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ふりかえりのあるべき姿は何か?

Last updated at Posted at 2018-10-26

きっかけ

きょんさん(@kyon_mm)のこのツイートから。

普段からファシリテーションやふりかえりについてポストしている私には、衝撃的でした。
・「なにをすべきか」というのが語られているのか?
・「どうあるべきか」というのをどう自分たちで見つけていくのか、というのが語られているのか?
この2つの問いは、ふりかえりを広めている私にとって、原点に立ちもどれる非常に良い問いですし、言語化がうまくできていなかった部分だな、と。

1週間ほどずっと考え続けて、筆を持つ時間が持てたので、私の現時点の断面の考えをまとめていきたいと思います。

この記事では、「ふりかえり」に関して言及していこうかと思います。

アジャイルにおける「レトロスペクティブ」のよくある誤解

「レトロスペクティブ」は、アジャイルのフレームワークの1つである、「スクラム」の中のイベントの1つとして定義されています。
スクラムガイド に記載されている内容を抜粋です。以下のように定義されています。

• 人・関係・プロセス・ツールの観点から今回のスプリントを検査する。
• うまくいった項目や今後の改善が必要な項目を特定・整理する。
• スクラムチームの作業の改善実施計画を作成する。

スクラムを行うチームにおける非常によくある誤解が、1つ目の「人・関係・プロセス・ツールの観点から今回のスプリントを検査する。」の部分です。
多くのチームが、レトロスペクティブのなかでプロセス、ツール、成果物、障害に着目し、人や関係にフォーカスを置くのを忘れています。これは、スクラムを学ぶうえで、他人からレトロスペクティブを見て学んだり、人づてに聞いたり、また、Googleで調べるうちに、「プロセス(特に問題点)を改善する行為」というバイアスが形成されているのだと考えています。
実際、私も過去はそう思っていましたし、Googleで「ふりかえり」「スクラム レトロスペクティブ」などで調べて出てくる記事の殆どが、「プロセスを改善するためのふりかえりの方法」に言及しているのもあり、そう思い込んでしまうのも仕方がないでしょう。
レトロスペクティブは「プロセスを改善するもの」という誤解が生じやすい、かつ、対象をアジャイルやスクラムに限定したくないという思いから、私はあえて「ふりかえり」という単語を使い続けています。アジャイルにおいては、人や関係にフォーカスする、というのを大事にしてこそ、よりよい「レトロスペクティブ」が始められるのでは、と考えています。

ふりかえりのなかですべきことはなにか

以後は「レトロスペクティブ」ではなく「ふりかえり」という単語で述べていきます。
「ふりかえりですべきことはなにか?」という私の回答は以下の3点です。

  • 立ち止まる
  • チームを成長させる(関係の質を向上させる)
  • プロセスをカイゼンする

ふりかえりの3つの目的、3ステップ」として、上から順にすべき、という風にワークショップ等でお話しさせていただいていますが、プロセスのカイゼンはあくまで最後です。関係の質が高まっていない状態でプロセスをカイゼンしようとしても、カイゼン行動自体が行われなかったり、個別最適に向かってしまったり、単発の改善で途切れてしまいがちです。
そのため、まずはなんでも言い合える、チーム全員がチームのためのアクションを考える前段階としての「関係の質」を高めるための施策を、毎週かならず立ち止まることの出来る時間である「ふりかえり」の中でやってしまいましょう。

と、ここまではあくまで「著者の思うやるべきこと」なのですよね。これは、いろんなチームのふりかえりを見てきて、その結果見えてきた経験則から来るものでもあります。では、そのチーム1つ1つが、ほんとうに「ふりかえり」ですべきものは何か。ふりかえりのあるべき姿はなにか。その答えにはなっていません。

チームがふりかえりですべきものはなにか

色々考えたのですが、「これ」というものはありませんでした。100チームあれば、100チームだけ違う色があるし、チームの分だけ目指しているものもちがいます。そのなかでのふりかえりの立ち位置も、全てのチームで一致するわけがありません。

と匙を投げてしまうのも嫌ですので...

先述した「3つの目的・3ステップ」は、チームがふりかえりでやるべきことを見つけるための「通過点」になると思っています。チームが自分たちの手で、「ふりかえりがどうあるべきか」を考えることが出来るようになるためには、チームが成熟してこないとなかなか難しいのです。自発的な思考、主体的なマインドは、集まったばかりのチームからは生み出されにくいものです。
これはふりかえりに限った話ではなく、チームの活動そのものにも言えることだと思います。強力なリーダーシップを持ったメンバーが「こうあるべき!こうしよう!」と言って、その通りについていった場合、そのメンバーがいなくなったときにチームは自発的に考え、うまく機能するでしょうか。ふりかえりも同様です。1人のエバンジェリスト・ファシリテーターに「こうしたほうがいい、こうしましょう」と導かれるがままに行っていった場合、そのエバンジェリスト・ファシリテーターがいなくなったときにチームのふりかえりは目的を失わずにいられるでしょうか。

自分たちでやるべきこと、進むべき方向を見つけるという自発的な「意思」「行動」を生み出す土台を形成する一助となる、通過点となるのが「ふりかえりの3つの目的・3ステップ」なのだと思います。
2ステップ目(関係の質)を経て3ステップ目(プロセスのカイゼン)に入ってきたチームは、エバンジェリストやファシリテーターがいなくても、自分たちで自分たちのためのふりかえりを形成しはじめます。そのなかで、「どんなチームにしていきたいのか」という未来を見据えた話や、「ふりかえりはどうあるべきか」といった話が出来るようになっていくのではないか、と考えています。

ふりかえりの種々のアクティビティ(How)をいろいろと話している私ですが、正直なところHowには全くの拘りがなく、チームが前向きな対話をしやすい場さえ作れば、あとは良い方向へと自然と向かっていくと思っています。Howは、ふりかえりをより楽しく、かつ向かいたい目的への方向づけや、その方向への推進力を生み出すものであり、Howを知ったからといってよいアイデアが生まれるとは限りません。あくまで、アイデアを生み出すのは人であり、場です。

先述の「ふりかえりですべきこと」や「目的」をチーム全員が理解し、実践しようとする。そして、その土台を示し、作るのが、エバンジェリストやファシリテーターの「まず」やるべきことなのかな、と考えます。
それができたら、あとはチームみんなで考えてみる。そんな流れになるでしょう。

結局ふりかえりが「どうあるべきか」をどうやって見つけるの?

まずはどうあるべきか、をチーム全員がそれぞれの想いを持って表現できるようになるところからはじめます。リーダーシップの強いメンバーだけが「こうあるべき」と言えるのにはそう時間はかかりません。ただ、先述のように、それでは「チーム」として機能しているとは言い難いです。
まずは価値観の共有をしたり、ゴールの共有をしたり。そして日々の会話や、ふりかえりの活動の中ですこしずつカイゼンを繰り返し、チャレンジできる文化を作る。そして、チームメンバーひとりひとりが、自分の特色をチームのために出そうとする、出すことができる。そうした経験を経るうちに、「ふりかえりはどうあるべきか」という問いかけを投げてみる、またはその問いかけが自発的に生まれる。この一連の「成長」をたどって、チームにとって最適な形にたどり着くと考えています。

また、「ふりかえりはどうあるべきか」というのをチームで定期的に考えてみるというアプローチも並行して行うといいのではないかと思います。最初はリーダーが「こうだ」と言ったものに従ってもいいでしょう。チームが成長していくなかで、次第に自分の「理想」を思い描くようになり、発言できるようになる。そして現状とのギャップに気づく。何度か問いかけを投げるうちに、その問いへの回答はリーダーのもとから離れ、チームのものになるでしょう。

私のようにエバンジェリストとして、ファシリテーターとして、チームにふりかえりを根付かせたい、広めたいと考えている人は、チームに寄り添って、「ふりかえりでどんなことがしたいか、何を目指したいか」を確認していき、まずは「現状目指しているもの」「すべきだと(今)思っているもの」からはじめてみればよいのだと思います。

それは

  • 毎週90分のふりかえり会だったり
  • 進捗定例の中での最初のブレストだったり
  • 夕会での5分間の感想の共有だったり
  • 悩み相談会として若手から悩みを引き出す会だったり
  • 朝会でKPTボードをみんなで見つめる会だったり

形は様々です。(全部実例です)

そして、その会を「ふりかえる」ことで、チームにとっての「あるべき姿」にたどり着くのだと思います。これが「ふりかえりのふりかえり」の話につながっていきます。

おわりに

難しく面倒なことをいろいろ書いた気がしますが、まずは「やってみる」そして「ふりかえって次につなぐ」くらいの軽い気持ちで始めてしまえばいいと思っています。そして、なにより「楽しい活動」にすること。楽しくふりかえりが出来れば、失敗も受け入れられやすく、チャレンジしやすい、変わっていきやすいチームになっていける、と信じています。

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