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LEDを選定してみた

Last updated at Posted at 2024-09-18

目次

  1. はじめに
  2. LEDとは
  3. 「で?そんな話はいいからどうやって使うんだよ。」「自分が試しにLチカしてみた!」
  4. 「眩しい」 or 「弱々しい光」なんだけどどうすりゃいいのさ?
  5. LEDを選定してみた
  6. おわりに

1. はじめに

みなさん、電子工作でLチカをしたことがありますか?
私はこの記事を書くまで、やったことがありませんでした(笑)

電子回路の設計ができるようになるまで、ぶっちゃけLチカのことをナメていたのですが、仕事を通じて電子回路の設計を学んできた自分が、会社で電子回路の設計を行ううちに、Lチカが結構バカにならないと気が付いたので、この記事を書くことにしました。

Lチカは、電子工作初心者向けとして紹介されていますが、「Lチカを行う意義」についてちゃんと解説しているサイトや本が見当たらないため、その意義について自分が考えたことを書けたらなぁ、と思ってこの記事を書いてみました。(自分の見る目がないとも言う)

正直、こうやって人に自分の知識や考えを公の場にひけらかすようなものを書いたことがないので、日本語のおかしいところや文法間違いだけでなく、技術的な知識の間違いもあると思います。
そういうところはスルーするか優しくご指摘頂けると助かります。(お手柔らかにお願いします。。。)

唐突な自分語り(読み飛ばし推奨)

今でこそ「回路の設計がそこそこできるようになった」と思っていますが、会社に入社する前は「抵抗?コンデンサ?トランジスタ?なにそれ」状態でしたし、大学で習った内容は覚えていても応用に関してはちんぷんかんぷんでした。
電子工作も行ったことがなく、中学と大学の授業の中で行った半田付け以外に、自分で手を動かして電子回路を作るという経験もなく、半田付けをするような経験もありませんでした。
そもそも、自分の周りに電子工作を趣味にしている人やハードウェアのエンジニアが皆無だったので、「ハードウェアの設計って、どんなことをしているのか」話を聞くことも「ハードウェアの設計って、何から始めれば良いのか」自分で調べることもままなりませんでした。
(ハードウェアだけでなくソフトウェアのエンジニアもいません。親族はみんな営業や経理、畳屋などで、工業全般まで広げて見ても技術者0人。)
高校物理で初めて電気の理論に触れることができて楽しくなったものの、高校物理をよく理解ないまま技術の社会的な重要性から「技術さえ身に付けば、食いっぱぐれることもないだろう」と考え、勢いに任せて電気の学科を選択し…大学で机上の勉強だけして就職しました。

はい。
お分かりかと思いますが、就職先でめちゃくちゃ苦労しました。
「大学で勉強した知識を使った仕事がしたい!!!」と考えていましたが、自分で手を動かした経験のない自分は大学の知識を活かす前の段階で躓いたため、ダメダメでした。
そもそも「LEDを光らせるのってどうやるの?」と聞かれても当時の自分では答えられないでしょう。
その程度の知識量だったので、上司や先輩にチクチクされました。。。
それでも「電気の知識で食っていけるようになりたい!」なんて、無い意地を張って頑張って、、、最近やっと「『初心者』は抜けられたのかなぁ。。。」なんて考えるようになった「ヘボエンジニア」が、備忘録的にこの記事を書きました。

何が言いたいのか

はっきり言います。

Lチカは「初心者向け」とされているので、昔の自分はLチカを舐めていました。
ですが、Lチカはちゃんと考えると奥が深く、初心者から次のステップへ進むための必要な習慣が手に入れられると思います。

電子回路の理解は、焦ってはいけません。焦りは遠回りになります。
なので、暇なときにコツコツと知識の習得が必要です。仕事で追い詰められたときに勉強するものじゃないです。断じてないです。本当ですよ?(知識や知恵・技術が頭に入るのは追い詰められたときですけど。。。)
電子回路の設計には、「一つ一つ理論と実際を照らし合わせて挙動を把握する忍耐」と「設計を的確にまとめる作業の素早さ」の両立が必要になります。

まずは、人のモノマネをしてシミュレーションを回したり、実際に電子回路を組んでみたりして回路の動作を学び、自分で回路の組み合わせを変えた応用ができるようになっていくしか道がありません。
「高校数学の解き慣れ」みたいなものですね。「いくつものパターンを頭の中に入れて、組み合わせて、回路を設計する」という作業を行うためには、基本的な回路の動作から学んでいくべきです。

この記事がみなさんのLED回路設計のチートシートになることを願っています。

2. LEDとは

ダイオードとは、P型半導体とN型半導体を原子の一つ一つまでピッタリくっつけようと、頑張って(接合1して)作った半導体素子のことで、整流子とも言います。
そんなダイオードの中でも異質なものがLEDで、なんとこのダイオード、発光 します!

え?
「何、『発光する』なんて当たり前のことを大げさに」だって?
あのさぁ。
ダイオードって順方向電圧がしきい値を超えたらターンオン2して、電流が0クロス3したらターンオフ4する素子のことだよ?
そんな特性のある半導体素子には、な・ぜ・か発光するって特性もあるんだよ?
普通の『整流用ダイオード』と『発光ダイオード(LED)』って何が違うのか気にならない?
もちろんLチカをやろうと思う人なら気になるよね?
技術者になりたいなら、気にしろ!!(豹変)



……はい。。。

整流用のダイオードとLEDの違いは、整流用のダイオードに使っている材料発光ダイオードに使っている材料が異なることなんです。
どちらも 動作原理は同じなんです。

なので、理論上はどちらも 同じく 整流ができますし、発光もします。
しかしながら、実際には整流用ダイオードは整流用に調整されていますし、発光ダイオードは可視光で発光しやすいように調整されています。
なので、ダイオードの使い分けが大切になってくるわけです。(使い分けなくても使えなくはないけれど特性を活かしきれない)

動作概要

ここからは、小難しい話になります。
ダイオードの動作原理を説明するので、まずは適当な原子を頭の中で一つ思い浮かべてください。
原子が電界の中にいると、原子核の周りに存在している電子は、電気エネルギーを受け取ったりスルーしたりします。

どの量のエネルギーを電子が受け取るのか は、電子がどこの軌道にいるのか(K殻、L殻、M殻などの電子殻)に依存 していて、その軌道から外れるのに十分なエネルギー でなければ、電子はエネルギーを受け取りません(何も反応が起こりません)
これは量子力学的にわかります。

対して、十分なエネルギーを受け取った電子 は、「原子から飛び出す」か「今いる軌道よりも高いエネルギーの軌道に遷移する(外側の殻へ移動する)」か して、元の軌道から外れます。

すると、原子はエネルギー的に不安定になるので、安定化しようと動き「イオン化した原子に電子が入ってくる」か「高いエネルギーの軌道から低いエネルギーの軌道へ電子が遷移しようとする(内側の殻へ移動する)」か して、安定化しようとします。

このとき安定化のために動いた電子は、持っているエネルギーを光エネルギーとして放出して、原子が安定化するわけです。この現象を再結合と言います。
このとき放射される光エネルギーを可視光として調整したものが発光ダイオードとなり、II-VI族半導体や、III-V族半導体のような化合物半導体が一般的に使用されます。
対して整流用ダイオードは、真性半導体5に不純物をドープ6して、P型半導体やN型半導体を作ってPN接合でくくっつけます。このとき、放出されるエネルギーを可視光に調整していないため、整流用ダイオードは発光ダイオードには向かないわけですね。

んで、この辺のエネルギー放射の話しがバンドギャップの大きさの決め手になって、順方向電圧Vfが決まってくるわけですね。
つまり、青色発光ダイオードは絶縁体と同じぐらいのバンドギャップ幅があるので、Vfが高いわけです。(Vfが3V~4Vくらい)
だってあいつ、結晶欠陥なければ絶縁体だし。。。
つまり、真性半導体は青色発光ダイオードだった…?

あ、ちなみにLEDの材料には気をつけてください。
ひっそりヒ素がドープされているLEDも中にはあります。(激ウマギャグ)
RoHSとか気にするなら使われている材料にも神経質にならないとアウトなので気をつけましょう。
(GaAsとかは、ガッツリガリウムとヒ素を接合しているので、気にした方が良いと思います。)

何が言いたい

御託はここまで。
バンドギャップやら結晶欠陥やらについては「電気電子材料」を別途勉強してください。

要は、ダイオードというのはPN接合が肝で、これがあるから整流動作が実現できるんだよという話と、発光ダイオードは、整流用ダイオードと動作は同じで、違いはキレイに発光するかどうかだけだよという話なわけです。
(注意:LEDと整流用ダイオードは使い分けるべきです。細かい特性が異なるため、LEDと整流用ダイオードは置き換えできないと考えるべきです。)

3. 「で?そんな話はいいからどうやって使うんだよ。」「自分が試しにLチカしてみた!」

今までの話を読んでくださった方に質問です。

「それじゃあ、今までの話を詳細まで理解すれば、LEDの特性は完璧に理解できたことになるから、Lチカできるよね?」と言われて「はい!できます!」と答えられますか?

少なくとも私には無理でした。。。
大学を卒業した自分は、特性だとか理論は勉強していましたが、実際に組み立てる方法を知らなかったわけです。
仮に、大学で具体的な使い方を教わっていたとしても、使わない知識というのはすぐに忘れてしまいますよね。

ということで逸般の誤家庭にあるArduinoのスターターキットと、秋月のお楽しみ袋に入っていたよくわからないLEDをご用意しました。
難しい話は置いておいて、実践してLチカのやり方を確かめてみよう! という魂胆なわけです。
手を動かしてみないと面白くないからね!

「机上で数式や回路図をコネコネするよりも、目で見てわかる形で動かせばどうにかなるだろう!」という行き当たりばったりな行動です!
なんか初心者向けの本にも「こまけぇこたぁいいから動かしてみろ」とか書いてありますからね!
大学で聞きかじった知識を総動員して、ネットの力も借りて回路を組んでみました!!
その結果がこちらです!ドン!どうぞ!

ピカッ!

いかがだったでしょうか?
ちゃんと光っていますよね?
それでは、Lチカに関する解説は終了です!

・・・・・・
・・・



























……いや、待て待て待て待て。ちょっと待て。
今何か誤魔化された気がする。

  • そもそもなんか部品(抵抗?)をつけているけれど、なんでこいつ必要なの?
  • いったん抵抗が必要だとして、抵抗は何Ωを付けたら良いのさ?
  • そもそもLEDっていっぱいあるけれど、そんな適当につなげて良いの?
  • その説明じゃあ、なんでその構成でLEDが光るのか説明出来ていないと思うんだけど。
  • てか光弱くね?(光強くね?)

本の選び方が悪かったのか、自分が見たことのある電子工作の本には、Lチカの説明で上記のこれらの疑問に触れることなく進むため、個人的に大変違和感がありました。(詳細な解説を後から行うのであれば、どこで行うのか書いておいてほしいなぁ…)
そこで、次の章からは自分なりにLチカの回路について、解説をしていきたいと思います。

4. 「眩しい」 or 「弱々しい光」なんだけどどうすりゃいいのさ?

ここでやっとこの記事の本題になります。(汗)
ここまでの茶番を我慢強く読んでいただいた方には感謝を。。。
ここまで飛ばして記事を読み始めた方には2分の1程度しか本題のない詐欺のような内容に謝罪を。。。
ということで、本題に入っていきたいと思います。

まずこれから話すことの大前提として、ここではLEDを「光っていることがわかれば良いもの」と考えています。
自作のLEDライトの作成を行わない人たちにとって、LEDとは「オシロスコープやテスターを当てずに、目で見て『ちゃんと回路が動いているよね』」と確認するためのものなのです。
なので、LEDの明るさとかは特に関係ありません。
明るさのバラつきを気にしないのであれば、前の章の通り適当な抵抗をつけて、流れる電流の量に気を付ければ済む話です。
しかしながら、基板の上にあるLEDの明るさがそれぞれバラバラなのは、なんというかその… かっこ悪い わけです。
そうなんです。かっこ悪い んです。見た目がめちゃくちゃ悪いんです。
したがって、ここから先の内容は設計者の自己満足を満たすための考え方になります。

以下、自分なりの答えを書いていきます。

1. そもそもなんか部品(抵抗?)をつけているけれど、なんでこいつ必要なの?

LEDのような半導体素子は、電圧によって2通りの状態を取ります。
一つはONの状態もう一つはOFFの状態です。
機械的接点のあるトグルスイッチのようにONのときに導通、OFFのときに遮断されるわけですが、半導体素子は物理的に開放(電流の通る線が物理的に接していない状態)となるわけではないので、OFFでもちょっとだけ電流が流れます。また、半導体素子はONのとき、ショートのように100%電流が通るわけではありません。(壊れるギリギリがある)
半導体はスイッチとして使えると言われていますが、一般的なスイッチとは性質が異なることに気を付けておく必要があります。

さて、LEDに電源のみ接続して順方向電圧を超える電圧を印加すると、LEDに電流が流れるわけですが、「100%電流が流れるわけではない」とはいっても、LEDがほぼショート状態になることには変わりません。
LEDがONとなる条件を満たすための電圧(順方向電圧)を、電源電圧から引いた分が、LEDを流れる電流に変わります。
具体的な数値を入れて考えると、電源電圧を5V、LEDの順方向電圧を3Vとしたとき、5V-3V=2Vで残りの2Vがショートして電流に変わります。
電気の理論的には、ショートは無限に電流が増えて電圧が0Vとなるので、2Vの電圧が無限の電流に変化します。実際には数mΩ~数百mΩ程度の配線抵抗に比例した電流値へと変換されるため、数十A~数千Aといったバカデカい電流へと変化します。
まあ、要するにそんな電流が流れてしまったLEDはぶっ壊れるわけですね。
下手をすれば「パーンッ!!」と音を出して 吹き飛びます。

ここで「理論的には無限に増え続ける電流」に上限を設けるのが抵抗の役割です。
電流制限抵抗、なんて言われることがあります。
例えば、電源電圧を5V、LEDの順方向電圧を3Vとしたとき、1kΩの抵抗を接続すると、LEDを流れる電流は

\displaylines{
\frac{5V-3V}{1kΩ} = 2mA
}

となります。
このように「理論的には無限に増え続ける電流」を理論的にも「2mA」といった有限の値に抑え込むのが抵抗の役割となります。

2. いったん抵抗が必要だとして、抵抗は何Ωを付けたら良いのさ?

さて、ここで問題です。
LEDに流れる電流を制限する抵抗は、いくつに設定すれば良いでしょうか?
答えは「場合による」となります。
え?答えになっていないって?
じゃあ解説していきます。

実は、LEDに流れる電流量だけ決めても、整流用のダイオードとは異なりそれが妥当かどうかは判別できません。
では、何が決め手になるかと言いますと、「LEDの明るさ」が決め手になります。
まずは、「LEDの明るさ」を決めなければ電流量を決めることができないわけですが、、、

LEDのデータシートを見てください。
LEDの明るさは馴染みのない単位「cd(カンデラ)」が使われています。
なので、明るさ[mcd]と電流量[mA]のグラフが記載されていても、そのグラフから導き出した電流値が「妥当なのかどうか」がわかりません。

「んじゃあどうすりゃいいんだよ!!」となったときにやるのが

「LEDに流れる電流を求める式」を変形して、抵抗値を求め、いったん実機でLEDの明るさを確認する

という作業です。そのあと、ちょうどいい明るさになるように抵抗を変化させていって、最終的に実装する抵抗を選択するわけですね。

なので付ける抵抗は「場合による」となるわけです。
目安としては、赤色LEDで1mAが流せる抵抗値を選択すると、ほど良い明るさとなります。

3. そもそもLEDっていっぱいあるけれど、そんな適当につなげて良いの?

結論:ダメです

4. その説明じゃあ、なんでその構成でLEDが光るのか説明出来ていないと思うんだけど。

その通りです。
とにかく繋いでみて「光っているからこまけぇこたぁいいんだよ!」は暴論です。
よければご自分で調べるか、「1. そもそもなんか部品(抵抗?)をつけているけれど、なんでこいつ必要なの?」を調査の足掛かりとしてください。

5. てか光弱くね?(光強くね?)

はい。
明るさは中途半端になります。
なので、「基板に実装されている抵抗を付け替えることで調整しましょう」というお話をしました。
このような考え方から、仕事では基板に実装されている抵抗を付け替えて明るさの調整を行い、書類を変更して上司の承認をもらい、直して承認をもらって。。。あーめんど。。。明るさなんて余計な事考えなきゃよかった。多少かっこ悪くても害はないし、こんなところに時間をかける方が技術者以前に会社員としてダメでしょ。。。

と思っているあなた?!
こう思いませんでした?

「実際に手を動かして、抵抗値を決めるなんて面倒臭い」
「実際に手を動かすことなく、机上検討のみで大体の明るさを決めたい、LEDの明るさをそろえたい」

なんてものぐさな考えです。
ここまでで出てきた方法では、LEDの明るさは「基板に実装されている抵抗」を半田付けを駆使して付け替える方法のみです。
なので、次に机上検討のみでどこまで設計を詰められるのかも考えてみたいと思います。

4-1. かっこよさの追求

かっこよさを追求して明るさの調整をしようと考えたときにまず行うのは、前の項目で提示したLEDに流れる電流を求める式を使って、流れる電流がデータシートに登場する電流量となるように抵抗値を設定する方法です。そのあとは、実機を見て明るかったり暗かったりしたら、抵抗値を変えてちょうどいい明るさに調整します。
以下に、LEDに流れる電流を求める式 を示します。

\displaylines{
\frac{電源電圧[V] - LEDの順方向電圧[V]}{電流制限抵抗[Ω]} = LEDに流す電流を決める抵抗[A]
}

この式で導出した電流量を出発点として、抵抗をとっかえひっかえする方法は一般的な方法だと思いますが、基板に実装された抵抗を付け替えて電流を流したり絞ったりする必要があるため、半田付けの作業が伴います。

また、「設計を行ったのか」と問われると正直微妙です。
「なんでこんなに明るいんだ」とか「そんなに電流を流してどうするんだ」などと突っ込まれて「実際に動かして調整しました。。」としか答えられないと思います。
(だって設計の根拠がないんだもん。。。「LEDに流れる電流を求める式」を使って求めた抵抗を使っているならまだしも、見た目を揃えるために抵抗を変えているから、置き換えた抵抗には裏付けとなる根拠がないんだよね。)

では「LEDに流れる電流を求める式が使えない代物なのでは?」と考える人がいると思いますが、そうではありません。

この式は近似式なので、ある程度までなら使えるわけです。
先ほども言いましたが、「見た目がかっこ悪くても動作する」ことが重要なんです。
なので、ある程度まで使えるなら十分なんです。

ただ、この記事を読んでいる人は、この「ある程度」が我慢ならなくて読んでいると思います。
なので、自分がもう少し踏み込んだ設計を試してみようと思います。

5. LEDを選定してみた

さてさて、今までの内容を踏まえて、LEDを選定していきたいと思います。
やっとタイトル回収です(汗)

LEDは、「目で見て『ちゃんと回路が動いているよね』と確認するためのもの」なので、LEDとして有名な会社から出ていれば適当に選んじゃいます。

仕事では、「スタンレー電気」とか「Broadcom」とか……要はヨーロッパやアメリカ、日本に本社を置いていて、長く続いている企業が出している部品で、リードタイムが短くて、価格が安くて、リリース時期から考えてすぐEOLにならなそうな部品を選びます。
・・・一つ選び出すだけでも一苦労です。

その点電子工作であれば、高い電圧を使わない限り、そこそこ有名どころの中国系の企業は壊れないと信用できるので、今回選定したような「OptoSupply」という電子工作でなければ聞かないような会社でも問題ありません。(秋月電子通商様、すごい会社です)

LEDを選定するとき、自分はLEDに使われている材料に注目します。今回は、InGaNという化合物半導体を選びました。最近(2024年9月現在)のLEDはRoHS2に対応したものが主流になってきているため、あまり古い部品を選ばなければヒ素(As)が含まれているものを選ぶことはないでしょう。

image.png

また、自分の設計に適したデータが、データシートに記載されているかもしっかり確認して選定しましょう。
今回でいえば、 緑色のLEDのデータシートに特性に関するグラフの記載がありません。 したがって、自分の設計が良いか悪いかの判定が机上でできず、グラフの記載がある青色のLEDを後から選定しています。

とはいえ、回路の動作に影響を及ぼすとは思えない表示用のLEDですからねぇ。。。
「電流制限抵抗やLEDはつけかえれば良いだろ」ぐらいの気楽さで選んでよいと思います。ただ、適当に選びすぎると明るさの制御が難しいものを選んでしまうので、注意が必要です。

次に、選定したLEDの明るさについて、机上検討を行ってみます。

5-1. 自分のやり方

今回組んだ回路の仕様は以下の通りです。

実験構成


図. LTspiceで書いた回路図


図. 半固定抵抗の寸法とピンアサイン
半固定抵抗3kohm_寸法.png


図. 今回組んだ回路

実験手順

今回選定したLEDの特性を以下に示す。


表. 青色発光ダイオードの特性


選定したLEDは青色発光ダイオードである。
青色発光ダイオードの以下の特性を見て電流量を推定する。


図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細

図. 青色発光ダイオードの順方向電圧と電流の関係


今回選定した青色発光ダイオードの順方向電流が絶対最大定格30mAなので、30mA未満となるように設定する。
また、「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」を見ると、30mAがグラフに登場しないため、余裕を大きめに見て、20mAまでの参照とする。
「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」について、グラフの0mA~20mAの間を直線と見なして考えると、10mAで相対強度0.5から大きく外れており交わらないことから、相対強度0.5の接点である約13.5mAを境にして考えることにする。0mA~13.5mAは相対強度が0~0.5、13.5mA~20mAは相対強度が0.5~1.0になると考える。
「表. 青色発光ダイオードの特性」に記載の「Luminous Intensity(光度)」について、相対強度をy、流す電流量をxと置いて、2本の一次関数を考えると、

$$相対強度(0~0.5)y = \frac{0.5-0}{13.5mA-0mA}x$$

$$相対強度(0.5~1.0)y = \frac{1.0-0.5}{20mA-13.5mA}x+\frac{20mA \times 0.5 - 13.5mA \times 1.0}{20mA - 13.5mA}$$

となる。

この2本の一次関数が正しそうか確かめるために計算を行う。
10mA流すときの相対強度は、

$$相対強度(0~0.5)y = \frac{0.5-0}{13.5mA-0mA} \times 10mA ≒ 0.37$$

となり、これは「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」の交点と大体あっている。
次に、15mA流すときの相対強度は、

$$相対強度(0.5~1.0)y = \frac{1000}{13} \times 15mA -\frac{7}{13} ≒ 0.62$$

となり、これは「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」の交点と大体あっている。
したがって、この2本の直線については、「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」の近似直線として使えそうである。

回路図上に登場する抵抗は、半固定抵抗の3[kΩ]である。
以下の式を使って、LEDに流れる電流を推定する。

$$求めたい電流値[A] = \frac{電源電圧[V] - LEDの順方向電圧[V]}{LEDに流す電流を決める抵抗[Ω]}$$

この式に、電源電圧5[V]、LEDの順方向電圧(LEDtypical値)3.1[V]、半固定抵抗3[kΩ]を代入して、

$$求めたい電流値[A] = \frac{5[V] - 3.1[V]}{3[kΩ]} = \frac{1.9}{3000} = 0.633 \times 10^{-3}[A] $$

となる。
この値を相対強度の式に代入して、

$$相対強度(0~0.5)y = \frac{0.5}{13.5mA} \times \frac{1.9}{3000}A ≒ 0.0235$$

となる。

以下に、「表. 青色発光ダイオードの特性」に記載の光度と、相対強度より求めた光度を示す。

項目 条件 Min Typ Max 単位
光度 If = 20mA 4200 5800 7000 mcd
相対強度より求めた光度 相対強度 = 0.0235 99 136 164 mcd

よくわかんにゃいけど、、、この光度になるんじゃないかにゃぁ。。。

image.png

データシートのこの図を見る限り、砲弾型のダイオードの丸いところから見ずに、横から光っていることを確認しないと、目が痛くなるかもね。。。

図. とある赤色LEDの特性
image.png

個人的に、この手のLEDは1mAでちょうどよい明るさになるので、5mAの20mcdはかなり眩しい。
ということは、青色発光ダイオードの99mcdは、横から見ても目が痛くなるほどの光が出ると考えられる。

実験結果

まずは組んでみた回路に電源を繋いでみる。
USBケーブルを繋げばいいや。
その前に2ピン-3ピン間が3[kΩ]になるように半固定抵抗を回しておこう。。。

初めて電源を入れるときには、ショートチェックを行いましょう。
ショート(短絡)していたら、部品に過電流が流れて破損することがあるためです。まずはショートしていないか確認してから火入れ(電源投入)を行いましょう。
最初の火入れ時には、可能な限り負荷を小さくした方が良いです。部品に過電流が流れて壊れる可能性を減らせるからです。
火入れ直後、少し待ってみて壊れる気配がなければ、様子を見ながら負荷を大きくしていきます。部品の見た目や放電音、破裂音、プラスチックが焼ける臭い、煙など、基板と部品に変化が起こっていないか、五感を使って確認をしながら負荷を大きくしましょう。
変化が起こっていたら、すぐに電源をOFFにして、回路図を修正してから壊れた部品を取り換えつつ回路を修正しましょう。

「図. 今回組んだ回路」に電源を入れた結果、LEDを点灯させることができました。

お恥ずかしながら、実は一回失敗しています。
半固定抵抗とLEDの間に固定抵抗100Ωを付けていたのですが、電流が少なくなりすぎたか順方向電圧が低くなりすぎたようで、点灯しませんでした。この回路は100Ωを取り除いた後の回路となっていて、やっと点灯した回路になっています。。。

まずは測定から。以下に測定結果を示します。

抵抗設定値[kΩ] 電源電圧[V] LED両端電圧[V] 電流量[mA]
2.893 4.86 2.514 0.81
2.500 4.86 2.528 0.94
2.000 4.86 2.550 1.16
1.500 4.86 2.561 1.53
1.000 4.86 2.593 2.24
0.500 4.83 2.678 4.24
0.400 4.82 2.688 5.34
0.300 4.80 2.754 6.82
0.200 4.76 2.782 9.92
0.100 4.72 2.931 17.30

50Ωは30mAを超えると考えられるため、100Ωで測定をやめました。

以下に電圧電流測定時のLED点灯の様子を示します。


図. 半固定抵抗を2893ohm(Max)に調整

図. 半固定抵抗を2500ohm(2.5kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を2000ohm(2.0kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を1500ohm(1.5kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を1000ohm(1.0kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を500ohm(0.5kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を400ohm(0.4kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を300ohm(0.3kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を200ohm(0.2kΩ)に調整

図. 半固定抵抗を100ohm(0.1kΩ)に調整


(写真撮影、ヘタクソで申し訳ない。。。orz)
データシートを見ると、LED両端電圧が2.9V以上となっているので、印加電圧が低いと考えられる。
したがって、データシートに記載の光度は出ていないと考えられるが、見た目では1.5kΩくらいから十分眩しい。

LEDに流れる電流を求める式 を使って検算すると、

検算[mA] 検算結果と測定値の誤差率[%]
0.811 -0.1138
0.933 0.7719
1.155 0.4329
1.533 -0.1740
2.267 -1.1910
4.304 -1.4870
5.330 0.1876
6.820 1.3023E-14
9.890 0.3033
17.890 -3.2979

±4%ぐらいの誤差がありそうですが、LEDの順方向電圧さえ定まれば、机上検討でもそこそこの精度で電流量を決められそうです。


温度変化の影響からか、今回選定した半固定抵抗の抵抗値が1kΩ未満のときにふらついて定まらなかったため、電流値もふらついていました。

半固定抵抗の電気的特性.png

これを見る限り温度係数は $±100ppm/℃$ ですね。
今回初めて温度係数を気にしてみたのですが、 $±100ppm/℃$ って結構ズレますね。
基準温度を25℃と仮定して計算してみると、3kΩの半固定抵抗でだいたい±30Ωブレるので、3kΩの半固定抵抗で1kΩ未満の細かい調整を行うのは、そもそも論外だと思っておいた方が良さそうです。(半固定抵抗を使うにしても何らかの工夫が必要です。)


次に、測定値から光度を求めてみます。

測定値[mA] 相対強度 光度min[mcd] 光度typ[mcd] 光度max[mcd]
参考値 0.0235 99 136 165
0.81 0.0300 126 174 210
0.94 0.0348 146 202 244
1.16 0.0430 180 249 301
1.53 0.0567 238 329 397
2.24 0.0830 348 481 581
4.24 0.1570 660 911 1099
5.34 0.1978 831 1147 1384
6.82 0.2526 1061 1465 1768
9.92 0.3674 1543 2131 2572
17.3 0.7923 3328 4595 5546

実測前に推定した光度と、実測値から相対強度を導出して間接的に求めた光度を比較すると、近い値になっていると思います。

ということで、「机上検討のうちに抵抗の定数を絞りたいのであれば、『図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細』に近似直線を引っ張って、その直線に乗るように相対強度を決めた上で、抵抗値やら電流値やらを決めていけば、大体データシートに書かれている範囲で明るさを決めることができますよ」という確認でした。
(申し訳ないのですが、この方法を仕事で使用するのは避けた方が良いと思います。面倒くさいのですが、実機を使って半田付けをした方が価値の高い情報となり、レビュー時に説得がスムーズとなります。また、実機でなければわからない部品のクセがあるので、実機確認を必ず行うことをオススメします。)

あとは、「個人的に光度[mcd]が大体どのぐらいの明るさを表現しているのか」目安を提示したくて書きました。

5-2. 厳密な設計のやり方

さて、ここまで読んできた方には一つ謝らなければなりません。
実はここまで自分が提示してきたやり方は、すべて近似値を求めるやり方です。
本気で設計したいのであれば、ダイオード方程式とかを用いて、厳密に計算する必要があります。

要は、計算でゴリ押すだけなのですが、そこまでやる必要があるのか、って話なわけです。こういう話が必要なのは、「細かいところまで突き詰めなければならないほど、厳密な設計が求められる仕事をされている方」か、「趣味で『どこまで厳密性を高めていけるのか』を追い求めている方」となると思います。

そういう方は、申し訳ないのですが、ちゃんと専門家の方が執筆されている書籍を買って調べていただくか、それっぽい式をインターネットで調べていただけると助かります。。。

基本的には、大学の講義資料pdfとかですね。(大多数が講義資料でした。。。)

参考になりそうな資料がインターネット上に転がっているとはいえ、導出に必要なデータがメーカーから公開されているわけではないので、本当に厳密にやるなら、部品を手に入れて、自分でパラメータの測定からやる必要があるわけで。。。そうなると、「手抜き、というわけではないけれども手軽に手早く、ある程度厳密に机上で設計を行いたい」という当初の方針からは外れてしまうので、この記事では解説を行わないということにします。(実際には、自分に解説できる力がありませんでした。。。探してもみつからな~い~♪)

6. おわりに

いかがだったでしょうか。
個人的には、「図. 青色発光ダイオードの明るさ特性詳細」に、トランジスタの選定で使用する「負荷線」を引っ張ってみるのも面白そうだなぁと思いました。

自分の投稿が参考になったら幸いです。

7. おまけ

Q&A1

Q1:

なんでそんな闇深い業界、居続けるの?

A1:

1. (案件開始~設計中)      自分「ようこそウルトラハイパーエクストリームID腹筋スレへ!!(AA略)」
2. (設計中~設計完了)      自分「うるせえ!黙れ!!(ペンギンの怒られ画像の図)」
3. (設計完了~デバッグ完了) 自分「前が見えない……(クレヨンしんちゃんの絵)」
4. (デバッグ完了~案件終了) 自分「(´・ω・`).;:…(´・ω…:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..」
5. 1へ戻る

1の状態、気持ち良すぎだろ!!(中毒)

Q&A2

Q2:

この記事を執筆した理由は?

A2:

今回、Qiitaで投稿をしようと考えたきっかけは、仕事でLEDの選定をしているときに

「mcd(ミリカンデラ)とか言われてもわかんないよぉおおおお!!!!」

と、心の中で叫んだからでした。(周りへの配慮〇)

「なら備忘録としてこの記事を書いて、mcdの目安をインターネットに残しておくことで、
次の選定時に参照すればいいじゃない」

と思ったのが始まりです。
でも、青色LEDなんか使わないし、光度高すぎるし、あんまり参考にならないかも・・・。
青色LED、今回の記事を執筆しなければ、一生使う機会がなかったでしょう・・・。まあ、しょうがないね。

Q&A3

Q3:

負荷線って?

A3:

負荷線というのは、半導体の特性グラフに引っ張る直線のことです。
半導体の端子に抵抗をつなげることで、半導体は動作が安定するんです。
トランジスタについて書くときに負荷線に触れるので、その前にダイオードを使った解説をしようと・・・
あれ、もう解説している人いるじゃん。

「LEDに抵抗を直列接続する理由」

要は、ダイオードに付ける抵抗って、「一人三役」だったわけですね。

電子回路は、複数の役割を持つ部品が並びます。
なので適当に定数を変更すると、電子回路が動作しなくなるんです。
ちょっとした部品の変更でも神経を使って検討するのが、電子回路の設計者なわけですね。

・・・負荷線が引けるなら、ダイオードにも飽和領域と遮断領域に似た概念があるよな?
  1. PN接合のことが言いたかった。めっちゃくちゃピッタリくっつける必要があります。さもないと結晶欠陥(点欠陥、線欠陥、面欠陥)により不良品になります。実際には薬品にジャブジャブ付けて積層していると思います。。。

  2. 動作開始のことです。ダイオードは「電圧がしきい値を超えること」が動作開始条件となります。

  3. LOWのこと(スレッショルド電圧以下になること)ではなく、「0Vまたは0Aを下回る」もしくは「0Vまたは0Aまでしっかり落ちる」ことを0クロスと言います。0クロスと言った場合、uVやuAオーダーも残らずきっかり0まで、一瞬でもいいから落ちることを言います。0に到達しなかった時点で0クロスではありません。

  4. 動作停止のことです。ダイオードは「電流が0クロスする(0Aになる)こと」が動作停止条件となります。

  5. 純度の高いケイ素のこと。11ナインの半導体と言えばこいつや。(11ナイン:純度99.999999999%のこと、9が11個並ぶ)

  6. いいからドーピングだ!

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