
AWS 認定 AI プラクティショナー(AIF-C01)の学習で、Bedrock・SageMaker・Comprehend・Rekognition といったマネージド AI サービスを体系的に覚えることになった。一方で私の日常は、Claude や OpenAI の API を直接叩いて個人開発をする毎日だ。試験は「どのサービスが何をするか」を地図として教えてくれるが、実務で実際にどれを選ぶかは別の話になる。この記事では、AIF-C01 が引く AWS の AI サービスの地図と、API 直叩き派の私が現場でどう選ぶかを、公式ドキュメントを引きながら答え合わせしていく。
なぜ試験のサービスを、わざわざ実務目線で棚卸ししたのか
理由は単純で、試験で覚えるサービス一覧と、私が実際に手を動かしているサービスが、かなりズレていたからだ。
本業では SES でインフラ運用をしていて、副業で個人開発をしている。個人開発のほうでは、AI まわりはほぼ Claude と OpenAI の API を直接叩いて済ませてきた。要約を作るのも、文章を分類するのも、自分でプロンプトを書いて API に投げる。マネージドサービスに寄せるより、そのほうが速くて安いと感じる場面が多かった。
そこに AIF-C01 の学習が入ってきた。試験範囲には、私がふだん触らない AWS のマネージド AI サービスがずらりと並んでいる。名前を覚えるだけなら暗記でいい。ただ、それだと以前 CLF-C02 を勉強したときと同じで、「読んだことはあるが、いつ使うのか説明できない」状態のまま頭から抜けていく。せっかく地図をもらったのだから、自分が実際にどこを歩いているのかと突き合わせておきたかった。
もう一つ、動機として大きいのは学習サイトのことだ。私は AWS Cert Roadmap Lab という AWS 学習者向けのサイトを個人開発・運用している。今のところ扱っているのは CLF・SAA 寄りの用語や構成の話で、AI サービスのコンテンツはまだない。ただ、今後この学習サイトに AI 章を拡張していく計画があり、その下ごしらえとして AWS の AI サービスの棲み分けを自分の言葉で整理しておきたかった。試験勉強と、サイトのコンテンツ設計と、実務の答え合わせ。この三つを一度にやってしまおう、というのがこの棚卸しの出発点だ。
AIF-C01 が「地図」にしている AWS の AI サービス
まず地図の全体像から。AIF-C01 は 5 つの出題ドメインで構成され、配点比率が決まっている。これは公式試験ガイドに明記されている数字だ。
| ドメイン | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| Domain 1 | AI と ML の基礎 | 20% |
| Domain 2 | 生成 AI の基礎 | 24% |
| Domain 3 | 基盤モデルの応用 | 28% |
| Domain 4 | 責任ある AI のガイドライン | 14% |
| Domain 5 | AI ソリューションのセキュリティ・コンプライアンス・ガバナンス | 14% |
出典: AWS Certified AI Practitioner (AIF-C01) Exam Guide
配点が一番大きいのは Domain 3「基盤モデルの応用」で 28% を占める。プロンプトエンジニアリング・RAG・ファインチューニング・FM の評価指標(ROUGE / BLEU / BERTScore など)といった、生成 AI を「使う側」の実装知識がここに集まっている。試験全体としても、AI を自分でゼロから作る人ではなく、用意されたモデルやサービスを組み合わせて使う人 を対象にしているのが特徴だ。公式の対象者像も「AWS 上で AI/ML ソリューションを使うが、必ずしも自分で構築はしない」「AI/ML 技術への曝露は最大 6 ヶ月程度」と定義されている。
そのうえで、試験範囲(in-scope)のサービスは機能ごとにカテゴリ分けされている。中心になるのが「Machine Learning」カテゴリで、ここに 16 のサービス・機能が含まれる。
| カテゴリ | 含まれる主なサービス・機能 |
|---|---|
| Machine Learning(16 項目) | Amazon Bedrock / Bedrock AgentCore / SageMaker AI / SageMaker JumpStart / Comprehend / Rekognition / Textract / Transcribe / Translate / Polly / Kendra / Lex / Personalize / Nova / Augmented AI (A2I) / AWS Transform |
出典: In-Scope AWS Services (AIF-C01)
この 16 個をぼんやり眺めていても頭に入らない。私が地図として使いやすかったのは、「基盤モデルをどう扱うか」という軸で 3 つの層に分ける AWS 公式の考え方だ。AWS の「機械学習サービスの選び方」という決定ガイドでは、AI サービスを「①特定ユースケース向けの事前学習済みサービス(Comprehend・Rekognition・Textract・Translate など)」「②SageMaker AI(自分でモデルを構築・学習・デプロイ)」「③低レベルの ML フレームワーク・インフラ」の 3 層に整理している(参照: Choosing an AWS machine learning service)。なおこの決定ガイドはページ内に「Last updated: May 3, 2024」とあり、Bedrock AgentCore のような新しいエージェント系サービスの位置づけまではカバーしていないので、大枠の考え方として読むのがよさそうだ。
試験の定義と、実務で「どう使うか / 使わないか」
サービス名を並べるだけでは、地図を写経しただけになる。ここからは、試験で覚える定義と、私が実務でどう扱っているか(あるいは扱っていないか)を、1 サービスずつ突き合わせていく。
一番よく検索される Bedrock と SageMaker の違いから。結論を先に 1 文で書くと、Bedrock は用意された基盤モデルを API で呼ぶサービス、SageMaker AI は自分でモデルを構築・学習・デプロイするための総合基盤、という違いになる。試験では「どちらが基盤モデルを提供するか」「どちらが自前モデルの学習向きか」という問われ方をする。実務の感覚に置き換えると、Claude や Llama のような既存モデルを叩きたいだけなら Bedrock の層、独自データで一から学習させたいなら SageMaker の層、という切り分けになる。
個別サービスも同じように、定義と実務用途を対にして並べてみる。
| サービス | 試験で覚える定義 | 実務で私がどう見るか |
|---|---|---|
| Amazon Comprehend | 感情分析・エンティティ抽出・PII 検出などができる NLP サービス | 分類や抽出だけなら、私は LLM の API に直接プロンプトを書くことが多い。ただし PII 検出のように「決まった仕事を大量に安定して回す」用途なら、専用サービスのほうが素直だと感じる |
| Amazon Rekognition | 画像・動画の顔認識・ラベル検出・コンテンツモデレーション | 画像を扱う個人開発をしていなかったので実務では未使用。触るなら「自分で画像モデルを持たずに済む」のが利点になる層だと理解している |
| Amazon Textract | スキャン文書からテキスト・表・フォームを抽出(OCR の上位互換) | 帳票や PDF から構造を抜く用途。ここは LLM の素の力だと表構造を崩しやすいので、専用サービスに寄せる意味が実務でも分かりやすい |
| Amazon Translate | ニューラル機械翻訳。バッチ・リアルタイム・カスタム用語対応 | 私は多言語のドキュメントを扱うことがあるが、少量なら LLM 翻訳、量が増えてコストと一貫性が要るならこの層、という判断になりそうだ |
こうして並べてみて自分でも整理できたのは、試験で覚える個別サービスの多くは「LLM に自分でプロンプトを書けば似たことはできるが、決まった仕事を安定・安価に大量処理したいときに効いてくる」という位置づけだ、ということだった。試験の定義を覚えるだけだと、この「いつ専用サービスに寄せるか」の勘所が抜け落ちてしまう。
正直に書くと、ここに挙げた個別サービスは軒並み実務で触ったことがない。Comprehend がやるような感情分析・エンティティ抽出も、Textract 的な帳票からの構造抽出も、これまではすべて Claude や OpenAI の API に直接投げて済ませてきた。専用サービスの導入を検討する前に、API 直叩きで動くものが仕上がってしまうことが多く、結果として「AWS のマネージド AI サービスを経由せずに済ませる」が自分のデフォルトになっている。
個人開発で、AWS の生成AIサービスをどう選ぶか
個人開発で AWS の生成 AI サービスを選ぶとき、私がまず自分に問うのは「モデルを自分で学習させる必要があるか」だ。ここが決まると、SageMaker の層に降りるのか、Bedrock の層で足りるのかが、ほぼ機械的に決まる。
そのうえで、実際の採否は次の判断軸で見ている。
- コスト構造: 使った分だけの従量課金か、常時稼働で持ち出しが出るか。個人開発では固定費が出る構成をなるべく避けたい
- カスタマイズ性: 既存モデルをそのまま使えれば十分か、独自データでの学習・チューニングが要るか
- 運用負荷: 自分でモデルを持つと、更新・監視・スケールまで自分の仕事になる。専用サービスやマネージドに寄せるほど、この負荷は AWS 側に移る
- API 直叩きで足りるか: そもそも AWS のサービスを噛ませず、Claude / OpenAI の API を直接呼ぶほうが速くて安い場面も多い
最後の観点は、AWS の資格記事ではあまり書かれないところだと思う。私の場合、AWS 上でシステムを組む前提がないなら、マネージド AI サービスを経由せず API を直接叩くのが一番小回りが利く。逆に、認証・ネットワーク・他の AWS リソースとの連携まで含めて AWS の中で完結させたいなら、Bedrock のようにモデルアクセス自体を AWS の権限管理(IAM)の内側に置けることの価値が出てくる。試験で Bedrock が「フルマネージド」と強調される意味は、この文脈で腑に落ちた。
試験知識と現場がズレた場面
棚卸しをしていて、試験で覚える地図と現場の実態がズレる場面が 3 つあった。どれも、暗記だけで進めていたら気づかなかったところだ。
1 つ目は、覚えたはずのサービスが実務では選べなくなっていたこと。 教材や学習ログに「暗記対象」として Amazon Forecast(時系列予測サービス)を書いていたのだが、現行の in-scope リストを確認すると Forecast は載っていない。さらに公式ドキュメントには、はっきりこう書いてある。
Amazon Forecast is no longer available to new customers. Existing customers of Amazon Forecast can continue to use the service as normal.
(Amazon Forecast は新規のお客様にはご利用いただけません。既存のお客様は通常どおりご利用を継続できます。)
つまり、名前だけ覚えても、新しく個人開発で使おうとした時点で選択肢に上がらない。公式は移行先として SageMaker Canvas を案内している。「試験のために覚えたサービスが、実務では新規で触れない」というのは、地図と現場を突き合わせて初めて分かることだった。
2 つ目は、試験範囲そのものが数ヶ月単位で動いていたこと。 AIF-C01 の試験ガイドには改定履歴が公開されていて、バージョン 1.0 が 2026 年 3 月 26 日、バージョン 1.1 が 2026 年 4 月 30 日に公開されている。この v1.1 で、出題観点に「agentic AI(エージェント型 AI)」が複数の項目に追加され、in-scope サービスにも Bedrock AgentCore・SageMaker JumpStart・AWS Transform(Machine Learning カテゴリ)や、Kiro・Strands Agents・Amazon Q(Developer Tools カテゴリ)などが加わった。基盤モデルのカスタマイズ手法に model distillation、FM 評価に LLM-as-a-judge が足されているのも、生成 AI 側の動きをそのまま反映した変化だ(出典: Revisions (AIF-C01))。
これは「教材が古い」という話ではなく、生成 AI 領域の資格は試験範囲自体が短いサイクルで動く、という業界特性の話だと受け止めている。紙の教材や購入した講座は、公開されたある時点のスナップショットだ。だから最新の in-scope リストと改定履歴は、教材とは別に公式で一度確認しておくのが安全だと思う。
3 つ目は、手元の教材でカバーしている範囲と、公式の最新範囲に差があったこと。 私が使っている市販教材は、上に書いた v1.1 で追加されたエージェント系サービスまでは踏み込んでいなかった。これも教材の善し悪しではなく、変化の速い領域を学ぶときは「教材で土台、公式で差分」という二段構えで見るのが現実的だ、という学びとして受け取った。
まとめ
AIF-C01 の学習でもらった AWS の AI サービスの地図を、API を直叩きしている個人開発者の目線で答え合わせしてきた。試験は「Bedrock はモデルを呼ぶ層、SageMaker は自分で作る層」といった棲み分けの地図としてよくできていて、実務でサービスを選ぶときの最初の当たりをつけるのに役立つ。ただ、地図と現場は完全には一致しなかった。覚えたはずの Forecast は新規で使えず、試験範囲そのものも数ヶ月で改定されていた。
この記事で書いた内容も、あくまで確認した時点のスナップショットだ。Bedrock の対応モデルや料金体系、in-scope の顔ぶれは、これからも動いていくと思う。だからこそ、「試験で覚えた定義を、実務の提供状況で一度検算する」という構えのほうを持ち帰ってもらえたら嬉しい。これは AWS に限らず、変化の速い領域の資格を学ぶときに転用できる構えだと思う。
私自身の宿題も残っている。v1.1 で入ってきた Bedrock AgentCore やエージェント系のサービスは、まだ実務で叩けていない。地図の上では場所が分かっても、実際に歩いてみないと分からないことがあるのは、Forecast の一件で身にしみた。次はこのあたりを個人開発で触ってから、学習サイトの AI 章に落とし込んでいきたい。
よくある質問
Q: Bedrock と SageMaker、個人開発ではどちらから触ればいいですか?
A: 既存の基盤モデルを API 経由で使いたいだけなら Amazon Bedrock、自分でモデルを学習・チューニングしたい場合は Amazon SageMaker AI が起点になる。個人開発でゼロからモデルを学習させる場面は多くないので、まずは Bedrock から触るケースが多い。
Q: AIF-C01 で覚える AWS の AI サービスは、実務でもそのまま使いますか?
A: Comprehend・Rekognition・Textract・Translate などの個別サービスは試験と実務で名前が一致する。ただし Amazon Forecast のように、試験の学習対象からは外れ、公式でも新規受付を終了しているサービスもある。試験知識をそのまま実務のサービス選定に使うときは、現行の提供状況を確認したほうがいい。
Q: AIF-C01 の試験範囲は、どのくらいの頻度で変わりますか?
A: 2026 年だけでも v1.0(3 月 26 日公開)から v1.1(4 月 30 日公開)に改定され、agentic AI(エージェント型 AI)の観点や、Bedrock AgentCore・Kiro・Strands Agents などのサービスが新たに試験範囲へ加わった。生成 AI 領域の資格は、試験範囲が数ヶ月単位で動く前提で学習計画を立てるのが安全だ。
Q: 日常的に Claude / OpenAI の API を直叩きしている場合、AWS の AI サービスを学ぶ意味はありますか?
A: モデル API を直接叩く体験と、AWS のマネージド AI サービス(Bedrock / SageMaker / Comprehend など)の棲み分けを理解する体験は別物だ。AWS 上でシステムを組む前提なら、どのマネージドサービスがどの層の課題を解くかを知っておくことで、API 直叩きとマネージド採用のどちらが適切かを判断しやすくなる。
参考リンク(公式ドキュメント)
- AWS Certified AI Practitioner (AIF-C01) Exam Guide — 5 ドメインの配点・対象者像・出題形式
- In-Scope AWS Services (AIF-C01) — 試験範囲のサービス一覧(カテゴリ別)
- Revisions (AIF-C01) — v1.0 → v1.1 の改定履歴
- Amazon Bedrock / Amazon SageMaker — 各サービス公式
- Choosing an AWS machine learning service — AI サービスを 3 層に整理する決定ガイド
- What Is Amazon Forecast? — 新規受付終了の一次情報
- 関連: AWS CLF-C02 を Claude Code と自作サイトで取った話 — 同じ AWS 学習サイトを使った CLF-C02 の学習ログ