TL;DR
- PMだけで成立するプロジェクトは存在しないが、開発者だけで成立するプロジェクトは存在する
- この非対称性を受け入れると、PMの仕事は自然と「開発者が進めやすくなることを何でもやる」になる
- その本質にあるのは感謝である
対象読者
- 自分の役割に迷いがあるPM
- PMという仕事に懐疑的な開発者
- これからPMになる方
はじめに
PMの存在意義はプロジェクトを成功させることだと思っています。
その中でも役割として大きく分けて3つあると考えています。
- 関係者が動きやすい環境を整える ← こちらが本記事のテーマ
- 進捗などの報告
- 予算や人員の調整
2と3は開発者から見えにくい裏方の仕事であり、それぞれ別の難しさがあります。本記事ではより本質的な1番を掘り下げます。
PMの仕事はほぼ「調整」である
まず前提を共有しておきます。PMの仕事はほぼ調整です。要件定義、ステークホルダー間の合意形成、優先順位付け、リソース調整。
ここまでは一般的な認識ですが、ここから先の構造を見落としているPMが多いと感じます。
PMは開発者に支えられている(非対称性の話)
プロジェクトの成功は、突き詰めれば 動くソフトウェアが存在すること が前提になります。動くものが無ければ、どれだけ調整しても成功はあり得ません。
ここで重要な事実があります。
開発者だけで成立するプロジェクトはあり得る。
しかしPMだけで成立するプロジェクトはあり得ない。
この非対称性こそが、PMの立ち位置を決定づけます。PMは開発者に支えられている存在であり、その逆ではありません。
だからPMは感謝する
この事実を理解すると関係者への接し方が変わります。「お願いする側」「指示する側」という構図が崩れ、自然と感謝が先に立ちます。
そして、あるべき姿が見えてきます。
開発者が進めやすくなることであれば、PMは何でもする。
具体的には次のような行動です。
- 仕様の曖昧さを先回りで潰し、判断に必要な情報を集めておく
- ステークホルダーからの割り込みをPMが引き受け、開発者の集中時間を守る
- 意思決定を即返し、待ち時間を作らない
- ブロッカーが発生したら他の予定を捨ててでも最優先で除去する
- 開発者から出た懸念を軽視せず、必要なら計画自体を見直す
特に 「集中時間を守る」「意思決定を即返す」 の2つは、PMが介在することでむしろ開発スピードを上げられる数少ないポイントだと考えています。逆にこの2つができないPMは、開発者にとって純粋なコストになりかねません。
これらは、サーバントリーダーシップやスクラムマスターの「障害除去」と重なる考え方でもあります。
ただし「何でもやる」は 無条件の譲歩ではない 点に注意してください。スコープや品質で意見が割れたとき、感謝を理由に判断を曲げるのは別の話です。感謝と意思決定は両立します。
感謝の対象は開発者だけではない
もう一段踏み込むと、営業やカスタマーサポートへの感謝も欠かせません。
多くのプロジェクトにとっての「成功」は、最終的に売上として現れます。営業がソフトウェアを売り、カスタマーサポートが離脱を防ぎ、その積み重ねで開発したものが価値として残ります。
PMはプロジェクトの中心に立ちがちですが、自分は価値の連鎖の一部でしかありません。この自覚があると、職能を超えたコミュニケーションが取りやすくなります。
行動の前提は「関係構築」
ここまで「PMが何をすべきか」を書いてきましたが、これらの前に揃えておくべき前提があります。それは 開発者が困りごとを話してくれる関係性 です。
どれだけ意思決定を即返す体制を整えても、ブロッカー除去の意気込みがあっても、開発者が困っていることを話してくれなければあまり機能しません。報告会で出てくる情報は氷山の一角で、本当に重要な詰まりは雑談の中で初めて口にされたりします。
だからこそ、PMが日常的にやるべきことは案外シンプルです。
- 開発者のことを考えて行動する(これだけで自ずと信頼が積み上がる)
- 困っていそうな兆候を察知したら、こちらから声をかける
- 開発者が話してくれたことには、形だけでも必ずアクションで返す
派手さはありませんが、これができていないPMは、後続のどんなアクションを積み上げても土台が抜けたままです。
明日からPMができること
ここまでの内容を、現役のPMが明日から実践できる具体的なアクションに落とし込みます。
すぐにやるべきこと
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開発者の割り込みを物理的に減らす
ステークホルダーからの問い合わせを一旦自分で受け止め、開発者へ流す前にフィルタリングする。「この質問、PMで答えられないか?」を毎回考える癖をつける -
意思決定の返信を最優先タスクにする
開発者からSlackやチャットで判断を仰がれたら、自分の作業を中断してでも即返す。返せないなら「いつまでに返す」だけでも先に伝える -
ブロッカーの可視化
チームが今何で詰まっているかを毎日把握する。詰まりが見えていない状態は、PMが機能していない状態と同義
中長期で考えるべきこと
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自分が本当に「価値の連鎖の一部」だと思えているか
指示する側・お願いする側という意識が抜けていないと、感謝は土台にならない。日々の発言や態度に表れていないか、定期的に自問する -
2と3(報告・予算管理)を効率化し、1に時間を使う
報告や予算調整は重要だが、本質ではない。テンプレ化・自動化できるところは徹底的に削り、1に使える時間を増やす -
開発者以外への感謝も忘れない
営業・CS・デザイナーなど、価値を届ける全ての職能が連鎖の一部。PMは中心ではなくハブに過ぎない
これらは派手な施策ではなく、地味で日常的なものです。それでも、感謝を土台にしたPMが現場に1人いるかどうかで、プロジェクトの空気は明確に変わると考えています。
おわりに
すべてのPMが「開発者のために何でもやる」というマインドを持てば、現場で幸せに働ける人がずっと増えると思います。そしてその姿勢は、 感謝という土台の上にしか成立しません。
スキルや方法論の話ではなく、まず構造を理解すること。そこから始まると考えています。
