はじめに
2026年6月19日、LINEヤフー株式会社の第31回定時株主総会に参加してきました。会場はベルサール高田馬場。
筆者は情報系大学の4年生で、就活を来年に控えています。LINEヤフーは志望先候補の一つで、「入社する前に経営方針や事業の中身を自分の目で確かめておきたい」というのが今回参加した一番の理由です。株主総会への参加は今回が2回目で、1回目はソフトバンクグループでした。
会場では議決行使権と引き換えにアンケート用紙、水、そして質疑応答用の挙手用カラーペーパーを受け取りました。この記事では、AIによる会議要約をベースにしつつ、当日その場で感じたこと・引っかかったことを、学生の目線で振り返ってみます。会場内写真撮影等が禁止でしたのでここから写真はありません。
1. 業績ハイライト:好調の裏にあった「知らなかった」出来事
2025年度は全社で増収増益。中でもPayPayを中心とした戦略事業の伸びが凄まじく、売上収益は前年度比30.6%増、調整後EBITDAは85%増という数字が出ていました。PayPay年間決済回数92.4億回、連結取扱高19.4兆円、そして2026年3月にはPayPay株式会社がナスダックに上場し、初日終値ベースの時価総額が約1兆9000億円。日本企業の米国市場上場として過去最大規模とのことで、これは素直にすごいなと思いました。
一方で、メディア事業は生成AI関連費用の増加で調整後EBITDAが2.2%減、コマース事業も同様に12.8%減。この減益の理由の一つとして「アスクルにおけるランサムウェア攻撃によるシステム障害」が挙げられていたのですが、正直これは知りませんでした。そしてそれ以上に、アスクルがLINEヤフーの連結子会社だということも今回初めて知りました。普段使っているサービスの裏側に、こういう企業グループの繋がりがあるというのは、就活で会社を見るときに「単体の事業だけでなく、グループ全体の構造を見る」という視点の大事さを教えられた気がします。
2. AI戦略:「半導体→LLM→サービスレイヤー」という会社側のロジック
26年度の中核戦略として語られていたのが「LINEを起点としたAIエージェント化」です。会社側は、AIの競争領域をインフラのレイヤー・LLMモデルのレイヤー・サービスレイヤーの3層で捉えており、現在は半導体やLLM基盤モデルに世界の注目が集まっているが、インターネット普及期と同じく、今後はサービスレイヤーの価値が顕在化していくという見立てを示していました。
ここで一つ、聞いていてずっと引っかかっていたことがあります。
半導体やメモリ、GPU需要でAI関連株が上昇している今、いずれその成長が止まるとしたら、それは「AIの成長限界が訪れたとき」なのではないか。もしそうなら、その後に「サービスレイヤーに注目が移る」というシナリオは、相当画期的なAIサービスが生まれない限り実現しないのではないか——という疑問です。基盤技術への期待が先行する局面を抜けた後に、本当にサービス側の価値が「自然に」評価されるのか、それとも誰かが圧倒的なサービスを作らない限り注目は移らないのか。会社側の説明は前者の前提に立っているように聞こえましたが、自分はそこに少し懐疑的な気持ちを持ちながら聞いていました。
正直なところ、AI開発・導入の流れに対して「躍進に焦りを感じている」ような印象も受けました。AIエージェント化を急ぐ姿勢そのものは理解できるのですが、聞いていて最初に浮かんだのは「ぶっちゃけ今のところChatGPTとかで十分じゃない?」という感覚です。LINEヤフーが提供する価値が、既存の生成AIサービスと比べて何が違うのかが、説明だけではいまひとつ掴めませんでした。
3. Agent i(エージェントAI):懐疑から一転した瞬間
ここまで懐疑的なことを書きましたが、実際に評価が変わった瞬間もありました。
個人的には「無理に必要のない部分までAIを組み込まなくていいのでは」「AIを使わなくても成立しているサービスにまでAIを乗せる必要はあるのか」と思っていたのですが、Agent i(エージェントAI)のデモ映像を見ているときに、その考えが少し変わりました。
デモの中で示されていた、以前のやり取りの履歴から遡って「タスクから速報です」と通知が来るという機能。これは単なる「対話型AI」ではなく、ユーザーの過去のコンテキストを踏まえて能動的に動く設計になっているということで、素直に「これはすごいな」と感じました。一つのID体系の中でやり取りや共通トークが保存され、それがAI活用の基盤になるという説明とも一致していて、LINEというプラットフォームが持つ会話履歴の蓄積を活かす発想自体は、確かにLINEヤフーだからこそできる差別化なのかもしれないと思い直しました。
ただし、その後の質疑応答で「LINE入力時にAgent iが表示され、誤ってタップすると意図しない遷移が起きる」という株主からの指摘があり、WindowsのCopilotボタン強制配備への反発を引き合いに出されていたのも印象的でした。新しい体験を作ろうとする側と、それを「押し付け」と感じるユーザー側のギャップは、AI機能を組み込むあらゆるサービスに共通する課題だと思います。これに対する会社側の明確な回答は確認できませんでした。
4. 株価が伸びないのはなぜか——一番納得感のあった株主の疑問
質疑応答の中で、自分が一番「まさにそれを聞きたかった」と思ったのが、LINEやPayPayのユーザー数が伸び続けているにもかかわらず株価が伸びていないという指摘でした。
サービスの利用規模だけを見れば、LINEは国内月間利用者数1億ユーザー超、PayPayも年間決済回数92.4億回という数字を出している。なのに、株価や市場での評価にはそれに比例した「大企業感」が正直あまり感じられない。これは会場で聞いていて自分も同じことを思っていたので、的を射た質問だと感じました。
会社側の回答は、株価停滞への認識を真摯に受け止めているとしつつ、AIエージェントのリリース加速と、既存の市場環境が半導体などの基盤技術レイヤーに注目している現状を理由として挙げていました。配当が渋いのか、成長が市場の期待に届いていないのか、その両方なのか——明確な答えは出ていなかったように思います。
一方で、「基盤が伸びて、その後にサービスが評価される」というインターネット普及期の例えには自分も同意できる部分があります。ただ、LINEヤフーの現状のAIエージェント化が、結局のところ既存のLLM(OpenAI等)に接続しているだけという説明だったのは、インパクトに欠けるという印象も受けました。自社で何を作っているのか、それとも繋いでいるだけなのかという違いは、株価評価にも直結する話だと思います。
5. ガバナンスと株主還元——配当に関する質問の鋭さ
取締役会は2024年から6名体制、4分の3が社外取締役という構成で、独立性を重視した運営がされている点は素直に評価できると感じました。
株主還元については、調整後EPSの1桁後半%成長、総還元性向70%以上、30年度ROE10%以上・ROIC8%以上という目標が示され、配当は2027年6月支払い予定分から11円への増配が予定されています。
この場面で印象に残ったのが、ある株主からの配当の4年目、5年目を見据えた質問でした。単年度の増配の話ではなく、中長期でどう還元方針が積み上がっていくのかを見据えた質問で、的を得ているように聞こえました。学生の自分には正直、配当政策をそこまで長期で読む視点はまだ持てていなかったので、株主側の視点の鋭さに勉強させられた場面でした。
6. 答えが出ていなかった論点たち
今回の総会で印象的だったのは、会社側が明確に答えなかった、あるいは答えられなかった論点が複数あったことです。
- 価格comの買収提案:交渉中であることを理由に詳細は説明されず。価格comについては技術的負債がかなり大きいという話を以前ネット記事で見たことがあり、本気で修繕・事業拡大するならどうなるのか気になるところでした。
- 生成AIに対する社会的責任:「使う」段階での規制や責任の所在について、会社側は社内方針の整備や有識者会議の実施を説明していましたが、規制発生時の具体的な線引きまでは踏み込まれませんでした。これは今後AI企業全体が避けて通れない課題だと感じます。
- 生成AIのマネタイズ設計:AI経由の広告は購買意図の強いユーザーに届くため単価が上がる可能性がある、という説明は新鮮でした。広告表示の「回数」ではなく「質」で収益化するという発想は、正直自分はこれまで考えたことがなかった視点でした。
- AIの差別化ポイント:他のAIサービスと何が違うのかという点は、結局この総会の中でも自分の中でクリアにはなりませんでした。
おわりに:就活生として持ち帰ったもの
今回の株主総会に参加して、決算資料やプレスリリースだけでは見えてこない「会社の本音」と「株主が会社に何を求めているか」の両方を、生の質疑応答から感じることができました。
特に、ユーザー数の伸びと企業価値(株価)の伸びが必ずしも一致しないという構造、AI戦略を語る勢いと、実態としての差別化のギャップ、そして答えられない・答えていない論点が普通に残ったまま総会が進むという現実は、決算説明会の資料を読むだけでは得られない感覚でした。
就活生としてLINEヤフーを見るときに、サービスの規模や知名度だけでなく、「市場や株主からどう評価されているか」「経営陣がどこに自信を持ち、どこに留保をつけているか」を合わせて見る視点を持てたのは、今回の参加の一番の収穫だったと思います。
本記事はAIによる会議要約と筆者個人のメモ・所感をもとに構成しています。発言内容の正確性については株主総会の公式議事録・開示資料をご確認ください。


