はじめに
Azure DevOps は、ソースコード管理・CI/CD パイプライン・タスク管理・テスト管理・成果物管理を一元化できる Microsoft のデベロッパープラットフォームです。
本記事では、Azure DevOps Organization を新規に作成し、プロジェクトを立ち上げるまでの手順を解説します。既存の Microsoft Entra ID テナントと紐付ける構成を前提としています。
また、筆者が実際に開設した際にはまったポイントも合わせて記載します。
対象読者
- Azure DevOps をこれから初めて使う方
- 組織のテナントと紐付けた形で正式に開設したい管理者
前提条件
- Microsoft アカウントまたは職場アカウント(Entra ID)でサインインできること
- Organization を Entra ID テナントに紐付ける場合、対象テナントのグローバル管理者または Azure DevOps の Organization 作成権限を持つこと
Organization の作成
1. Azure DevOps ポータルへアクセス
ブラウザで以下の URL にアクセスします。
https://aex.dev.azure.com/me
はまりポイント:https://dev.azure.com/ からサインインすると Azure Portal にリダイレクトされる場合がある
https://dev.azure.com/ にアクセスすると、条件によっては Azure Portal(https://portal.azure.com)へリダイレクトされ、Azure DevOps の画面に辿り着けないことがあります。
その場合は以下の URL に直接アクセスしてください。
https://aex.dev.azure.com/me
このページは Azure DevOps のアカウント管理画面であり、Organization の一覧確認や新規作成をここから行うことができます。
サインインを求められた場合は、Organization に紐付けたい Entra ID テナントのアカウントでサインインします。
2. 新しい Organization を作成
[Create new organization] を選択し、以下の項目を入力します。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| Organization name | グローバルで一意な名前(後から変更可能ですが URL が変わります) |
| We'll host your projects in | Asia Pacific を選択します(Japan East の選択肢はありません) |
Organization 名と「We'll host your projects in」を入力すると、Azure サブスクリプションの紐付けに関するセクションが表示されます。
画面には以下の 2 つのボタンが表示されます。
- [Continue]:利用可能なサブスクリプションが検出されている場合に進むボタンです
- [Get started with Azure]:サブスクリプションが見つからない場合に Azure サブスクリプションの設定へ誘導するボタンです
サブスクリプションが正常に紐付けられている状態では [Continue] をクリックして次へ進みます。
はまりポイント:Organization 作成時に "Oops! Something happened" が表示される
Organization 作成時にエラーが発生する場合、以下の点を確認してください。
- Azure サブスクリプションへのアクセス権がないと作成できません。 画面上に「Make sure you have the Owner or Contributor role on at least one Azure subscription.」と表示される通り、対象サブスクリプションに対して Owner または Contributor のいずれかのロールが必要です。
- サブスクリプションが見つからない状態で [Continue] を押すと "Oops" エラーになる可能性があります。その場合は [Get started with Azure] からサブスクリプションの紐付けを先に行ってください。
- Entra ID テナントの管理者ポリシーによって新規 Organization の作成が制限されている場合もあります。テナント管理者に確認してください。
[Continue] をクリックすると Organization が作成され、続けてプロジェクト作成画面に遷移します。
Entra ID テナントへの接続は職場・学校アカウントで作成した場合は自動で行われます
職場・学校アカウント(*.onmicrosoft.com など Entra ID アカウント)で Organization を作成した場合、作成したアカウントが所属するテナントに自動的に接続されます。[Organization Settings] > [Microsoft Entra] を確認すると、既にディレクトリが接続済みになっています。
個人の Microsoft アカウント(MSA)で作成した場合は自動接続されないため、後述の「補足:MSA で作成した場合の Entra ID 手動接続」を参照してください。
最初のプロジェクトの作成
Organization 作成後、続けて「Create a project to get started」画面に遷移します。後から作成する場合は dev.azure.com/{organization名} にアクセスし、[New project] を選択します。
以下の項目を入力します。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| Project name | グローバルで一意な名前を入力します |
| Description | 任意 |
| Visibility | Private(後述) |
[Advanced] を展開すると以下の項目が表示されます。
| 項目 | 選択肢 | 推奨 |
|---|---|---|
| Version control | Git / TFVC | Git |
| Work item process | Agile / Scrum / CMMI / Basic | Scrum または Basic |
Work item process はプロジェクト作成後に変更できません。 後から変更が必要な場合はプロジェクトを再作成することになるため、最初に慎重に選択してください。
入力後、[+ Create project] をクリックするとプロジェクトが作成されます。
Visibility が Private に固定されている場合について
Entra ID テナントに接続された Organization では、組織ポリシーによりパブリックプロジェクトの作成が無効化されているため、Visibility が Private のみの表示になります。これは意図した動作であり、組織利用においても Private が推奨です。
Entra ID テナントに接続された Organization では、このポリシーの切り替え項目自体が Policies 画面に表示されません。パブリックプロジェクトが必要な場合は、画面上の案内にある通り GitHub の利用を検討してください。
ユーザーの追加
Organization レベルへの追加
[Organization Settings] > [Users] > [Add users] からユーザーを追加します。
ライセンスの種類は以下の通りです。
| Access level | 主な用途 | 無料枠 |
|---|---|---|
| Basic | 開発者・一般ユーザー | 5 名まで無料、6 名目以降は有料 |
| Basic + Test Plans | テスト管理機能も使う場合 | 有料 |
| Stakeholder | 作業項目の参照・更新のみ | 無制限・無料 |
| Visual Studio Subscriber | VS サブスクリプション所持者 | 無料(5 名枠にカウントされない) |
メールアドレスが未発行のユーザー(検証用アカウントなど)を追加したい場合
招待メールを送信しなくてもユーザーの追加自体は可能です。管理者側でユーザーを追加した後、以下の URL を当該ユーザーに案内してください。
https://dev.azure.com/<組織名>/
ユーザーは自身のアカウントでサインインすることで、招待メールなしでプロジェクトにアクセスできます。
プロジェクトレベルへの権限設定
[Project Settings] > [Permissions] または [Teams] から、プロジェクト単位のロールを割り当てます。
| グループ | 用途 |
|---|---|
| Project Administrators | プロジェクト全体の設定変更・権限管理 |
| Project Contributors | リポジトリ・ボードなどの読み書き(一般開発者向け) |
| Project Readers | 参照のみ |
リポジトリの初期設定と必要権限
プロジェクト作成後、[Repos] > [Files] から Git リポジトリを初期化します。
[Initialize] を選択すると README を含めた初期化が実行されます。
Repos 利用に必要な最小権限
Clone・Push・Branch 作成・PR 作成を行うために必要な最小構成は以下の通りです。
| 設定項目 | 値 |
|---|---|
| Access level | Basic |
| Security group | Project Contributors |
Stakeholder ではリポジトリ操作がほぼ利用できないため注意してください。Admin 権限は不要です。
Basic ユーザーの無料枠は 5 名まで
6 名以上が Repos を利用する場合は、追加の Basic ライセンス費用が発生します。Visual Studio サブスクリプション所持者は無料枠にカウントされないため、後述の「Visual Studio サブスクリプション所持者の活用」も参照してください。
ブランチポリシーの設定
[Repos] > [Branches] で main ブランチの右メニューから [Branch policies] を選択します。主な設定項目は以下の通りです。
- Require a minimum number of reviewers: PR のマージにレビュー承認を必須にし、承認に必要なレビュワーの最少人数を指定します
- Check for linked work items: 作業項目リンクを必須にします
- Check for comment resolution: コメントの解決を必須にします
Visual Studio サブスクリプション所持者の活用
Visual Studio Professional / Enterprise のサブスクリプションを持つユーザーは、Azure DevOps の Basic(または Basic + Test Plans)を無料で利用できます。また、このユーザーは 5 名の無料枠にカウントされないため、Basic ライセンスのコスト削減に活用できます。
別テナントのアカウントで利用する場合(代替 ID の設定)
VS サブスクリプションが割り当てられているアカウントと、Azure DevOps にサインインするアカウントが異なる場合(例:個人の MSA でサブスクを取得し、職場の Entra ID アカウントで DevOps を使いたい場合)は、代替 ID(Alternate Identity) を設定します。
- https://my.visualstudio.com/subscriptions にサブスクリプションのアカウントでサインインします
- [Add alternate account] をクリックします
- Azure DevOps で使用する職場・学校アカウントのメールアドレスを入力して [Add] します
設定後、Azure DevOps に代替 ID でサインインするとサブスクリプションが自動認識され、特典が適用されます。
代替 ID は 1 アカウントにつき 1 件のみ登録可能です。
複数の職場アカウントを登録することはできません。
Billing の設定(有料機能を使う場合)
Parallel job(並列パイプライン実行)や追加ユーザーライセンスが必要な場合は、Azure サブスクリプションとの紐付けが必要です。
[Organization Settings] > [Billing] > [Set up billing] から Azure サブスクリプションを選択して紐付けます。
無料枠の範囲は以下の通りです(2026年4月時点)。
| 機能 | 無料枠 |
|---|---|
| Basic ユーザー | 5 名 |
| Artifacts ストレージ | 2 GiB |
| Microsoft-hosted CI/CD(パブリックプロジェクト) | 無制限 |
| Microsoft-hosted CI/CD(プライベートプロジェクト) | 月 1,800 分 |
| Self-hosted CI/CD | 1 parallel job 無制限 |
確認チェックリスト
開設後、以下を確認してください。
- Organization 名が意図した名前になっている
- Organization を作成したアカウントのテナントが意図したテナントになっている
- Entra ID テナントへの接続が完了している([Organization Settings] > [Microsoft Entra])
- External guest access の設定が意図した状態になっている([Organization Settings] > [Policies] > [External guest access])
- 管理者ユーザーが複数名設定されている(単一障害点を避けるため)
- Billing が必要な場合、Azure サブスクリプションと紐付けられている
補足:MSA で作成した場合の Entra ID 手動接続
個人の Microsoft アカウント(MSA)で Organization を作成した場合、Entra ID テナントへの接続は自動では行われません。組織の Entra ID テナントに接続することで、条件付きアクセスや SSO の適用、ゲストアクセスの制御が可能になります。
[Organization Settings] > [Microsoft Entra] > [Connect directory] から対象テナントを選択して接続します。
注意: テナント接続後、接続前に追加した Microsoft アカウントユーザーはアクセス不能になります。接続前にメンバー一覧を確認してください。
はまりポイント:別テナントのユーザーが外部扱い(Guest)になる
Azure DevOps Organization のホームテナントは、Organization を作成したユーザーが所属する Entra ID テナントによって決まります。Azure サブスクリプションのテナントとは独立しています。
例として、テナント A のサブスクリプションを使いながら、テナント B に所属するユーザーで Organization を作成した場合、テナント A のユーザーは全員「外部ユーザー(Guest)」扱いになります。この状態では外部招待ポリシーに引っかかるため、ユーザー追加が失敗することがあります。
暫定対応(障害時など一時的に別テナントのユーザーを利用する場合):
[Organization Settings] > [Policies] > [External guest access] を ON にして対象ユーザーをゲストとして招待します。問題解消後は OFF に戻してください。
恒久対応:
Organization を利用するメンバーが所属する正規テナントのアカウントで Organization を作り直してください。
まとめ
本記事では Azure DevOps Organization の新規開設からプロジェクト作成、ユーザー追加、リポジトリ初期設定までの基本手順を解説しました。
特に詰まりやすいポイントとして以下が挙げられます。
- サインイン時は
https://aex.dev.azure.com/meを使う - Organization のホームテナントは「作成者の Entra テナント」で決まる(サブスクリプションのテナントとは独立している)
- Repos 利用には Basic + Project Contributors が必要(無料は 5 名まで)
- VS サブスクリプション所持者は代替 ID を設定することで無料枠を活用できる
開設後は Pipelines(CI/CD)・Boards(タスク管理)・Artifacts(パッケージ管理)といった各サービスの設定に進んでいく形になります。それぞれの詳細設定については別記事で解説予定です。
参考情報
- Azure DevOps とは - Azure DevOps | Microsoft Learn
- 組織の作成 - Azure DevOps | Microsoft Learn
- Azure DevOps を Microsoft Entra ID に接続する | Microsoft Learn
- アクセス レベルについて - Azure DevOps | Microsoft Learn
- サブスクライバーの Azure DevOps 特典の資格 - Visual Studio Subscription | Microsoft Learn
- Visual Studio サブスクリプション ポータルの使用 | Microsoft Learn
- Azure DevOps の価格 | Microsoft