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5576-A01(IBMのバックリングスプリングキーボード)を入手したぞ

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概要

自作キーボードにちょっとだけ手を出してみた影響で、自分の中のキーボード熱が上がってきてしまいました。
今回前々から欲しかった5576-A01を入手することができたので、清掃して気づいたことをまとめておきます。
同時にスプリングを痛めてしまうハプニングが発生したのですが、この対応策についてあまり情報がなかったのでやったことを紹介したいと思います。誰かの役に立てば…

IBM 5576シリーズについて

私とは比較にならないほど情熱と研究を重ねられた方々のお話がWeb上にたくさん転がってますので概要だけ。

IBM 5576-A01 とは何か?


一言でいうと「めちゃ古い化石(ビンテージ)キーボード」です。
これをわざわざ使う(私にとっての)モチベーションは、
「バックリングスプリング機構を持ち追加機器なしに現代のPCで利用できる、ほぼ唯一のJISキーボード」であるからです。

キーボードのスイッチの種類

キースイッチの構造には主に下記3つがありますが、
- メンブレン(最も一般的で安価)
- メカニカル(特にゲーミング用のKeyboardで多い、Cherry製の~軸…とか、自作キーボードは基本これです)
- 静電容量無接点(Real Force / HHKBなどが有名です)

5576-xxx シリーズのキースイッチの構造は以下のように分類できます。
- ALPS 板ばねスイッチ(5576-001、002、メカニカルに該当)
- メンブレン+バックリングスプリング1(5576-A01、5576-C01)
- メンブレン+ラバードーム(5576-B01)
 現在PCについてくる付属品といえばこのタイプです。良くも悪くも”普通の”キーボード。

バックリングスプリングとは?

バックリングスプリングとは、プラスチック製の部品に取り付けられたバネがキーの押下時に折れ曲がる(座屈する)ことでスイッチが入り、タイプライターにも似た「打ち抜く」打鍵感を得られるキーボードのスイッチ周りの機構の1つです。Wikipediaによると、

座屈ばね機構とも呼ばれる[17]。その名の通りキーに内蔵したスプリングを座屈(buckling)させることで明確なクリック感を出す機構である[18]。キーを押すと「カシュンカシュン」「パシュンパシュン」と、スプリングが折れ曲がってスライダの内部にぶつかる音がする。
右の図はIBMによる特許の図であるが、図によると、まず1のキートップを押し下げると2のスプリングが徐々に湾曲して行き、完全に折れ曲がると7を支点にして4が可動、スイッチが通電する。この瞬間、スプリングが折れ曲がり急激にキーの重さが低下する事によってクリック感が、スプリングがスライダ内部3にぶつかる事でクリック音が発生する。キーを離すとスプリングの弾力によって元に戻るというしくみである。12と13が完全に接触すると、それ以上キーは沈まない。このため明確な底付き感を発生させており、一般的なラバードーム等に見られるゴムを押すようなあやふやな底付き感と一線を画している。

このバックリングスプリング機構が採用されたJISキーボードは現在国内では販売されておらず2、基本的に中古のキーボードを発掘する必要があります。
よってこの独特のうち心地を体験したく、かつJISキーボードとなると
その選択肢は5576-A01 または C01を中古で入手することに限られます3

清掃

キャップの取り外し

FILCO Keypullerのような器具を使用して、垂直にキーキャップを上に引っ張ります。

このキーボードはキーキャップが2重構造(!!)になっているので、
写真のようにスプリングまで出てきてしまう場合もあれば、印字のないキャップのみが残る場合もあります。
20190817_182928.jpg
2重構造の図
基本的に汚れるのはこの外側の部分になるはずなので、こちら(右側)を中性洗剤等で洗います。

筐体の分解

分解そのものは非常に簡単で、裏面上部にある4か所のねじを外すだけです。
後はプラスチックのツメがはまっているだけなので、力を入れてパかっと開きます。
20190801_223821.jpg
少し筐体がしなったりするので不安ですが、背面のフラットケーブルだけ気を付けていれば大丈夫です。

これ以上分解し、メンブレンシートを取り出したりしてしまうとシートの位置決め等で苦労するようなので、
単なる清掃目的ならここら辺ぐらいまでにしておくのが無難かもしれません。

スプリングが傷んでしまった!

タイトルの通りです。特にスペースキーのキーキャップを押し込もうとしたときにばねを変な方向に挟んでしまいました(貴重なものなのにもったいなさすぎる)。
見た目では分かりにくいのですが、キー押下時にうまい具合にばねが座屈せず、結果キーが認識しなくなってしまいました。このような状況に陥った場合、スプリングを自力で治すことはほぼ不可能です。

そこで一つの解決策として、
「いらないキーからスプリングを交換する」という方法をご紹介します。

スイッチの交換

5576-A01は、一つ一つのスイッチが単体で交換できるようになっています(写真)。

よってスペアのスイッチを入手できれば、それと交換してもよいですし、
PauseキーやScroll Lockキーなどあまり使わなそうなキーと交換してもよいかもしれません。
一見堅そうですが写真でわかる2か所のツメが筐体にはまっているだけなので、マイナスドライバーで足の部分を押して引き上げてあげると簡単に外れます。
ただしこの時、下の黒いシートを傷つけないように注意してください。

スプリングの交換

単なるスイッチの交換で対応できるのは、形状が1Uのキーの場合でした。
しかし例えばスペースキーのスプリングを壊してしまった場合、スタビライザーをはめるためのスリットが用意されているなどスイッチ形状が異なるため、そのまま交換というわけにいきません。

しかしこの1つ1つのスイッチから、簡単にスプリングを分解することができます。
もし特殊形状の(1U以外の)キーの場合には、この部品の内部にあるスプリングだけを交換すれば復活が可能です!

移植元、移植先のキースイッチを取り外した状態から説明します。
1. まずはキーキャップをとります
2. このスイッチの構造は単純で、図の穴の部分に、スプリングと一体になったプラスチック部品の突起がはまっていますので、

特に移植前のスプリングを傷つけないように気を付けながら、図のようにスプリングのついたプラスチック部品単体をそれぞれ取り出します。

傷んでしまったスプリング(右)です。この程度の乱れで機能しなくなります(左は正常品)。

3. このスプリングのついたプラスチック部品ごと移植元のものと入れ替えて、2.と逆の手順でスイッチをはめます。
4. キーキャップをはめなおします。

PS/2 接続のキーボードを現代のPCで使う

5576-A01、B01、C01については、PS/2端子のあるPCであれば、そこに接続してそのまま使用することができます。しかし現代のPCにはPS/2端子がついていないことも多く、USBへの変換が必要です。

PS/2 - USBの変換ケーブルを使用する

誰しも最初に考えることだと思いますが、市販されている製品だと私の環境ではうまく動作しませんでした。
(消費電流等の問題でしょうかね…?)

特に評判もまずまずだった サンワサプライ USB-CVPS1を使用してみたのですが、

  • 入力を途中で受け付けなくなる
  • 最後に入力したキーを押しっぱなしにしたような動作をする  イメージとしては、「おはようございいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい(以下略)」ってなる感じです。

という有様でした。

そこで、もっとお手軽なツールを発見しました。
PS/2キーボード USB変換アダプタ
基本的には5576-001 / 002がWindowsの標準ドライバで使うのが困難なため、この変換に使うものなのですが
非常に出来がよく、5576-A01に対しても快適に動作することがわかりました。

なお話がそれますが、自作キーボード等でおなじみのQMKには、
バックリングスプリング式のUS 101/ターミナルキーボード向けの変換用ファームウェアも存在します。
https://github.com/qmk/qmk_firmware/tree/master/keyboards/converter/
これによってModel MのキーボードをUSB接続にする改造がGitHubに上がってました。

おわりに

世の中に流通する普通の(Cherry青軸等の)メカニカルキーボードとは全く異なる、
カチカチかちっと最高のうち心地で、確かにキーボードで文字を打つ行為が特別なものになりました。
とはいえ多くの方が指摘しているように一つ一つのキーが非常に重い上に音もうるさすぎるので、現代では実用品というよりは嗜好品としての趣が強そうです。
大変入手性が悪いので、ここ最近の自作キーボードブームが、当方式(またはそれに準じた打鍵感の)のキーボードを気軽に入手できるようになるきっかけになったりしないかなと妄想しております( ^ω^)・・・

参考

KEYBOARD RESEARCH
PS/55キーボード スキャンコードについて
MouseFan 軸のページ
もこっちのご~ご~鍼灸Annex 変な話
Wikipedia - キーボード


  1. バックリングスプリング機構を持つキーボードが必ずメンブレン式というわけではありません。例えばより昔にさかのぼるとPC/AT 84Key のように静電容量式のモデルも存在するようです。あくまでバックリングスプリングとは、キー押下時にバネが座屈してスイッチを叩くような機械的構造のことのみを指していると考えるのがよさそうです。 

  2. Unicompがこの方式のJISキーボードを販売(Unicomp Ultra Classic 106)しているため個人輸入は可能のようですが、金型がオリジナルのIBMキーボードの使いまわしで品質は劣るという話もあるようです。送料も入れると200ドル近いので試せていません。。 

  3. 実際にはALPS製のバックリングスプリング方式のキーボードが存在するようなので、不正確な記述です(例えば、ALPS SM-101、TERADRIVE HTR-2106等)。なお5576シリーズのバックリングスプリングキーボードのスイッチはブラザー工業製です。 

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