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アメリカの大学で学ぶ文章の書き方

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はじめに

この記事は DENSO アドベントカレンダー 2025 の8日目の記事です。

学生の頃アメリカに留学していたのですが、アメリカの大学では全員が1年生のときに文章の書き方を学びます。一般に、アメリカではEssay WritingやAcademic Writingと呼ばれているものです。
この文章の書き方が非常に体系的で有用だと感じたので、今回はその内容を紹介したいと思います。

アメリカの大学でのEssay Writingと日本の文章スタイルの違い

アメリカの大学で学ぶEssay Writingでは、「導入」→「主張」→「根拠」→「結論」というように明確で直線的な論理構造が基本です。

また、その文章において重要な主張や根拠は、書く場所が決まっているため、読み手が内容を把握しやすい構成となっています。
英語の試験の長文で、数行読むだけで内容が把握できるといったハックを聞いたことがあると思いますが、まさにあれはこの構成のおかげです。
特に、「主張」が導入直後に述べられるところが特徴で、結論が文章の最初に来るため、読み手は文章を読み進める前に、何が主張されているのかを理解した上で内容を把握できます。

一方で、日本の文章でよく言われる「起承転結」では、結論が最後に来ることと、「転」で話が変わるため、読み手にとっては論理構造が把握しづらいことがあります。

基本的には、アメリカのEssay Writingでは、読者に行間を推測させるのではなく、誰が読んでも同じ結論にたどり着くように、明快に書くことが求められるため、特に技術文書を書く際には非常に有用なスキルだと感じています。

Essay Writingの基本構成

Essay Writingの基本構成ですが、ここでは最も一般的な5段落エッセイの構成を紹介します。

  1. Introduction(導入): 導入と主張提示
  2. Body Paragraph 1(本論1): 主張を支える根拠①
  3. Body Paragraph 2(本論2): 主張を支える根拠②
  4. Body Paragraph 3(本論3): 主張を支える根拠③
  5. Conclusion(結論): 全体のまとめと締めくくり

Body Paragraphは必要に応じて増やすことも可能です。
文章全体で見ると以下のような構成になります。

Image from Gyazo
文章の引用元はこちらです。文章の内容は今回の内容と一切関係ないのであしからず。

では、各パラグラフの詳細を見ていきましょう。

1. Introduction(導入)

Introductionでは、冒頭で読者を文章に引き込み、テーマを提示し、最終的にエッセイの主張を明確に示す部分です。
Introductionでは、大きく分けて次の3つの要素を含めることが一般的です。基本的には、広く始めて、徐々に具体的な主張に絞り込んでいくイメージです。

  • 一般的な話題の導入:つかみ/フック
    • エッセイのトピックに関する一般的な背景や前提知識を示します。興味を引くために、関連する逸話や引用、驚くような事実で始めると効果的です。
  • 背景説明や文脈:ブリッジ
    • 最初の導入で得た関心を、最後の「主張」へとスムーズにつなぐための橋渡しの部分です。テーマに関する必要な背景知識、用語の定義、現在の状況などを説明し、読者が次の核心的な主張を理解するための土台(文脈)を作ります。
  • 主題:Thesis Statement
    • Introductionの最後でエッセイ全体の主張を一文で端的に述べます。この文がエッセイの軸(論点そのもの)となります。
    • 後述のBody ParagraphのTopic Sentenceと違い、Introductionの最後に来ます。

Introduction全体のイメージは以下の図のようになります。
Image from Gyazo

ポイントと注意事項

  • 主張を明確に
    • 序論を読んだ段階で、読者は筆者の立場や論点を把握できる必要があります。エッセイ全体の主題を示す重要な一文であるThesis Statementは、序論の最後に配置することが一般的です。
  • 冗長にならない
    • 序論はあくまで「これから展開する内容の一般紹介」です。詳細な議論や個々の例はBody Paragraphに譲り、序論ではテーマ設定と主張提示に徹します。
  • 読者を引き込む工夫
    • 必須ではありませんが、序論の書き出しで興味を引く工夫をするとなお良いです。統計データや意外な事実、簡単なエピソードや引用などを冒頭に据えると読者の注意を掴みやすくなります。
    • ただし、この文章を読む読者層が明確な場合などは、あまり冗長にせず、簡潔に主張に入る方が良い場合もあります。

2. Body Paragraph(本論)

Body Paragraphはエッセイの中核部分で、Introductionで提示したThesis Statementを支える具体的な論拠や証拠を述べる段落群です。
通常、各Body Paragraphはそれぞれ異なるサブトピックや根拠を扱い、全体として主張を多角的に裏付ける構成になります。
5パラグラフエッセイでは3つのBody Paragraphを用いることが多く、主張を支える主要な理由・根拠を3点挙げる形が典型的ですが、必要に応じて段落数を増減させることも可能です。

各Body Paragraphの書き方

各Body Paragraphは以下の要素で構成されるのが一般的です。

  • Topic Sentence
    • 段落の冒頭文で、その段落が扱うテーマ(根拠の概要)を示します。Thesis Statementを支持する具体的なポイントを明確に述べます。
    • 前段落(Introductionや前のBody Paragraph)とのつながりを意識し、適切な接続詞やフレーズで始めることで論理の流れを維持します。
    • Thesis Statementと違い、段落の冒頭に来ます。
  • 説明・具体例・証拠
    • Topic Sentenceで提示した主張を裏付ける説明や具体例を述べていきます。事実データや引用、具体的な事例などがあればここで紹介し、それらがTopic Sentenceの主張をどうサポートするか解説します。
    • 根拠→説明の流れは1つの段落で複数組み込んでも構いませんが、1つの段落で扱うテーマは1つだけに絞るのが鉄則です。
      • このあたりは、ソフトウェアと同じで単一責任の原則に似ていますね。
  • ミニ結論
    • 各段落の末尾では、その段落で述べたことを簡潔にまとめる一文を入れると効果的です。
    • このようにBody Paragraphはそれぞれが“小さなエッセイ”のような構成を持っていると考えると良いです。

ポイントと注意事項

  • 段落ごとに一貫性を保つ
    • 前述の通り、1段落につき1つの論点に集中してください。その段落内のすべての文がTopic Sentenceに関連していることが重要です。
  • 論理的な流れと接続
    • 段落が変わる際には、接続詞(例:「まず」「次に」「さらに」等)や指示語を用いてスムーズに話題をつなぎ、段落間の論理の飛躍を防いで、全体が一本の筋として通るようにします。唐突な話題転換は読み手を混乱させる原因となります。
  • Thesis Statementとの関連付け
    • 各Body Paragraphを書いたら、それが序論の主張(Thesis)を直接支えているか確認しましょう。
  • ボディ段落の数とバランス
    • 根拠が複数ある場合、各段落のボリュームはできるだけ均等にします。極端に短い段落や逆に長すぎる段落があると、論証の重みづけに偏りが出て読みづらくなります。

3. Conclusion(結論)

Conclusionはエッセイ全体の締めくくりであり、序論で提示した主張を再確認し、議論全体をまとめるパートです。
主な構成要素は以下の通りです。

  • 主題の再提示
    • 最初にエッセイの主張(Thesis Statement)を言い換えてもう一度示します。
    • Thesis StatementをそのままコピペするのはNGで、異なる表現で再提示することで新鮮さを保ちつつ主張を強調します。
  • 議論の要約
    • 主張を支えた各ボディ段落の内容を手短にまとめます。すべての根拠が論理的に繋がっていることを再確認します。
  • 広い視点での締めくくり
    • 議論を要約した上で、「だから何なのか?」「今後どうなるのか?」という広い視点で締めくくります。

Introductionとは反対に、Conclusionでは具体的な結論から始まり、徐々に広い視点へと展開していきます。
Image from Gyazo

ポイントと注意事項

  • 新たな論点は導入しない
    • 結論では新しい情報や議論を持ち出さず、あくまでこれまでの内容をまとめることに専念します。
  • 簡潔にまとめる
    • 結論はエッセイ全体の要約であり、冗長にならないように注意します。主張とその根拠を簡潔に再確認することが重要です。

全体を通したポイント

  • 一貫したテーマ
    • エッセイ全体を通じてThesis Statementで述べた内容を維持します。各段落は、主張を支えるために必要な情報だけを含め、脱線しないようにします。
  • 論理の一貫性と接続詞の活用
    • 各段落間および段落内で論理の流れが途切れないように注意する必要があります。適切な接続詞や指示語を用いて段落や文章をつなぐことで、読み手がスムーズに内容を追えるようにします。
  • 客観性と形式的な文体
    • 主観的すぎる表現は避け、できるだけ客観的・中立的な調子で書きます。「私」や「私たち」という一人称は避け、第三者的な視点で議論を展開します。

実例

ここまでの説明を踏まえ、実際に「企業で働く日本のエンジニアもエッセイライティングを学んだほうが良い」をテーマに5パラグラフエッセイを書いてみました。
実際にエッセイを書くときは太文字などは使用しませんが、今回はどの文章がThesis Statementで、どの文章がTopic Sentenceか分かるように、一部太文字を使用しています。


(Introduction)日本の企業では、エンジニアに対して技術的なスキルの習得が最優先される一方で、文章作成能力の向上はしばしば見過ごされている。しかし、システム設計書、障害報告書、プロジェクト提案書など、エンジニアの業務において文書作成は避けて通れない。実際、HR総研の2021年調査によれば、94%の企業が「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と認識しており、「迅速な情報共有」に支障をきたしているケースは87%に達する(HR総研, 2021)。さらに深刻なのは、日本では体系立てた文章教育が不足しているため、同じ内容を伝えるにも人によって文章構造が大きく異なり、読み手が書き手の意図を正確に理解できないケースが頻発していることである。日本の企業で働くエンジニアは、技術的スキルだけでなく、アメリカの大学で教えられるエッセイライティングの原則を学び、構造化された文章作成能力を身につけるべきである。 (Thesis Statement)

(Body Paragraph 1) エッセイライティングの原則を学ぶ最大のメリットは、コミュニケーション効率が劇的に向上し、測定可能な経済的効果をもたらすことである。(Topic Sentence) McKinsey Global Instituteの調査によれば、ナレッジワーカーは労働時間の20〜30%を情報検索に費やしており(McKinsey, 2012)、さらにIDC Researchは、1,000人のナレッジワーカーを抱える企業では情報が見つからないことによる生産性損失が年間570万ドルに達すると報告している(IDC, 2014)。アメリカ式のエッセイでは、文章の最初に主張(Thesis Statement)を明確に提示し、各段落も冒頭のTopic Sentenceで要点を示す。この構造を技術文書に適用すれば、読み手は文書の冒頭数行を読むだけで全体の結論と方向性を把握でき、情報検索時間を大幅に削減できる。例えば、システム障害報告書において「結論として、本障害の原因はデータベース接続プールの枯渇であり、対策として接続数の上限を引き上げる必要がある」と冒頭に記載すれば、多忙な管理職も数秒で状況を理解できる。名古屋大学の渡辺雅子教授の比較研究によれば、日本の生徒の93%が時系列構造(出来事を順番に述べる)で記述するのに対し、アメリカの生徒は因果律構造(結論から原因を遡る)を使用する(渡辺, 2007)。この違いが、日本企業における「最後まで読まないと結論が分からない」文書の氾濫を招いているのである。構造化された文章は、組織全体の意思決定速度を高め、プロジェクトの生産性向上に直結する。

(Body Paragraph 2) エッセイライティングを学ぶことで、組織内のドキュメント品質を標準化できるという利点もある。(Topic Sentence) 現状、日本企業では各エンジニアが我流で文章を書くため、同じ種類の文書でも構成やスタイルがバラバラになりがちである。この問題は単なる美観の問題ではなく、実際のプロジェクト成果に影響を与える。Stripeの2018年調査では、開発者は週あたり17.3時間(労働時間の42%)を技術的負債やバグ修正に費やしており、世界全体での生産性損失は年間850億ドルに達する(Stripe, 2018)。この技術的負債の一部は、ドキュメント不備や仕様の曖昧さに起因している。Introduction-Body-Conclusionという共通の枠組みと、Topic Sentence、Supporting Evidence、Analysisという段落構造を組織全体で共有すれば、誰が書いても一定の品質と可読性を保った文書が作成できる。実際、設計書レビューの場面を考えてみると、構造が統一されていれば、レビュアーは「どこに何が書いてあるか」を予測できるため、レビュー時間が短縮され、フィードバックの質も向上する。Graham & Perinの大規模メタ分析は、構造化された文章指導が効果量0.82〜1.17という顕著な改善をもたらすことを実証しており(Graham & Perin, 2007)、適切な教育投資が測定可能な成果につながることを示している。標準化された文章構造は、組織の知識共有と人材育成を促進する基盤となる。

(Body Paragraph 3) さらに、グローバル化が進む現代において、英語での技術文書作成が求められる場面も増えている。(Topic Sentence) World Economic Forumの「Future of Jobs Report 2025」によれば、2030年までに労働者のコアスキルの39%が変化すると予測され、企業が最も重視するスキルとして「分析的思考」が70%、「リーダーシップと社会的影響力」が上位に挙げられている(WEF, 2025)。また、American Society for Engineering Educationの調査では、多国籍企業の雇用者の79〜91%が「異文化間コミュニケーション能力」を重要と評価した(ASEE, 2015)。アメリカ式のエッセイライティングは、英語圏で広く共有されている文章作成の標準であり、この原則を理解していれば、英語で書く際にも論理的で説得力のある文書を作成できる。例えば、海外顧客向けの技術提案書や、オープンソースプロジェクトへの貢献文書では、明確なThesisと体系的な論拠の提示が不可欠である。日本語で構造化された文章を書く訓練を積んでいれば、その思考プロセスは英語でも応用可能であり、言語の壁を越えて効果的にコミュニケーションできる。経団連の調査では、コミュニケーション能力が16年連続で新卒採用時に最も重視される能力(82〜83%)としてトップを維持しており(経団連, 2018)、グローバル環境で働くエンジニアにとって、この能力は必須のスキルと言える。

(Conclusion)日本の企業で働くエンジニアがエッセイライティングを学ぶことは、単なる文章スキルの向上にとどまらず、組織全体のコミュニケーション効率、ドキュメント品質、そしてグローバル競争力の強化につながる。Holmes Reportによれば、効果的なコミュニケーションスキルを持つリーダーがいる企業は、5年間で株主リターンが47%高いという結果が示されており(Holmes Report, 2011)、文章力への投資は測定可能なROIをもたらす。技術的な専門知識だけでは不十分であり、その知識を明確かつ効果的に伝える能力が、これからのエンジニアには求められる。アメリカの大学で標準的に教えられる体系的な文章作成法を取り入れることで、日本企業は「我流」の文章作成文化から脱却し、より生産的で国際的に通用する組織へと進化できるだろう。構造化された文章指導の効果量が0.82〜1.17と実証されている今(Graham & Perin, 2007)、エンジニア教育において文章作成能力の育成を重視すべき時である。

引用文献

  • HR総研 (2021). 社内コミュニケーションに関するアンケート2021結果報告
  • McKinsey Global Institute (2012). The social economy: Unlocking value and productivity through social technologies
  • IDC Research (2014). The high cost of not finding information
  • Stripe (2018). The Developer Coefficient
  • Graham, S., & Perin, D. (2007). Writing Next: Effective strategies to improve writing of adolescents in middle and high schools. Carnegie Corporation of New York
  • 渡辺雅子 (2007). 納得の構造:日米初等教育に見る思考表現のスタイル
  • World Economic Forum (2025). The Future of Jobs Report 2025
  • ASEE (2015). Global Competence: Determination of its Importance for Engineers Working in a Global Environment
  • 経団連 (2018). 新卒採用に関するアンケート調査結果
  • Holmes Report (2011). The Cost of Poor Communications

なんとなくイメージがついたでしょうか?

終わりに

今回はアメリカの大学で学ぶEssay Writingの基本構成とポイントについて紹介しました。
この文章の書き方の最大のメリットは、どこに何を書くべきかを書き手も読み手も理解していれば、非常に効率的にコミュニケーションが取れる点にあると思います。

文章が人と人とのコミュニケーションのインターフェースの一種であると考えると、インターフェースを適切に設計し、受け取る側と送る側の双方がその設計に従うことで、コミュニケーションの効率が大幅に向上するのは当然のことです。
この考え方は、ソフトウェア設計の原則とかなり近いような気がします。

昨今、生成AIの発展によりドキュメントの重要性が再認識されていると思います。このような体系的な文章の書き方は、生成AIにドキュメントを生成させる際にも非常に有用ではないでしょうか。

ドキュメント標準化の一環として、ぜひ皆さんもEssay Writingの基本構成を取り入れてみてはいかがでしょうか。

こぼれ話

この内容を元にChat GPTとClaude(Sonet4.5)とGeminiに「企業で働く日本のエンジニアもエッセイライティングを学んだほうが良い」をテーマに5パラグラフエッセイを書かせてみたのですが、Claude(Sonet4.5)が一番良い文章を書いてくれました。

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