概要
USB Type-Cのメス口を持つ変換アダプタは仕様外だから危ないという話はいまや有名かと思います。
ではなぜUSB Type-Cのメス口を持つ変換アダプタは仕様外なのでしょうか?もしそういったアダプタを使うとどんな危険があるのでしょうか?気になって調べた結果をまとめます。
とりあえず結論
USB Type-C(メス)を使うと規格違反のケーブルを簡単に作れてしまうので危ないです。具体的にはこちらで記載している種類以外のケーブルは規定されていないので危ない。使うと端末が壊れてしまうリスクがある。
例えば両端がUSB Type-Aのケーブルを作って、パソコン同士を繋げたらパソコンが壊れるかもしれないみたいな危なさがある。
なので規定から外れたケーブルを作って使ってしまわない様に気をつけた方がよさそう。
そもそもUSB Type-Cの規定はどうなっているのか?
USBの仕様はUSB-IFという団体が規定し公開しており、Type-Cで許容できるケーブルの種類についても厳密に規定されています
上記で規定されているケーブルの種類は以下の通りです。
分かりにくいので表形式でまとめてみました(情報量は落としてます)。便宜的にケーブルの両端を「左側」と「右側」でかき分けています。
プラグ形状 | 左側 | 右側 | ホスト/デバイス |
---|---|---|---|
オス-オス | Type-C | Type-C | 区分けなし |
オス-オス | Type-C | Type-A | デバイス-ホスト |
オス-オス | Type-C | Type-B | ホスト-デバイス |
オス-オス | Type-C | Mini-B | ホスト-デバイス |
オス-オス | Type-C | Micro-B | ホスト-デバイス |
オス-メス | Type-C | Type-A | ホスト-デバイス |
オス-メス | Type-C | Micro-B | デバイス-デバイス |
ホストやデバイスというのが大事な概念なのですが一旦無視してください。後述します。
規定にType-Cのメスはやはりありません。またType-Cのレセプタクル(メスのこと)は規定しないとも明確に書いてありました。
ざっくり翻訳するとこんな感じです。
USB Type-CレセプタクルからUSBのレガシーコネクタへの変換アダプタは定義していないし、許可もしてません。そういうアダプタがあるとユーザーが安全でない可能性のあるケーブルを作れてしまうからです。
ここでレガシーコネクタと言っているのはType-AやB, Mini-B, Micro-Bのことです。「ユーザが安全でない可能性のあるケーブルを作れてしまう」とはどういうことなのでしょう?
「安全でない可能性のあるケーブル」とは?
大前提としてUSBにはホスト側とデバイス側の区分けが明確にあります。ホスト側とはパソコンや電源アダプタのことです。デバイス側とはキーボードはスマートフォンのことです。
そしてType-Cが登場するまではコネクタの形状でホスト側とデバイス側をはっきり区別していました。具体的にはType-Aとよばれるコネクタはホスト側、Type-Bとよばれるコネクタはデバイス側です。
下の画像で言うと左からType-A、Type-B、Micro-B、Type-Cとなります。Type-Aがパソコンに挿す方の端子であることはイメージにも合うかと思います。
参考:https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20220221_02
そして、両端がType-Aとなっているようなケーブルは規定されていません。これはホストとホストを繋いでしまうとお互い電源供給などホストとして動こうとするのでうまく動かないし、最悪機器が壊れてしまう恐れがあったからです。
Type-C(メス)アダプタはなぜ危ないのか?
Type-Cではホストとデバイスのコネクタの区別がなくなりました。これが今回の話の一番のポイントです。Type-Cではホストかデバイスかをつなぐたびに端末が判定する仕組みになっています。これにより両端がType-Cのケーブルが登場しました。
すると勘の良い方は気づかれたかもしれませんが、この状況でType-C(メス)の変換アダプタが登場すると危ないのです。
何が危ないかというと、例えば両端がType-C(オス)のケーブルの両端にType-C(メス)〜Type-A(オス)の変換アダプタをつけると両端がType-A(オス)のケーブルができてしまいます。これはこれまで禁止されていたタイプのケーブルです(どう禁止されているかはこちらを参照ください)。
もしこのケーブルでホスト同士を接続するとホスト側のパソコンなどが壊れる可能性もあるわけです。怖いですね。冒頭に紹介した「ユーザが安全でない可能性のあるケーブルを作れてしまう」というのはこの事を言っています。そういうわけでUSB-IFの使用においても明確に規定しないことが記述されているわけです。
なるほどです。
考察
ではいついかなる状況でもType-C(メス)アダプタは危険なのか?というと、そうでもない気がします。例えばType-C(オス)〜Type-C(オス)ケーブルの片端にType-C(メス)〜Micro-B(オス)のケーブルを接続した場合、ケーブルとしてはType-C(オス)〜Micro-B(オス)ケーブルとなり、USB-IFでも規定されている形状のため問題ない様に思えます。(もちろん形状として規定されていても内部的な電源抵抗や配線など他の条件があるかもしれないので、「使っても大丈夫」かは正直わかりません。)
少なくとも両端がType-A同士やType-B同士になる様なケーブルを作って使用しないことは気をつけた方が良さそうです。
とはいえ、素人調べなので鵜呑みにせず、使う場合は自己責任で使ってくださいね。
(追記)両端がType-Aのケーブルについて
そういえば私が参照していた仕様書はType-Cのケーブルとコネクタに関する仕様だったので、両端がType-A(オス)のケーブルが規約違反であることの根拠を示せていませんでした。
追加調査したところUSB 2.0に関する仕様にその記述を見つけることができました。
上記ページからダウンロードしたzipファイルに入っている「usb_20.pdf」の以下の箇所です。"Prohibited"が「禁止されている」という意味で、禁止されてるケーブルの一覧が載っています。この中に「Cable assembly that violates USB topology rules(USBのトポロジルールに違反するケーブル)」として「両端がType-A(オス)やType-B(メス)のケーブルは電源を供給するポート同士をつないでしまう可能性があるから禁止」とありました。
ただ両端がType-Aのケーブルは実際販売されているようです。規定で禁止されていても使われてはいるんですね。
ちなみにパソコン同士をつなぐものではなく、外付けHDDやノートPCクーラーといった周辺機器との接続のために使うそうです。
例えばこちらのノートPCクーラーは両端がType-Aのケーブルを使って接続するみたいです。
商品画像でも電源供給を受ける口にType-A(メス)が使われているのが見られます。
付属品にも両端がType-Aのケーブルがついている様です。どういう経緯があってこうなったのかわかりませんが、この電源供給を受けるType-Aのメス口はホストではなくデバイスとして動く様に作られているのかなと想像します。
以上、追記でした。