極限吸水スノーボールをAIに設計させてみた
「口の中の水分をすべて奪うお菓子」を、本気で設計したらどうなるのか。
しかも、人間ではなく 生成AIにレシピ設計をさせたら?
本記事は、その実験記録である。
きっかけ
赤ちゃん用ミルクが大量に余った。
消費のために「ミルク入りスノーボール」を作ったのが始まり。
参考レシピはこちら:
https://oceans-nadia.com/user/599208/recipe/452753
これが、おいしいだけでなく面白い。
- 超もったり
- 超ねっとり
- 口の中の水分が一気に持っていかれる
乾く、というより「拘束される」感覚。
水分が奪われ、粘性へ変換されていく。
ここで思いつく。
- ミルクを代替してカロリーを抑えつつ、この“もったり拘束感”を再現できないか?
- 存在しないレシピをAIはうまく設計できるか?
これが本記事の Research Question である。
ゴール
口の中の水分を猛烈に奪う、面白くて美味しいスノーボールの設計
単なる油や砂糖を減らす低カロリー化ではなく、「脱水体験」を設計する。
設計フロー
今回は以下の2系統を用いて実験。
- ChatGPT (GPT-5.2)
- Gemini (Gemini3 Pro)
特徴は以下:
- まず、水分吸収の方針を検討させる
- 相互レビューも取り入れる
- 最終レシピv3は別チャットでレシピ出自を隠して最良案を出させる
最終レシピ
それぞれのAIが出したレシピv3は以下の通り (命名も各AIのものを採用する)。
① 極限吸水スノーボール (HAS) by ChatGPT
High-Absorbance Snowball
材料(約12個)
| 材料 | 分量 (g) | 機能 |
|---|---|---|
| 薄力粉 | 40 | 最小骨格 |
| 無塩バター | 40 | 最小限のバインド |
| イヌリン | 25 | 主吸水材(化学的拘束) |
| エリストール | 25 | 甘味+吸熱 |
| アーモンドプードル | 15 | 風味・ホロホロ |
| 難消化性デキストリン | 15 | 初速水和 |
| 微粉おから | 6 | 物理吸水 |
| 塩 | 0.7 | 口渇感強化 |
| バニラ | 少量 | ミルク錯覚 |
| 仕上げイヌリン | 適量 | ファーストアタック層 |
最小骨格というのは、これ以上減らすと構造を保てない(砂になる)ということ。
② Dry Milk Snowball (DMS) by Gemini
材料(約12個)
| 成分 | 分量 (g) | 機能 |
|---|---|---|
| 薄力粉 | 40 | 最小骨格 |
| 無塩バター | 25 | 骨格維持の下限値 |
| イヌリン | 20 | 粘性バインダー |
| 微粉おから | 15 | 物理吸水 |
| スキムミルク | 10 | 低カロリーなミルク感の欺瞞工作 |
| エリストール (or ラカントS) | 25 | 甘味+吸熱 |
| 塩 | 0.8 | 浸透圧変化による口渇感 |
| 仕上げイヌリン+スキムミルク | 適量 | ファーストインパクト |
制作工程のポイント
ChatGPTもGeminiも同じ点を強調:
- プレミックス: 事前に粉類を均一化
- サブラージュ: 練らずに粉とバターと混合するテクニック (スコーンでよく使われる)
- 高圧整形: 練らずに圧縮して固める
- 低温焼成: 150℃で25~30分 (焼くというより乾かす)
評価
制作したスノーボール3点は以下の通り (違いが分かりやすいように破壊している)。
オリジナル(粉ミルク)
制作性: 私が作っていないため未評価
外観: ココアの茶色
食感: ホロホロ後に急激なもったり感
特徴: 強烈な粘性で口の中が重たくなる
風味: ココアが効いていて、マイルドな甘み
HAS (ChatGPT)
制作性:力を入れて圧縮することが必要だが比較的安定
外観:やや黄色
食感:硬め、意外と粉感は弱い
特徴:ザリっと感+わずかな冷感
風味:バニラ主体
→ 「吸水」というより「乾いたクッキー寄り」
色はアーモンドプードルに起因している。
画像からも分かる通り、割ってもまとまっていて屑が出にくい。
DMS (Gemini)
制作性:HASよりまとまりにくい(高圧必要)
外観:白い
食感:粉感やや強い
特徴:吸水は強いが、粘性拘束は弱い
風味:ミルキー
→ 粉による脱水体験は比較的強い
アーモンドプードルがないため、粉本来の白さが見える。
バターの少なさが作りにくさと粉感に寄与(HASが40gに対してDMSは25g)。
比較評価
1~3の3段階で評価する。得点が高いほど高評価。
| 評価軸 | HAS | DMS | オリジナル |
|---|---|---|---|
| おいしさ | 3 | 3 | 3 |
| 粉感 | 1 | 2 | 1 |
| ホロホロ感 | 1 | 1 | 3 |
| ねっとり感 | 1 | 1 | 3 |
| 水分吸収 | 2 | 2 | 3 |
| 総合 | 8 | 9 | 13 |
粉感は、砂のように口の中の水分を奪う感覚。
ホロホロ感は、噛んだ時の崩壊具合。
ねっとり感は、粉がミルクに戻っていきもったりする強い粘性。
水分吸収は、粉感やねっとり感により水分を奪われているという感覚
結論
Geminiの勝利。
ただし、圧倒的な差があるわけでもなく、バターの少なさに起因する粉感で若干DMSが勝っている程度。
また、本来の面白さだった「ミルクへ戻る粘性」はどちらも再現できていない。
AIは「脱水=粉感」と定義した。
しかし、人間が感じた面白さは「粉から液体に戻ることによる粘性変化」だった。
所感
興味深い点は、
- イヌリン
- 難消化性デキストリン
- エリストール
といった、通常の菓子では使わない素材を積極的に提案してきたこと。
これは明らかに「機能から材料を特定して設計する」アプローチであり、料理というより科学実験に近い。
一方で、
粘性変化という“時間軸の体験”
は、十分に設計できなかった。
理由として考えられるのは、
- 設計要件の「ホロホロ」が強調されて粉感による吸水に最適化された
- 口の中の水分を吸収する料理の前例が存在しない/データが少ない
- 粘性変化の官能評価が学習されにくい
など。
AIと料理する記事は良くあるが、変な料理を真面目に考えて実際に作るというのが面白い。料理に限らず、ちょっと馬鹿なことを真面目にするってのが凄く面白いと思う。
次回予告
次は、最終版レシピをもとに、「粉感ではなくミルクに戻るねっとり感」を再現するようにレシピを修正させる。
おまけ (材料変化)
初期レシピから最終レシピへの材料変化を下図に示す。
興味深いのは、
- ChatGPTの最終レシピはGeminiの初期レシピをかなり参考にしていること
- Geminiの最終レシピでスキムミルクが急に出てきたこと
- イヌリンがキー材料だという見解は初期レシピから変わっていないこと
料理はGeminiの方が得意なのかもしれない。


