はじめに
マルチエージェントってなに?
私も最初は、「エージェントが複数いて、それぞれが連携して動く?ちょっと複雑すぎる…」と少し身構えました。
でも実際にみてみると、基本のしくみはシンプルで、十分に理解できる内容でした。
この記事では、Agentforceのマルチエージェントオーケストレーションのしくみと、Agentforce Builderでの設定の入口を整理します。
Summer '26 時点のステータス: Beta(Salesforce Developer Blog, 2026年6月)
マルチエージェントオーケストレーションとは?
一言でいうと、「専門家チームを束ねる司令塔エージェントがいる」しくみです。
Excelでいうと、「〇〇担当シート」がいくつかあって、マスターシートが自動で適切なシートに転送してくれるようなイメージです。
具体的な登場人物は2種類。
オーケストレーターエージェント(司令塔)
ユーザーからのリクエストを最初に受け取り、「この仕事はどのエージェントに任せるべきか?」を判断して振り分けます。
ユーザーはこの窓口だけ意識すればOKです。
サブエージェント(専門家)
オーケストレーターから仕事を受け取り、専門領域の処理を実行して結果を返します。
「請求担当」「技術サポート担当」「在庫確認担当」のように、それぞれが特定のドメインに特化します。
つまり、「1人の万能エージェントを作る」より「得意分野を持った担当者チームを組む」という考え方です。

マルチエージェントのルーティングイメージ
Atlas Reasoning Engine がルーティングを決める
ここが個人的に「へぇ」と感じたポイントです。
「どのサブエージェントに振るか」を決めるのは、Atlas Reasoning Engine(アトラス推論エンジン)というAIです。
固定のルール表があるわけではなく、以下の3つの情報をリアルタイムで読んで判断します。
- サブエージェントの名前
- 分類説明(このエージェントが何を担当するかの説明文)
- 指示(Instructions)(このエージェントがどう振る舞うべきかの詳細)
この3つを読んで「このリクエストはどの担当者に渡すのが一番いいか?」を毎回推論します。
ここで一番大事なのが説明文の質です。
説明文が曖昧だと、エージェントが別の担当に振られてしまいます。
「人間向けのドキュメント」ではなく「Atlasへのルーティング仕様書」として書く、というのが重要な考え方です。
私も設定してみて「説明文がそのまま精度に直結するんだ」と実感しました。
つまり、Agentforceのマルチエージェント設計は「AIに何を任せるかより、どう説明するかが先決」という理解でOKです。

あくまでイメージです。実際の画面とは異なります
Agentforce Builder での設定手順(Beta)
設定はAgentforce Builderから行います。
正直、設定画面を開いた瞬間は「どこに何があるんだろう?」と思いましたが、手順を追えば迷わずできました。
オーケストレーターとサブエージェントを接続する
- 設定のクイック検索で「Agentforceスタジオ」を開く
- オーケストレーターとして使うエージェントを選び「Builderで開く」をクリック
- 左パネル(エクスプローラー)の「+」ボタンをクリック
- 「エージェントをサブエージェントとして接続(Beta)」を選択
接続するサブエージェントを選択し、説明文(分類説明)を丁寧に記述する
この説明文がAtlasのルーティング判断に直接使われます。
「何をするか」だけでなく「何をしないか」も書いておくのが効果的です。
Agent Router を使う場合
「推論に使用できるアクション」にサブエージェントを追加し、エージェントスクリプトの指示内で@サブエージェント名の形式で参照します。
つまり、設定の核心は「サブエージェントを接続」+「説明文を書く」という2ステップの理解でOKです。
ここは注意!つまずきポイント
① 「縫い目の問題(Seam Problem)」に気をつけて
単一エージェントだと「どこで失敗したか」は1か所でした。
マルチエージェントでは、エージェント間のハンドオフ(引き渡し)のたびに失敗ポイントが増えます。
Salesforce公式も「Seam Problem(縫い目の問題)」として認識しています。
エージェントAがBに渡すとき、コンテキストが欠けたり、誤った情報が後続に伝わったりするリスクです。
実務で使うなら、まずオーケストレーター+1サブエージェントの2体構成から始めて、動作を確認してから増やすのが安全です。
最初から5体を並べると、問題が起きたときの切り分けが大変です。
② 説明文が曖昧だと「意図しないサブエージェントに振られる」
似た役割を持つサブエージェントが複数ある場合、分類説明が重なっていると誤ルーティングが起きます。
良い書き方の例:
「顧客の過去の注文状況を確認するときに使用する。返品・交換の問い合わせは扱わない。」
NG例:
「注文に関する問い合わせに対応する。」
「しないこと」を書くことが、ルーティング精度の安定に効きます。
③ Beta版のため今後仕様が変わる可能性がある
Summer '26 時点でのマルチエージェントオーケストレーションはBeta版です(Salesforce Developer Blog, 2026年6月)。
Enterprise Edition以上で利用可能ですが、本番環境に適用する前に必ず最新の公式ドキュメントを確認してください。
とくに設定画面の構成やUI名称は今後のリリースで変更される可能性があります。
まとめ
- マルチエージェントオーケストレーションとは、「オーケストレーターエージェントが司令塔になり、専門のサブエージェントにタスクを振り分けるしくみ」
- ルーティングはAtlas Reasoning Engineが行い、サブエージェントの「説明文・指示・ツール」を読んで判断する
- 設定はAgentforce Builderから「エージェントをサブエージェントとして接続(Beta)」で行い、説明文の質が精度を左右する
- まずは2体(オーケストレーター+1サブエージェント)から始めて、動作を確認してから拡張するのが推奨
設定画面は最初ちょっと複雑に見えましたが、「司令塔と担当者の接続」と「説明文を書く」という2つを押さえれば、基本的な動きは理解できます。
Salesforceの機能は毎リリースで進化しているので、一緒に少しずつ慣れていきましょう!
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