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微分幾何の学習メモ(3) Theorema Egregium

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微分幾何の学習メモ

(1) http://qiita.com/u_1roh/items/6e596219db92b0514961 曲率

(2) http://qiita.com/u_1roh/items/890ca6d4b3fe76e4d78b 正規直交系における基本形式まで

の続き


  • これは「曲線と曲面の微分幾何(小林昭七)」読みつつ書いた学習メモです。

  • 個人用のメモなので、他人に分かるようには書いていません。

  • 自分なりの式展開も含んでいるので、単純に教科書をなぞった内容ではありません。

  • 非専門家による個人の学習メモであるため、正確さについては期待しないでください。

  • 間違いがあったら教えてください><


正規直交基底の微分

既に $||e_3|| = 1$ の両辺を微分することにより $de_3\cdot e_3 = 0$ という関係を導出した。

これを一般化して、$e_i\cdot e_j = \delta_{ij}$ の両辺を微分することで得られる関係を探っていく。

\begin{array}{rl}

& e_i\cdot e_j = \delta_{ij} \\
\rightarrow & d(e_i\cdot e_j) = 0 \\
\rightarrow & de_i\cdot e_j + e_i\cdot de_j = 0 \\
\end{array}

ここで、各 $de_i$ は正規直交基底 ${e_1, e_2, e_3}$ の一次結合で書ける。

(de_1\ de_2\ de_3) = (e_1\ e_2\ e_3)\left(

\begin{array}{ccc}
\omega_1^1 & \omega_2^1 & \omega_3^1 \\
\omega_1^2 & \omega_2^2 & \omega_3^2 \\
\omega_1^2 & \omega_2^3 & \omega_3^3 \\
\end{array}\right) \\
\Leftrightarrow de_i = \sum_{k=1}^3 \omega_i^k e_k

これを代入すると、

\begin{array}{rl}

& de_i\cdot e_j + e_i\cdot de_j = 0 \\
\rightarrow & (\sum\omega_i^k e_k)\cdot e_j + e_i\cdot(\sum\omega_j^k e_k) = 0 \\
\rightarrow & \omega_i^j + \omega_j^i = 0
\end{array}

以上により $\omega_i^j$ は反対称行列であり、特に $i=j$ とすると $\omega_i^i = 0$ である。

(de_1\ de_2\ de_3) = (e_1\ e_2\ e_3)\left(

\begin{array}{ccc}
0 & \omega & \omega^1 \\
-\omega & 0 & \omega^2 \\
-\omega^1 & -\omega^2 & 0 \\
\end{array}\right)

ただし、

\omega = \omega_2^1,\quad \omega^1 = \omega_3^1,\quad \omega^2 = \omega_3^2

と置いた。この辺は教科書と記号の使い方が違うのだけれど、どうも自分は添字が増えてくると目が滑って頭に入らなくなってくるので、出来るだけ添え字が減るように書き換えてみた。

ここで導いた $\omega, \omega^1, \omega^2$ は次節以降の計算で活躍する。


第一構造式

\begin{array}{rl}

& ddp = 0\\
\rightarrow & d(\theta^1 e_1 + \theta^2 e_2) = 0 \\
\rightarrow & (d\theta^1 e_1 - \theta^1\wedge de_1) + (d\theta^2 e_2 - \theta^2\wedge de_2) = 0 \\
\rightarrow & (d\theta^1 e_1 - \theta^1\wedge (-\omega e_2 - \omega^1 e_3)) + (d\theta^2 e_2 - \theta^2\wedge (\omega e_1 - \omega^2 e_3)) = 0 \\
\rightarrow & (d\theta^1 - \theta^2\wedge \omega)e_1 + (d\theta^2 + \theta^1\wedge \omega)e_2 + (\theta^1\wedge\omega^1 + \theta^2\wedge\omega^2)e_3 = 0
\end{array}


対称行列

まず最後の項より次式が得られる。

\theta^1\wedge\omega^1 + \theta^2\wedge\omega^2 = 0

この式から行列 $b_{ij}$ が対称行列であることを導出しよう。

まずおさらいしておくと、$b_{ij}$ とは $\omega^1, \omega^2$ を $\theta^1, \theta^2$ の線形和として書いたときの係数であった。

\left(\begin{array}{c}\omega^1 \\ \omega^2\end{array}\right) =

-\left(\begin{array}{cc}b_{11} & b_{12} \\ b_{21} & b_{22}\end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}\theta^1 \\ \theta^2\end{array}\right)

これを代入すると、

\begin{array}{rll}

\rightarrow & \theta^1\wedge(-b_{11}\theta^1 - b_{12}\theta^2) + \theta^2\wedge(-b_{12}\theta^1 - b_{22}\theta^2) &= 0 \\
\rightarrow & b_{12}\theta^1\wedge\theta^2 + b_{21}\theta^2\wedge\theta^1 &= 0 \\
\rightarrow & (b_{12} - b_{21})\theta^1\wedge\theta^2 &= 0
\end{array}

以上より $b_{12} = b_{21}$ が導出できた。


第一構造式

次に、最初の2項より第一構造式と呼ばれる次式が得られる。

\begin{array}{rr}

d\theta^1 =& \theta^2\wedge\omega \\
d\theta^2 =& -\theta^1\wedge\omega
\end{array}

ここで、$\omega$ は $\theta^1, \theta^2$ の一次結合で書けるので、次のように置く。

\omega = b_1\theta^1 + b_2\theta^2

これを第一構造式に代入すると

\begin{array}{lrl}

d\theta^1 =& \theta^2\wedge(b_1\theta^1 + b_2\theta^2) &= -b_1\theta^1\wedge\theta^2 \\
d\theta^2 =& -\theta^1\wedge(b_1\theta^1 + b_2\theta^2) &= -b_2\theta^1\wedge\theta^2
\end{array}


第二構造式

$dde_i=0$ より導出する。

\begin{array}{rl}

& dde_1 = 0\\
\rightarrow & d(-\omega e_2 - \omega^1 e_3) = 0 \\
\rightarrow & -d\omega e_2 + \omega\wedge de_2 - d\omega^1 e_3 + \omega^1\wedge de_3 = 0 \\
\rightarrow & -d\omega e_2 + \omega\wedge (\omega e_1 - \omega^2 e_3) - d\omega^1 e_3 + \omega^1\wedge(\omega^1 e_1 + \omega_2 e_2) = 0 \\
\rightarrow & (d\omega - \omega^1\wedge\omega^2)e_2 + (d\omega^1 + \omega\wedge\omega^2)e_3 = 0
\end{array}

第1項より次式が得られる(同様の結果が $dde_2 = 0$ からも得られる)。

\begin{array}{ll}

d\omega &= \omega^1\wedge\omega^2 \\
&= (-b_{11}\theta^1 - b_{12}\theta^2)\wedge(-b_{21}\theta^1-b_{22}\theta^2) \\
&= (b_{11}b_{22} - b_{12}b_{21})\theta^1\wedge\theta^2
\end{array}

一つ前の記事(http://qiita.com/u_1roh/items/890ca6d4b3fe76e4d78b )でガウス曲率が次式のように導出されていた。

K = b_{11}b_{22} - b_{12}b_{21}

従って次式が得られた。

d\omega = K\theta^1\wedge\theta^2

これを第二構造式という。


ガウス曲率は第一基本形式のみから決まる

次式のRiemann計量が与えられたとする。

ds^2 = (du\quad dv)

\left(\begin{array}{cc} E & F \\ F & G \end{array}\right)
\left(\begin{array}{c} du \\ dv \end{array}\right)

今までは $p(u, v)$ から計量を導出してきた。ここでは逆に、Riemann計量が所与のものとしてあり、それのみからガウス曲率を導出していく。

まず次のような座標変換を考える。

\left(\begin{array}{c}\theta^1 \\ \theta^2\end{array}\right) =

\left(\begin{array}{cc}a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22}\end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}du\\ dv\end{array}\right)

この変換$a_{ij}$を適切に選ぶことにより $ds^2 = \theta^1\theta^1 + \theta^2\theta^2$ とすることが出来る。(証明略)

次に第一構造式を使うと $b_1, b_2$ を定めることが出来る。実際、

\begin{array}{rl}

d\theta^1 &= \left(\frac{\partial a_2^1}{\partial u} - \frac{\partial a_1^1}{\partial v}\right)du\wedge dv \\
d\theta^2 &= \left(\frac{\partial a_2^2}{\partial u} - \frac{\partial a_1^2}{\partial v}\right)du\wedge dv \\
\theta^1\wedge\theta^2 &= (a_1^1a_2^2 - a_2^1a_1^2)du\wedge dv = \det A du\wedge dv
\end{array}

これを第一構造式と見比べることにより、次式が得られる。

\begin{array}{rl}

b_1 &= -\frac{1}{\det A}\left(\frac{\partial a_2^1}{\partial u} - \frac{\partial a_1^1}{\partial v}\right) \\
b_2 &= -\frac{1}{\det A}\left(\frac{\partial a_2^2}{\partial u} - \frac{\partial a_1^2}{\partial v}\right)
\end{array}

最後に $\omega$ を微分すれば第二構造式によりガウス曲率が求まる。

このように、ガウス曲率が第1基本形式のみで決まる。これをTheorema Egregium(最もすばらしい定理/驚異の定理)という。

(小林昭七先生の本には「最もすばらしい定理」と書かれていたが、ウェブを検索すると「驚異の定理」と出てきた。こっちのほうが名前がかっこいいな。「最もすばらしい定理」は最初見たときは「なんだその名前w」と思った…)

さて、何が「最もすばらしい」のか、どのへんが「驚異」なのか、がポイントだと思う。

そもそも曲率というのは、曲面に対して垂直な法線方向に対してどう曲がっているのか、と表すものである。つまり、曲面(2次元)よりも一つ上の次元(3次元)の空間から曲面を観察した時に見えてくる量のはずである。

対して第1基本形式というのは曲面の中に内在する計量であるのに、それによってガウス曲率が定まるということをこの定理は言っている。つまり、空を見上げることなく曲面上を這い回るアリであっても、自らが住む世界のガウス曲率は知ることが出来るということだろう。これはつまり、3次元空間からは出られない私たちも重力場による空間の歪みを知ることが出来るという物理学につながってくるのだと思う。

おお、なんて素晴らしい!なんたる驚異!

数学すげぇ。