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リモートワーク時代、PMの仕事は「察する」から「設計する」に変わった

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TL;DR

  • リモートで失われたのはノンバーバルではなく、それを介して機能していた「フィードバックループ」である
  • 絵文字やリアクションは対症療法であり、本質的な解決にはならない
  • PMの仕事は「察する」から「察せる仕組みを設計する」に変わった

対象読者

  • リモート中心のチームを担当しているPM・テックリード
  • 「メンバーの様子が見えにくい」と感じている方
  • リモート時代のマネジメントを見直したい方

はじめに

リモートワークでマネジメントが難しくなったと感じる方は多いと思います。

ただこの「難しさ」の正体を「ノンバーバルが伝わらないこと」と捉えると、対策は「絵文字を使う」「リアクションを大げさにする」といった対症療法に終始します。これでは根本は解決しません。

本記事ではリモートで本当に失われたものは何かを構造的に整理し、PMの仕事がどう変わるべきかを考えます。

本記事は「絵文字やリアクションを使うな」という主張ではありません。それらは大事ですが、本質的な解決にはならないという立場で書いています。

リモートで本当に失われたもの

「リモートになってノンバーバルコミュニケーションが減った」という言い方をよく聞きます。これ自体は事実です。

ただノンバーバル情報そのものが価値だったわけではありません。価値があったのはノンバーバル情報を介して機能していたフィードバックループです。

対面の現場では、こんなループが自然に回っていました。

  1. メンバーが困っている表情を見せる
  2. PMが気づいて声をかける
  3. メンバーが事情を話す
  4. PMが手を打つ

このループが「ノンバーバルがある」だけで自動的に回っていた。だから対面では「察する」だけで仕事が成立していたのです。

リモートになってこのループが切れたことが本質的な変化です。

feedback_loop_broken.png

なぜ絵文字やリアクションでは足りないのか

「絵文字を使えば温度が伝わる」「リアクションを大げさにすれば気持ちが伝わる」というアドバイスはよく見ます。

ただこれらは発信側の工夫にすぎません。テキストを送る側がどれだけ温度を込めても、受信側が困っていることに気づくというより重要な機能が回復していないのです。

困っているメンバーが自分から「困っています」と発信してくれれば気づけます。しかし本当に困っている人ほど発信できません。これは対面でも同じですが、対面なら表情で気づけたものがリモートではテキストでも発信されない以上は永遠に気づけないのです。

絵文字やリアクションは既に発信されているコミュニケーションの温度を上げるものです。発信されないものを引き出す機能はここには含まれていません。

reaction_coverage.png

絵文字やリアクションは発信された後の「温度調整」には有効です。問題はその手前「そもそも発信されない情報」をどうやって引き出すかにあります。

PMの仕事は「察する」から「設計する」に変わった

ここまでを踏まえると、リモート時代のPMの仕事は構造的に変わっていることが見えてきます。

対面時代のPMの仕事は本質的に「察する」ことでした。同じ部屋にいてメンバーの様子を見て、雰囲気を感じ取って必要なら声をかける。これでマネジメントの相当部分が成立していました。

リモートではこの「察する」が機能しません。だから代わりに必要なのは察することができる仕組みを設計することです。

個人の能力でカバーするのではなく構造で解決する。リモート時代は特にこの発想が必要になります。

sense_to_design.png

どんな仕組みを設計するか

ここから具体的に、PMが意識して設計すべき仕組みを整理します。

困りごとが浮上する仕組み

メンバーから自然に困りごとが出てくることはありません。意図的に「出す場」を作る必要があります。

1on1の頻度を対面時代より上げるのは基本です。それに加えてテキストでも「困っていることありますか」を定型文として聞く仕組みを入れるのが効きます。毎回同じ質問だから返しやすい、という心理的ハードルの下げ方です。

multiple_channels.png

雑談が起きる場を意図的に作る

対面時代の雑談は意図せずに発生する貴重な情報源でした。「最近忙しそうだね」「あの案件どう?」という何気ない会話の中にメンバーの状態が現れていました。

リモートでは雑談が消えます。意図的に作らないと存在しなくなります。Slackの雑談チャンネル、定例の冒頭5分の雑談タイム、こういった「業務外」の場を仕組みとして組み込む必要があります。

雑談の場は「サボり」ではなくマネジメントに必要な情報を集めるための業務時間と捉えるのが大事です。

ネガティブな情報が出てくる経路を作る

PMに直接言いにくい話は必ず存在します。対面ならランチや飲み会で出てきていたかもしれませんが、リモートではほぼ消えます。

だからPMを介さない経路を意識的に作ります。

具体例:

  • マネージャー以外との1on1の機会(ピアレビュー、メンター制度)
  • 匿名アンケート
  • 第三者(人事、別部署のPMなど)との接点

「自分には言ってこない情報がある」という前提でマネジメントするのが、リモート時代の現実だと思います。

称賛が見える仕組み

リモートでは誰がどんな貢献をしているかが極端に見えにくくなります。良い仕事をしている人が埋もれます。

これも個人の感覚で「気づいて褒める」では限界があります。Slackのthanksチャンネル、定例での称賛タイム、ピアボーナス制度など、称賛が自然に流通する仕組みを組み込む必要があります。

褒められる人が増えるだけでなく、チーム全体に「こういう動きが評価される」という基準が共有されます。

共通する原則

ここまでの提案には共通点があります。

個人の能力ではなく、組織の構造で解決する。

リモート時代は対面時代より一段「構造で解決する」発想が必要です。察する力で勝負する時代は終わった、と捉えた方が現実的だと思います。

おわりに

「リモートはコミュニケーションが難しい」という言い方はある意味で正しいです。ただ難しさの正体を「ノンバーバルが消えた」と捉えると、対策が表面的なテクニックに終始します。

本質的に失われたのは「察するだけで回っていたフィードバックループ」です。これを取り戻すにはPMが察する力を上げるのではなく、察せる仕組みを設計する方向に切り替える必要があります。

絵文字やリアクションも大事です。私も使っています。ただそれは表層であって根本ではない。リモート時代のPMの仕事は対面時代より一段構造的になった、と捉えるのが正しいと思っています。

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