外国語の仕様書やマニュアルをPDFのまま翻訳すると、本文を理解できても、表・図・注釈の位置が変わって意味を追いにくくなることがあります。
この記事では、PDF翻訳後に最低限確認したい項目と、PopplerのCLIツールを使った確認方法をまとめます。
確認したい項目
翻訳品質の確認とは別に、PDFファイルとして以下を確認します。
- 原文と翻訳後でページ数が一致しているか
- ページサイズや向きが変わっていないか
- 表や画像が欠落していないか
- テキストを選択・検索できるか
- フォントが埋め込まれているか
- 見出し、脚注、図表番号の対応関係を追えるか
ページ数が一致していても、表の行が次ページへ移動したり、画像上のラベルと説明文が離れたりする場合があります。CLIによる確認と目視確認の両方が必要です。
Popplerをインストールする
macOSではHomebrewを使用できます。
brew install poppler
Ubuntuでは次のようにインストールします。
sudo apt update
sudo apt install poppler-utils
インストール後、以下のコマンドが使用できます。
pdfinfo -v
pdftotext -v
pdffonts -v
pdftoppm -v
ページ数とページサイズを比較する
まず、原文と翻訳後のPDF情報を確認します。
pdfinfo original.pdf
pdfinfo translated.pdf
出力のうち、特に確認したいのは次の項目です。
Pages: 48
Page size: 595.28 x 841.89 pts (A4)
Encrypted: no
File size: 5242880 bytes
必要な項目だけを抽出する場合は、次のように実行できます。
for file in original.pdf translated.pdf; do
echo "=== $file ==="
pdfinfo "$file" | grep -E "Pages|Page size|Encrypted|File size"
done
ページ数や用紙サイズが変わっている場合は、本文が別ページへ送られていないか確認します。
テキストをレイアウト付きで抽出する
pdftotextの-layoutオプションを使うと、可能な範囲で元の配置を維持してテキストを抽出できます。
pdftotext -layout original.pdf original.txt
pdftotext -layout translated.pdf translated.txt
翻訳前後なので単純なdiffでは内容を比較できません。ただし、出力結果から以下の問題を発見できます。
- 特定ページの本文が空になっている
- 表が一列の文章として崩れている
- 見出しやページ番号が消えている
- 文字化けが発生している
- 画像内にしか存在しない文字を抽出できない
テキストがほとんど抽出されない場合、元のPDFがスキャン画像で構成されている可能性があります。
フォント情報を確認する
翻訳後のPDFで文字が四角形になったり、一部の言語だけ表示されなかったりする場合は、フォントを確認します。
pdffonts translated.pdf
確認例は以下の通りです。
name type emb sub uni
ABCDEE+NotoSans CID Type 0 yes yes yes
embはフォントが埋め込まれているか、uniはUnicode情報があるかを示します。すべてのPDFで同じ結果になる必要はありませんが、表示や検索に問題がある場合の手掛かりになります。
重要なページを画像化して目視する
全ページを細かく確認するのが難しい場合は、表・図・警告文を含むページを優先します。
10ページ目だけをPNGに変換する例です。
mkdir -p preview
pdftoppm \
-f 10 \
-l 10 \
-png \
-r 150 \
translated.pdf \
preview/page
次の部分は特に目視確認が必要です。
- 目次とページ番号
- 複数列で構成されたページ
- 大きな表を含むページ
- 図とキャプションを含むページ
- 脚注や参考文献
- 操作手順や警告事項
翻訳方法について
短い引用だけなら、テキストをコピーして翻訳しても問題ありません。しかし、長い技術資料では、ページ構造を保ったまま処理した方が図表との対応を確認しやすくなります。
今回は、文書全体を翻訳しながらページ構造、表、画像、フォントを維持する用途としてPDFTranslatorのようなオンラインツールを利用できます。
ただし、翻訳後にレイアウトが維持されていても、専門用語、数値、単位、警告文まで正しいとは限りません。仕様に影響する箇所は必ず原文と照合します。
最終チェックリスト
公開や共有の前に、次の項目を確認します。
- ページ数とページサイズが一致している
- 表や画像が欠落していない
- テキスト検索が機能する
- 文字化けがない
- 図表番号と説明文が対応している
- 数値、単位、製品名を原文と照合した
- 安全・契約・法務関連の文章を人が確認した
PDF翻訳は、翻訳結果だけでなく「原文の情報構造を追えるか」まで確認して完了と考えると、後工程での見落としを減らせます。