effort を上げる前に、タスクの自由度を減らす
AI にどのモデルを使い、どれだけ考えさせるかは、現時点では人間が判断しなければならない。
必要以上の effort や高機能モデルを与えると、出力品質は劣化することがある。過剰な推論は、指示にない前提を勝手に補い、余計な改修や逸脱を生みやすいためである。effort とモデルはタスクの自由度に見合った量で絞る必要がある。
考え方として、タスクの「空間」と「スコープ」を分けると決めやすい。
空間は解に至るまでの分岐の広さ、スコープは AI が参照・操作できる情報の範囲である。
用語の定義
| 用語 | 意味 | 増やしたときのコスト | 主な調整対象 |
|---|---|---|---|
| 次元 | タスクが持つ自由度 (判断軸) の本数 | — | タスク分割、仕様の事前固定、型・テストによる制約 |
| 空間 | 次元が張る、取りうる解の集合 | 次元数に対して指数的 | effort、モデルの推論能力ランク |
| スコープ | 各次元の範囲、参照集合、実行権限の広さ | 空間に対して線形 | コンテキストウィンドウ長、RAG、ツール権限設計 |
次元
タスクの自由度が増えるほど、解の候補は急増する。例えば、翻訳や定型変換は低次元だが、アーキテクチャ設計では、分割、技術選定、整合性、運用などを同時に決める必要がある。
空間
effort は空間を深く調べる設定だが、自由度そのものは減らせない。複雑なタスクでは、effort を上げるだけでなく、タスク分割や仕様の事前固定によって探索する軸を減らす必要がある。
スコープ
単一の関数や文書なら小さなコンテキストで足りる。リポジトリ全体や複数の仕様書を横断するなら、検索機構、長いコンテキスト、ツール権限が必要になる。
スコープを広げると、「どのファイルを直すか」という新しい判断も生まれる。検索対象は広くても変更対象は限定するなど、参照範囲と操作範囲を分けることが重要。
まとめ
マトリクスで表すと以下のようになる。
| スコープ: 狭 | スコープ: 広 | |
|---|---|---|
| 空間: 狭 | 軽量モデルで OK | 検索・コンテキスト設計が重要 |
| 空間: 広 | 高い effort が必要 |
タスク分割から考える |
まず次元を減らせないかを確認する。次元が多すぎると探索が追いつかなくなるため。
その後で effort とモデル、スコープを決める。この順番が、タスクに合わせた AI 設計へとつながる。
ただし、品質が出なかったときの診断は逆順が速い。まずスコープの不足を疑い、それでも改善しないなら次元を減らす。設計は次元から、診断はスコープから考えるとよい。