はじめに
Linuxタブレットって、すんごく珍しいよね?
そもそも技術的には可能なのか?
そんなやりとりをChatGPTとしていたことがあります。
実は、もともとAndroidタブレットを1枚所有していました。
子供は動画を見たりゲームをしたり。自分は主にマンドリンの練習時に楽譜を表示するために使っていました。
ところが、USB-C端子の接触不良なのか、充電がだんだん不安定になり、ついには充電できなくなってしまいました。
そんな状況で、ヤフオクでSurface Pro 4を発見。
調べてみると、linux-surfaceという、Microsoft SurfaceのハードウェアをLinuxで使えるようにするプロジェクトがあることを知りました。
先人も結構いらっしゃる。
これなら、もしかしてLinuxタブレットができるんじゃね?
ということで、Surface Pro 4を5,124円(送料無料・動作確認済み)で落札しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機種 | Microsoft Surface Pro 4 |
| CPU | Intel Core i5-6300U |
| メモリ | 8GB |
| SSD | 256GB |
| ディスプレイ | 12.3インチ |
| OS | Fedora Workstation 43 |
| デスクトップ環境 | KDE Plasma |
| カーネル | linux-surface |
| 購入価格 | 5,124円(送料込み) |
| 付属品 | タイプカバーなし、ACアダプターなし |
目指すのは、単なるLinux PCではなく、AndroidタブレットやiPadのように、タッチだけで使える端末。
SurfaceにLinuxを導入する記事は大部分が入れてみるまでの記事です。
なにかの目的のために、というところまでの記事はそこまでありませんでした。
楽譜専用端末として、古いSurfaceに第二の人生を送らせようという計画です。
まずはWindowsで動作確認
届いたSurfaceにはWindows 10が入っていました。
まずはWindowsの状態で、タッチパネル、各種ボタン、画面回転、バッテリーレポートなどを簡単に確認。
このときは特に問題ありませんでした。
このときはね。
そもそもSurface Pro 4のCPUはWindows 11を正式サポートしていません。
Windows 10の通常サポートも終了しているので、そのまま使い続けるには制約があります。
だったらLinuxを入れてしまおう。
秒でWindowsを消してFedoraをインストール。
選定したディストリビューションはFedora Workstation 43。
linux-surfaceが対応しているディストリビューションの一つです。他にも対応ディストリビューションはあります。
まずはLive USBで起動。
しかし、標準カーネルではタッチパネルが動きません。
タッチ操作を有効にするにはlinux-surfaceの導入が必要ですが、Live環境ではそのまま動作確認できませんでした。
Surface Pro 4にはUSB-A端子が1つしかないので、USBハブを使ってマウスとキーボードを接続しました。
続いてlinux-surfaceプロジェクトのリポジトリを追加します。
インストール方法は2026年10月時点のものです。実際に導入する際は、linux-surfaceの公式ドキュメントを確認してください。
sudo dnf config-manager addrepo --from-repofile=https://pkg.surfacelinux.com/fedora/linux-surface.repo
必要なパッケージをインストール。
sudo dnf install --allowerasing kernel-surface iptsd libwacom-surface
sudo dnf install surface-secureboot
再起動すると、タッチパネルが動作しました!
ここまでは比較的簡単でした。
キーボード付きのタッチ対応Linux PCとして使うなら、もうここで終わりでもいいと思います。
何か問題があってもターミナルでなんとかできますので。
しかし、私が目指しているのはAndroidタブレットやiPadのように、キーボードもマウスも使わず、タッチ操作だけで完結するLinuxタブレット。
沼の入口でしたね……。
タッチは動く。でも画面が回らない
購入したSurfaceにはタイプカバーが付属していませんでした。
そのため、最初はUSB-Aにキーボードを接続して調整していました。
タッチ操作は問題ありません。
しかし、端末を回転させても画面が回りません。
センサーが動作しているか確認してみます。
monitor-sensor
Surfaceを回転させると、ちゃんと向きの変化を検知しています。
センサーは正常なのに画面は回らない。
結構いろいろ触ってみましたが、結局回転せず。
そして分かったのが、USBキーボードを接続しているとタブレットモードとして認識されていないらしいということ。
キーボードを外してみたら、普通に回転しました。
なんだ、そういうことか……。
特別な設定を追加しなくても、自動回転は動作しました。
今度は画面がおかしくなった
Firefoxを開いて、いろいろ調べながら使っていました。
すると、筐体がめちゃくちゃ熱くなってきました。
そして画面に焼き付きのような現象が発生。
熱暴走か?
と思って再起動。
ところが、単純な再起動では消えない描画異常が起きる個体でした。
後で分かったことですが、GRUBの画面でも異常が見えます。
どうやらGNOMEやFirefoxだけの問題ではなさそうです。
これは後々、修理せずに運用で回避することになります。
初日はここで終了。
再起動やスリープでタッチが効かなくなる
何日か使っているうちに、再起動や自動スリープのたびにタッチが効かなくなることが頻発しました。
現在、標準カーネルとSurfaceカーネルの両方がインストールされています。
標準カーネルで起動してしまった場合は、そもそもタッチパネルが動作しません。
一方、Surfaceカーネルで起動していても、スリープから復帰した際にタッチ操作が効かなくなることがありました。
とにかく使用感が悪い。
原因を根本的に解決したわけではありませんが、運用方法を変更しました。
まず、自動スリープを封印。
sudo systemctl mask sleep.target suspend.target hibernate.target hybrid-sleep.target
戻すとき
sudo systemctl unmask sleep.target suspend.target hibernate.target hybrid-sleep.target
さらにデスクトップ環境の電源管理から、画面の自動消灯や自動スリープもすべてOFFにしました。
そもそも楽譜端末として使うので、演奏中に勝手に画面が消えたりスリープしたりすると困ります。
また、再起動を避け、シャットダウンからのコールドスタートに限定しました。
これで以前より安定するようになりました。
※スリープ関連の不具合そのものを修正したわけではありません。
GNOME、遅ぇ……
このころから、デスクトップ環境のGNOMEが重いと感じるようになりました。
なんてったって10年以上前の製品。
CPUはCore i5-6300U。2コア4スレッドです。
アプリを起動していなくても、なんとなく反応が鈍い。
Firefoxを使うと、さらに重さを感じることもありました。
タッチ操作ならGNOME。
そんな感覚でいたのですが、ここでKDE Plasmaを試すことにします。
まずシステムを更新。
sudo dnf upgrade --refresh
KDE Plasmaをインストール。
sudo dnf install @kde-desktop-environment
ちなみにXfceもインストールしました。
sudo dnf install @xfce-desktop-environment
ChatGPTからは、GNOMEよりタッチ周りがうまくいかないかもしれないと言われていました。
ところが、入れてみるとあら不思議。
タッチも自動回転も全部良好。
むしろカスタマイズ前提ならPlasmaの方がいいんじゃん?
となりました。
動作の体感速度も若干軽くなった気がします。
画面のスケーリングは225%に設定。
普通のデスクトップPCならかなり大きな表示倍率ですが、タッチ操作ではこれくらいが使いやすい。
アニメーションや透明効果なども無効化しました。
Xfceも本格的に試してみたいところですが、ひとまず我慢しています。
仮想キーボードも動いた
Plasmaには仮想キーボードが最初から入っていました。
テキスト入力欄をタッチすると、自動的にキーボードが表示されます。
日本語入力もIBus + Mozcで動作。
これなら物理キーボードなしでも文字入力できます。
ただし、ターミナルでは仮想キーボードが自動表示されませんでした。
しばらく困っていたのですが、Plasmaパネル右側のシステムトレイに、仮想キーボードの表示アイコンが隠れていることを発見。
そこを押せば、ターミナルでもキーボードを表示できました。
まだ不満はあります。
普通のPCキーボードとはレイアウトが大きく違い、記号入力などで画面を切り替える必要があります。
できればテンキーを省いた普通のキーボード配列で、1画面ですべて入力したい。
この辺りは今後の改善課題です。
LinuxタブレットなのにSSHで操作
ちなみに、環境構築は基本的に別のLinux PCからSSHで行っています。
メインPCはXubuntuです。
ssh tuyomori@192.***.***
こんな感じで接続して、Surfaceの設定を変更しています。
タッチだけで使えるLinuxタブレットを作るために、別のPCからターミナルで操作しているわけです。
現在はUSB経由でもSSH接続できるようにしています。ネットワーク環境に依存せず、別PCからSurfaceを調整できるようになりました。
なんだか本末転倒な気もしますが、これがなかなか便利。
物理キーボードを接続しなくても設定できますし、タッチ操作が不安定になっても外部から調整できます。
Linuxの自由度があってこその構築方法ですね。
サーバー運用時ってこんな感覚で操作してるんですかね?
焼き付きのような描画異常をなんとかしたい
なんだかんだで、タッチオンリーで使える端末になってきました。
しかし、1〜2時間ほど使っていると、画面に焼き付きのような現象が発生します。
使用不可能というほどではないものの、極端に画面が見にくくなります。
カーネル選択画面(GRUB)でも描画異常が確認できたため、少なくともGNOMEやKDE Plasmaだけの問題ではなさそうです。
現在は、この個体のディスプレイ周辺に何らかのハードウェア不具合がある可能性を疑っています。
これはなんとかせにゃなりません。
よく観察してみると、少し変わった特徴がありました。
焼き付きが発生した状態でシャットダウンしても、次の起動時に異常が見えることがあります。
そして、起動後に最初に描画された内容が焼き付いたように残り、その後は重ねて焼き付きが発生するわけではないように見えます。
ということは……。
どうせ最初に表示された画面が残るなら、最初から真っ白な画面を表示しておけばいいんじゃね?その上にアプリケーションを表示すれば、焼き付きが目立たなくなるのでは?
という考察をしました。
実験してみると……。
失敗でした。
白だからダメなのかもしれないのでKDE Plasmaのデスクトップ背景を単色のグレーに変更しました。
起動直後にグレーの画面を表示させ、その後にアプリケーションを起動して使う方法です。
成功しました!!
成功と言い切れるかはまだ分かりませんが、少なくとも個別のウィンドウなどが焼き付く現象は見えなくなりました。
これはディスプレイの故障を修理したわけではありません。
あくまで、故障した状態のまま使うための回避策です。
しばらくはこれで運用してみようと思います。
※この描画異常は今回入手した個体固有のハードウェア不具合が疑われます。Surface Pro 4やLinux一般で発生する問題という意味ではありません。
そもそも何に使うのか? ほぼ楽譜専用端末です
さて、ここまでLinuxタブレットを作る話ばかりしてきましたが、目的はマンドリンの練習に使う楽譜端末です。
実は、今回の作業を始める前に、よさそうなOSSを見つけていました。
Android、iOS、Linux、Windowsなど、複数のOSに対応した楽譜ビューアーです。
メインのXubuntuデスクトップでソースコードからビルドして、SSH経由でSurfaceに転送しました。
GNOMEでもKDE Plasmaでも、タッチ操作で問題なく動作します。
良いOSSに出会いました。
今後は使用感などをフィードバックしたいと思っています。
Surface本体にFlutterなどの開発環境を入れなくても、別PCでビルドしたものを転送すれば動かせるのも便利です。
楽譜専用として使っていく予定ですが、Fedoraが入っているので他のことにも使えるっちゃ使えます。
ついに楽譜端末として使えた
ここまで約1週間。
| 項目 | 構成 |
|---|---|
| OS | Fedora Workstation 43 |
| デスクトップ環境 | KDE Plasma |
| カーネル | linux-surface |
| 日本語入力 | IBus + Mozc |
| 楽譜ビューアー | Sheetopia |
| ブラウザ | Firefox |
2026年10月9日の夜、ようやく実際の楽譜端末として使用してみました。
写真は10/11です。

右下に出てるメトロノームはthesession.orgドメインでのみ表示される自作ブラウザ拡張です。
途中で描画異常が発生したものの、グレー表示による回避を行い、楽譜の閲覧を続けることができました。
初めて、物理キーボードもマウスも使わず、SSHで別PCから介入することもなく、最初から最後まで楽譜端末として使用できました。
ようやく本来の目的を果たせたわけです。
もちろん、まだ改善したいところはあります。
- 仮想キーボードのレイアウト
- タッチの感度(標準ではちょっとフリップ操作のひっつきが良くないと感じてる)
- 横画面のタスクバーの大きさはグローバルスケール225%でOK。でも縦にすると少し微妙。だけど使えないことはない。
- 今回入手した個体はバッテリーの状態が良好で、現時点では持続時間に不満なし。
- タイプカバーがないのでむき出し画面でも持ち出しはちょっと・・・
- 若干ブラウザ開いたりフォルダ開いたりがもっさりしてることがあるのでXfceも気が向いたら試したい
それでも、10年以上前のSurface Pro 4をLinuxタブレットとして使えるところまで持ってこられました。
これからは、さらなる使用感の改善を進めていきたいと思います。
でも正直タッチのみでなんとか運用できているだけでも満足しています。
おわりに
今回は体験をつらつらと書いただけなので、技術的なことはほとんど書いていません。
それでも、Linuxをタッチ専用端末として使おうとすると、思った以上にいろいろなところを調整する必要がありました。
Linuxでキーボードもマウスもなしってめちゃくちゃ不便!
Linuxらしからぬ操作体験を作るために、Linuxらしい体験ができたのは面白い経験でしたね。
今回の構築ではChatGPTにもかなり相談しました。
細かいことはLLMに尋ねれば回答が得られます。
しかし、「Surfaceの型番を教えるから、Linuxタブレット化の手順書を作成して」と頼むだけでは、実用品にはならなかったと思います。
実際に触って、問題を観察して、仮説を立てて、試してみる。
LLMは相棒として一緒に作業していくことはできますが、一発で完成品を出せるわけではない。
今回の作業は、その一例だと感じました。
5,124円のSurface Pro 4。
まだしばらくは楽譜端末として活躍してくれそうです。
