1. 免責事項
この記事は、自作PCの完全なマニュアルではなく、n=1の経験と、調べた知識のみによるものです。注意してはいるものの、この記事は不正確な内容を含む可能性があり、この記事を元に作成した自作PCに対して一切の責任を負えません。
また、記事内に誤りを見つけていただけましたらぜひお教えください。
2. 背景:自作PCは浪費の言い訳になる
Windows PCを新調したいな〜と思っていたものの、PCは高いので長いこと決めあぐねていました。しかし、ハードウェアに関する知識が不十分じゃないか?という課題に気づき、「PCを自作すればハードウェアの知識が増えるはず!」という大義名分の下、PCを自作することにしました。自作PCは言い訳になって素晴らしい。
一方で、自作PCを作りたい!と思ったとき、かなり多くの情報源にアクセスしなければならなかったため、今後自作PCの門戸を叩く人に役立てばと思い、記事を書いています。
私は開始時点ではCPU、GPU、メモリなど、一般的なハードウェアの知識はありましたが、マザーボードの規格などの自作PCに関する知識は完全にゼロでした。同じような状況の方ですと、1日くらいじっくりと自作PCについて勉強すれば一定以上の理解を得て、実際にPCを組めるようになるのではと思います。
3. パーツ構成を決めよう
3.1. 必要なパーツ/ソフトウェア一覧
まず、PCを自作するのに必要なパーツ及びソフトウェア一覧です。
- CPU
- メモリ
- ストレージ
- GPU
- CPUクーラー
- マザーボード
- 電源
- ケース
- OS
自作PCのハードルのほとんどは、パーツの構成を適切に選定することにあるので、これらが決まれば8割終わったようなものです。
最終的には以下のように決めました。
パーツ | メーカー | 型番 | 価格 |
---|---|---|---|
CPU | Intel | Core i9-14900K | $545 |
CPUクーラー | DeepCool | LS720S | $100 |
メモリ | Crucial | CP2K32G56C46U5 | $142 |
ストレージ | WesternDigital | WDS200T3B0E | $115 |
GPU | NVIDIA | GeForce RTX 4070 Ti SUPER | $850 |
マザーボード | ASUS | ROG STRIX Z790-F GAMING WIFI | $270 |
電源 | NZXT | C1000 PSU | $150 |
ケース | Fractal Design | Define R5 | $125 |
OS | Microsoft | Windows11 | $140 |
合計 | $2387 |
実際に購入したのは米国内だったので金額はドルで記載していますが、1ドル=150円とした時、日本円でも同じくらいの金額のものが多かったです。
3.2. どうやって構成を決めるか?
3.2.1. 要件の設定
まずは性能要件を決めるところから始めます。個人的には、CPUがボトルネックになるような処理をローカルで行うことが多かったのと、ローカルLLMに興味があったので、
- 予算の許す限りのハイエンドCPU
- 予算の許す限りのGPU
- 64GBメモリ
- 予算2000ドル前後
が最初の要件でした。メモリは最近かなり安くなったと聞いていたので (参考)、定食屋で大盛り無料を頼む感覚でデカめにしました。初心者にとってはいきなり詳細を考えるのはしんどかったので、最初はざっくり決めつつ、詳細はパーツを選びながらちょいちょい決めていくのが楽だと思いました。
3.2.2 パーツを選ぶ順番
PCパーツは大きく分けて2種類のカテゴリがあります。
- 独立に選べるパーツ
- 従属的に選択肢が制限されるパーツ
これを私の理解の範囲で図にしました。非常に分かりづらい図が出てきます。
目を背けたくなりますね。。。矢印の方向に依存性があり、例えばCPUを決めるとマザーボードがCPUに応じて制限される、という構図です。点線は一応依存関係がありますが、要求が小さいのであまり触れません。この図は非常に分かりづらいので現時点では、
- 矢印が流入していない部品は独立に選べる
- 矢印が流入している部品は上流からの依存関係が存在するので注意して選ぶ
と思っていただければ十分です。そして、この依存関係の通りに組んでいけば問題ないはずです。(逆にいうと、この依存関係の分かりづらさが自作PCのハードルの大半だと思うので、この図がわかりづらいのは必然とも言えます。。。)
4. 独立に選べるパーツ
ユーザがPCを購入しようとする時に考える要件は基本的には独立に選べるパーツによって満たされます。例えば、PCゲームを高画質、高FPSで楽しみたければGPUが要件を満たしてくれるでしょう。開発などを行うなら、CPUやメモリが重要になります。まずは自分の要求を満たすパーツを選んでいきましょう。
4.1. OS
OSは任意に選べます。
- Ubuntu
- Windows
が選択肢でしたが、ゲームもやりたかったのでWindowsにしました。
4.2. CPU
着目ポイント
- コア数/スレッド数
- 周波数
- オーバークロックの有無
CPUはこちらで価格も含めて概ねのスペック比較ができて便利でした。メーカーとしての選択肢は
- AMD
- Intel
でしたが、馴染みあるIntelにしました。また、Core i7とi9の間にあまり大きな価格差がなかったのと、そもそもCPUがボトルネックになる処理をすることが多いので、Core i9-14900Kにしました。Core i9-14900KSでも良かったですが、全体の予算の関係と、金額の増分対比スペック増分が見合わないように感じてしまったので今回は見送りました。
後続の依存関係のある項目
- メーカー / 世代
- CPUクーラーの付属有無
- オーバークロックの有無
- TDP(CPUクーラーが付属しない場合のみチェック)
4.3. メモリ
着目ポイント
- 規格(DDR4/DDR5)
- 容量 (GB)
- 転送速度 (GiB/s)
ざっくり分ければメモリはこの以下の2規格があり、互換性がありません。
- DDR4
- DDR5
また、基本2枚を超えて刺すのは推奨されないようなので、必要な容量を2枚で確保できれば良いです。前述の通りメモリ価格はかなり下がっており、また、DDR4, DDR5の価格差もかなり小さくなっているようなので、特にこだわりがなければDDR5の方が将来性があって良いと思います。これはまた、後述のマザーボードもDDR5対応のものが増えていることにもよります。
例が少なそうなのであえて依存関係とは書きませんが、世代の古いCPU(例えばIntel 第11世代以前)は、DDR5非対応です。また、64GBを超えるメモリサイズにも対応しないCPUがあるので、念の為注意してください。さらに、これもないと思いますが、OSに応じて最低推奨メモリがあるので(Windows11のシステム要件)あまり小さくしすぎるのはお勧めできません。
後続の依存関係のある項目
- 規格 (DDR4/DDR5)
- クロック周波数(MHz)
- オーバークロックの有無
- 容量 (GB)
- 接続方式(NVMe/SATA)
4.4. GPU
着目ポイント
- 各種ベンチマーク等
- CPUとの組み合わせ
近年のPCで最も高額になりうるパーツですが、CPUがグラフィック機能を持っている場合は、なくても問題ないパーツです。NVIDIA公式にてGeForceの全プロダクトが列挙されているので、GPUを選ぶ際に最も参考になりました。また、さまざまなサイトが、GPUごとにどれくらいのことができるかをまとめてくれているので非常に助かりました。
高性能GPUを選ぶ際には、CPUがGPUを十分に活用できるスペックかを確認する必要があります。例えばGPUが高い能力を持っていても、
CPUの命令速度 \lt GPUの処理速度
の状態だと、CPUがボトルネックとなってしまい、GPUの性能を生かしきれません。これをチェックするのにボトルネックチェッカーというWebツールがあるのですが、【ボトルネックチェッカーは役立たず】グラボ別おすすめCPUを解説ではCPUとGPUの各組み合わせを実装した上で、ボトルネックチェッカーは役に立たないと書いてありました。GPU、CPUともに高い買い物なので、高いGPUを買うときにはCPUとの組み合わせを少し調べた方が良さそうです。
後続の依存関係のある項目
- 物理的なサイズ
- 対応拡張スロット
(余談)
ローカルLLMですと、やはりRTX4090が理想なんだなという印象でした(これは当然ですが、なんならRTX4090も不十分な領域があり、そうなるとA100, H100等の非コンシューマモデルが必要になり、価格は100万円を超える…)。ただ、RTX4090は予算オーバーだったので、将来的にRTX4090を導入できる環境を前提として他パーツを組むことにし、今回はRTX4070Ti Superにしました。
(参考)
4.5. ストレージ
着目ポイント
- 容量
- 接続方式(NVMe/SATA)
- 転送速度
昨今のSSD価格の低下により、HDDは選択肢にならないと思うので、一般的にはSSD一択だと思います。SSDストレージは接続方式の観点で
- NVMe
- SATA
の2種類があります。これはどちらでも良いですが
接続方式 | 価格 | 性能 | 発熱 / 消費電力 |
---|---|---|---|
NVMe | 高 | 高 | 高 |
SATA | 安 | 低 | 低 |
というトレードオフがあります。
後続の依存関係のある項目
- 接続方式(NVMe/SATA)
5. 従属的に選択肢が決まるパーツ
従属的に選択肢が決まるパーツは、
- CPUクーラー
- マザーボード
- 電源
- ケース
の4種類のみなのですが、独立に決められるパーツより複雑になります。性能に大きな影響を持つパーツは少ないですが、CPUなどの独立に決められるパーツの性能を引き出すため、また、ちゃんとコンピュータとして組み上げるために慎重に選ぶ必要があります。
5.1. CPUクーラー
着目ポイント
- TDP
基本的にはほとんどのCPUにはCPUクーラーが付属しているため、その場合は新たに買う必要はありません(Intel公式)。ただ、オーバークロック機能のついているCPU等にはCPUクーラーが付いていません。
付属していない場合は、CPUのTDP (Thermal Design Power) をチェックする必要があります。
解決すべき依存関係
- 【CPU】TDP
5.1.1. TDP (Thermal Design Power)
CPUのTDPを上回るTDPを持つCPUクーラーを選ぶ
TDPとは、CPUが発する熱量だと思ってもざっくり間違ってないと思います。例えばIntel Core i7-14500KのTDPは125Wです。よって、CPUクーラーは125W以上の対応TDPを持つものを選ぶ必要があります。DeepCoolというメーカーはこちらで製品とTDPの一覧を見られます。
後続の依存関係のある項目
- 物理的なサイズ
5.2. マザーボード
着目ポイント
- CPUソケット
- チップセット
- 対応メモリ規格 (DDR4/DDR5)+メモリ周波数
- フォームファクタ (E-ATX, ATX, microATX, Mini-ITX)
マザーボードはチェックすべき項目が多いです。私自身もマザーボードの選択に一番時間がかかりました。調べ始めてから実際に決めるまで3時間くらいかかったのではと思います。さらに、定格的には決まらない性能・設計も多いので、以下のポイントはどちらかというと必要条件であり、それを満たした中で詳細は自分で選ぶということになります。
残念ながら、必要条件を超える部分はこの記事だけでは不十分であり、いろいろな情報源にアクセスしながら理解を深めて選んだ方が良いです。また、かなり長いので一度休憩してから読むこともおすすめです。
これまでに選んだパーツの依存関係を解決しながら、着目ポイントを適切に選んでいきます。
解決すべき依存関係
- 【CPU】メーカー / 世代
- 【CPU】【メモリ】オーバークロックの有無
- 【メモリ】規格 (DDR4/DDR5)
- 【メモリ】容量 (GB)
- 【GPU】対応拡張スロット
- 【ストレージ】接続方式(NVMe/SATA)
5.2.1. CPUソケット
【CPU】メーカー / 世代にあわせたソケットを選ぶ
CPUは現在、AMDとIntelの2種類が主流です。この二つは形状が異なるため、形状に合わせたCPUソケットのついたマザーボードを選ぶ必要があります。これが合わないとCPUが嵌められません。網羅はしていませんが、コンシューマ向けCPUでは以下のような感じです。
メーカー | 世代 | 対応CPUソケット規格 |
---|---|---|
Intel | 第12〜14世代 | LGA1700 |
Intel | 第10〜11世代 | LGA1200 |
AMD | Zen4 | AM5 |
AMD | Zen~Zen3 | AM4 |
例えば私が選んだIntel Core i9-14900KはIntelの第14世代なので、LGA1700になります。
5.2.2. チップセット
チップセットとは、CPU、メモリ、GPUなどの各パーツの動作を管理するためのパーツです。CPUやメモリ等が持つ性能を十分に発揮させるために適切なものを選ぶ必要があります。
チップセットの選択は世代+シリーズの2つの段階があります。実際の規格は「Z790」のように、シリーズ名(Z)+世代(7)+バージョン(90)を表す文字列で表されています。また、チップセットは決定論的には決まらないので少し複雑です。
- チップセットの世代
【CPU】メーカー/ 世代 に応じて選ぶ
Intel/AMDともに、CPUの世代ごとにチップセットの世代があり、番号で示されています。網羅していませんが、概要は以下のとおりです。チップセットの世代はCPUの世代によって決まるので、ここは決定論的です。
メーカー | 世代 | 対応チップセット規格 |
---|---|---|
Intel | 第13〜14世代 | 700番台 |
Intel | 第12世代 | 600番台 |
Intel | 第11世代 | 500番台 |
Intel | 第10世代 | 400番台 |
AMD | Zen4 | 600番台 |
AMD | Zen2~Zen3 | 500番台 |
- チップセットのシリーズ
まず概要として、チップセットのシリーズ展開は以下のようになっています。
メーカー | シリーズ | 対象 |
---|---|---|
Intel | Zシリーズ | ハイエンド |
Intel | Hシリーズ | ミドル |
Intel | Bシリーズ | エントリー |
AMD | Xシリーズ | ハイエンド |
AMD | Bシリーズ | ミドル |
AMD | Aシリーズ | エントリー |
実際に展開されている規格は、上記の「世代」「シリーズ」を合わせて以下のような感じになります(またしても網羅はしてませんが、現在主流なものです)。前述の通り、プレフィックスのアルファベットがシリーズで、番号が世代+バージョンになります。
メーカー | 世代 | チップセット規格 |
---|---|---|
Intel | 700番台 | Z790、H770、B760 |
Intel | 600番台 | Z690、H670、B660 |
AMD | 600番台 | X670E, X670, B650E, B650, A620 |
AMD | 500番台 | X570, B550, A520 |
チップセットは、規格によって
- オーバークロック対応有無
- PCIeスロット構成
- 搭載可能USB数
- メモリ最大容量
などが異なります。詳細に立ち入る説明は以下のページ等をご参考にしてください。
チップセットの規格、シリーズについて理解していただいたと思いますので、実際にチップセットを選びます。決定論的に決められる方法は2つあります:
- 【CPU】【メモリ】オーバークロックの有無に応じて選ぶ
- 【GPU】対応拡張スロットに応じて選ぶ
この2つを考慮して選択肢が複数残る場合は、上記のスペック参考記事などを読みつつ、苦しみながら決めるほかありません(慣れたら楽しそうでしたが、少なくとも初学者には難しかったです)。予算に余裕があるならハイスペック側を選ぶと言う選択でもいいかもしれません。
⑴【CPU】【メモリ】オーバークロックの有無に応じて選ぶ
チップセットの規格ごとの最新世代のCPU及びメモリのオーバークロック対応状況は以下のようになっています。
メーカー | 規格 | CPUオーバークロック | メモリオーバークロック |
---|---|---|---|
Intel | Z790 | ○ | ○ |
Intel | H770 | × | ○ |
Intel | B760 | × | ○ |
AMD | X670E | ○ | ○ |
AMD | X670 | ○ | ○ |
AMD | B650E | ○ | ○ |
AMD | B650 | ○ | ○ |
AMD | A620 | × | × |
特にIntelの場合ですが、Kで終わる型番のCPUはオーバークロックに対応しているので、オーバークロックを楽しみたければ、この時点でZ790のみが選択肢になります。
⑵【GPU】対応拡張スロットに応じて選ぶ
GPUやネットワークカードなどは、マザーボード上のPCIeスロットというスロットに差し込みます。PCIeスロットが多いほど拡張性が高いです。また、現在Gen3.0, Gen4.0, Gen5.0といった規格があります。PCIeについて詳細を知りたい方はこちらを参照してみてください。
GPUはこのPCIeスロットを使ってマザーボードに差し込まれますが、PCIeスロットのどれだけの幅(レーン)を使うかはGPUの種類によって異なります。NVIDIAを例にとると、以下のような仕様です。
型番 | Gen | レーン数 |
---|---|---|
RTX4060, RTX4060Ti | 4.0 | 8 |
その他のRTX40ファミリー | 4.0 | 16 |
従って、このレーン数を持たないチップセットだとGPUを差し込めません。しかし、PCIeスロットのGenには後方互換性があり、また、Intelですと600シリーズ以上の場合は必ずGen5のPCIeレーンを16以上持つので、古いものを使わない限りは特に気にする必要はありません。
しかし、このPCIeスロットには
- ネットワークカード:ネットワーク接続に使用
- キャプチャカード:ビデオ信号をキャプチャしてライブストリーミングを行う場合に使用
- RAIDコントローラ:複数のストレージを使用してRAIDを構成する場合に使用
- USB拡張カード:USBポート数を増やすために使用
などのデバイスを接続する可能性があります。さらに、GPUは非常に大きいハードウェアで、GPUがささっていない部分も物理的に塞いでしまう可能性があるので、拡張性を持たせておきたい場合はZ790などのハイエンドモデルを選ぶ方が良いでしょう。
5.2.3. 対応メモリ規格 (DDR4/DDR5)+メモリクロック周波数
【メモリ】規格 (DDR4/DDR5)および【メモリ】クロック周波数に合わせて選ぶ
マザーボードはDDR4、DDR5のどちらか一つだけのメモリ規格に対応しており、互換性がありません。選んだメモリの規格に応じたマザーボードを選ぶ必要があります。
さらに、メモリの最大対応周波数もマザーボードによって決まっています。例えば、メモリがDDR4-3200だったとしても、マザーボードがDDR4-3000だった場合、3000MHzでしか動作しなくなります。
5.2.4. フォームファクタ
マザーボードは物理的なサイズの規格がいくつかあり、自作PC向けでは主に(大きい順で)
- Extended-ATX (E-ATX):高性能システムやワークステーション向け
- ATX:標準サイズで最も一般的なデスクトップマザーボード規格
- microATX:ATXより少し小型で、拡張性はやや制限される
- Mini-ITX:非常に小型で、省スペースPCなどに最適
があります。これをフォームファクタと呼びます。このフォームファクタによって、入れられるケースの大きさが決まります。フォームファクタも決定論的に一意に定められるものではないですが、トレードオフとして
サイズ | 価格 | 拡張性 | 冷却性能 |
---|---|---|---|
大きい | 高い | 高い | 高い |
小さい | 安い | 低い | 低い |
という関係があります。例えばMini-ITXはかなり小さいため、スペースの制約からPCIeレーンの数が制限されます。責任は持てませんが、大抵の場合はATXで良さそうです。
5.2.5. 最終的にマザーボードを選ぶ際に
願わくは、ここまでで
- CPUソケット
- チップセット
- 対応メモリ規格 (DDR4/DDR5)+メモリ周波数
- フォームファクタ (E-ATX, ATX, microATX, Mini-ITX)
という定格的な規格が決められていたらと思います。しかし、これらの規格はあくまで必要条件です。というのも、同じ規格に従った製品でも
- メモリ容量・枚数の上限
- ストレージの接続方式
- PCIeスロットの実際の提供状況(Genおよびレーン数)
が異なる場合があります。実際にマザーボードを選ぶ際には
- 【メモリ】容量 (GB)
- 【ストレージ】接続方式(NVMe/SATA)
の2つが対応しているかどうかを確認し、かつ、
- 自分がPCIeスロットを使って接続したい全機器を接続できるための十分なスロットがあるか
も確認しましょう。これは例えば、同じZ790のマザーボードでも、PCIeスロットのレーン数が
製品名 | 16レーン | 8レーン | 4レーン | 1レーン |
---|---|---|---|---|
Z790 マザーボードA | Gen5.0 x 1 Gen4.0 x 1 Gen 3.0 x 1 |
- | - | Gen 3.0 x 1 |
Z790 マザーボードB | Gen5.0 x 1 Gen4.0 x 1 |
- | Gen 4.0 x 1 | Gen 3.0 x 2 |
というように、異なったプロファイルで提供されている場合があるためです。
じゃあどんな機器をPCIeスロットで接続するの?と言うと、前述の通り
- ネットワークカード:ネットワーク接続に使用
- キャプチャカード:ビデオ信号をキャプチャしてライブストリーミングを行う場合に使用
- RAIDコントローラ:複数のストレージを使用してRAIDを構成する場合に使用
- USB拡張カード:USBポート数を増やすために使用
などがあります。特にマザーボードはネットワークの観点で
- WiFi機能がビルトインで備わっているもの
- ネットワーク機能の一切を持たないもの
の2種類があります。ネットワーク機能がない場合は、PCIeスロットにネットワークカードを差し込む必要があるため、その分の余裕も考慮しなければいけません。
最終的に、自分が拡張スロット(PCIeスロット)に何を挿すか、それらが物理的に全部挿さるかを確認してから決めましょう。さらに言えば、将来的に何を挿したいと思うかも考慮できれば完璧です。とはいえ、私のような初心者は結構調べても全部挿さるかに100%の自信は持てなかったので、レビューなどを参考に「この人がこのマザボでこのパーツを付けてるってことは、自分もいけるはず?」くらいのノリで決めました。
さらに、マザーボードは
- ヒートシンク:SSDやチップセットから熱を効率よく逃す機構
- フェーズ数:CPU電気回路の数
などの違いもあります。基本的にはどのマザーボードも搭載可能なCPU、メモリ等に対応するような設計がなされているようですが、より高機能なものであれば、動作の安定には繋がります。詳しくは以下の参考サイトなどをご確認ください。
私はLGA1700/Z790/ATX/DDR5を満たしつつ、PCIeスロットの状況があまりよくわからなかったので、WiFiモデルにしたら気にせんでええやろということで「ROG STRIX Z790-F GAMING WIFI」にしました。
後続の依存関係のある項目
- フォームファクタ (E-ATX, ATX, microATX, Mini-ITX)
5.3. 電源
電源は、これまでに選んだすべてのパーツが必要とする電力を賄えるものを選びます。
着目ポイント
- 電力(W)
- 規格 (ATX/ SFX)
- 端子数
解決すべき依存関係
- 【これまでの全パーツ】必要電力の和を賄う
5.3.1. 電力
【これまでの全パーツ】必要電力の和を賄う
電力の計算には非常に便利なサイトがあり、Googleで「自作PC 電力 計算」等のワードで検索すると、必要な電力を計算し、ワット数を出力してくれるWebツールがたくさんあります。例えば
などです。
実際のところは、安定した電力をすべてのパーツに供給するため、必要電力の2倍の電力を供給できる電源を選ぶのが良いようです。
5.3.2. 規格
PC用電源には主に
- SFX:小型のケースに対応した、コンパクトなデスクトップ向け規格
- ATX:一般的なデスクトップPCで採用されている規格
- EPS:マルチCPU/GPUに対応したハイエンド規格
の3種類の規格があります。SFXは小型PC向け、ATXは大容量含む一般向けです。EPSはサーバーやワークステーション向けです。
5.3.3. 端子数
CPU、メモリ、GPUなどは、それぞれ端子数の異なるケーブルで電源に接続します。接続端子ごとにピン数が決まっていますが、ピン数のイメージは実際の電源の写真などを見ると理解しやすいです。例えばNZXT C1000は私が実際に選んだ電源ですが、このページで接続部の写真が見られます。
パーツ | 端子規格 | ピン数 |
---|---|---|
マザーボード | メインコネクタ(ATX) | 24(または20) |
CPU | CPUコネクタ | 4または8 |
GPU等の拡張カード | PCIeコネクタ | 6または8 |
ハイエンドGPU | 12VHPWR端子 | 12 |
SSD等のSATA機器 | SATAコネクタ | 15 |
光学ドライブなど | ペリフェラルコネクタ | 4ピン |
前述の電力容量計算で、十分な電力を賄うモデルを選べば基本的に心配ないと思いますが、念の為自分が使用したいパーツ全てに電力供給するためのピン数が備わっているかを確認しましょう。
後続の依存関係のある項目
- 物理的なサイズ
- 規格
5.4. ケース
やっとここまで来ました!これまでの全てのパーツをケースに格納し、1つのPCにしましょう。ただ、全てのパーツが収まるケースを選ぶ必要があります。
着目ポイント
- サイズ
- クリアランス
- 対応ラジエータサイズ
- 電源規格
解決すべき依存関係
- 【マザーボード】フォームファクタ (E-ATX, ATX, microATX, Mini-ITX)
- 【電源】物理的なサイズ
- 【電源】規格(ATX/ SFX)
- 【CPUクーラー】物理的なサイズ
5.4.1 サイズ
【マザーボード】フォームファクタに合わせて選ぶ
PCケースのサイズは以下のようなラインナップがあります。
サイズ | 用途 | 主な対応フォームファクタ |
---|---|---|
フルタワー | サーバ用マシンやゲーミングマシン | Mini-ITX ~ E-ATX |
ミドルタワー | 一般的な自作PC | Mini-ITX ~ ATX |
ミニタワー | 設置スペースが限られる場合 | Mini-ITX ~ microATX |
ITXケース | 省設置スペース+デザイン重視 | Mini-ITX |
これはまずマザーボード規格によってある程度絞り込むことができます。自分が選んだフォームファクタが入るものを選んでください。
5.4.2. クリアランス
【GPU】【電源】【CPUクーラー】物理的なサイズに合わせて選ぶ
ケースにはマザーボードが入るだけでなく、ある程度大きさのあるパーツがちゃんと格納される必要があります。特に、GPU、電源、CPUクーラーは大きいため、クリアランスを確認し、それぞれがちゃんと入るものを選びます。
5.4.3. 対応ラジエーターサイズ
【CPUクーラー】物理的なサイズに合わせて選ぶ
水冷式CPUクーラーは、ラジエータをケースに固定する必要があります。通常、水冷式CPUクーラーのラジエータはケース上面に固定するので、ケース上面のラジエータ対応サイズが使用したいCPUクーラのサイズ以上にあることを確認しましょう。
ただし、クリアランス・ラジエーターサイズともに一筋縄ではいかず、例えば
「RTX4000ファミリーのような大きいGPUも入るけど、その場合はHDDなどを入れる3.5インチドライブケージは外さなければならない」
「水冷式CPUクーラーの360mmラジエータも入るが、その場合は光学ドライブケージは外さなければならない」
というような制約があります。やってみて思った感想としては
- そもそも今は光学ドライブやHDDを使用する機会はあまりないので気にしなくてもいい
- それでも気になるなら、ケースのセットアップマニュアルを見れば、取り付け想像図などがあるのでそこで確認
という感じだと思います。
5.4.4. 電源規格
【電源】規格(ATX/ SFX)に応じて選ぶ
ケースには対応電源規格があります。というのも、SFXは小さいPC向けなので、ATX規格向けのケースに入れると、各パーツに電源ケーブルが届かない場合があるためです。
5.4.5. 静音性・冷却性など
依存関係はないですが、ケースごとに静音性や冷却性が異なります。一般的には静音=密閉なので、静音性と冷却性にはトレードオフの関係があります。この特徴についてはあまり定量評価できないですが、レビュー等は役に立ったように思います。
6. 組み立て
組み立てについては、参考になるサイトが非常に多く、また、動画とかのほうがわかりやすいので特に説明はしません。概要だけ書くと
- 【所要時間】6時間かかりました
- 【必要な工具】軸が長めのプラスドライバー、静電気除去リストバンド等の静電気対策グッズ
- 【あったら便利】ピンセット
- 【心構え】想像以上に力仕事。困ったらマニュアル読む。とにかく慎重に。
というような感じでした。以下、参考になったサイトを掲載しますので、ご参考にしてください。
※以下が実際に届いたものです。プラモとか好きだったのでかなり興奮しました。
7. 感想
残念なことに、ハードウェアに関する知識は大して深まりませんでした。ただ、これまで文字通りブラックボックスだったPCの中身が、はっきりとした輪郭をもってとらえられるようになったのは、コンピュータを扱う人として幸せなことだったように思います。また、組み立ては1回やってしまえば、2回目以降は1時間とかからずにできるようになりそうだなと思えたのはいい経験でした。
総じて言えるのは、もしPCは好きだけど自作はしたことないよ、という方がいれば、心からお勧めしたいと思えるようなものでした。次のオリンピックイヤーくらいにまたやってみたいなと思います。