TL;DR
- PMは「進行を妨げてしまう関係者」と向き合う場面に必ず出会う
- 相手を変えようとするより、自分の構え方を変える 方が現実的に効く
- 共通する原則は「相手が動きやすい構造を作る」こと
対象読者
- ステークホルダー対応に消耗しているPM
- 「自分の伝え方が悪いのか」と悩んでいるPM
- これからPMになる方
はじめに
PMをやっていると、どうにも噛み合わない関係者に必ず出会います。悪意があるわけではなく、本人なりにベストを尽くしている。それでも結果的にプロジェクトが進みづらくなる ― そういうケースです。
この記事では、現場でよく出会う3つのパターンと、 PM側ができる現実的な向き合い方 を整理します。
本記事は「相手を悪者にする話」ではありません。相手にも事情があり、構造的にそうなっている場合がほとんどです。PM側ができる工夫を中心に書いています。
【大前提】 相手を変えようとしない
最初に共有しておきたい前提があります。
他人を変えるのは極めて難しい。 これはPMをしていると何度も突きつけられる事実です。
ではどうするか。 自分の関わり方を変える しかありません。
これは諦めではなく、PMとして一番費用対効果が高いアプローチだと考えています。
【壁1】 決断ができない関係者
よくある場面
判断を求めると、「もう少し情報が欲しい」「もう少し検討したい」と返ってくる。気づくと開発工数を使った詳細な調査依頼が飛んでくる。
何が起きているか
決断できない人は、 判断の責任を取ることに不安がある 場合がほとんどです。情報が足りないのではなく、決められないから情報を求めている、というのが実態に近いです。
ここで開発リソースを使って徹底的に調べても、たいてい次の質問が来ます。情報量を増やしても、決断は生まれません。
PM側ができること
-
調査の深さに上限を設ける
「半日で調べられる範囲で出します」と先に宣言する -
判断材料を3パターンに絞って提示する
選択肢が多すぎると人は決められない。A・B・Cと推奨を添えて出す -
決めない場合の影響を明示する
「○日までに決まらないとリリースが○週間後ろ倒しになります」と数字で示す
ポイント:相手の決断を代行せず、決断しやすい状況を作る
【壁2】 意見が変わる関係者
よくある場面
ミーティングでA案で進めることに合意したはずが、数日後に「上司と相談した結果、B案にする」という連絡が来る。
何が起きているか
意見が変わること自体は、誰にでもあります。問題は 変わる過程が共有されないこと です。
多くの場合、当人は自分の意見ではなく上司の意見を伝えています。当人の中で消化されないまま降りてきた決定なので、理由を聞いても明確に答えられない、という状況が起きやすいです。
PM側ができること
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決定の背景に上司を巻き込む
重要な意思決定の場には、最初から決裁者を呼ぶ。後出しを構造的に防ぐ -
議事録に「決定事項」と「決定者」を明記する
後から覆そうとしたとき、何を覆すのかが共通認識になる -
覆されたときの追加コストを早期に提示する
「再設計に○人日かかります」と数字で会話する。感情論を避ける
ポイント:人格を変えるのではなく、意見が変わりにくい構造を作る
【壁3】 言語化が苦手な関係者
よくある場面
要望はあるが、文章にすると要点がぼやける。チャットで何往復しても合意点が見えない。
何が起きているか
言語化が苦手な人は、 頭の中にあるイメージを文章に変換する作業自体に負荷がある ことが多い。テキストで詰めようとするほど、お互い疲弊します。
PM側ができること
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直接話す場をすぐに設ける
5分の同期会話は、30分のチャットラリーより速い -
PM側で要点を仮置きして投げ返す
「○○ということですか?」と仮説で当てる。Yes/Noで返してもらえる質問の方が、相手の負荷が低い -
議事録を相手の言葉で書く
PMの整理した言葉ではなく、相手が言った表現を残す。後で「そんなつもりじゃなかった」を防ぐ
ポイント:言語化を「相手の仕事」と切り分けず、PMが手伝う
共通する原則
3つの壁に対するアプローチには、共通点があります。
相手の能力や性格を変えようとせず、相手が動きやすい構造を作る。
これは前作の「開発者が進めやすくなることであれば、PMは何でもする」と同じ思想です。
向き合う相手が開発者か、ステークホルダーか、というだけの違い。
PMの仕事は調整であり、調整とは「人を変えること」ではなく「構造を整えること」だと考えています。
それでも難しいとき
正直に書くと、上記の工夫を尽くしてもうまくいかないケースはあります。その場合は以下の選択肢が残ります。
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より上位の決裁者にエスカレーションする
PMだけで抱え込まない -
役割を再設計する
特定の人を矢面に立たせない構造に変える(ハブとなる別担当を立てる、など) -
プロジェクトのスコープや体制そのものを見直す
人ではなく、計画の方を動かす
これらは「相手を排除する」のではなく、 チーム全体が前に進める形を再設計する という発想です。
おわりに
進まない関係者に対して、 「あの人さえいなければ」 と思う瞬間は、PMをやっていれば誰にでもあります。私自身も何度もありました。
ただ、その思考に留まっている限り、状況は変わりません。 相手も困っている可能性が高い という前提に立って、自分の関わり方を設計し直す方が、結果的にプロジェクトも自分自身も楽になります。
これは前作とも繋がる話です。
