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クラスターAdvent Calendar 2023

Day 3

clusterに適したゲームジャンル ~「アバターの日」イベントの事例より

Last updated at Posted at 2023-12-03

この記事は クラスター Advent Calendar 2023 の3日目の記事です。
昨日の記事はばくすたーさんの「VRM Animation (.vrma)をUnity上で簡単に生成できるようにした話」でした!

はじめに

「アバターの日」イベントをご存知ですか?「アバターの日」イベントとは、clusterのアバターカルチャーを盛り上げるべく、毎月25日に開催されているcluster公式イベントです。毎月25日には、cluster内でアバターが作れる機能「AvatarMaker」の新規衣装も追加されます。思い思いのアバターを身にまとい様々な企画に挑戦する、ユーザー参加型イベントです。

「アバターの日」イベントの会場はクラスター社内で制作しており、筆者もその一部を担当しました。イベントにはゲーム性のある企画が取り入れられることが多かったのですが、そのゲームのジャンルやテーマは毎月異なっています。

この記事では、直近の「アバターの日」イベントのゲーム企画を紹介しながら、それらをclusterで作る上での「プレイ適性」と「制作難易度」について、筆者の主観モリモリで述べていきたいと思います。

プレイ適性

clusterで遊ぶのに適したゲームかどうか、という観点で評価します。★が多いほどclusterに適しています。

制作難易度(ギミック)

clusterでギミックを構築しやすいかどうか、という観点で評価します。★が多いほど難しいです。

制作難易度(ゲームデザイン)

ゲームを面白くするためのアイデアやレベル調整が重要かどうか、という観点で評価します。★が多いほど難しいです。

2023.07.25 「JUST UP!」

ジャンプでひたすらアスレチックを登って頂点を目指す、シンプルな3Dアクションゲームです。

プレイ適性: ★★★★☆
制作難易度(ギミック): ★☆☆☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★★☆☆☆

ジャンプは偉大

「JUST UP!」の制作を通して、プレイ適性は高く、制作難易度は低いと感じました。つまり…、とてもコスパの良いゲームジャンルであるということです。

なぜジャンプアクションがclusterに適しているか。それは、clusterではデフォルトでジャンプができるからです。これは当たり前のことのようですが…、clusterにジャンプが実装されていない世界線もあるかもしれない、と思います。実際のところclusterには、ワールド制作者があえてジャンプできないように設定しているワールドもありますよね。ジャンプができるということは、ジャンプができてしまうということでもある。
では、clusterにデフォルトでジャンプが実装されているのはなぜか。それは、clusterで「JUST UP!」のようなゲームが遊べて欲しいという願いに他ならないのではないでしょうか?(筆者はclusterにジャンプが実装される場面に立ち会っていませんので、これは憶測にすぎません)

異なる5種のプレイ環境

一方で、既存のジャンプアクションゲームというのは、ほとんどが三人称視点でプレイするものではないでしょうか。

clusterのプレイ環境は、おおまかに以下の5通りに分けることができます。

  • デスクトップ × 一人称視点
  • デスクトップ × 三人称視点
  • スマホ × 一人称視点
  • スマホ × 三人称視点
  • VR × 一人称視点

clusterが様々な環境で遊べるというのは素晴らしいことなのですが、ひっくり返すと、「様々な環境で遊ばれることを想定しなければならない」ということでもあります。「JUST UP!」においても、一人称視点と三人称視点ではプレイ体験がかなり異なります。

一人称視点では、自分の足がどこに着いているのかがわかりませんが…、
image.png

三人称視点では、自分の位置や、足場と足場の距離が、わかりやすいのではないでしょうか。
image.png

また、視点だけではなく、操作方法の違いも体験に大きく影響します。筆者は「JUST UP!」を制作している際、初めはPCでテストプレイをしていたのですが、途中で環境を変えてスマホでプレイしてみたところ…、その難しさに絶望しました。しかし、「JUST UP!」の難易度を大きく下げることはせず、「デスクトップ × 三人称視点」での体験を重視して制作を続けました。

デスクトップモードでの体験だけに焦点をあてれば、プレイ適性は★★★★★だと考えています。しかし、スマホやVRでの難易度の大きな変化を踏まえて★★★★☆としました。

なお、ゲームの公開後には、アスレチックが難しいという反響ももちろんありましたが、クリアタイムは筆者の想像を大きく超えて更新され、スマホやVRモードでクリアする方も現れました。clusterがもたらす遊びの幅の広さを感じた企画でした。

敵となるのは自分自身だけ

「JUST UP!」には、プレイヤーに向かってくる敵キャラクターなどは出てきません。落下のみがミスとして存在しています。これが、制作難易度が低く済んでいるひとつの要因となっています。もし仮に、このゲームにキノコやカメの敵キャラクターを登場させたり、それらを攻撃して倒せるようなシステムにしたい場合、制作難易度は上がっていくでしょう。

2023.08.25 「地下大迷宮」

複数の階層からなるダンジョンを攻略する、アクションアドベンチャーゲーム…と言ってよいでしょうか。
プレイ適性: ★★★★☆
制作難易度(ギミック): ★☆☆☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★★★☆☆

カメラ

「JUST UP!」でも触れた通り、clusterでは一人称視点と三人称視点のどちらかを選択できます。迷路においても、視点によるプレイ体験の違いがいくつかありました。

迷路の壁が、天井よりも低くなっている場合を考えてみましょう。

一人称視点ではほとんど壁しか見えなくても…。
image.png

三人称視点では、壁のむこうが少し見えています。
image.png

本来ならば、三人称視点か一人称視点のどちらかに統一されているほうが、ゲーム体験は統一されていると言えるでしょう。

しかし、「地下大迷宮」では、これらを踏まえた上で、エリアごとに壁が高かったり低かったりするように設定しています。複雑な迷路ほど壁を低くして、三人称視点を使うことでいくらか攻略しやすくなるようにしています。一人称視点で没入感を重視してプレイするのも良いし、それで行き詰まれば三人称視点を使ってルートを探してもよいということです。

マルチプレイの恩恵と制約

このゲームの公開とほぼ同時期にフィード機能が追加されましたが、複数人でダンジョンを攻略して写真を投稿している方も多く、こうしたマルチプレイ体験が簡単に作れることの素晴らしさを感じました。

一方で、マルチプレイが前提であるからこそ、ギミック類はなるべくシンプルにしています。というのも、後からスペースに参加したプレイヤーにとって「既に謎が解かれている」という状態になってしまうのを避けたかったためです(もちろんこれは、新規にスペースを立ち上げてもらうようにプレイヤーに促すことでも解消できます)。

アイデアを生む難しさと、楽しさ

小学生の頃、自由帳に迷路を書いたりしませんでしたか?筆者も記憶の片隅にそんな経験があります。しかし、いざ大人になって迷路を作ってみると、「迷路って奥が深いな…」と何度も感じた次第でした。なるべくシンプルな迷路を作る上で、とはいえ単調にならないようなアイデアを取り入れることに苦戦しました。

2023.09.25 「クラスターカップ」

9月のアバターの日では複数のスポーツゲームを行いましたが、その中でもラグビーとバレーボールについて見ていきます。

ラグビー

攻撃チームと守備チームに別れて何度トライが成功するかを競う、スポーツアクションゲームです。
プレイ適性: ★★★☆☆
制作難易度(ギミック): ★★★☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★★★☆☆

バレーボール

バレーボールをサーブし、動く的に当てて高得点を狙う、シューティングに近いスポーツゲームです。
プレイ適性: ★★★★☆
制作難易度(ギミック): ★★☆☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★☆☆☆☆

ボールというアイテム

これらのスポーツゲームは、先程までよりも少しギミックの制作難易度が上がっています。というのも、球技においてはプレイヤーの他に「ボール」が必要で、このボールの動作についてギミックを組まなければならないからです。バレーボールにおいては投げる&当たるだけなので易しめですが、ラグビーにおいては「トライ」の判定などを実装する必要があったため、少し難易度が上がりました。

「つかむ」をどう扱うか

clusterには、アイテムを「つかむ」という概念があらかじめ用意されています。この、「つかむ」という要素が、clusterで球技を行う上での重要なトリガーとなります。

「つかむ」が定義されていることで、ラグビーのボールに対する駆け引きを生み出すことが難しかったです。というのも、他のプレイヤーがつかんでいるボールに対して、それを奪うとか、手放させるということがないのですね。これを踏まえて、プレイ適性を★★★☆☆としました。

(このあたりは、「つかむ」のではなく、現在ベータ機能として提供されているスクリプトで代替することで解決できそうな予感もあります)

2023.10.25「Halloween Escape」

怪物から逃げながら脱出を目指してタスクをこなす、非対称型ホラーサバイバルゲームです。
プレイ適性: ★★★★☆
制作難易度(ギミック): ★★★☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★★★★☆

考えるべきことが多い

ここまで紹介してきた中でも特に制作難易度が高いのが、この「Halloween Escape」です。脱出口を開けるための修理システムを作るのも難しかったですが、それ以上に、ゲームを成立させるためのバランス調整が難しいと感じました。イベントにおいては怪物の操作をスタッフが担当していますが、この役割を誰が担っても面白いゲームにするためには、様々な配慮が必要でしょう。制限時間や当たり判定などの各種パラメーターの設定はもちろんですが、例えば怪物同士でのフレンドリーファイアの対策や、ゲーム進行状況が分かりやすくするための工夫なども必要になってきます。

しかし、プレイ適性はラグビーより高く★★★★☆に設定しました。このゲームは、clusterの基盤となる3D空間での体験を、そのまま拡張したようなゲームだと思うからです。怪物になるとしても、怪物から逃げるとしても、自分の分身であるアバターを使用してロールプレイをするというのは、clusterでこそやりたいことなのではないでしょうか。

「Halloween Escape」で実現できた範囲を踏まえてプレイ適性を★★★★☆に留めましたが、細部を詰めれば★★★★★に届く可能性を十分に秘めています。そして何より、そういった制作面での伸びしろが沢山あることが、このゲームを作る上での面白さなのではないかと思います。

2023.11.25「カラータイルバトロワ」

BGMに合わせて消えるカラータイルの上で生き残りを目指す、バトルロイヤルリズムアクションゲームです。
プレイ適性: ★★★★★
制作難易度(ギミック): ★☆☆☆☆
制作難易度(ゲームデザイン): ★★☆☆☆

遊んで楽しい、見て楽しい

制作難易度は「JUST UP!」と同程度としながら、プレイ適性は「JUST UP!」以上の★★★★★に設定しました。落下しないようにジャンプを駆使して生き残るという点では「JUST UP!」と近いですが、「JUST UP!」よりも体験が凝縮され、お手軽さが高まったのではないかと考えています。「JUST UP!」はアクションゲームに慣れている人でないと難しい部分もありますが、「カラータイルバトロワ」は、各ステージに対して練習の余地があります。点滅パターンを覚えることで、攻略法を見つけられるということですね。

カラータイルを組む面白さ

カラータイルの点滅パターンを作る過程は、いわばリズムゲームにおける「譜面」を作るような感覚でした。イベント用に3ステージを作成したのですが、1ステージ目から順番に作成した結果、完成度が少しずつ上っていったように感じました。もしこの「譜面作成」が誰でも簡単にできるようになって、それをお互いにプレイできたりしたら、面白そうだな…と思いましたね。

その他のゲームジャンルについて

せっかくなので、直近の「アバターの日」イベントで取り扱っていないゲームジャンルについても軽く触れてみます。

シューティングゲーム

clusterでは「シューター」というテンプレートが公開されておりますので、シューティングゲームがそこそこ簡単に作れてしまいます。2023年4月の「アバターの日」イベントでも、このテンプレートをもとにしたゲーム企画を行いましたね。
なお、clusterではひとつのスペースにおいて有効な状態の数に限りがあるため、マルチプレイで弾丸をたくさん生成する場合などは注意が必要かもしれません。

レーシングゲーム

clusterには「乗り物機能」およびそのテンプレートが公開されておりますので、マルチプレイのレーシングゲームもそこそこ簡単に作れてしまいます。2023年1月のcluster公式イベント「CCCNight」でレーシングゲームの企画がありましたね。他にも様々なレースワールドがあるかと思います。自分のアバターでカートに乗る体験ができますし、一人称視点と三人称視点の切り替えもプラスに作用しそうです。よって、clusterとの相性は良いと言えるのではないでしょうか。ただし、乗り物機能は様々なギミックを駆使して作られているので、カートの挙動を改造するためには、少し知識が必要となるかもしれませんね。

2Dゲーム

平面的な空間で繰り広げられる2Dアクションや2Dシューティングを作りたいという場合は、その画面をどこから見るかが鍵となります。アーケードゲームのような筐体を作成して、そこで遊べるような2Dゲームを作っているクリエイターの方もいらっしゃいますよね。ひとつの空間に筐体を複数設置することで、みんなで集まって遊んでいるような体験を作り出すこともできるでしょう。

ボードゲーム・カードゲーム・パズルゲーム

cluster上でこれらのテーブルゲームを作成されている方もいらっしゃいますね。こういったワールドのギミック制作は上級者向けではありますが、うまく作れれば定番ワールドになることも多い印象です。カードゲームであれば「セーブ機能」なども活用していきたいところですね。また、2Dゲームと共通の課題になりますが、プレイヤーがカードやコマを選択する上での「入力」をどのように設計するかにも検討しがいがありそうです。

まとめ

毎月の「アバターの日」イベントに向けて様々なゲーム会場を作って、「clusterに適したゲームデザインとは」について考えることが増えた2023年でした。マルチプラットフォーム&マルチプレイで手軽に多様な体験ができるからこそ、クオリティアップのために考えると良い「clusterならではの事情」もたくさんありました。

といっても、この記事の目的は、クリエイターのハードルを上げることではありません!「ゲームを作ったことがないけど、clusterでゲームを作ってみたい」という方は、ここで紹介した制作難易度や、何ができて何が難しいのかといった情報を参考に、ぜひチャレンジしていただければと思います。Creators Guideには様々な解説や、テンプレートも公開されています。

今後の「アバターの日」イベントも是非ご参加ください!
この記事で紹介した「JUST UP!」および「地下大迷宮」はclusterにて常時公開されておりますので、ぜひ遊んでみてください。

「JUST UP!」
https://cluster.mu/w/554f037d-abdf-4d58-894c-1f87746d59ae

「地下大迷宮」
https://cluster.mu/w/ad94adaf-9286-4f0b-84fd-fb71e0f2d679

明日のアドベントカレンダー(シリーズ1)の記事は、so1_さんの「Cluster Lobby - もっとも多くの人が行き交うメタバースを目指して」です!

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