はじめに
はじめまして。森です。
普段、チームファシリテーターとして、ふりかえりやチームビルディングの話を色んなところでさせていただいています。
今回は、新人が行った開発研修の総まとめとして、学びをふりかえる活動を3時間で行いました。
手法は プロジェクトのふりかえりの進め方の例 をベースに、前回の改善点を加えたり、他のアクティビティからもいろいろプラクティスを抽出して付け加えています。
前回からの変更点は太字で記載します。
今回のふりかえりの前提
今回、実際に行ったふりかえりの前提です。
- チームに関する前提
- 研修が完了していること
- チームは解散していること
- チームはこれまで毎週ふりかえりを行っており、ふりかえりの目的や基本的な進め方は理解していること
- ふりかえりの内容に関する前提
- 対象期間は4ヶ月分
- 参加者は開発メンバー4名
- 時間は最大4時間
ふりかえりの目的
今回のふりかえりの目的は以下の3点。
- 研修を経て得た学び・気づきと、成長を確認・自覚し祝いあう
- 現場で使いたいエッセンスを抽出し、Actionを実行することで確実に成長へとつなげる
- 来年の新人へつなぎたい想いや、TIPS、カイゼンをリストアップする
事前準備
以下の道具を準備します。
-
付箋(サイズ・色別)
- 小サイズ(75×50mm):1種類
- 中サイズ(75×75mm):3種類
- 大サイズ(75×100mm):4種類
- ペン(黒):人数分
- ホワイトボードマーカー(各色):2-3本
- ホワイトボードまたはどこでもシート
ふりかえりの構成
ふりかえりの進め方は、以下のアクティビティをまぜこぜにして作ったものです。
- Story of Story
- Timeline
- 喜怒哀
- ORID
- アクションプランの作成
- ポジティブふりかえりマッピング
以下のように進めていきます。
- ふりかえりの目的の共有
- グランドルール説明
- アイスブレイク
- 道のりをふりかえる
- 学び・成長を確かめる
- 教訓から得られたアクションアイデアを考える
- アクションプランを作る
- Celebration
1. ふりかえりの目的の共有(5分)
今回、なんのために集まってもらったのかをチーム全員に説明します。
また、目的とともに、何を持ち帰ってもらいたいかを説明します。
目的は以下のとおりです。
- 研修を経て得た学び・気づきと、成長を確認・自覚し祝いあう
- 現場で使いたいエッセンスを抽出し、Actionを実行することで確実に成長へとつなげる
- 来年の新人へつなぎたい想いや、TIPS、カイゼンをリストアップする
持ち帰ってもらいたいものは以下のとおりです。
- アクションプランを立て、次回以降のプロジェクト・プロダクトのコンテキストに合う形に変化させて試してみることができるようになっていること
2. グランドルールの説明(5分)
以下をグランドルールとします。
- この場の発言・内容は評価に一切関係しない
- 個人への攻撃・批判はしないこと。ただし、チームのためであるのであれば、事実や思ったことを真摯に記載し伝えること
- どんなにくだらないことでも、気兼ねなく自由に発言すること。そしてその発言を妨害しないこと
- 過去の失敗を恥じたり咎めるのではなく、失敗できたことを良しとし、祝いあうこと
- 未来の自分のため、未来のチームメンバーのために、全力でふりかえり、全力でアクションを考えること
上記グランドルールは通常張り出しますが、今回はもともと関係性の出来ているチームのため、口頭での説明のみとしました。
3. アイスブレイク(10分)
「このプロダクトの経験のなかで、最高の瞬間はいつですか。また、それはなぜですか。」
3分で考えてもらい、7分で共有します。
4. 道のりをふりかえる(60分)
研修の道のりをふりかえります。
黄色の付箋で、どんなことが起こったのかを書き出します。
まずは事前準備として、時系列順にタイムラインを引きます。
時系列は大体でOKです。
写真:どこでもシート×6を使って大きなタイムラインを作れるようにしました
また、その起こったことに対して、自身はどう思ったのか・感じたのか、を付箋で記載します。
付箋の色は以下のとおりです。
- 黄色(小):起こったこと(事実)
- 黄色(中):どう思ったか・感じたか/嬉しい・楽しいという感情
- 青色(中):どう思ったか・感じたか/悲しい・つらいという感情
- 赤色(中):どう思ったか・感じたか/危ないと感じたとき
60分のうち、最初の20~30分はひたすら事実を貼り出し続けます。
思い出したものから片っ端から貼っていき、ほかの人の出した意見を見ながら、思い出しを広げていきます。
思い出しができなくなったら、PCを開いて情報を拾ってもOK、という話はしましたが、今回は誰もPCから情報を拾うことはせず、ずっと情報を貼り続けていました。
もし書いた内容がわからないものがあれば、すぐに共有して補足をするように促します。
事実の貼り出しが落ちつい着たら、感情を書いていきます。この感情を書く際には、事実の近くに貼りだしていきます。
事実は中央に張り、感情は事実の上下に並べていきます。
-
引き出すための問い
- そのときどう思いましたか
- なぜそう感じたのですか
- どんなときにうれしかったですか
- 誰かへ感謝していることはありますか
5. 学び・成長を確かめる(60分)
道のりの中で感じたことから、個人とチームにとっての気づき・学び・教訓を引き出します。
気づき・学び・教訓も付箋で記載します。
付箋の色は以下のとおりです。
- 黄色(大):個人にとっての気づき・学び・教訓
- 赤色(大):チームにとっての気づき・学び・教訓
20分程度は各々が道のりを眺めながら、貼りたいように貼っていきます。
意見を出すのが落ち着いてきたら、全員で貼った意見を眺めて、意見を深めていきます。
意見を深めるときに、全員で1つずつ対話して深めていくのも効果的です。その場合は、+20分程度余裕を持って行います。
-
引き出すための問い
- 自分の中でどんな変化がありましたか
- 他者・チームにどんな変化がありましたか
- チームメンバーの話を聞いて、あなたはどう思いますか
6. アクションアイデアを考える(40分)
学びのなかから、次のプロジェクト・プロダクトで活かしたり、チャレンジしたり、改善したいものをピックアップし、アイデアを出していきます。
アイデアはどんなとっぴなものでもかまわない、ということを伝えたうえで、付箋にアイデアを書き出していきます。
付箋の色は以下のとおりです。
- 青色(大):アイデア
こちらも20分程度、各々アイデアを出していき、残りはアイデアを共有しながら深めていきます。
以下の観点でアクションを考えます。
- SMARTに書けるとよい
- 次回もっとうまくいくためによい方法がないか、を考える
7. アクションプランを作る(10分)
次の業務や、自身にとって活かしたいアクションをできるだけ具体的に(SMARTに)記載します。
アクションの数は多くても5個、優先順位をつけることを制約として伝えます。
これは付箋に書いてもいいですし、A4用紙や自身のよく使うメモ帳などでもよいでしょう。
今回は付箋で記載して、全員で共有していただきたかったため、大き目の付箋で記載しました。
以下のような観点でアクションを作ります。
- SMARTに
-
一歩踏み出すための直近のアクションと、それを継続的に行うためのアクションをそれぞれ設定する
- (例:一歩踏み出す)まずは現時点で持っているタスクxxxで不明なところがあり、コミュニケーションを避けていたため進んでいなかった。それを、明日yyyさんに質問をして自分なりの理解をしたうえで、yyyさんに理解を共有し、認識齟齬がないようにする
- (例:継続的/短期)上記の考え方を他にも使えるよう、同じような行動を来週2回以上とる。できたかできなかったに限らず、その結果は全員に共有する。このふりかえりに参加した人たちはそれに対してフィードバックを必ず行う。
- (例:継続的/中長期)上記を1ヶ月Tryしつづける。その結果、自分の考えがどう変わっていったかを、1ヶ月後のmm/ddに自分でふりかえりをし、その結果を全員に伝える。そして、そこで出たNext Actionを次は継続的に行う。
8. Celebration(15分)
全員で1人ずつアクションを共有します。
共有する際には議論やコメントは控えて、お互いのプランの共有に集中します。
そして、1人の共有が終わったら、その人のこれまでの成長と、今後の成長を祝い、全員で拍手します。
そうして全員が1人ずつ共有を済ませていき、全員分が終了したら、ふりかえり終了です。お疲れ様でした。
写真:アクションを一人ずつ発表していきます。終わったら拍手します。
写真:ふりかえりの全体像。なかなかに壮観です。一番上の付箋がNext Actionです。
設定したアクションは、チームやインストラクター(教育者)へ連携し、実施しやすいような環境を整えます。また、ディスプレイに付箋を貼っておくなど、いつでも見える場所に貼っておき、できたらはがすことで、確実な成長を促すよう伝えました。
ふりかえりをふりかえる
前回の改善点だった、最終形の見栄えを考慮したことで、途中途中での意見出しもやりやすかったように感じられました。
また、「ポジティブふりかえりマッピング」のベースとなる考え方を使うことで、より前向きな意見を出すことができるようになったと思います。
2回使ってみて違和感なく使えるふりかえり手法であり、難しいところもないため、安定して使えるのかなぁと。
ぜひ、プロジェクトの終わりや区切り目などで使ってみていただけると幸いです。