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(レポート)基調講演「アジャイルと現場力」

この記事について

2021年5月12日に開催された「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代のアジャイルマネジメントセミナー」のセッションレポートです。
基調講演「アジャイルと現場力」のセッションを聞いた、まとめや感想です。

イベント・セッションの思い出しにお使いください。

チーム参加してきました

aslead Agile のチーム「オキザリス」にて参加してきました。
チーム4人中、3人で参加して、その場で実況しつつ、記事も作っています。

講演概要

アジャイルが成功するために必要なのは、メンバーひとり一人が自発的に考え、判断して動く自律型組織です。それはまさに私が長年提唱している「現場力」と同様のコンセプトです。私は日本企業が競争力を取り戻し、存在感を高めるためには、「現場力」の強化が必要不可欠だと思っています。今回の講演では、アジャイルと「現場力」の関係性に触れ、どうすれば「現場力」というケイパビリティを高めることができるかについてお話したいと思います。

登壇者

株式会社シナ・コーポレーション代表取締役 遠藤 功 様

三菱電機株式会社に約10年間勤務。その後経営コンサルティング業界に移り、約30年間約50社のプロジェクトに従事。
現在はフリーで社外取締役などを実施。

アジャイルと現場力

水と油みたいに聞こえるかもしれない。
でも、これは同じ言葉だと思っている

社員ひとりひとりが自主的に自発的に行動する「自律型の組織」を目指すという意味では、「アジャイル」「現場力」はどちらも同じ方向性のことを言っている。

日本の企業は何をもってグローバルで勝っていくのか?

  • 強いリーダーシップ?
  • 卓越した・天才的な個のイノベーション?

これらで勝つのは相当難しい。
行きついた結論は「現場」で勝つこと。
現場の力・ポテンシャル(現場のひとりひとりの創造性・実行力など)は日本の競争力の源泉であって、これを引き出さないと勝てないと思っている。

こういった現場力が日本に今あるんだろうか?

「現場力」のイマ

平成になって、日本は色んな意味で現場力を失ってしまった。
日本の製造業でも過去にはなかった品質問題が出てきたり、大きな事故を起こしてしまったり、サービス業でもクレームを起こしてしまったり、というのが見受けられるようになってきた。

現場力を見直さないと、現場力を復権できないと思った。
そこで、「現場力を鍛える」という本を2004年に出した。

現場力は最初からあるものではなく、鍛えないと得られないもの

人は、目の前のことをこなすだけでいいと思ってしまう。
自分たちで創意工夫をしようという現場はない。言われたことをやる現場が当たり前。
でもそれじゃだめ。

現場を基点にしながら、色々工夫をして、アイデアを出して、効率性や生産性を高めていく努力をする「能力」を磨いていく必要がある。

これは「組織をアジャイルにする」ということと同じ。
組織を活性化し、一人ひとりが創意工夫をできるようにする。

DXというバズワードがあるが、DX化しても競争力が上がるわけではない。
現場力を高め、アジャイルに向かっていかないと、競争力は上がっていかない。

時代背景を含めて、アジャイルと現場の話をしていきたいと思う。

今を生き抜くために

VUCAの時代

不安定で先が見えないことが常態化している。
これがここ6年前くらいから言われていたが、コロナの影響になってはじめて「VUCAってこういうものなんだ」とわかってきた。

正直何が起こってもびっくりしちゃいけない。
スピーディに対応していく経営が求められている。

アジリティの高い経営をしていかないと、VUCAの時代は生き抜けない。

コロナ・ショック

「移動をしちゃいけない」という移動蒸発は需要蒸発に繋がり、キャッシュ蒸発、雇用蒸発へと少しずつ動いていくだろう。
IMFの予測では世界で12.5兆ドルの所得が喪失され、格差が広がっている。
これはまた別の意味での問題を私たちに突き付けてくるはずだ。

この状態はなかなか元には戻らず、弱肉強食の世界へ移っていくだろう。
ただし、新しいビジネスも生まれてきている。
こういうものにいかに取り組んでいくかが求められている。

生き残るためには

未来は読めない。
「中期の計画をやめよう」という会社も増えてきた。3年後の計画を立てても意味がなくなってきた。

ある会社では、長期のゴールは出しているが、毎年毎年見直していくようになった。これもVUCAの経営。
中計を出してもコミットは難しい。

とはいえ、未来の読めない中での経営では「ゴールがいらない」わけではない。
未来が見えないから環境に振り回されるのではなく、10年後どこに行くのか、10年後のあるべき姿はなんなのか、を定めて着実に動いていくということが必要。

中期の経営計画は不要だが、長期のビジョンは必要になる。

未来像は見えない中で、過去の答えは参考にはなるが、答えにはならない。
だからこそ、実行しながら答えを見出していかないといけない。

早く失敗して、学習して、前に進んでいく。これがアジャイル。

100点満点の答えを出しているうちに環境は変わるのだから、60点で作っていかないといけない。
これが、日本の企業では出来ない。

多くの企業で「完璧主義」「減点主義」によってアジャイルが棄損されている。
アジャイル的な組織になりたいという気持ちはあるけど、これらの主義がはびこっていて、行動が伴わない会社が多い。

どうやったら組織風土を変えていくか?
どうやったら減点主義的な制度を変えられるか?

これらが組織でアジャイルが根付いていくうえで必要なことになる。

未来をどのように実現するか?

10年後のありたい姿・あるべき姿(理想)を描きましょう。
周りが不透明だからこそ、経営者の想い・ビジョンがとても大事になる。
これは、個人の主観であり、環境とは関係ない

どういう会社になりたいか、を経営者が示す。これが求心力に繋がっていく。

ただし、現状と理想にはギャップがある。
このギャップをどう埋めていくか?というときに、多くの日本企業は「Present-Push(できることをやっていこう・階段をこつこつ登っていく)」ことをやってきた。

ただし、今の現状と理想は不連続であり、こつこつ積み上げてもできない。
「Future-Pull(将来を描いて、ダイナミックに・大胆に変えるものは変えていく)」が必要になっていく。これは日本の企業は不得意だが、やっていかないといけない。

Future-PullのアプローチのことをBackcastingという。

この経営を試行していかないといけない。

トヨタのBackcasting

トヨタはこんな状況でも利益を上方修正している。
今のトヨタの姿は2000年(20年前)から始まっている。

2000年にGlobal Fifteen(世界で15%のシェアを取る)という言葉を出し、このために何が必要なのかという骨太な戦略を打ち出した。

例えば

  • 日本に固執せず、世界展開を加速していく
  • 世界中に工場を作っていく
  • 日本の現場力を世界に広げていく
  • 技術をデファクト化していく
  • 「レクサス」を展開する

など。
世界一になるために必要な、大胆かつダイナミックな施策を打ち立てて、着実に成功してきた。
こうして、世界一位の企業になった。

今、トヨタは「MaaS(Mobility as a Service)会社への変身」を掲げている。

これまで持っていたエンジンの強みが生かせない時代が来る。部品を組み合わせれば誰でも使えるような、PCのようなものに変わっていく。
移動手段・サービスそのものを提供できるようになるために、Google、ソフトバンクとのアライアンスや、スマートシティの実証実験、住宅事業の統合など、大胆かつダイナミックな施策を実行している。

未来のことを実現するために、今何ができるかを考えている。それがBackcastingの経営だ。

今、日本企業に求められていること

生まれ変わる(Re-born)ことが求められている。
昭和の経営から脱却する。
今までも変わらなきゃいけなかった。でも、できていなかった。
コロナに直面して、まさに生まれ変わるラストチャンスだ。

コロナ・ショックではなく、コロナ・チャンス

生まれ変わることに必要なこと

一つは「戦略」。
自分たちはどういう価値を届けるのかという「価値の特定」をして、「価値を再定義」する必要がある。

もう一つは「オペレーション」。
戦略を実行できる組織の能力を鍛えるということが論点となる。

価値の再定義とは

「自分達とは何者なんだろうか?」を再定義すること。

ドイツ鉄道の例

  • これまで:Station to Stationの「トレインオペレーター」
  • これから:Door to Doorの「モビリティマネージャー」

スマホ一つでレンタカーも鉄道もすべて予約ができる。
デジタルを使って一貫性のあるサービスを提供できる会社に生まれ変わろう。
色んな移動手段を統合化しながら提供する会社へと変わっていこう。

これが価値を再定義する一例。

SOMPOの例

安心・安全・健康のテーマパーク。
保険なので「安心」は今までやっていたが、「健康」を加えた。
人口は減っていくので、保険の利用者は減っていく。
自動車の利用者も減っていくため、自動車保険の利用も減っていく。
自動運転技術により、事故も減っていく。

健康のニーズは増えてきている。
だから、「保険」が必要ないほどの安全・安心・健康な社会を作っていくんだ。

「昔、SOMPOは保険の会社だったらしい」と言われるほど、自分自身を破壊して、新たな挑戦をしていく。

SOMPOは2016年に介護事業に本格参入。
複数の会社を買収し、SOMPOケアに統合された。現在、業界2位になっている。
日本では保険の需要は伸びないので、米国の保険会社を買収した。この会社は「農業分野での保険」というこれからの食に関わる。
2017年にはサイバーセキュリティ事業を展開開始したり、2019年にはパランティア(ビッグデータ解析ソフト大手)と合弁会社を設立し、リアルタイムデータ分析を始めた。パランティアが欲しいのはSOMPOの持っているリアルデータだった。パランティアからすると非常に魅力的に見える。

こうした価値の再定義も必要だが、それだけでは「必要条件に過ぎない」と思っている。
いくら価値を再定義しても実行しなければ意味はない。

競争力はどこにあるのか

戦略1割、実行9割。
戦略はもちろん大事。
でも、実行できなければ戦略は絵に描いた餅で終わる。

実行の当事者はあくまでも現場だからこそ、強い企業は「非凡な現場」を作る。
非凡な現場だからこそ、どんな戦略も実行できるようになる。

「ビジネスモデルで先行し、現場力勝負に持ち込む。日本企業が世界で勝つための戦略はこれしかない」(コマツ 坂根正し弘顧問)

コマツも中国企業にビジネスは真似されてきている。
ただ、ビジネスモデルを真似されたとしても、「実行力」でコマツは勝つんだ、と信じている。
常にビジネスモデルで先行する努力はしないといけないけれど、現場力を高めることは必要だ、と言い切っている。

戦略は常にアップデートしないといけない。でも、戦略はいつか真似される。
勝負は「現場力」に移っていく。

実行の時代

卓越した実行能力を持つ企業のみが生き残る。
戦略はマネできても、ケイパビリティは簡単にはマネできない。

その中でも最も重要なケイパビリティがアジリティ。
とにかく俊敏に動いてみる。まずは60点でいいからやってみて、早く失敗して早く学ぶ。
そうした組織に変わっていく必要がある。

文化とか風土を変えていく。

いくら現場がアジャイルでやりたくても、上司が完璧主義で100点満点じゃないとGOサインが出なかったり、
マネージャーが失敗すると減点してくるからできない。
そういう制度や風土を、時間がかかるけれども変えていく。
それがエンタープライズアジャイルで求められていることだ。

ポストコロナで最も大切なこと

現場力。
実行を担っているのは現場であって、現場のアジリティをどう高めるか、

SOMPOのスプリントチーム

DXを「手作り」で推進するチーム。
事業会社から「こういうサービスを作りたいんだ」という要望に対して、きわめてクイックに対応できるチーム。
1~2週間で機能設計し、継続的に改善していけるチーム。

トヨタでいうと「カラクリチーム」。

アジャイルになるためにはこういった仕組み・仕掛けが絶対に必要。

現場に「逆ピラミッドの三角形」を動かす

経営陣-本社-現場のピラミッドの三角形ではなく、
現場-本社-経営陣の逆ピラミッドの三角形にする。

現場主導で動いていく。
そして経営陣は支援していく。

現場こそが競争力のエンジンとなる。
こうした組織を作っていくことに、可能性がある。

イオンやヨーカドーが上手くいっていない。これは、本部主義だから。
本部主義では回らない。
個店主義でやるにしても、現場のケイパビリティがないため耐えられない。

これらよりも1/10しかないローカルスーパーのほうが、活性化している。
ローカルスーパーのほうがアジャイルな形になっている。
大きな個店では、アジャイルな形になっていけていない。

「生まれ変わる」とは

今がラストチャンスだ。
「生まれ変わる」とは「未来に選ばれる会社になる」ということ。

今お客様から選ばれているからといって、未来に選ばれているとは限らない。
未来に選ばれるために、自分たちの価値はなんなのか、それを実現するためにどういうケイパビリティをつくらないといけないのか。
それをスピーディに実現する企業にならないといけない。

感想

価値・あるべき姿を経営として、組織として再定義する。
インセプションデッキやOKRなど、アジャイルなプラクティスとして様々なものが世の中には存在し、
私も自分のチームや事業の目標を立てることはありますが、
まだまだ未来の姿の解像度が低かったのかな、と感じています。
どうしてもPresent-Push型の思考になりがちなので、意識的に行動を変えていかないといけないとも感じました。
そういう意味では(最近学んだ)OKRがいい感じにマッチしそうなので、がっつり使っていこうと思いました。

経営層やマネージャー層への強いメッセージ性のある講演の仕方も、非常に参考になりました。
自分のプレゼンスタイルにも、こういう形にしてみる(変化を付けてみる)のも面白いかなぁ。

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