はじめに
社内向けFAQボットを外部サービスを使わずSalesforce標準機能だけで作れないか、と調べていてたどり着いたのがAgentforce Employee Agentです。
Data Libraryにナレッジ記事を取り込み、標準サブエージェントのGeneral FAQと組み合わせるだけで、規程集ベースの自動応答窓口が作れます。
この記事では、エージェント作成から社内規定の連携までの実装手順をまとめます。
Agentforce Employee Agentってどんなもの?
Agentforce Employee Agentは、簡単に言うと社内向けの問い合わせ窓口をAIが代行してくれる仕組みです。要するに、総務・人事版のチャットボットを、Salesforceの標準機能だけで作れると考えてください。
Employee Agentは部署ごと・用途ごとに複数作成でき、アクセス権も権限セットやプロファイルで細かく制御できます。総務用、人事用、といった具合に窓口を分けたい場合は、Employee Agentの方が向いています。
つまり、部署ごとに専用のAI窓口を用意できる仕組み、という理解でOKです。
Employee Agentを作成する手順
実際の設定は、次の流れで進めます。
- Salesforce画面右上の歯車アイコンから「設定」を開きます。
- 設定画面左側のクイック検索に「Einstein 設定」と入力し、「Einsteinを有効化」のトグルがオンになっているか確認します。オフならオンにします。
- 続けてクイック検索に「Agentforceエージェント」と入力し、表示された画面で「Agentforce」のトグルがオンになっているか確認します。
- 左上のアプリケーションランチャー(格子アイコン)を開き、「Agentforce Studio(Agentforceスタジオ)」を検索して開きます。
- Agentforce Studioの画面で「New Agent(新しいエージェント)」をクリックすると、新しいタブでAgentforce Builderが開き、エージェント作成のウィザードが始まります。
- 最初にエージェントタイプ(テンプレート)を選ぶ画面が出ます。ここで「Employee Agent」を選択します。テンプレートに応じて、初期のTopicとActionsが自動で構成されます。
- テンプレートに含まれる「General FAQ」が自動で追加されているので、総務・人事向けの一般的な問い合わせに対応させたい場合はそのまま残し、不要なものは外します。

※ 言語設定はデフォルトだと英語になっているので日本語に変更しておくことをおすすめします。
作成が終わったら、いったんエージェントの骨組みができた状態です。次に、総務・人事の実務に合わせて中身を整えていきます。
つまり、この時点ではまだ「箱」を作っただけ、という理解で大丈夫です。
総務・人事向けにナレッジとサブエージェントを整える
Employee Agentの標準機能には、総務・人事に特化した専用サブエージェント(有休日数の自動計算や経費精算といった個別業務)は含まれていません。
似た名前の「Agentforce Employee Service」というテンプレートもありますが、こちらはService Cloud Employee Hubなど別のライセンス体系が必要な、より重量級の機能です。今回はまず、社内規程やFAQをAIが答えられるようにする、身近な範囲から始めます。
就業規則や経費精算マニュアルを1つのデータライブラリにまとめて放り込むやり方もありますが、今回は規程ごとにライブラリを分けて、それぞれ専用のレトリーバーとプロンプトテンプレートを持たせる形にしました。
就業規則についての質問なのに経費精算規程の文言まで拾ってきてしまう、という誤ヒットを避けたかったからです。
具体的な手順は次のとおりです。
※DataCloudを有効化していない場合は先に有効化が必要です。「Data Cloud 設定 ホーム」から使用を開始してください。
- データライブラリを規程ごとに分けて作成します。就業規則用、経費精算規程用、というように1つの規程につき1つのライブラリを用意し、対応するPDFをそこに取り込みます。ライブラリを作ると、同じ名前のレトリーバーが自動でできます。
まずデータライブラリからファイルをアップロードします。
名前などを入力し対象のPDFをアップロードして保存
※アップロード後レトリーバー生成までしばらく時間がかかります。 - Prompt Builderを開き、規程ごとにFlexタイプのプロンプトテンプレートを作成します。
テンプレート内のリソースを挿入から「レトリーバー」→「レトリーバーを設定」を選び、対応するレトリーバーを埋め込みます。

レトリーバーへ渡す検索パラメーターにユーザーからの質問内容を入れます。
プロンプトを整えて、保存、有効化します。
- Agent Builderを開き、労務関連の質問に回答するサブエージェントを追加します。

サブエージェント名などを入力して作成します。
- 先ほど作ったプロンプトテンプレートを「アクションとして追加」から、Agent Builder側のエージェントにアクションとして登録します。就業規則用なら「就業規則について回答する」のような名前にしておくと、後から見てもわかりやすくなります。

アクション名などを入力して作成します。
- エージェントの指示欄に、どの質問がどのアクションに向かうべきかを書き添えます。「就業規則に関する質問は◯◯アクションを使う」のように、担当範囲をアクション単位ではっきりさせておくイメージです。
- 同様に経費精算のプロンプトテンプレート作成からサブエージェントへの追加まで行います。
私も最初は「規程ごとにレトリーバーを分けるなんて手間が増えるだけでは」と思っていたのですが、実際に試してみると、就業規則の質問に経費精算の話が混ざることがなくなり、回答の精度がはっきり上がりました。ひと手間かける価値はあったと思います。
General FAQは雑多な質問の受け皿として残しつつ、規程の細かい条文が絡む質問は規程専用のサブエージェントが答える、という役割分担になっています。
試してみる
実際にプレビューで試してみましょう。
まず就業規則に関連する有給休暇について質問してみます。

次に経費精算に関する内容として、経費精算できるものについて質問してみます。

それぞれ、各アクションを実行して、規定を参照して回答を返してくれています。
ここは注意!つまずきポイント
Agentforce Employee Agentを使う前に、いくつか知っておきたい注意点があります。
まず、このEmployee Agentは追加費用が必要な機能です。Enterprise・Performance・Unlimited・Developerエディションで使えますが、Agentforce Employee agentアドオンライセンスが別途必要で、利用量に応じてFlex Creditsを消費する課金モデルになっています。基本ライセンスに含まれているわけではないので注意してくださいね。正確な料金は組織の契約内容によって変わるため、営業担当者への確認をおすすめします。
次に、日本語での運用にはややクセがあります。サブエージェントやアクションの指示設定自体は英語のみのサポートで、日本語でも動作はするものの、英語に比べて挙動が不安定になることがあるとされています。また、一部の標準アクション(Query RecordsやQuery Records with Aggregate)は「私の商談を教えて」のような抽象的な日本語の質問をうまく処理できません。具体的な名称を含めた質問にする、という工夫が必要です。
さらに、「Answer Questions with Knowledge」アクションは1つのエージェントにつき1つのサブエージェントでしか使えない、という制限もあります。General FAQを残したままWeb検索機能(General Web Search)を追加したい場合は、先にGeneral FAQを外す必要がある点も覚えておくと安心です。今回のように規程ごとの回答をプロンプトテンプレート経由のアクションで持たせておけば、この制限自体を気にせずに済みます。General FAQは雑多な質問の受け皿として残したまま、規程回答用のアクションはあとからいくらでも追加できるからです。
最後に、Agent Builderのプレビュー画面でのテストであっても、実際にレコードが作成・更新されることがあります。実務で使う前に、Sandboxなどのテスト環境で試しておいた方が良さそうです。
まとめ
今回はAgentforce Employee Agentを使って、総務・人事向けの社内ヘルプデスクを立ち上げる手順を紹介しました。
- Employee Agentは部署ごとに複数作成でき、権限セットやプロファイルでアクセス制御ができる
- 作成自体は「新しいエージェント」からテンプレートを選ぶだけで、大きな開発は不要
- 総務・人事の個別業務(有休計算や経費精算など)は標準搭載ではなく、まずはFAQ・ナレッジ回答から始めるのが現実的
- 就業規則や経費規程はデータライブラリとレトリーバーを分け、プロンプトテンプレート経由のアクションとして持たせると、誤ヒットを防ぎつつAnswer Questions with Knowledgeの制限も回避できる
- Employee Agentアドオンライセンスが必要で、Flex Creditsによる追加費用が発生する
- 日本語での運用には、具体的な質問の仕方など多少のコツがいる
総務・人事の問い合わせ対応は、地味に時間を取られる業務です。まずは小さな範囲からEmployee Agentを試して、一緒に少しずつ慣れていきましょう!
noteやってます。
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