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はじめに

「話が噛み合わない」や「会話が平行線を辿っている」といった状況を経験されたことのある方は居ますでしょうか?
私は何度もあります。

実際の経験としては、自身と他の誰かとの会話というよりは、他の誰か同士(仮にAさんBさん)の間で問題が生じてるといった場面に遭遇した経験が多いという形です。

こういった時、「言語化がうまくないから失敗した」や「言語化が苦手」のようにまとめてしまう事を見かけて、一因としては分かるものの本当にそうなんだろうか?と疑問に感じる部分が多いため、改めて深掘って考えてみたいと思いました。

記事タイトル接頭辞の「シン」は、庵野秀明監督作品のオマージュで、特に深い意味はありません。
ただ使いたかっただけです。

自己紹介

わたしは、合同会社DMM.com二次元事業のエンジニアリングマネジメントに携わっています。
過去に通信不確実性に関する話題で登壇発表した内容がログミーTechさんで記事になったりもしました。

「コミュニケーションが取りやすい」と感じることの正体

私は普段から、話が分かりやすい・話をし易いと言って頂けることが比較的多いです。
実は、意識している秘伝のコツがありまして。

それは、会話をする相手にとって予測可能な状態を保つことです。

これだけだと少し分かりづらいかも知れないので、順を追って詳しく説明したいと思います。

意味が先、言葉が後

我々の祖先が「言語」を使い始めたのは、紀元前5万年頃と言われています。
文字が確立する前なので、口頭での話す言葉ですね。

ヒトは集団(群れ)で生活してきた社会的動物なので、言語が出来上がる前から自分以外の他者との意思疎通を何らかの形でやってきたことでしょう。

また、「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」という用語も存在します。
身振り手振りなどの身体の動きや、アイコンタクトを含む顔の表情によって、怒っている・喜んでいる・驚いているなどが読み取れます。
特定の方角を指さすことで、その方向への注意を促し先導したり、手拍子でリズムを刻むことで集団の祭りや活動へ一緒に参加している感覚があることでしょう。

このような現象を、ここまで文字(言葉)で表してきましたが、実際には文字や言葉が無い時代から現代まで存在するものなので、言葉よりも「意味が先」と言っています。

言語は、道具の1つである

我々の祖先が「道具」を使い始めたのは、紀元前500万年頃と言われており、最初の道具は何も加工していない石や木の棒だったと言われています。
※現代の鳥類であるカラスが上手に石を使っている動画があったりもするので、動物としてはもっと前から使えているかもですが。

進化の歴史の中で「道具を使う」という記憶が遺伝子レベルで言語よりも深く刻まれているはずなので、言語は道具の一種だと捉えているのではないかと考えています。

道具は、達成したい目的のために使っている

石を使う時は、1例として木の実を割る時など手で直接叩くと痛くて硬いものを壊す目的が考えられます。
木の棒を使う時は、1例として自分の手の長さだけでは届かない所にあるものを取ったり、毒を持っている生物から距離をとりつつ追い払う目的が考えられます。

この様に用途(使い方)がある程度限定されているものは分かり易いと思います。

では「何にでも使えるもの」は、どのような目的が考えられるでしょうか?

文脈や状況に依存する。だからこそ

前置きが長くなり失礼しました。「予測可能な状態」の説明です。

言語は、何にでも使える道具です。
さらに言い換えると、色々な意味を持たせることができる道具です。

ここまでの間に「言葉が後、意味が先」だと言いました。
なので、ヒトは言語(他者が使う道具)に対しての向き合い方として「これは、どんな意味があるのか?」をずっと考え続けて(認知しようとして)いるのです。

ヒトにとって一番苦痛を感じるのは、意味が理解できない時です。
ある一定時間内に意味が理解できない場合、興味を失ってしまうか、理解しようとして脳がフル稼働するため凄くエネルギーを消費してしまう(疲れたと感じさせる)ことになります。
エネルギーが切れてしまうと、いわゆる集中力が途切れる状態になるので、どのような言葉を発したとしても受け取れない状態になります。

この、苦痛を感じたり集中力が途切れる状態を生まないことが秘伝のコツです。
つまり「予測可能」とは「意味が理解しやすい」ことを指しています。

何がしたいのか分からない、何が言いたいのか分からない

これまで「意味」と表現してきた部分には「意図」も含んでいます。
つまり、話者が自身だった際に「どんな目的をもって話そうとしているのか」という意図のことです。

報連相は、報告・連絡・相談の意味ですが「進捗状況の報告」と「懸案事項の相談」だと目的が全く異なるため、話を受けた側は最初に目的を伝えてもらえていないと、これから話そうとしている内容を予測できないため、ずっと意味・意図を探ろうとする訳です。

もし「考えがまとまっていない」と言われてしまう方の場合は、自分が何を目的として話をしたいのかを一言で表現できるレベルまで準備(自身の考えを整理)できていないことが多いのではないかと思います。

会議におけるアジェンダの準備も凄く大事ですね。

明確な目的を持ってからが、言語化のスタートライン

誤解の無いように改めて表現すると、ここでいう目的は、言語化スキルを高めるための目的では無く、他者に話をする時々において自分が達成したい目的のことです。

話をする時の達成したい目的は、以下のように色々あると思います。

  • 助けて欲しい。何故なら困っているから
  • 愚痴を聞いて欲しい。何故なら気分を害したから
  • 教えて欲しい。何故なら自分で調べたけど見つからないから
  • ご飯が食べたい。何故ならお腹が空いたから
  • 早く解決して欲しい。何故なら顧客からクレームが入っているから

「言語化」というと、どのような言葉を用いれば良いのかというような言葉の使い方に考えが偏ってしまう方は居ませんでしょうか?
もちろん、適切な表現の言葉を適切なタイミングで使用することは凄く重要なのですが、その手前の段階として、ハッキリと求めていることを最初に伝えられているかを今一度考えてみていただくことが第一歩だと思っています。

細かい言葉使いよりも、伝える順番を意識することが肝心です。

さいごに

「言語化」というと、抽象・具体の行き来や情報整理がテーマに掲げられることが多かったり、思っていることを言葉にする・モヤモヤした感情を言葉にするといったテーマになることが多いように感じていたので、別の観点での考えを入門編としてまとめてみました。

参考書籍

  • 情報の歴史21: 象形文字から仮想現実まで
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