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ふりかえりをふりかえり、よりよいふりかえりを目指す

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はじめに

今回は「ふりかえりのふりかえり」の話をします。
ふりかえりの中で、場の設定と同じくくらい大事だと思っているものが、「ふりかえりのふりかえり」です。

ふりかえりでは、チームの成長やプロセスのカイゼンを行います。それだけではなく、ふりかえり自体のカイゼンを行なっていくことで、チームの成長をより加速させていくことができるでしょう。

この記事では、ふりかえりの10ステップのうち、最後の2ステップである「ふりかえりを終了する」「ふりかえりをふりかえる」の中で行う活動について詳細を述べていきます。
ふりかえりの10ステップについては、以下の記事をご参照ください。
ふりかえりのファシリテーションについて考えてみる

ふりかえりのふりかえりとは

ふりかえりの中で、またはふりかえり終了後に行う、ふりかえりの活動自体について見直すことを指します。
「ふりかえりのふりかえり」は、以下の観点で行います。

  1. ふりかえりの効果について
  2. ふりかえりの進め方について
  3. ふりかえりのファシリテーションについて
  4. ふりかえりの参加者の動きについて
  5. 今後の改善点について

上記の内容を、ふりかえりの最後の5-15分に全員で行なったり、ふりかえり終了後に希望者で集まってやる、またはふりかえりのファシリテーターが一人で行います。
この活動を毎回ふりかえりに合わせて行うことで、ふりかえり自身がよりチームの特性に合わせた、チームにフィットしたものに変わっていき、より効果の高いふりかえりを次回以降に行うことができるようになります。また、全員でフィードバックをしあうことにより、フラットに発言ができるような、心理的安全性を向上させる効果も期待できます。

よくある現場での問題点と、ふりかえりのふりかえりの効果

ふりかえりがマンネリ化していたり、なかなかKPTがうまくいかない、など。前者には、新しいふりかえりのやり方をみんなでやってみよう、というコミットがふりかえりの中で出来れば、次回のふりかえりがより楽しみになるでしょう。1つだけでもよいので、いつもと違うことをやってみる、というのを提案しやすいのも、ふりかえりの場ならではです。
後者は、いろんな現場でこの問題を耳にします。そもそもKPTのやり方がよろしくない場合も多いのですが、全員で「どこを改善したらうまくいくかな?」と話し合い、新しいやり方を試してみる、というのを習慣づけることにより、ふりかえりの回数を経るごとに、ふりかえりの進め方は改善され、洗練されていきます。また、ふりかえりのことを全員で考えることにより、自然とファシリテーターの目線が身につくようになります。タイムボックス(時間制限)内に簡潔に結論を述べるような意識が醸成されたり、相手の意見にも気を配る、といった行動が行えるようになります。

上記のような効果がある、「ふりかえりのふりかえり」。何も難しいことをする必要はなく、慣れないうちは2-3分あれば十分です。

まずは、かんたんなやり方について紹介したいと思います。

かんたんな「ふりかえりのふりかえり」- +/Δ(プラス/デルタ)

2-3分あれば行える、最もかんたんな手法です。ホワイトボードの半分に、縦に線を引き、+/Δの2つのマークを記載します。

+は「ふりかえりの中でよかったところ、続けるべきこと」
Δは「ふりかえりの中で改善すべき点、避けるべき点」をそれぞれ記入します。

全員に思いついた順に口頭で話してもらい、その内容をファシリテーターは+/Δのセクション別に記載していきます。
+またはΔのどちらかが、一定数の意見が出るか、それか時間切れによって終了です。
そして、ふりかえりへのフィードバックを全員で出し合ったことに対して、感謝の拍手をしてふりかえりを終了します。

ポイントは、ホワイトボードに記載している途中でも構わず意見を言いつづけてもらうことと、あくまで「ふりかえり」そのものに対するフィードバックであることを伝えることです。
これを毎回行うだけでも、ふりかえりの質は徐々に良くなっていきます。

「ふりかえりのふりかえり」の観点

この章では、前述したふりかえる観点を詳しく述べていきます。観点は以下の通りです。毎回全ての観点についてふりかえる必要はありません。必要だと思った観点について、全員またはファシリテーターがふりかえりをすればよいでしょう。

  1. ふりかえりの効果について
  2. ふりかえりの進め方について
  3. ふりかえりのファシリテーションについて
  4. ふりかえりの参加者の動きについて
  5. 今後の改善点について

ふりかえりの効果について

ふりかえりを行なったことによって、どんな効果が得られたか、どんな変化が自分やチームにあったか、という観点でフィードバックをしあいます。変化に気づいた場合は、その変化が良い方向なのであれば、その変化を継続的に起こせるようになるためにどうしたらいいかを話し合います。また、変化が悪い方向なのであれば、その原因はどうやったら取り除けるかを考えましょう。
単純にふりかえりへの感想を言い合うだけでも、共有された内容が参加者全員の頭の片隅に残り、次回のふりかえりの際に何かしら良い方向へと作用しようとする変化が生まれやすくなります。
真摯な意見を聞きたいのであれば、ふりかえりの費用対効果を問うてみるのもよいでしょう。時間に見合った効果がない、と思うメンバーがいるのであれば、どのように改善していくかを話すきっかけにできます。

ふりかえりの進め方について

アクティビティの進め方や、意見の出し方、議論と対話の方法、参加者の時間意識、など。ふりかえりの進め方について、何かしらの改善ができないかを話し合います。もちろん、前回からここが良くなった、という「よかった点」を共有するのも非常に重要です。このふりかえりの進め方を全員で話し合うことにより、よりチームの特性に応じた、チームのためのふりかえりの手法が出来上がっていきますす。また、ファシリテーター自身がこのふりかえりを行うことによって、ファシリテーションの技量の向上や、ふりかえりの本質(なぜこのアクティビティをやっているのか、やったほうがいいのか)というのを理解するよいきっかけとなります。

ふりかえりのファシリテーションについて

ファシリテーターへのフィードバックを行います。また、ファシリテーターからのフィードバックを行なってもよいでしょう。または、互いの意見の促し方について、よいところ、改善できるところを話し合います(こちらは前述の「ふりかえりの進め方について」と同様です)。

ファシリテーターは、孤独です。基本的にファシリテーションへのフィードバックを得る機会は、相当に意識をして活動をしていないかぎり、仕事上では0に近いでしょう。
(※恐らく、ファシリテーションを生業にしている人ほど、このフィードバックは少なくなる傾向にあり、フィードバックを心から欲します。ただ、皆さんのほとんどはエンジニアのはずなので、これはまた別のお話...)
このファシリテートしたことに対してのフィードバックを素直に受け取ることができるのが、「ふりかえりのふりかえり」の場です。もらった意見を真摯に受け止め、次に活かしましょう。
また、ファシリテーターは、参加者とは一段違う目線でふりかえりを見ており、参加者とは違う気づきがあります。その気づきを参加者へとフィードバックするのもよいでしょう。

ふりかえりの参加者の動きについて

お互いの意見の出し方や、話し方、問いかけのクセなど、よいところ、改善できそうなところを共有し合います。自分自身では気づいていなかったような強み、弱みに気づくことができることもあるでしょう。
よく話題として上りやすいのは、時間を意識してアクションを出す方向に向かっていったか、というものです。大抵はネガティブな意見が出ますが、意見が共有されると、次はよりよくしようという意識が生まれます。意識が生まれるだけでも、ふりかえりは少しずつ改善されるほか、他の参加者やファシリテーターの気持ちも考えてみる、という互いを尊重するMutual Respectの精神も徐々に情勢されます。相互理解によるチームビルディングの効果もあります。

今後の改善点について

こちらは、チーム全員でやる場合は、余裕があって話し合えればいいや、レベルで十分です。ふりかえりの中でチームに対してのアクションは出しているはずですので、それに加えて新たなアクションを作ってしまうと、アクションが行われなくなる危険性も孕みます。前述までの目的に沿って、よかった点や問題を共有するだけでも、徐々にふりかえりは良くなっていきます。ふりかえりに慣れているチームや、抜本的にふりかえりのやり方を改革してみたいチームは、こちらを重点的に行い、次のプランを練るとよいでしょう。
ふりかえりのファシリテーターをした人は、ぜひこのふりかえりを一人で行ってみていただけるとよいかと思います。「次はどうすればより意見が出やすくなるのかな」「どこを変えると面白く、楽しくなるかな」というのをチームに寄り添って考えることにより、ファシリテーターのスキル向上だけでなく、他のチームメンバーへの理解も深まります。また、ここでいろいろなことを考えて実践する、というのを繰り返すことで、ファシリテーションの瞬発力が上がり、不測の事態でも落ち着いて対処できるようになっていきます。

ふりかえりのふりかえりの方法

じゃあどうやるの、という所ですが、確立されたアクティビティはいくつかあるものの、前述の観点についてブレストするだけでも十分な効果は得られます。
私の場合は、通常時は+/Δを好んで使っています。がっつりふりかえりたい場合は「費用対時間効果(ROTI)」というアクティビティを使ってふりかえりを行っています。
どちらも書籍「アジャイルレトロスペクティブズ」に載っていますので、もし興味があれば読んでみてください。いろんな手法については、また筆が乗ってきたら書こうと思います。
個人でのふりかえりのふりかえりは、ご存知の方はいらっしゃいますが、twitterに放流して自分のふりかえりネタにしています。
もし気になる方は#ふりかえりでtwitter検索していただければ、色々出てくるはずです。

おわりに

ふりかえりの場作りと同じくらい軽視されがちですが、同じくらい大事なのがふりかえりのふりかえりです。チームの成長を加速させるためのふりかえり自体を改善していくことで、さらに加速させることができると思います。
大事なのは、義務としてやるのではなく、「楽しく」やる、ということです。楽しんでふりかえりのふりかえりを行い、自分やチーム、そしてふりかえりの成長をみんなで喜びあうことができたら最高です。
みなさんも、よいふりかえりライフを。

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