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Statcastデータで見る今永昇太の「2年目の変化」(2024-2025)

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はじめに

MLB2年目のシーズンは「Sophomore Slump(2年目の壁)」と呼ばれることがあります。1年目のデータが蓄積され、対戦相手のスカウティングが進むためです。

カブスの今永昇太投手は、2024年のルーキーイヤーに29試合に登板。2025年は前半こそ好調に見えましたが、後半にかけて成績が悪化した印象があります。

この記事では、Statcastの投球データを「2024年」「2025年前半」「2025年後半」の3期間に分け、何が変わったのかをデータで見ていきます。あくまでデータから読み取れる傾向の紹介であり、投手本人の意図や判断について断定するものではありません。

分析に使用したGoogle Colabノートブックは記事末尾のリンクから実行できます。

3期間の概要

オールスターブレーク(7月中旬)を境に2025年を前半・後半に分けています。

期間 登板 投球数 FF平均球速 球種数
2024 29試合 2,594球 91.7 mph 8種
2025前半 12試合 1,026球 90.9 mph 6種
2025後半 13試合 1,152球 90.8 mph 6種

2025年はフォーシームの平均球速が約1mph低下し、使用球種も8種から6種に減っています。

球種配分の変化

球種 2024 2025前半 2025後半 変化の方向
FF(フォーシーム) 51.9% 49.5% 47.9% やや減少
FS(スプリット) 30.8% 35.6% 27.6% 前半増→後半減
ST(スウィーパー) 7.6% 11.1% 21.5% 後半に急増
CH(チェンジアップ) 3.8% 0.0% 0.0% 消滅
CU(カーブ) 3.2% 2.7% 0.6% ほぼ消滅

2024年はFF+FSの2球種で約83%を占めつつ、CH・CU・SI・STなど脇役を混ぜる構成でした。

2025年後半にはFF+FS+STの**3球種で97%**を占める構成に変わっています。STの使用率が7.6%→21.5%と約3倍に増えたのが最大の変化です。

被打球指標の推移

投球の「結果」を見るため、被打球の質を表す指標を期間別に比較します。

xwOBA(Expected Weighted On-Base Average)は、打球速度と打球角度から「統計的にどれくらいヒットや長打になりやすいか」を算出する指標です。守備の影響を除いた、打球の質そのものを表します。投手の被xwOBAは低いほど良く、.320前後がMLB平均的な水準です。

期間 xwOBA Hard Hit% 平均Exit Velo
2024 .366 22.7% 81.7 mph
2025前半 .339 25.0% 83.3 mph
2025後半 .408 28.8% 82.6 mph

2025前半のxwOBA .339は2024年(.366)より良い数値です。前半は好調だったことがデータからも確認できます。一方、後半の.408はかなり打ち込まれていることを示しています。

月別で見ると9月が突出

2025年 xwOBA Hard Hit%
3月 .226 26.3%
4月 .431 23.7%
5月 .305 21.9%
6月 .232 15.6%
7月 .333 26.2%
8月 .336 22.6%
9月 .496 40.1%

4月に一度悪化した後、5-6月に立て直しています。7-8月も.333-.336とまずまずの水準です。

しかし9月にxwOBA .496、Hard Hit% 40.1%と大幅に悪化しています。シーズン終盤の疲労やスカウティングの蓄積など、複数の要因が重なった可能性があります。

打順周り(TTO)分析:1巡目から打たれている

同じ打者と1試合で何度対戦するかで分けた結果です。

打順周り 2024 xwOBA 2025前半 2025後半
1巡目 .357 .331 .505
2巡目 .347 .320 .378
3巡目+ .404 .395 .316

通常、「2巡目・3巡目で打たれる」パターンが多いですが、2025年後半は1巡目のxwOBAが.505と極めて高くなっています。

1巡目から打たれているということは、「試合中に球種を見極められた」というよりも、試合前の段階でスカウティングが進んでいる可能性を示唆しているように見えます。

スプリット(FS)の空振り率低下

今永投手の最大の武器であるスプリットの空振り率が低下しています。

期間 空振り率 チェイスゾーン率 チェイスゾーン空振り率
2024 41.1% 59.7% 55.8%
2025前半 28.0% 52.1% 38.2%
2025後半 33.2% 53.5% 40.5%

チェイスゾーンはストライクゾーンの外側(ボール球)のエリアです。投手にとっては「ボール球を振らせる」ことが空振りを取るカギになります。

2024年はスプリットの約60%をチェイスゾーンに投げ、空振り率55.8%を記録していました。2025年にはチェイスゾーンへの投球率が52-53%に減少し、空振り率も38-40%に低下しています。

打者がボールゾーンのスプリットを見逃すようになっていることが読み取れます。1年分のデータが蓄積され、スプリットの軌道や投げるカウントが研究された結果かもしれません。

スウィーパー(ST)の左右別データ

後半に急増したスウィーパーの効果を、打者の左右別で見てみます。

対左打者

期間 投球数 空振り率 被xBA
2024 173球 36.0% .350
2025前半 86球 42.4% .265
2025後半 94球 42.0% .582

対右打者

期間 投球数 空振り率 被xBA
2024 23球 20.0% .493
2025前半 28球 28.6% .124
2025後半 154球 25.4% .384

左打者に対しては空振り率42%を維持しているにもかかわらず、被xBAが.265→.582と大幅に悪化しています。「空振りは取れるが、当てられた時に痛打される」という状態に見えます。

右打者へのSTは2025後半に154球と大幅に増えました(2024年は23球)。こちらも被xBAは.384と高めです。使用頻度が上がったことで打者側の準備が進んだ可能性があります。

フォーシーム球速とスプリットの速度差

期間 FF平均 FS平均 速度差
2024 91.7 mph 82.9 mph 8.8 mph
2025前半 90.9 mph 82.7 mph 8.2 mph
2025後半 90.8 mph 83.2 mph 7.6 mph

FF-FS間の速度差が8.8mph→7.6mphに縮まっています。フォーシームとスプリットは「途中まで同じ軌道に見える」ことで打者を惑わす組み合わせですが、速度差が縮まるとその効果が弱まる可能性があります。

まとめ

今永投手の2024-2025年のStatcastデータには、以下のような傾向が見られました。

  • 球種の集中: FF+FS+STの3球種で97%を占め、CH・CUがほぼ消滅
  • スプリットの空振り低下: チェイスゾーンのスプリットを打者が見逃す傾向が強まった
  • スウィーパー急増の裏目: 使用率3倍増だが、対左被xBA .582と痛打される
  • 1巡目から被打: 2025後半は1巡目xwOBA .505。試合前スカウティングの影響の可能性
  • 9月に集中悪化: xwOBA .496、Hard Hit% 40.1%
  • FF-FS速度差の縮小: 8.8mph→7.6mph

2025年前半はxwOBA .339と2024年より良い数値を残しており、シーズンを通して不調だったわけではありません。後半、特に9月の悪化が全体の数字を押し下げている構図です。

球種配分の単調化とスカウティング対応の進行が重なったことが要因のひとつとして考えられますが、疲労やコンディションの影響など、データからは読み取れない要素もあります。

注意: 2025年前半(12試合・1,026球)と後半(13試合・1,152球)はサンプルサイズが限られており、月別データはさらに少なくなります。特に球種別・左右別の数値はブレが大きい可能性があります。

Google Colabで分析を再現する

この記事の分析は以下のノートブックで再現できます。PITCHER_IDを変えれば他の投手にも応用可能です。

Open In Colab

参考

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