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参加型・意思決定のための13つのファシリテーティブリスニングスキル

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この記事の目的

全員参加型の「場」で意思決定を促すための「聴く」ためのスキル/テクニックを13個紹介します。

Facilitative-skills-for-participatory-decision-making-Own-image-based-on-content-by.png
出典:https://www.researchgate.net/figure/Facilitative-skills-for-participatory-decision-making-Own-image-based-on-content-by_fig2_324086495
原典:Facilitative skills for participatory decision-making. Own image based on content by Kaner et al.

13個のスキルの説明は、インターネット上からはCSP Fast Pathのページからアクセスできます。
13 Techniques for Honoring All Points of View

ファシリテーター Advent Calendar 2020 の非公式の2日目の記事でもあります。(今回乗り遅れました…。)

チームファシリテーターとしてこれまで活動してきた視点を使って、これらのテクニックを簡単に解説していこうと思います。

Facilitative Listening Skill

議論や場を促進させるための「聴く」ためのスキル/テクニックです。会議を進行したり、イベントを運営したり、ワークショップを実施したり、日常で議論をしたり、1on1をしたり、というときに様々な場面で使えます。

13個のテクニックには以下のようなものがあります。

# 名称 概要
1 Paraphrasing(言い換え) 発言者の思考や発言を言い換える
2 Mirroring(ミラーリング) 発言者の発言をそのまま言い直す
3 Drawing People Out(引き出す) 発言者の発言の認識のズレをなくす
4 Stacking(スタッキング) 発言者の順番を決める
5 Tracking(トラッキング) 議題に名前を付ける
6 Encouroging(活性化) 全員からの発言・意見を促す
7 Using the Clock(時計を使う) 発言の少ない人の発言を時間を使って促す
8 Making Space for a Quiet Person(静かな人に発言の機会を作る) 静かな人の発言を促す
9 Validating(バリデーティング) 意見を受容して俎上に上げる
10 Acknowleding Fellings(感情を認める) 発言者の感情を表層化させる
11 Empathizing(共感する) 発言者の意見に共感する
12 Balancing(バランシング) 意見の量・質のバランスをとる
13 Linking(リンキング) 離れた意見を関連付ける

これらのスキルを、私の経験を交えながら、効果を説明していきます。

1. Paraphrasing(言い換え)

To support a speaker when thinking out loud and allow them to review their contribution.

発言者が言葉に詰まっていたり、考えながら発言しているときに、ファシリテーターが言い換えるテクニックです。

  • あなたが言っているのは、○○ということですか?
  • ここまでの話は、○○という理解であっていますか?

言い換えをすることにより、発言者は自分の意見を客観視して意見を深めたり訂正したりできます。また、参加者全員に現時点の情報を整理して展開する役割もあります。

2. Mirroring(ミラーリング)

To (re)establish your neutrality as a facilitator.

発言者の言葉をそのまま「オウム返し」します。
発言者の姿勢や行動をミラーリングする手法もありますが、「傾聴」のためのスキルとしては、言葉をミラーリングするだけでも大丈夫です。

  • 「○○が××なんですよね」「なるほど、○○が××なんですね」
  • 「○○が××なんですよね」「××」

ミラーリングによって、一拍おいて発言者に考えさせる時間を与えます。また、ミラーリングされた発言者は、そこから話を広げていきやすくなります。2つ目の例のように、ミラーリングをする内容を絞ることで、(意識的に)そこから広げる話を選択することも出来てしまいますので、恣意的な話題の操作にならないように注意が必要です。

3. Drawing People Out(引き出す)

When a speaker is having difficulty expressing their idea or when the speaker is being vague or confusing, but feel they are being clear.

発言者の発言が参加者に伝わっていなかったり、ファシリテーターにとっても理解が追い付かないときなどに、話をさらに引き出す、深堀りをする質問を行います。

  • 「○○とはどういうことですか?」
  • 「○○をもう少し具体的に教えてください」
  • 「○○って例えばどういうものですか?」

このスキルによって、発言者と参加者の認識がズレていくのを防ぐことが出来ます。話の繋がり、広がりに少しでも違和感を感じた場合に使うとよいでしょう。一人の意見の引き出しに時間がかかりすぎることには注意が必要です。ホワイトボードや付箋などに議論を可視化してくことでも、認識のズレは防げます。

4. Stacking(スタッキング)

To create a sequence of speakers when multiple people want to speak at once on a topic.

意見を持つ人が複数いるときに、発言する順番を決めます。

  • 「Aさん、Bさん、Cさんの順に話してください」

順番を決めることで、「話せなくなるかもしれない」という不安をぬぐうことが出来ます。意見・発言力が強い人の順番には気を付けましょう。そうした人を最後に回すと、これまでの発言が蔑ろにされてしまう可能性があります。付箋を使って意見を平等にしたり、長く話さないようにコンパクトに話すように注意を促す、など別のテクニックと併用するとよいでしょう。

5. Tracking(トラッキング)

The facilitator simply names the multiple conversation threads that are going on simultaneously during a single discussion in order to make visible to the meeting participants the various discussions.

場に挙がっている議題に名前を付けて可視化します。議論が発散していくフェーズで、方向性を見失わないようにするために活用できるテクニックです。

  • 「ここまでで、○○と××という話がテーマに挙がっていますね」
  • 「○○と××という議題が上がっていると思っていますが、他に議題はないでしょうか」

意見が発散してきたり、考えながら話すタイプの発言者の場合に有効なテクニックです。現在の議題やゴールは、ホワイトボードの右上などに記載して、可視化しておくとよいでしょう。

6. Encouraging(活性化)

To coax additional contributions from members of the group without signaling anyone in particular. Facilitators use encouraging when the group needs to warm-up

発言者以外にも議論への参加を促します。場が温まっていないときに場を活性化させたかったり、多様な意見を集めたいときに活用するテクニックです。

  • 「他にも意見がある方はいませんか?」
  • 「他に何かアイデアはありませんか?」
  • 「他の角度からの視点の意見はありませんか?」

無意識的に最も使われやすいテクニックだと思います。場を温めるという意味では、クローズドクエスチョンで全員に答えてもらう(一言ずつでも発してもらう)というのも有効です。表情や場の空気から意見がありそうな人を読み取るのも重要になってきます。

7. Using the clock(時計を使う)

To provide a subtle cue to the quieter participants that if they want to contribute, the time is now.

発言の機会の少なかった参加者の発言を、「時間」を使うことで促します。

  • 「終わりまであと5分になりました。他に意見のある人はいませんか?」
  • 「あと60秒です。最後に言いたいことがある人はいませんか?」

発言の少ない人にそれとなく促すためのテクニックのようなのですが、日本人には向かないかもしれません。時間を示すことで、収束に向かわせたり、意見を切り上げるためには使えそうなテクニックではあります。個人的にはあまり使わないテクニックです。

8. Making Space for a Quiet Person(静かな人に発言の機会を作る)

To offer the participants who tend to be quiet, or prefer to gather their thoughts before speaking, a specific opportunity to participate.

頭の中で考え抜いてから話す人など、(意見が出ないというわけではなく)発言の機会が少なくなりがちな人に対して、発言の機会を設けるテクニックです。

  • 「○○さん、考えていることを教えてください」
  • 「○○さんはどう思いますか?」
  • 「○○さん、何か言い加えることはありますか?」

人によって思考のタイプは異なります。意見の出し方を観察することで、いろんな意見をすぐに発言する人もいれば、いろんな意見を頭の中で考えたうえで最も重要だと思う意見を最後に出す人もいることに気付くはずです。後者の人の意見は、発言のタイミングを逃してしまうことが起こりやすく、発言の機会を作ることによって、新たな意見を得ることができるようになります。
「Encouraging(活性化)」と似ていますが、人の特性や顔色・雰囲気などを読み取ることによって可能となるテクニックです。

9. Validating(受容して俎上に上げる)

To legitimize and accept a speaker’s opinion, point-of-view or feelings without agreeing they are “correct”. Validating is especially important when the speaker feels they are going to add meaning that might be considered r isky and\or controversial by their peers or management.

正しい、間違いといった評価をせずに、意見・感情を受け入れるためのテクニックです。

  • 「なるほど、あなたの主張は○○ということですね」

Active Listening, Laser Listeningで重要な「評価・判断せずに受け入れる」に近いテクニックという風に理解しています。原文では、「発言者が、同僚や経営陣によって危険であると見なされたり、物議を醸したりする可能性のある内容を追加しようとしていると感じた場合に特に重要」と書いてありますが、反対意見や危ない(と感じる)意見も、否定・批判することなく、一度議論のテーブルの上に載せるという手法だと思われます。
「Paraphrasing(言い換え)」や「Mirroring(ミラーリング)」といった発言者の意見を可視化するためのテクニックと、異なり、相手の意見を「受け入れる」というスタンスのことを示します。
テクニック名は英語が「Validation(検証)」となっていますが、日本語的には「俎上に上げる」が近いように思います。

10. Acknowleding Fellings(感情を認める)

When a facilitator infers emotions are impacting a discussion, ask the speaker (or participant) about the feelings they are experiencing. When meeting participants are consciously aware of their emotional state , this allows them to consciously choose how to respond to their emotions in a discussion rather than unconsciously react to them.

議論や意見に感情が影響を与えると感じた場合に、感情を聞き出したり、感情を代弁したりして表層化させるテクニックです。発言者が自身の感情を理解することで、感情に引きずられずに、自分の振る舞いを意識的に選択できるようになります。

  • 「あなたは今、○○のように感じていますか?」
  • 「あなたは今、どんなふうに感じていますか?」
  • 「あなたの発言から、○○のような感情を読み取ったのですが、そういう感情は持っていますか?」
  • 「不安や不満があるのではと察したのですが、いかがでしょうか」

このテクニックは、本人ですら気づいていなかった感情を表層化することが出来ます。「Mirroring(ミラーリング)」でも似たような作用は起こせるはずです。参加者が感情的になっている場などで、場に感情を表層化させることで、一度落ち着かせる効果も期待できます。

11. Empathizing(共感する)

When the facilitator feels the need to identify and share the speaker’s (or participant’s) emotional state.

発言者の感情に共感が必要だと感じたときに行うテクニックです。「Paraphrasing(言い換え)」や「Mirroring(ミラーリング)」「Validating(受容して俎上に上げる)」などには共感は含まれません。

  • 「なるほど、○○なんですね。私も同感です」
  • 「○○は、私にとっても嬉しいです」

ファシリテーターはあくまで中立の立場であり、場を促進するための役割ですが、共感によって意見をより引き出せたり、広げられたりすると感じた場合には使うとよいでしょう。
意識的に共感する/しないを切り替えるようにできると、場の意見や感情に引きずられすぎずにファシリテーションしやすくなると感じています。

12. Balancing(バランシング)

To broaden the discussion to include other (minority) perspectives that have not been expressed by group members. Balancing can be quite useful when a group has become polarized between two positions.

まだ発言の量が少ない人に対して意見を促したり、アイデアの方向性が偏っていると感じたときに逆の方向性の意見も引き出したり、とバランスをとるためのテクニックです。
私がよく使うのは、あえて逆の方向や別の視点を切り出して意見を促す方法です。
視点の切り替えにはこちらの記事を参考にしてください。

  • 「(発言の少ない人に対して)○○さんはどんな意見がありますか?」
  • 「(少数派の意見に対して)○○の意見については、他のアイデアはないでしょうか?」

たとえばふりかえりであれば、KPTをしている際に「Keep」よりも「Problem」のほうが多いな、と感じたときに、Keepを引き出してみる、というのもバランシングです。
意見の量をバランスさせたいのが目的ではなく、議論の方向性が偏って多様な意見が出なくなるのを避けることが目的だと思っています。

13. Linking(リンキング)

When a speaker provides a contribution that seems “off-topic”, give them the opportunity to connect their contribution to the discussion.

発言者の発言の内容が、これまでの議題からかけ離れていたり、論理の飛躍があるときに利用するテクニックです。どのような関連があるのかを聞くことで、発言者にとっても、参加者全員にとっても、その発言の内容に追いつけるようにします。

  • 「○○ということですが、先ほど話していた××とはどういう関連がありますか?」
  • 「○○と××のつながりをもう少し詳しく教えてください」

頭の中で論理が完結していても、それをうまく口には出せない(または出したと思い込んでいる)状態はよく起こります。そうした論理の飛躍や議論の飛躍をファシリテーターが感じ取って、繋ぎなおします。うまく繋がる場合もあれば、どこかに欠落があることが分かることもあるでしょう。私は、少しでも疑問に思ったら聞くようにしています。

スキル・テクニックを使いこなせるようになるためには

13個のスキルを全て習得するのは難しいように思います。また、訓練が必要です。
普段意識できていない、使えていないものを、1日1つずつ使ってみて、使ってみた結果をふりかえってみる。
そうして、少しずつ普段のファシリテーションの中で使えるようにしていく必要があるのだと思います。
是非、皆さんも日常の中でこれらのスキル・テクニックを使ってみましょう。

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