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初めてのESA契約で検討したことを全部書く

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はじめに

初めまして!

これまで、アプリ導入エンジニアとしてさまざまなSaaSアプリの導入・展開に携わったり、インフラエンジニアとしてシステムの構築・運用を経験してきました。現在はMicrosoft製品を担当する立場で働いていますが、技術そのものというよりは、契約やプロジェクト推進など、より上流寄りの業務に関わる機会が増えています。

なぜこの記事を書いたのか

日々さまざまな記事を参考にする中で、Microsoftのソリューションに関する「技術寄り」の情報は豊富にある一方で、実際のプロジェクト推進やマネジメント、契約関連といった「上流寄り」の情報は意外と少ないと感じるようになりました。

記事のゴール

本記事は、同じように「初めて担当になった」「技術以外の部分で悩んでいる」という方の参考になればと思い執筆しています。 筆者個人の経験をもとに、公開情報と一般的な理解を整理した内容であり、特定の企業や個別契約条件を示すものではないこと、ご了承ください。

やってみた視点

正直なところ、「初めてESA契約を任されて、何から手をつけていいか分からなかった」というのが本音です。それでも試行錯誤しながら進め、無事にやり切ることができました。

この記事を通じて、ESA契約の全体像をつかめるようになること、そして同じようにMicrosoft製品を担当する方が検討を進める上での材料になれば嬉しいです。

また、個人的な目標として、今後も継続的に発信を続け、Microsoft MVPも目指していきたいと考えています。機会があれば、LTなどの発表の場にも積極的に挑戦していきたいです。

ESA契約を任されたときの状況

どのような背景でこのプロジェクトが始まったのか

実は前職でもCSPの選定を行った経験がありました。そのため、「今回も同じようなものだろう」と軽く考えていたのが正直なところです。このタスクが始まる前は、実はESA契約という言葉自体も知らず、そもそもCSPとの違いも区別できていませんでした。

しかし、実際に取り組んでみると、想像以上に複雑な契約体系や手続きが待っていました。「ESAって何?」「SCE契約って何?」「変更契約書って何?」——と、一つずつ調べていくところからのスタートでした。

ESAとは何か(前提知識)

ESAの定義について

ESAとは、Enterprise Subscription Agreement(エンタープライズ サブスクリプション加入契約)の略です。Microsoftのライセンスをサブスクリプション型で、企業として購入するための契約というイメージでよいかと思います。

補足:Microsoftの公式ドキュメントでは「EAS(Enterprise Agreement Subscription)」という表記も使われることがあります。日本語圏では「ESA」が広く用いられるため、本記事では「ESA」で統一します。

ざっくりで理解する:ESA契約の特徴

  • 3年間、ライセンス価格が固定される
    CSPは年契約や月契約が中心ですが、ESAは3年間契約のため、(良くも悪くも)為替変動や、Microsoftの価格改定の影響を受けません
  • 割引が適用される(ケースによる)
    一般にボリューム購入による15〜45%の割引が期待できる
  • Microsoft(または認定パートナー)による支援が得られる
    契約期間を通じて、ライセンス管理を支援してくれる
  • 対応ベンダーが限られる
    Microsoftの認定が必要で、ESA契約を取り扱えるベンダー(LSP)はその数が限られている
  • 全社一括で管理しやすい
    組織全体のライセンスを単一の契約で管理できる

やってみた視点

Microsoft製品は為替や機能アップデートの影響を強く受けるため、円高局面で価格固定できれば大きなメリットがあります。一方で、ドル高が続く局面では3年間割高な費用を払い続ける可能性がある点は明確なデメリットです。

ただ、この数年だけでも価格改定は何度も行われており、短期的な値上げ・値下げに振り回されずに済むのは価格固定の良さだとも感じました。3年間の契約を更新時には、これまで3年分の価格改定がまとめて反映されるため、更新タイミングの金額のインパクトにはかなり注意が必要だと感じました。

公開アナウンスベースの話ですが、下記に2023年から2025年までピックアップして、記載させていただきます。

日本マイクロソフト、法人向けライセンスおよびサービスの価格改定について(2023年4月1日施行)
https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/11/02/221102-information/

Power Platform SKU の更新(2023年8月1日施行)
※ SKU名称変更に加え、Power Automateの一部SKUは価格変更(値下げ)が含まれます。
https://m365admin.handsontek.net/updates-to-power-platform-sku-names/

法人向けソフトウエアおよびクラウドサービスの価格改定(2024年4月1日施行)
https://news.microsoft.com/ja-jp/2023/12/06/231206-information/
https://news.microsoft.com/source/2023/12/05/consistent-global-pricing-for-the-microsoft-cloud-2/

Microsoft Dynamics 365 の新価格について(2024年10月1日施行)
https://community.dynamics.com/blogs/post/?postid=636f4d77-43fd-ee11-a73d-0022484df6e8

ボリュームディスカウントの廃止(2025年11月1日より施行)
https://www.microsoft.com/en-us/licensing/news/online-services-pricing-consistency-update

理解した契約の階層構造(MBSA / Enterprise Agreement / ESA)

図解で整理

MirosoftのESA契約は単一の契約ではなく、複数の契約が階層的に積み重なった構造になっています。マイクロソフト公式『Enterprise Agreement プログラム ガイド』の「契約の構造」では、MBSAを最上位に、その下にEnterprise Agreement、さらに下位に加入契約が配置される構造として示されています。

MBSA(Master Business and Service Agreement:基本条項)← いわゆるマスター契約
  └─ Enterprise Agreement(プログラム総則)
       └─ ESA(Enterprise Subscription Agreement:サブスクリプション型)

各契約について

第1層:MBSA
MBSAは、企業とマイクロソフトのビジネス関係全般を定めるマスター契約であり、ボリュームライセンス契約の最上位に位置します。MBSAの標準契約書自体は、一般公開されていませんが、公式FAQでは「Affiliate(関連会社)」の定義などがMBSAで規定されている内容が一部確認できます。基本的には、一度締結したら、特段の理由がない限り、再度締結することはありません。

第2層:Enterprise Agreement
3年間を基本期間とする企業向けのボリュームライセンス「プログラム契約」であり、下位に位置する複数の加入契約に共通する条件を定める枠組みです。ユーザー数またはデバイス数が500以上の組織が対象となります。こちらも基本的には、一度締結したら、特段の理由がない限り、再度締結することはありません。

第3層:ESA加入契約
Enterprise Agreement配下の加入契約には、ESA(サブスクリプション型)、EA加入契約(永続ライセンス型)、SCE(サーバー・クラウド向け)があります。本記事で扱うのはサブスクリプション型のESA加入契約です。

ESA加入契約は、ライセンスを「所有」するのではなく、「利用権をサブスクライブ」する形態です。似た契約にEA加入契約がありますが、契約満了後にライセンスを永続的に保持しない点が、大きな違いとなります。

補足:サーバー/クラウド製品向けには SCE(Server and Cloud Enrollment)という加入契約(Enrollment)もありますが、本記事の主題ではないため詳細は割愛します。概要としては、SCEは、Microsoft Enterprise Agreement配下で、サーバー&クラウド領域について、"ESA契約と独立して"、社内のサーバー系(Windows Server / SQL / 開発ツール / Azure)を統一する契約と理解しています。ESA契約の中でもサーバーやクラウド領域を調達できるため、理由がない限りは選択はしないかと思われます。

やってみた視点:

当時は「Microsoftの契約が階層構造になっている」という前提を十分に理解できていなかったと思います。その結果、第2層のEnterprise Agreementと、第3層の加入契約(例:永続ライセンス型のEA加入契約)を混同したまま話を聞いてしまい、「後から会話の意味が腑に落ちる」という場面が何度もありました。

例えば、ESAの内容を変更する契約書の話をしているのに、参照先となるEnterprise Agreement(第2層)の話と、永続ライセンス型のEA加入契約(第3層)の話が混ざってしまい、誤った判断をしそうになったこともありました。

契約締結までの流れ

大まかな流れ(目安)を引いてみた

※時期は組織や法務プロセスにより変動します。あくまで目安です。

Step No 対応内容 期日 備考
Step 1 加入要件の確認 契約開始の約8か月前
Step 2 LSPの選定 契約開始の約6〜7か月前 3社程度で比較できるとベスト
Step 3 ライセンス構成の確定 契約開始の約3〜5か月前 社内調整で最重要
Step 4 契約書における法務審査 契約開始の約2か月前 自己判断は禁物
Step 5 見積書と発注書の確認 契約開始の約1か月前 支払い方法の確認はマスト
Step 6 契約の締結 契約開始月

それぞれの項目について

Step 1:加入要件の確認
ESA契約は、Enterprise Agreement内の加入契約であるため、自社に適しているか検討します。

  • 500ユーザーまたはデバイス以上の規模要件であるか
  • 契約年数が3年間でもよいのか
  • 永続ライセンスではなく、サブスクリプション型でよいか
  • LSPへの要件となるが、支払い方法(一括払い/年払いか)について相談が必要となる

なお、これまでMBSAおよびEA契約をしていない場合には、同時にこれらも締結する必要があります。

Step 2:LSPの選定

LSPとは、Licensing Solution Partnerの略で、単なる「販売店」ではなく、Microsoft ボリュームライセンス契約における契約・ライセンスの公式な窓口を担うパートナーです。Microsoftから正式に認められた企業のみがLSPになれます。

LSPによっては、ライセンスの提示単価がかなり異なる場合がありますが、価格だけを重視して選ぶのは注意が必要です。ESAは、3年間続く契約ですので、ずっと付き合っていくベンダとして、価格以外の要素も必要になります。私個人として、例えば次のような評価軸をベースに、比較するとよいと思います。

評価項目 評価基準 比重 得点
ライセンス価格 相対的なライセンス価格はどれくらい安いか 5
会社独自の要件 自社運用に対応できるか 3
LSP独自の特色 LSPの体制や、魅力的な無償サポートがあるか 3

価格重視になりがちですが、私としては「3年間、安心して付き合っていけるLSPか」という視点は、やはり外せないと思います。

Step 3:ライセンス構成の確定

契約する品目・数量・使用国などを、できるだけ正確に洗い出して確定していきます。ここは社内調整が多く、特に次の点で時間がかかりました。

▹ 使用国ごとに数量を分ける必要がある

ライセンスによっては「使用国」単位で発注項目が分かれるため、国ごとにどれくらい使うのかを事前に調査し、数量を確定する必要があります。

品目 数量 使用国
Teams Premium 1 Country A
Teams Premium 1 Country B

▹ 関連会社(グループ内)との事前合意が重要

国内の関連会社を含めて利用する場合、どの会社がどのライセンスを何本使うのかを、事前に合意しておかないと後々トラブルになりがちです。一度「契約数量」として確定してしまうと、途中で簡単に減らせないため、見込みで多めに確定してしまうと、使われないライセンスを抱える(=無駄なコストになる)リスクがあります。

▹ 減らせるのは年1回(次年度の年次発注時)だけ
特に注意したいのは、ライセンス数を減らせるタイミングが限られる点です。追加は必要に応じて行えることが多い一方で、削減(減数)は基本的に**年に1回の年次発注(次年度)**のタイミングでしかできません。そのため、最初の数量確定は「盛りすぎない」ことが重要で、各部門・関連会社からの利用見込みを丁寧に集めたうえで、現実的な落とし所を探す必要がありました。

▹ 金額によっては社内の審査が必要かを確認する
ESAは一度に大きな金額が動く契約になりやすく、会社によっては稟議・審査・予算枠の確保など、追加の社内手続きが発生する場合があります。そのため、早い段階で、関係各者に「契約の規模感」「支払い形態」「必要な稟議」などを把握しておくのがおすすめです。事前に対応をしておけば、途中で手続きが必要になった場合でも、締結直前に慌てずに済みます。

Step 4:契約書における法務審査
初めてESA契約を結ぶ場合は、MBSAおよびEnterprise Agreementもあわせて締結することになります。契約書一式を確認し、法務部門によるレビューを行います。ここでは特に、次の点で時間がかかりました。

▹ 手元に契約書がギリギリまで届かない
契約書一式はLSPから提供されますが、入手までに想定以上の時間がかかり、社内の法務審査に回せる期間が短くなることがありました。そのため、可能であれば ドラフト版(雛形)を早めに入手し、先に法務部へ一次レビューを進めておくのが有効だと感じました。これさえすれば、最終版が届いてからは「差分だけ」を確認すればよい状態にできるため、法務部門の負担軽減にもつながります。

これは私の苦い経験となりますが、上記を事前に配慮して、実施しておけばよかったと反省をしています。

▹ 最新の契約書が参照している条文がずれている
MBSAおよびEnterprise Agreementは一度締結したら、通常は理由がなければ変更は不要なものと説明しましたが、当然ながら改訂されることがあります。その結果、最新の契約書が参照している条文番号・文言と、手元のMBSA/Enterprise Agreementの内容が一致していないなど、整合性の観点で法務部門から指摘が入る場合があります。この事態を避けるために、可能な範囲で上位契約(MBSA/EA)の更新や整備を前倒しし、ESAの手続きとは切り分けて進めておくと、結果的にスムーズだと感じました。

▹ 署名者の予定を事前に確保する
法務部門のレビューが完了し、「締結できる状態」となっても、署名者のスケジュールが確保できなければ締結は進みません。
事前の対応として、

  • LSPに 電子署名(電子サイン)の可否を早めに確認する
  • 電子署名が難しい場合は、署名者へ署名のための時間をあらかじめ確保しておく

といった準備をしておくと安心です。

法務部門も署名者も多忙なため、こちらが早めに段取りを整え、レビュー・署名に必要な時間を確保してもらえる状態を作ることが大切だと感じました。契約担当者としては、必要以上に気を遣いすぎて疲弊するのではなく、関係者が動きやすい形に整えて、淡々と前に進められるようにしたいところです。

Step 5:見積書および発注書との突合
LSPから提示される見積書と、社内で作成・発行する発注書の内容を突合(照合)する工程です。ここで初めて「契約書(条件)」と「お金(請求・支払い)」が正式に結びつくため、ミスがあると手戻りやトラブルに直結しやすいフェーズだと感じています。

私の経験上、特に次のチェックポイントを意識しています。

  • ライセンス構成の整合:品目・SKU・数量・使用国など、確定したライセンス構成と、見積書/発注書の記載が一致しているか
  • 支払方法の整合:一括払いか年払いか、請求サイクル・支払条件(支払期日など)の認識が揃っているか
  • 金額の整合:単価・小計・合計が、こちらの想定(社内試算)と一致しているか

この工程は「数字」と「条件」の両方を同時に扱うため、地味ですが一番緊張感がありました。少しでも曖昧なまま進めると、締結直前に差し戻しが発生してバタつくことになりがちです。そのため私は、見積書が出た段階で「最後に合わせればいい」ではなく、「すぐに処理する」というマインドを持って取り組んでいました。

Step 6:契約締結
ESA加入契約に署名し、正式に契約を締結します。締結後、ライセンスの情報は、Microsoft365 管理センターに反映され、以後は年次発注を前提とした運用に移行します。そして、ここからが「契約のスタート」であり、ライセンス管理者の新たなスタート地点となります。

契約の締結

いよいよ、契約を正式に締結します。締結後は、M365管理センターなどでライセンスの反映を確認することができます。

補足:ライセンスは、日本時間の0時ぴったりに反映されるわけではないようです。どこを基準の時刻かは、明記されてはいないため、出社時点で反映されていなくても慌てず、時間をおいて確認するのがよさそうです。

これから契約担当としてアサインされる人へのアドバイス

突然「契約担当ね」と言われると、不安になるのが普通です。私も最初は、契約の階層構造を理解しないまま話を聞いて混乱し、契約書がギリギリに届いて法務レビューが圧迫され、署名者の予定確保が後手に回って焦りました。だからこそ伝えたいのは、最初の一歩は完璧より段取りだということです。

早めにドラフトを取り寄せ、確認観点をチェックリスト化し、法務・購買・経理・承認者に先に相談しておけば、手戻りは減ります。分からない点は恥ではなくリスクです。遠慮せずLSPや社内の詳しい人に聞いてOK。失敗はあなたのせいではなく、経験値になります。契約は締結がゴールではなくスタート。必ず慣れますので、共に頑張りましょう!

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