猫も杓子も「クラウド化」を推進していたのは10年ぐらい前でしょうか?一方でここ4~5年でクラウド化した環境を一部オンプレに戻す(オンプレ回帰)の話をよく聞くようになりました。なぜオンプレ回帰しているのか、構築する側から考えてみました。またとあるユーザから「クラウドは毒リンゴ![]()
」という説を聞いたので、IT環境更新時の参考になれば幸いです。
前提・本記事について
・当方はITインフラ担当なので、プログラムやDevOps的なソリューションについては門外漢です。なのでサーバ・ストレージ・認証基盤などのインフラ部分についての記事です。
・本記事での「クラウド化」はAWS,Azureへの環境移行を指します。
・当方の独断と主観とできる限り集めたのデータに基づく内容です。
そもそものクラウド化推進要因
そもそもなぜクラウド化が流行ったのか、私なりに考察してみました。恐らく「構築のスピード感」と「コスト削減」、「BCP」の3つがキーワードになっていたと思います。
【AWS 年間売上高の推移(2011〜2021)】
(単位:十億ドル / 1ドル150円換算で約150億円)
2011年 █ (約1.0B)
2012年 █ (約1.5B)
2013年 ██ (3.1B)
2014年 ███ (4.6B)
2015年 █████ (7.9B)
2016年 ████████ (12.2B)
2017年 ████████████ (17.4B)
2018年 █████████████████ (25.6B)
2019年 ███████████████████████ (35.0B)
2020年 ███████████████████████████████ (45.3B)
2021年 ███████████████████████████████████████████ (62.2B)
[出典元]
Amazon.com「Form 10-K(アニュアルレポート / 年次報告書)」
Statista「Annual revenue of Amazon Web Services from 2013 to 2023」
Synergy Research Group「Cloud Market Share Tracking」:
スピード感
コンシューマー向けアプリケーションやSaaSが流行り始めたのもこの時期だったと思います。開発環境として、Webコンソールから数クリックで起動でき、スクラップ&ビルドできるため時代にマッチしていました。また高額なハードウェア購入の予算取りが必要ないため必要なタイミングで、必要なスペックの機器を利用できるというメリットが大きかったのだと思います。
コスト削減
基本的にハードウェアスペックの設計は「最大値」を満たす形で設計されると思います。
例)最大容量 100GB , 最低メモリ要件 4GB など
クラウド環境であれば、最大値に合わせる必要がなく、利用状況に応じてスケール(自動拡張・収縮)させればよいため、コスト削減ができるというものです。
BCP
2011年の東日本大震災以降、「BCP」がシステム導入時に考慮されることが多くなったと感じます。ユーザをハードウェアメンテナンスとバックアップ運用設計から解放するクラウドサービスはまさに時代にマッチしていました。
なぜオンプレ回帰したのか
想像ですがクラウド化すべきインフラとそうでないインフラの区別なく、クラウド化してしまったが故にコスパが合わなかったのだと思います。また為替が2022年から大きく円安に傾き始め、ドルを円換算して請求がくるAWSなどのクラウドサービスはコストアップになったことも大きな要因だと思います。
【クラウドからオンプレ(またはプライベート環境)へシステムを戻した企業の割合】
(主要なグローバルIT調査企業による定期アンケートを基にしたトレンド推移)
2021年 ████████ (約15〜20%)
2022年 ████████████ (約30%)
2023年 ███████████████████ (約45〜50%)
2024年 ████████████████████████████ (約70%)
2025年 ████████████████████████████████ (約70〜80% ※高止まり)
[出典元]
Barclays Research / Citrix 共同調査レポート (2024):
IDC「Worldwide Quarterly Enterprise Infrastructure Tracker」
Uptime Institute「Global Data Center Survey」
クラウド化向きのインフラは?
クラウド化のメリットとも言える部分ですが、大きくは以下になると思います。
①迅速にITインフラ環境を作成でき、スクラップ&ビルドが容易にできる
②負荷状況によって必要リソースが変動する ※スケール(自動拡張・収縮)する
③ハードウェアメンテナンスが不要
逆に上記が当てはまらない(もしくはオンプレと比較して突出したメリットになりえない)インフラはオンプレのままでよいと思います。
また一度クラウド化してしまうとコスパが悪くてても「再移行の工数が膨大にかかる」、「運用が始まってしまうと変更できない(メンテナンスできる人が社内にいなくなっている)」などで逃れられなくなってしまうケースも多いようで、そのような状態を指して「クラウドは毒リンゴ![]()
だ!」という意見(説)がお話がありました。
毒リンゴ
を食べない(毒リンゴ化させない)ために
クラウド化する部分とオンプレにする部分はどちらにすべきか精査しましょう。
当方が考えるオンプレにすべきシステムは以下のようなものです。
| システム内容 | 該当システム例 | 理由 |
|---|---|---|
| ネットワーク/トラフィックの影響を受けるシステム | ファイルサーバ | インターネット越しでのアクセスになるためファイルアクセスの体感速度が悪化する。また必要なストレージ容量が決まっているならクラウド化のメリットが少ない。 |
| スケール(自動拡張・収縮)する必要がないシステム | 人事給与システムなどの基幹系・バックオフィスシステム | クラウドのメリットが少なく、コスト面で無駄になる。 |
| ライセンス制約のあるシステム | 有償DBライセンスが必要なシステム | ソフトウェア・アシュアランス(SA)」または「サブスクリプション」の契約が必須で高額なライセンス費用がかかる。 |
あと「可用性重視」のシステムはクラウド化が良いという風潮も以前はありましたがオンプレでもHCIなどクラスター構成にすれば遜色ない可用性にできる場合があります。
おわりに
流行りに乗り遅れないことも重要ですが結構な金額のお話になると思いますのでしっかり吟味しましょう。
今となってはクラウド化の流行りに乗り遅れた会社だからこそ、一周回って最先端みたいな状態(笑)という会社も多いのでは?