0.はじめに
こんにちは。東京大学文科3類2年で、東大AI研究会代表/ついてこい係の青木です。
2026年7月に韓国・ソウルで開催されたICML2026に東大AI研究会から6名が聴講参加しました。参加期間は7/10〜11。各自の参加記を、活動記録の一部として投稿します。
1.全体概要
韓国・ソウルにて、ICML2026が開催されました。ICMLは機械学習分野を代表する国際学会で、機械学習分野の最先端の研究と、世界中の研究者・企業関係者が集まります。今年は規模が一気に拡大したらしく、論文投稿数は昨年から2倍の24,661件とのことです。
参加者も20,000人を超え、大盛況の様子でした。
会場となったCOEXは巨大な複合施設で、多くのワークショップ会場や、広大なポスター発表のブースが一つの施設内に収まっています。さらに地下にはショッピングモールが広がり、巨大な図書館やカジノ、さらに水族館まで併設されています。
膨大な参加者を収容できるほどの広さと、充実した観光施設を備え付けた、トップカンファレンスにふさわしい会場でした。

(上2枚:ポスターセッションの会場。とても広い。発表時間に区切りがあるらしく、担当者不在のポスターも多くあった。)
2.研究紹介
7月10日のワークショップから参加しました。主に”Culture x AI: Evaluating AI as a Cultural Technology”で講演を聞いていました。このワークショップでは、生成AIの文化的な側面に着目した研究に焦点が当てられています。
特に面白かった研究を紹介します。
Kirak Kim ら “Does Persona Make LLMs K-pop Fans? A Pilot Study of LLM-Based Online Concert Audience Agents”
「個別に設定付けたLLMによって、アイドルのライブ録画の視聴体験を高める可能性」について焦点を当てた研究の口頭発表です。
アイドルのライブを他の人と一緒に生で見るのと、一人で録画で見るのとでは視聴体験が全く異なります。この研究では、生成AIによってチャットを同時生成することで、録画の視聴体験を向上できるかを検証しています。
推しメンバーが違ったり、振り付けにこだわったりするペルソナを設定した生成AIを10個用意して、数秒ごとにコメントを生成します。生成したコメントを付けた動画を被験者に見てもらって、視聴体験の質を計測します。対照条件として、ペルソナなしのAIで生成したコメントのみの動画を作成します。
結果として、ペルソナを設定したAIの方が、生成されるコメントの自然さは高く評価されました。一方で、社会的つながりや感情的な盛り上がりなどの指標では、ペルソナの有無による大きな差は見られませんでした。
検証結果の仮説として、ライブらしい視聴体験には、個々のコメントがどうこうではなく、群衆との一体感が重要な要因になるということが示されています。ここから「生成AIは個々では自然な振る舞いをすることはできるが、ペルソナだけでは不十分で、ファンダム文化・群衆行動・ユーザー自身の関心との整合が必要」と考えました。今はAIの個別の能力が注目されていますが、人間を模倣した個別のAIが、人間の群衆と同じような現象を起こすことができるのかについて、勉強してみようと思います。
Hwajung Hong ”Beyond the Average - Orchestrating Human-AI Co-Creativity in Industrial Design”
本講演では生成AIが人間の問題解決のためのデザインに与える悪影響とその解決法について論じられました。
生成AIの使用により人間の思考力・問題提起能力・多様な発想能力が弱くなる可能性が示唆され、結果的にデザインがAI生成の画一的なものになるとの警告がありました。その解決策として、生成AIにデザインを一貫して行わせるのではなく、解決すべき問題の定義を人間が行い、生成AIの出力を調整しながら、AIと協業していくことの重要性が示されています。
この講演では、生成AIを過度に使用することの問題点として、「デザインの固定化」が挙げられていた。デザインの初期案をAIに作らせると、それに引っ張られてしまって、アイデアの幅が制限されてしまうと述べられています。皆が初期案をAIに頼るようになると、人間の新規性のあるデザインが生まれなくなり、いつかはAIデザインで溢れかえってしまうのではないでしょうか。
さらに、この講演の次に開催されたパネルディスカッションでは、AIが生成したデザインをAIが学習することで、AIの出力がさらに画一的なものになる危険性が示されています。
パネルディスカッションでは他にも、人間が書く文章がどんどんAIに寄って行っている可能性が示唆されました。
これらのことから、AIが初期案を示し、AIに強い影響を受けた人間がデザインを完成させ、そのデザインをAIが学ぶ...というAIのデザインループを考えました。AIの性能がどんどん向上して、AI生成の画像や文章がネット上にあふれかえっています。デザインループはすでに進んでいるでしょう。
デザインの多様性を守るためには、「いかに人間の手元に0→1の部分を残せるか」にかかっています。今後はデザインループの進行と解決法に注目していきたいです。
3.交流
ワークショップ初日の夜、Anthropic主催のKBBQに参加しました。たまたま私の近くに座った人は論文を通している人で、私では対等の会話が全くできませんでした。自分の学術的な知識の無さと、勉強不足を痛感しました。
このイベントは現地であった日本人の方に紹介してもらったもので、「ワークショップで誰かと仲良くなって夜ご飯に行く」という目標はある意味達成できましたが、悔しさが大きく残る結果になりました。
4.まとめ
今回のICMLは初の国際学会ということもあり、語学の不安などもありましたが、多くのことを学べました。論文も通していない学部生が国際学会に行くことは滅多に無いと思いますが、
- 最先端の研究を間近で見られる
- 多くの研究者とコミュニケーションが取れる
- 学部に入っていなくても、一つ詳しい分野があると役に立つ
などなど、多くの価値があるものでした。
シンプルに学会そのものが楽しいので、今後も参加したいと思います。







