2021/01/06-08 でRSGT2021(Regional Scrum Gathering Tokyo 2021)が開催されました。
そこで、私とKANEさん(@higuyume)の2人で「ふりかえり手法のおもちゃばこ」というセッションを45分間で実施しました。
そこで行った「双方向セッション設計」について、この記事ではお話したいと思います。
オンラインとオフラインに分かれてしまう問題
今回のRSGT2021は、オンラインとオフラインの同時開催。
オフラインの人はセッションホール視聴ができます。
Discordで実況、セッションはZoomで見れるという設計です。
これまでのRSGTでは、オフラインのみのカンファレンスでした。
現地の登壇者の顔や反応を見て、セッションを流動的にしていくこともできました。
ただ、今回はそれだけでは不足しています。
オンラインの人は一人で家から参加し、Zoomの画面を参照しながら、Discordの実況を眺めます。
ただし、Discordで実況が行われているということを知らない参加者も多いはずです。
Zoomだけを見ている人は**「カンファレンスに参加している」というよりも、
「動画を見ているだけ」という感覚に囚われやすくなります。**
また、オフライン(現地)の人は普段よりも人が少なく、
「全員で盛り上がっている感覚」
「セッションを一緒に作っている感覚」を得にくい
のです。
オンライン・オフラインで分かれてしまうからこそ、一体感を作りにくい。
また、その場にいることの満足感を得にくい、という問題意識がありました。
そこで、オンラインとオフラインの一体感を持たせるために行ったのが「双方向セッション設計」です。
双方向セッション設計
双方向セッション設計は造語です。
- 参加者-登壇者の双方向
- オンライン-オフラインの双方向
でセッションを構築します。
このために行ったいくつかのプラクティスを、ここで紹介します。
- 2人パーソナリティ
- オンラインを介在する
- オフライン開始前のトーク
- 全員一体の場作り
- ゆとり
- 実況を実況する
2人パーソナリティ
私たちのセッションでは、
私が進行&トークを、
KANEさんが参加者との懸け橋を担いました。
私がセッションの内容について語りながら、参加者とのインタラクションを行うためのワークなどを適宜挟みます。
主にオフライン側の反応を見つつ、セッションの内容を軌道修正していくのも私の役目です。
KANEさんはオンラインの反応(Discord、Twitter、Zoom)を見ながら、
参加者の言葉や質問を代弁し、私に投げかけます。
そうすることで、オフライン+オンラインどちらの状況も見つつ、セッションを進めていきました。
オンラインを介在する
オンラインとオフラインの人が分かれているとき、全参加者が共通してみることが出来るのはオンラインです。
RSGT2021では、Discordによる案内や実況などが行われていたため、Discordを基点としてセッションを進めていく進行を取りました。
オフライン開始前のトーク
セッション設計ではオンライン側をインタラクションの主軸に置いています。
そのため、どうしてもオフライン側で盛り上がりがしにくくなります。
また、オフライン参加のほうが人が圧倒的に少ないのです。
オフライン側での場作りが(私たちがセッションを行いやすくするためにも)非常に重要になってきます。
そこで、セッション開始5分前ほどから、私とKANEさんでフリートークをしていました。
また、現地会場の皆さんにふりかえりチートシートを紹介したりと、参加者-登壇者を繋ぎ、場を温める活動を行いました。
なお、この様子もZoomで流れ続けていました。
結果的に、オンライン+オフラインをつなぐ1つのきっかけになっていたと思います。
全員一体の場作り
オンライン側で場作りをするうえで、初参加の方も考慮に入れないといけません。
初参加の一部の参加者はDiscordで実況などが流れていることを知らない人もいます。
そのため、セッション開始前からDiscordにログインし、表示しておく旨は何度も繰り返し伝えています。
画像:事前説明の様子。Discordでの投票方法が明記されている。
そして、セッションの開始時にも、
**「セッションのインタラクション設計としてDiscordを使う」**旨を改めてスライドで説明しました。
そして、全員で最初に投票の練習を行いました。
画像:1. 2. 3. 4. のいずれかのスタンプに版に反応するだけ、という簡単なもの。
心理的なハードルを極限まで下げようと設定しています。
この時点で、オフライン+オンラインの参加者合わせて、8割程度の人とのパスが確立できました。
ゆとり
セッションの内容を参加者全員で作る、という形式をとりました。
※なお、このセッションは過剰にやっています。
上記のような投票を合わせて3回行い、得票数の多いふりかえりの手法を紹介していくというスタイルです。
44手法を準備していきましたが、紹介したのは17手法。
投票が特に多いものに関しては1分類あたり2~4手法を紹介して、
参加者の見たい・聞きたいものを重点的に作り込んでいます。
また、現地の反応を見ながら紹介する手法を変えていくことで、
その場にいるからこそ味わえる、セッションを一緒に作り上げている感覚を大事にしました。
また、オンライン側での質問も即時拾っていきます。
私が解説をしている間に出てきた質問をピックアップし、私に対して投げかけます。
そして、その解説を私がすることで、その場その場でセッションを変化させて作り上げていきます。
実況を実況する
オンライン参加ではありがちな問題もあります。
自分は実況したり感想を書いているものの、周りに人がいないためなんとなく一体感がない、というものです。
途中途中ではKANEさんがうまく拾うため、呟けば反応され、場と繋がれます。
また、セッション最後に「やってみたい手法は?」という問いかけを投げ、繋がりを強固にしました。
回答してもらうなかで、書いていただいた内容を私の方で言葉で実況しています。
図:実際にDiscordを見ながら読み上げつつ、セッション中にコメントをしていっています
このようなプラクティスを組み合わせながら、双方向セッション設計を行いました。
今後の課題
問題としては、
- ①DiscordやTwitterなどに流れている情報が私自身が追えないこと
- ②画面を切り替える必要がある人にとっては、実況が見えない
という2点です。
①に関しては、ふりかえり実践会 や 技術書界隈を盛り上げる会 などのオンラインオンリーでのイベントでは出来ています。
それらでは、OBSで「画面上にすべてを表示するスキームが整っている」状態を作り上げています。
画像:オンラインイベント「技術文章の品質を上げるヒント」の様子
これは、セッションのスライドを映すだけでなく、実況などを現地でも1画面上に見えるようにしておくというものであり、②の解消にもつながります。
オンラインのカンファレンス・勉強会ではこうした画面設計をしているものも(ごく一部)あります。
ただ、今後オフラインとオンラインの融合していくのを考えると、
自分でもオフライン・オンラインに限らず、そうした画面設計を出来る・作れるようになっていけるほうが、
登壇者にとっても参加者にとっても満足度の高いセッションが出来上がるのではないかと考えています。
双方向セッション設計のスキルを身につけられたのはなぜか
ここまでの設計がRSGTという大きなカンファレンスで出来たのは、
2020年にふりかえり実践会 や 技術書界隈を盛り上げる会などで50回以上にわたるYouTubeLive配信を重ねてきたからだと思います。
いきなりやろうとしても多分うまくいかなかったはず。
これらの会を作ってくれたKANEさんと、応援し続けてくれた参加者の皆さんに感謝いたします。