はじめに
こんにちは。非IT系の老舗製造業で、1人部署の生産管理をやっている者です。
普段は現場のポカヨケのためにExcelやGASをこねくり回しているのですが、非IT企業における「ITインフラ投資」には、時に想像を絶する魔物が潜んでいます。
今回は、生産技術部が謎の強迫観念に駆られて引き起こした「超オーバースペックPC導入事件」と、そこから得たIT要件定義の重要性についてお話しします。
事件の幕開け:50万円のPC×6台という絶望
ある日、生産技術部が「CAD用に新しいPCを導入した」と事後報告してきました。
嫌な予感がしてスペックと価格を確認すると、なんと「NVIDIA Quadro(現 RTX Aシリーズ)」系のプロフェッショナル用GPUを搭載した、1台50万円のワークステーションでした。
しかもそれを6台(合計300万円)も購入していたのです。
さらに絶望的なことに、そのうちの1台はCADすらインストールされておらず、純粋な「事務作業(Excelやメール)」専用機として使われていました。
現場への翻訳:「フリーザ様にExcelを打たせるな」
ITリテラシーに乏しい現場の同僚たちに、この「50万円のQuadro機でExcelをする異常性」を伝えるため、私は誰もが知る名作『ドラゴンボール』に例えて説明しました。
私「あのPC、1台50万円ですよね。あれは『私の戦闘力は53万です』って言ってるフリーザ様と同じです」
同僚「フリーザ様ww」
私「事務作業や軽いCADの閲覧なら、今のCore i5(クリリンやナッパ級)でも十分戦えます。事務作業にあのPCを使うのは、フリーザ様に『ちょっとそこのExcelにデータ入力しておいて』って頼むのと同じなんですよ」
同僚は腹を抱えて笑っていましたが、私の目は全く笑っていませんでした。
技術部長からのSOS:第7世代未満切り捨ての恐怖
「フリーザPC導入事件」からしばらく経ったある日、技術部長から不安げに相談を受けました。
技術部長:「今度CADソフトのアップデートがあるらしくて、メーカーから『Intelの第7世代未満のCPUはサポート対象外になる』ってメールが来たんだ。うちのPC(例のフリーザ様)、高い金出したけど大丈夫かな……?」
私は心の中で(フリーザ様を6体も召喚しておいて何を言っているんだ…)と思いつつ、現場のPC環境を思い返しました。
私:「部長、今お使いのPCのOS、Windows 11ですよね?」
技術部長:「ん? ああ、そうだが」
私:「結論から言いますと、確実に要件を満たしています。絶対に大丈夫です」
Windows 11のシステム要件から逆算する
私が即答できた理由は、Microsoftが定めている厳格なシステム要件にあります。
Windows 11を正常にインストールして稼働させるための要件として、「TPM 2.0の有効化」と並び、「Intel製CPUの場合は第8世代(Core i〇 8000番台)以降であること」が必須とされています。
事実1: 現在のPCは正常にWindows 11で稼働している。
事実2: Windows 11が動いているということは、一部のイレギュラーな回避策を行っていない限り、物理的に「第8世代以降のCPU」が搭載されている。
結論: CADソフトの「第7世代未満(第6世代など)は足切り」という条件は、完全にクリアしている。
このロジックを説明したところ、部長は「おお、そうなのか!よかった!」と安堵の表情を浮かべて現場へ戻っていきました。
まとめ:IT投資における「過剰品質」の排除
製造業の品質管理(QC)において、「過剰品質はムダである」という鉄則があります。
要求される仕様に対して、必要以上のスペックを盛り込むことは、コストを無駄に跳ね上げるだけで顧客価値(この場合は業務効率)を生み出しません。
ITに詳しくない非IT部門は、「よくわからないから、とりあえず一番高くてすごいヤツ(=フリーザ様)を買っておけば安心だろう」という心理に陥りがちです。
情シスや社内IT担当者(あるいは私のようなITのわかる生産管理)の本当の役割は、高度なシステムを組むことだけでなく、こうした「現場の要求とITスペックの適切な翻訳(サイジング)」を行い、過剰品質というムダを未然に防ぐことなのだと、事務作業をするフリーザ様を見つめながら深く実感しました。
この記事が、日本のどこかで今日もオーバースペックなPCと戦うIT担当者の励みになれば幸いです。