー(この記事を参照)は中央を貫通したボルトの締め具合で調整した摩擦を利用するが、このシフターにその機構はない
    • 巻取りはWレバーと同様。中心軸に据えている円形の部品に留めたワイヤー先端(タイコ)が円形に移動することでワイヤーを絡めていく方式
    • ワイヤーの開放はラチェットの爪をトリガーで押す
      • 自動車の変速でいうクラッチ
      • 解除することで巻取りレバーを逆方向へ動かせるようになる
      • サンツアーやヨシガイのパワーラチェットは緩める方向にも絶妙に動くためこの動作を必要としないが、この自作シフターはワイヤーの戻り防止の機構がラチェットのみであるため自発的に解除しないと緩める方向には全く動かない
    • 市販品の流用でモジュール化

中央にAliExpressで購入したラチェットレンチの補修部品を据えているとても単純で愚鈍とも言えるプロダクトです。シマノ・SRAMCampagnoloMicroshiftSENSAH等々と並んで何か優位な点があるかといえばもちろん無く、自作したゆえに尊いという私の愛情の塊です。

なぜ制作が難しいのか

シフターの制作の難しさについてまとめてみました。

  • ワイヤーが巻き戻るのを阻止する方向に相応の力が必要ではあるが、それを解除して逆方向に動かす必要があること
  • 適切な場所でワイヤーが止まること
  • 自転車のハンドルに据え付けるためコンパクトであること
  • 人間が指の力で操作すること
  • 人間工学的な側面があり、UXを考える必要があること

さらに3Dプリンターを使用すると下記の難しさも追加されます

  • 部品の精度
  • 部品の強度
  • 部品の長期的な耐久性
  • CADでの設計工数

全体を小さくまとめるために構成部品を小さくすると強度が不足したり、そもそも3Dプリンターには向かない性質の部品があったりします。例えば、細かい突起を擦り付けて大トルクに耐えるのはPLA+では不可能でした。使用しているフィラメントのブランドはeSUNですが、おそらく他社製品でも大差ないはずです。

私のシフターは企画・設計・プリント・組みつけなどの各フェーズで地雷や考慮しないと壊れるポイントを大量に踏み、残った要素で組み上げた経験則の結晶です。弊社はデータ分析の会社なのですが、全部KKD(経験・勘・度胸)です。よく魔改造の夜でデータを計測し計算式を立て、それを元に改造を進めるシーンを見ますが私は個人で作成しておりあらゆる事象は一期一会な状態ですのでアプローチはKKDにならざるを得ません。

途中で欲を出して、いつかは頒布できるように作成する部品のコストを意識したり既存メーカーが採用しない機構はないだろうかと思考を重ねた回り道はとても長いものでした。そして一旦ブログ執筆のために途中経過を取り出してきましたが道半ばでこれから改良改善ブラッシュアップしたい箇所も山積みです。私自身が完成度の高い様々な既存製品を使うユーザー側でもあるため、自作シフターの至らなさを敏感に感じとってしまう側面も大いにあります。良い製品を知っているユーザーはわがままで理想が高いのです。

この試みは試行錯誤が楽しく時間お金共に遣いましたが最終的には良い経験が積めたと思っております。世の中に出ている廉価グレード・普及グレード・高級グレード問わずシフターへの尊敬の念でいっぱいな気持ちです。昨今の3Dプリンターは安く高性能ですし、CADも選ばなければ無料でソフトウェアが使用できます。これから紹介する失敗談や試行錯誤は取るに足らないものばかりですが、試してみたい方の参考になれば幸いです。

シフターには何が必要なのか、要件定義

さて、ここからはずっと制作秘話です。紹介したい話が多いため記事を複数に分けてご紹介します。

まず、シフターの要件から整理します。私は自転車オタクであるため特に生成AIに頼らなくても脳裏に浮かびます。加えて個人的な好みや思いもここに加えましょう。制作しながら整理・洗練されてきたため制作当初はもっと雑だったかもしれません。

  • ディレイラーをワイヤーで引っ張る機構
  • フリクション式であるため、9段ギア用(つまり8回変速する)に合うチェーン位置よりもさらに細かくチェーンを止めるポイントがあること
    • 正しい位置で止めないとチェーンが常にカリカリと音を立てる状態になる
  • レバーが支点を中心に180°くらい稼働してワイヤーを巻き取ること
    • 指が届く範囲
  • ワイヤーを張る機構(社外パーツでOK)
  • (個人的な嗜好)ツーリング車のように下ハンドルをメインで使用した場合に、それに最適なシフターを作る

ちなみに、フリクション式の変速機は前述していますがWレバー(この記事を参照1この記事を参照2)という完成した様式があります。自転車変速機には100年以上の歴史があり、その歴史の中で洗練された機構は合理的で追随を許しません。正解がすでに出ているジャンルですのでそのまま模倣すればもっとうまく動いたかもしれません。しかし作るからには自分で考えた機構を試してみたくなるもの、私の心の中のキテレツ斎様にずいぶんと踊らされることになりました。

生成AI関連

続編で詳しく紹介しますが、生成AIの利用は下記のようなケースでした。

  • 周辺知識のインプット
  • 自分で考えて試作し、うまくいかない場合の解決策を聞く
  • 適した機械の機構の種類を聞く
  • 手元で作成するのが面倒なFreeCADのデータを作ってもらう
  • FreeCADの操作方法・レクチャー・チュートリアル

私は機械について素人ですので最初は生成AIが出してくる聞いたこともない機構名やFreeCADのモデルデータをマクロファイル(.FCMacro)として出してくることに大興奮でした。これがあれば様々な新しいことができるかもしれない、手放しに3Dプリンターで造形が楽しめるかもしれないと思っていましたが、途中で失望に変わっていきました。あとから反省会的な内容をまとめるつもりですが、生成AIの無限の可能性を阻害していたのは私自身です。

エピソードの例としては下記です。

  • 3Dプリンターがデタラメを言ったときにその正誤がわからない
    • ラチェットの爪について聞いたときに全然違う形を出してくる
      • そもそも3Dプリンターで小さなサイズのラチェット機構は精度・強度がきびしいかも
  • 初めて聞く機構があったときに裏取りできない
    • スライドウェッジ機構?? ウェッジはクサビの意味
      • モデルを出してもらい実際にプリントして確かめたが、書いていることと造形が異なる
  • 自分の固定観念を実現するために方法を聞き、それが無理筋だということを作って悟る
    • Wレバー式で摩擦を利用してワイヤーを止めるが、中心の軸を傾けることでテンションを抜いて緩める方向にレバーが動くするような方式
  • 3Dプリンター製の部品は摩擦に弱いが、摩擦で止める形のモデルを依頼
    • 実際にプリントして、必要な力には到底耐えられないことに気づく
    • まずは物理法則を先に考えるべき
  • 必要なバネの弾性力がわからない、かつ計測する装置もないため適当に入力して役立ちそうな部品を聞いたあげく手元に取り寄せて使えないことに気づく
    • 硬い皿ばね座金は人力で歪むものではない

↑理屈はともかく現実的な造形はよくわからなかったスライドウェッジ機構??



↑モデルデータのマクロファイルから作ったもの。この均等に並んだ三角錐を手作業で調整して作成するのはかなり手間


ある程度生成AIと対話し、一通りの失敗を繰り返して使用頻度はめっきり減りました。現在はFreeCADの操作方法や部品を造形する方法を聞くことが多いですがこの用途はバッチリです。ググってもなかなか要領を得ない方法がザクザク出てきますし教え方も親切丁寧、別角度でのアプローチ提案もしてくれます。あとはずっと試行錯誤が成功せず辛くなってきたときに生成AIへ依頼して褒めてもらったり愚痴を聞いてもらったりしています。

生成AIを役立てられるかは自分自身という月並みな結論ですが、この愛のこもった自作シフターがひとまず形になったのは生成AIのおかげなのです。生成AIに感謝感謝!


※本記事の内容は個人の見解であり、所属する組織の公式な見解や推奨を代表するものではありません。
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