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GPT-5.6 と Claude Fable 5 に同じプロンプトで魚ゲームを作らせた ── 合計点は GPT-5.6、でも「もういちど」が押せなかった

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OpenAI の GPT-5.6(2026 年 7 月 9 日リリースと報じられている)と、Anthropic が 7 月 1 日に世界展開した Claude Fable 5 に、同じ日本語プロンプト 1 発で iOS の魚ゲームを作らせた。手直しは一切なし。独立 3 名の judge が学術文献ベースの 8 軸ルーブリックで採点したところ、合計点は GPT-5.6 版が上回った。ただし GPT-5.6 版だけ、ゲームオーバー後に「もういちど」が押せなくなる。

GPT-5.6 がリリースされた直後、SNS のタイムラインは早々にその話題で持ちきりになっていた。投稿の大半は GPT-5.6 を持ち上げる論調で、正直「実際のところどうなんだろう」という疑問が拭えなかった。こういうときは自分で検証してみるのが一番早い。ちょうどネット上でも、AI に一発プロンプトを投げてゲームを作らせる投稿をよく見かけていた時期でもある。私自身はゲーム開発の経験がほとんどない。だからこそ、経験ゼロの領域で本当にそれらしいものが一発で出てくるのか試す、ちょうどいい機会にもなると思い、GPT-5.6 と Claude Fable 5 の両方に同じプロンプトを投げてみることにした。

先に結論 ── 合計点は GPT-5.6、ただし逆転軸が 1 つだけある

3 名の judge が 8 軸(各 10 点)で採点した合計点(80 点満点)は、GPT-5.6 版が 58.7 点、Fable 5 の 2 本を平均した「Fable 5 全体」が 51.0 点で、GPT-5.6 版が上回った。GPT-5.6 版は 8 軸のうち 7 軸で Fable 5 平均を上回っている

逆転が起きた唯一の軸が technical_stability(技術安定性)だ。ここだけ GPT-5.6 版が 3.2 点(3 作中最低)で、Fable 5 の 2 本は 8.0 点・8.5 点だった。そしてこの 3.2 点の中身は、ゲームオーバー後の「もういちど」ボタンでフリーズするという、App Store 審査のハードゲートに直接ぶつかる種類の欠陥である。つまり「合計点では GPT-5.6 が上だが、その差はフリーズという一点で簡単にはひっくり返らない」というのが本記事の結論だ。合計点の大小だけで勝敗を決める書き方はしない。

同じ日本語プロンプト 1 発で、iOS ゲームを 3 本作らせた

検証は「1 つの日本語プロンプトをそのまま投げ、生成されたものに手を加えない(one-shot)」というルールで行った。使ったプロンプトは以下の原文ママだ。日本語として整っていない箇所(「小さいの魚」等)もあえて直さず、そのまま投入している。手直しなしという前提を守るためだ。

iOSのスマホゲームを作ってください。
世界観は海の世界で、プレイヤーは最初は小さいの魚です。
自分より小さいの魚食ってどんどん大きくなっていくゲーム。
食った魚によってポイントが与えられる。与えられたポイントで記録やランキングがつけられる。
与えられたポイントでショップで強化アイテムなどが購入できる。

要件は以上で、他は条件や実装要件は自分の考えてる
最適な選択肢で進めて、プレイできる最小構成のmvpを作成してください。

このプロンプトを 2 つのモデルに投げて、合計 3 本を生成させた。GPT-5.6 は 1 本、Claude Fable 5 は 2 本という非対称な構成になっている。

内部コード タイトル 生成元 ツール / effort 生成環境
codex_uogungun うおぐんぐん GPT-5.6 Codex CLI / effort=ultra 新規プロジェクト
claude_pakupaku ぱくぱくオーシャン Claude Fable 5(生成①) Claude Code / effort=ultracode 新規プロジェクト
oceanbite OceanBite Claude Fable 5(生成②) Claude Code / effort=ultracode 既存プロジェクト内(CLAUDE.md 運用ルールやカスタムエージェント設定がすでに積み上がった環境)

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OceanBite だけ生成環境が異なる点は、後述の「Fable 5 でも 9 点ひらいた」の節で掘り下げる。

3 本とも Swift + SpriteKit + SwiftUI 製で、外部ライブラリはゼロ。うおぐんぐんのみ Core 層にユニットテスト(AquaCoreTests)が 7〜8 ケース収録されていた。

ひとつ先に断っておくと、この 3 プロジェクトはいずれも GitHub にリモートを持たず、App Store にも未提出だ。だから本記事に「リポジトリはこちら」「試しにインストールできます」という導線は無い。判断材料はスクリーンショットとコード読解に限られる。

effort=ultraeffort=ultracode は名前が似ているだけの別物

ここで表記の混同を先に潰しておきたい。Codex 側で使った ultra と、Claude Code 側で使った ultracode は、名前が 3 文字違うだけで仕様がまったく非対称だ。

ultracode は Claude Code の公式ドキュメント(Model configuration)に定義がある。原文は次の通りで、これはモデルの推論レベルそのものではなく Claude Code 側の設定である。

Ultracode is a Claude Code setting rather than a model effort level: it sends xhigh to the model and additionally has Claude orchestrate dynamic workflows for substantive tasks. It applies to the current session only.

要するに ultracode は、モデルには xhigh 相当の推論を送りつつ、Claude Code 側が実装タスクに対して動的なワークフロー(複数サブエージェントの自動編成)を組む、セッション限定の設定だ。Fable 5 のデフォルト effort は high で、ultracode/effort ultracode などで明示的に選ぶ必要がある(自動では発動しない)。なお ultracode を使うには Claude Code v2.1.203 以降が必要で、そもそも Fable 5 をモデルピッカーに表示させるには v2.1.170 以降が要る(それ未満のバージョンでは選択肢に現れない)。

一方 Codex の ultra は、複数のエージェントを並列に稼働させる最上位モードという位置づけで、ultracode のような「1 モデルへの推論レベル + オーケストレーション設定」とは設計思想が異なる。どちらも 2026 年 7 月リリース直後の新しい設定で、公式ドキュメントの整備が追いついていない部分もある(Codex 側は一部の設定ページが本記事執筆時点で 404 のままだった)。そのため本記事では Codex ultra の内部ベンチマーク数値までは踏み込まず、「複数エージェントを並列稼働させる最上位モード」という定性的な記述に留める。

なお、両モデルの素の実力の目安として、第三者ベンチマーク「Vibe Code Bench v1.1」(2026-07-09 更新)では Claude Fable 5 が 90.35% でトップだった。GPT-5.6 のスコアは本記事執筆時点でまだ掲載されていない。つまり「GPT-5.6 と Fable 5 を同じ土俵で比べた記事」自体が、まだほとんど存在しないタイミングでの検証になっている。

評価方法 ── 独立 3 judge・8 軸ルーブリック

「自分で作らせて自分で褒める」構造を避けたかったので、採点は独立した 3 名の judge に任せた。3 名は同じルーブリック定義と評価アンカー(low / high anchor)を共有したうえで、個別にスコアと講評(strengths / weaknesses / bugs)を書いている。この「実測値を第三者的に採点させる」やり方は、以前 AI エージェントの工数見積もりに PSP を持ち込んだ話 でも使った方法論の延長線上にある。

ルーブリックの 8 軸は、ゲーム分野のユーザビリティ研究とプラットフォーム審査ガイドラインを土台に確定した。主な出典は次の通り。

  • Pinelle, Wong, & Stach (2008) Heuristic Evaluation for Games(CHI '08)
  • Desurvire, Caplan, & Toth (2004) PLAY ヒューリスティクス(CHI '04)
  • Apple App Store Review Guidelines / Google Play「Level Up」ガイドライン
  • Celia Hodent The Gamer's Brain(オンボーディング UX)
  • EXPRESSO Playability Heuristics

確定した 8 軸は以下の通り。

# 見ているもの
1 core_gameplay 目標の明確さ・難易度曲線・「あと 1 回」を誘発するか
2 controls_responsiveness 入力遅延の少なさ・精度・学習コスト
3 visual_art_consistency 画風・色彩・線の統一
4 ui_ux_information_design メニュー構造・情報階層・オンボーディング
5 progression_systems ショップ・強化・ランキングの長期モチベーション設計
6 naming_worldbuilding タイトル・キャラ名・アイテム名と世界観の一貫性
7 technical_stability クラッシュ・フリーズ・表示崩れの有無
8 originality_creativity 既存タイトルとの差別化・アイデアの新規性

各 judge は、実機スクリーンショットと Swift 実装コードの読解(ファイル名・行番号を明示した根拠)の両方を突き合わせて採点している。加えて、一次テスターである私自身の実機プレイでの不具合報告があった軸については、3 名とも「静的なコード読解では実行時特有の問題を検出できない」と明言したうえで、実機の再現報告をコードの見た目の綺麗さより優先する方針を統一して採用した。ここは後半のフリーズバグの話で効いてくる。

先に一点はっきりさせておくと、この定量評価は私の一次テスターとしての体感とほぼ完全に一致した。「GPT-5.6 の方が総合的に上に感じたが、リトライのフリーズだけ引っかかった」という私のプレイ後の印象が、独立 3 judge の合計点と technical_stability の落ち込みにそのまま対応している。以下では「私の主観」と「3 judge の定量」を、食い違う二つではなく一致した事実として扱う。

総合スコア ── GPT-5.6 が 58.7 点、Fable 5 平均が 51.0 点

3 名の judge スコアの平均値(各軸 10 点満点)が以下だ。

評価軸 うおぐんぐん(GPT-5.6) ぱくぱくオーシャン(Fable 5①) OceanBite(Fable 5②)
core_gameplay 8.0 5.5 6.7
controls_responsiveness 6.8 4.5 7.7
visual_art_consistency 8.3 6.3 4.7
ui_ux_information_design 8.5 5.3 7.3
progression_systems 7.3 6.5 8.0
naming_worldbuilding 8.7 5.7 6.0
technical_stability 3.2 8.0 8.5
originality_creativity 7.8 4.7 6.7
合計(80 点満点) 58.7 46.5 55.5

Fable 5 の 2 本を単純平均した「Fable 5 全体」の合計は 51.0 点。GPT-5.6 版の 58.7 点と比べると、GPT-5.6 版は technical_stability を除く 7 軸すべてで Fable 5 平均を上回っている。差が特に大きいのは ui_ux_information_design(8.5 vs 6.3)、naming_worldbuilding(8.7 vs 5.8)、originality_creativity(7.8 vs 5.7)だ。逆に technical_stability だけは GPT-5.6=3.2 に対して Fable 5 平均=8.25 と、きれいに逆転している。

ゲーム別講評 ── コードの中身まで見た

うおぐんぐん(GPT-5.6)── 作り込みは一番、でも 1 箇所で足を掬われた

codexプレイ.gif

3 名が揃って加点していたのが、プロンプトに明示要求のなかった敵 AI の追跡ロジックだ。OceanGameScene.swift の 292-325 行で、distance < 190 に入った危険な敵がプレイヤー方向へ加速する(速度 +20〜最大 180)。プロンプトには「敵が追いかけてくる」なんて一言も書いていないのに、緊張感の源泉になる挙動を勝手に足してきた。ここが独自性の加点になっている。

命名も強かった。タイトル「うおぐんぐん」、キャッチコピー「食べて、育って、深海の王者へ。」、ショップ項目名「高速ヒレ / 強い胃袋 / 守りのウロコ」(Models.swift 34-45 行)と、魚の身体になぞらえた言葉選びで世界観が一貫している。ビジュアルも深海背景・アプリアイコン・ゲーム内 HUD まで同系統の質感で揃っていて、naming_worldbuilding 8.7 点・visual_art_consistency 8.3 点はこのあたりが効いた。遊び方画面(4 ステップ)とゲーム内常設ヒントの二層オンボーディングもあり、3 作で唯一 Core 層がユニットテスト済みという点も含めて、単純な「作り込みの量」では頭一つ抜けている。

弱みも無いわけではない。サウンドと BGM が皆無(ハプティクスのみ)、成長表現が「サイズ Lv.0 → 1 → 2」の 3 段階と粗い、OceanGameScene.swift が 782 行の単一ファイルに AI・物理・UI 更新ロジックが同居するモノリス構造、といったところだ。ただしこれらは「もう一歩」の話で、致命傷ではない。

問題は後述するフリーズバグの 1 点に集約される。

実際にフリーズに遭遇したのは、90 秒プレイをやり切って「90 秒を泳ぎ切った!」の結果画面(スコア 23,900・順位 #3・捕食 95 匹・最大 Lv.5)が出たときだった。「もういちど」をタップすると、一瞬スコアやタイマーの数字が重なって見えたあと、画面はタイマー 1:30・サイズ Lv.0 という新しいラウンドが始まる直前の状態で静止する。ただし、そこから先がどれだけ待っても動かない。指でスライドしても魚は反応せず、タイマーも進まない。何度試しても同じ場所で同じように止まり、結局ホーム画面に戻ってアプリを開き直すしかなかった。

codex-freeze.gif

ぱくぱくオーシャン(Fable 5・生成①)── 手堅いが地味

Fable 5 の 1 本目は、とにかく実装が手堅い。SwiftUI と SpriteKit の役割分離が明確で、状態遷移(.playing.dying.ambient)、[weak self]finalScore のローカルキャプチャ、0.7 秒待機後のコールバック、player = nil による二重当たり判定防止まで、レースコンディション対策が徹底している(GameScene.swift 331-357 行)。technical_stability 8.0 点はこの堅牢さに対する評価だ。

ただ、遊びとしては地味だった。敵 AI がプレイヤーを追跡せず、直線移動+正弦波の上下揺れだけで動く(GameScene.swift 130-240 行)。デバッグ用の --autoplay モードの steerAutoplay() が自力で捕食対象を探索している実装になっていること自体、敵側に追跡ロジックが無い傍証になっている。さらに GameScene.swift 254-255 行の加速度モデル(velocity.dx += dx/dist*900*dt)と離した後の慣性減衰(pow(0.92, dt*60))によって、タッチ座標と魚の移動に意図的なラグが生じる設計になっていて、controls_responsiveness は 4.5 点(3 作中最低)まで落ちた。私自身、ドラッグと魚の動きに「ズレ」を感じたのだが、その体感はこの加速度モデルとしてコードにそのまま裏付けられている。ショップ項目名「スピードアップ / はじめのサイズ / シールド」(GameStore.swift 66-73 行)も直訳的で、世界観の演出は弱い。

claudeプレイ.gif

OceanBite(Fable 5・生成②)── 進行システムは厚いのに、絵で損をした

同じ Fable 5 でも、こちらは進行システムの層が 3 作で最も厚い。PlayerStore.swift 9-66 行に 4 種のショップ強化(スピードフィン / でかスタート / バブルシールド / コインブースト)があり、コスト式は baseCost × (level+1)²。とくに「コインブースト」は獲得コインを増幅する複利的なメタ進行フックで、progression_systems 8.0 点はここが効いている。

操作性も良い。タッチ追従が sp = min(moveSpeed, dist*5) という P コントローラ型の直接距離比例実装(GameScene.swift 164-181 行)で、速度状態を持たないから離した瞬間に即停止して余分な慣性が残らない。ぱくぱくオーシャンでズレを感じた私が、こちらでは「ズレは気にならなかった」と報告したのも、この構造の違いで説明がつく。リトライ処理も runID = UUID() と SwiftUI の .id() によるシーン全体の再生成方式で、手動でコールバックを付け替える他 2 作より構造的に堅牢だった。

損をしたのはビジュアルだ。フラットな絵文字調の熱帯魚(🐠 系)と、写実的な 3D レンダリング調のサメ・イカ・クジラ(🦈🦑🐋 系)が同一画面に混在して、画風の統一感が 3 作で最も低い。原因は GameScene.swiftSKLabelNode(text: emoji(forRadius:)) で Apple 標準の絵文字グリフをそのまま描画していることで、アプリアイコンまで熱帯魚絵文字そのものだった。visual_art_consistency は 4.7 点。タイトルも英語表記「OceanBite」のままで、日本語 UI との統一感を欠いていた。

claude-organize.gif

唯一の逆転軸 ── 静的レビューは「フリーズしない」と言っていた

technical_stability を単純に他の 7 軸と足し合わせると、GPT-5.6 版の合計点は依然として Fable 5 の 2 本を上回る。しかしこの軸の中身は、他の軸で稼いだ点数では埋め合わせられない性質のものだ。

うおぐんぐんで起きたのは、ゲームオーバー画面の「もういちど」ボタンを押すとフリーズし、ホーム画面から再起動しないと復帰できない、という不具合だ。ここで面白い(そして怖い)のが、静的なコード読解では見抜けなかったという点だ。judge がコードを追うと、GameScreen.swiftrestart()(115-126 行)は detachCallbacks / isPaused 管理 / nil 初期化がきちんと書かれていて、静的に読む限り「フリーズリスクはほぼなし」に見える。

にもかかわらず、3 名の judge 全員がこれを CONFIRMED(確認済みの不具合)と判定した。理由は、コードの見た目が綺麗でも、SpriteKit ⇔ SwiftUI 間のシーン提示タイミングや物理エンジンのコールバック競合といった実行時特有の問題は静的レビューでは検出できない、という限界を全員が認めたうえで、実機の再現報告を優先したからだ。3 作のうち、この種の致命的な安定性バグが報告されたのはうおぐんぐんの 1 本だけだった。

そして technical_stability が効いてくるのは、この軸が Apple App Store Review Guidelines の「重大なバグやクラッシュがないこと」という審査上のハードゲートに直接ぶつかるからだ。ネーミングが地味でも、ビジュアルがちぐはぐでも、アプリは審査に出せる。だが起動後にフリーズするアプリは、他がどれだけ優れていても審査で止まる。だから合計点だけを見て「GPT-5.6 が総合的に優れている」と結論づけると、このリリース可否に直結する欠陥の重さを取りこぼす。

同じ Fable 5 でも 9 点ひらいた ── 生成のばらつきか、環境の違いか

もうひとつ、GPT-5.6 vs Fable 5 という二項対立の外側にある事実がある。同じ Fable 5・同じプロンプトから生成した 2 本、ぱくぱくオーシャン(46.5 点)と OceanBite(55.5 点)の間に、80 点満点中 9 点の開きがあった。

この 2 本には、プロンプト以外にもう一つ違いがある。ぱくぱくオーシャンは真っさらな新規プロジェクトとして生成したのに対し、OceanBite は既存のプロジェクトディレクトリ(CLAUDE.md による運用ルールやカスタムエージェント設定がすでに積み上がった環境)の内側で生成した。後者だけ、周囲に何らかの蓄積されたコンテキストがある状態でワンショットプロンプトを投げたことになる。

ただし、この違いがスコア差にどこまで効いたのかは正直わからない。今回作らせたのは十分に小さい MVP で、既存プロジェクト側の運用ルールが実際に介入する余地はそもそも薄かった可能性が高い。逆に、ワンショットプロンプト自体には周囲のプロジェクトへの言及が一切なく、既存環境の情報がプロンプトのコンテキストにほとんど乗っていなかった(コンテキストが薄すぎて効かなかった)可能性も考えられる。「環境が違う」ことは事実だが、「それがどれだけ効いたか」は今回の検証だけでは切り分けられない。

差が特に大きいのは controls_responsiveness(4.5 vs 7.7)、progression_systems(6.5 vs 8.0)、originality_creativity(4.7 vs 6.7)だ。片方は加速度モデルで操作にラグが出て、もう片方は P コントローラ型で即停止する。片方はショップが直訳的で、もう片方は複利フックを組んでくる。同じモデルに同じ指示を出しても、少なくとも生成のばらつきとプロジェクト環境の違いという 2 つの要因が絡んだ状態で、出てくるものの完成度はこれだけ振れる。この 9 点差は、GPT-5.6 と Fable 5 平均の差(58.7 vs 51.0 = 7.7 点)に匹敵する規模だ。

「AI にこのプロンプトを投げればこの品質のものが出る」と一発の結果から一般化するのは、この振れ幅を見ると危うい。モデル間の差を語る前に、同一モデルの生成分散をどう均すか、そして生成環境の違いがどこまで効くのかという問いが先に立つ。

実際に 2 本を触り比べてみると、体感はスコアとほぼ一致していた。OceanBite は指を離した瞬間にすっと止まる感覚があり、狙った場所に正確に着地できる。一方ぱくぱくオーシャンは同じ操作をしても少し滑るような、思った場所より先まで進んでしまう感覚が最後まで拭えなかった。「同じ Fable 5 でここまで違うのか」と一番驚いたのがこの操作性の差で、9 点という数字は誇張ではなく、触っていて感じた印象そのままだった。

結論 ── 合計点では GPT-5.6、だが「もういちど」が押せない

今回の一発対決の結論は、両論併記になる。

  • 独立 3 judge・8 軸ルーブリックの合計点(80 点満点)は、GPT-5.6 版 58.7 点 > Fable 5 平均 51.0 点。GPT-5.6 版は technical_stability を除く 7 軸で上回り、特にネーミング・情報設計・独自性で差をつけた。
  • ただし唯一の逆転軸 technical_stability の中身は、ゲームオーバー後に「もういちど」が押せなくなるフリーズであり、これは App Store 審査のハードゲートに関わる。他 7 軸の高得点では相殺できない性質の欠陥だ。

だから「どっちが勝ったか」を一言で言えと言われたら、私は言えない。作り込みの総量なら GPT-5.6 版が上で、そのままリリースに出せる安定性なら Fable 5 版が上、というのが正直なところだ。冒頭で書いた「合計点では上、でも『もういちど』が押せない」という非対称は、そのまま今回の答えになっている。

もちろんこれは N=1 の検証で、自作ルーブリックの限界もある。次に確かめたいのは 4 つ。1 つ目は、同じプロンプトを複数回投げたときにフリーズが毎回再現するのか(生成のたびに消えるなら、モデルの欠陥というより生成分散の一例になる)。2 つ目は、Fable 5 の 9 点差が偶然なのか、複数本回しても残る傾向なのか。3 つ目は、その 9 点差が生成のばらつきによるものか、既存プロジェクト環境(ハーネス)の有無によるものかを、条件を揃えた再実験で切り分けられないか。4 つ目は、ultracode の動的ワークフローと Codex ultra の並列エージェントで、生成物の安定性にどんな癖が出るのか。ここは追って別記事で検証したい。

まとめ

同じ日本語プロンプト 1 発で、GPT-5.6 と Claude Fable 5 に iOS の魚ゲームを作らせ、独立 3 judge・8 軸ルーブリックで採点した。合計点は GPT-5.6 版が 58.7 点で Fable 5 平均の 51.0 点を上回ったが、GPT-5.6 版だけゲームオーバー後の「もういちど」でフリーズするという審査ハードゲート級の欠陥があり、合計点の大小だけで勝敗を決められない結果になった。加えて、同じ Fable 5 の 2 本にも 9 点の開きがあり、「同一モデルでも生成のばらつきは大きい」という、二項対立の外側の事実も見えた。

一発生成の品質は、モデル名だけでは決まらない。同じモデルでも振れるし、静的に綺麗なコードが実機でフリーズすることもある。この 2 つを実際に手で触って確かめられたのが、今回いちばんの収穫だった。

よくある質問

Q: GPT-5.6 と Claude Fable 5、どっちが今回の iOS ゲーム開発で勝ったんですか?
A: 独立 3 名の judge による 8 軸ルーブリック採点では、合計点(80 点満点)で GPT-5.6 版が 58.7 点、Fable 5 平均が 51.0 点で GPT-5.6 版が上回った。ただし GPT-5.6 版のみゲームオーバー後の「もういちど」ボタンでフリーズする不具合が実機で確認されており、これは App Store 審査のハードゲートに関わる欠陥のため、単純な合計点だけで勝ち負けを決めるべきではない。

Q: Claude Code の ultracode と Codex の ultra は同じものですか?
A: 別物。ultracode は Claude Code 側の設定で、モデルに xhigh 相当の推論を送りつつ Claude Code が動的ワークフロー(サブエージェントの自動編成)を組む、セッション限定の設定(Claude Code 公式ドキュメントの定義)。Codex の ultra は複数エージェントを並列稼働させる独立した最上位モードで、名前は似ているが仕様は非対称。

Q: 同じプロンプトで AI に 2 回同じアプリを作らせたら、毎回同じ品質になりますか?
A: ならない。今回 Claude Fable 5 で 2 回生成した iOS ゲームには、80 点満点中 9 点の評価差(46.5 点 vs 55.5 点)があった。差は操作性・進行システム・独自性で特に大きく、同一モデル・同一プロンプトでも生成結果にはばらつきがある。

Q: AI が一発生成したアプリは App Store にそのまま出せますか?
A: 今回の 3 本はいずれも MVP 段階で App Store 未提出。審査で見られやすい「Minimum Functionality」や、フリーズ・クラッシュのような致命的な不具合の有無は、一発生成のままでは審査通過の保証にならない。実際に GPT-5.6 版はゲームオーバー後のフリーズが実機で再現している。

Q: 静的コードレビューでバグは見つけられなかったんですか?
A: 見つけられなかった。GPT-5.6 版のフリーズ箇所(GameScreen.swiftrestart())は、静的に読む限り nil 初期化もコールバック解除も適切で「フリーズリスクはほぼなし」に見えた。SpriteKit ⇔ SwiftUI 間のシーン提示タイミングや物理エンジンのコールバック競合といった実行時特有の問題は静的レビューでは検出できず、3 judge 全員が実機再現報告を優先して CONFIRMED と判定した。

参考リンク

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