はじめに
実家の物置きを掃除したら、学生の時に買って放置していたシャープ製のパソコン、X1 TurboZ III(CZ-888C)を見つけました。
検索すると、1988年に169,800円で発売されたパソコンだそうです。確かWindows95が出てくる1995年頃、当時人気のパソコンショップT-ZONEで、かわいそうな値段(9,800円)で売られており、つい買ってしまったのでした。ただ、その時のパソコンに比べ性能が貧弱すぎて、すぐに飽きてしまったのです。
金属製のシャーシや電源は錆びていて使えないので(そもそも過去の規格のディスプレイなども必要なので)、中を確認してみました。部品についての説明は、当時を思い出しながら(ちゃんと調べずに)書いているため、間違っているかもしれません。ゴメンナサイ。
部品構成
中の部品は殆ど日本製です!シャープ・日本電気・富士通製のチップが目立ちます。シャープは、昔から家電中心でしたが、多くのICを作っているメーカーでした。他にもフロッピーディスクドライブはティアック製など、逆に日本製以外の部品を見つけるのが難しいです。
CPUまわり
シャープがセカンドソース(ライセンスを受けて生産している)生産したZ80Aが乗っています。
Z80Aは、インテルの8ビットCPU、i8080に互換性を持たせつつ拡張を加え、米ザイログが設計した8ビットCPUです。設計はあの嶋正利さん。
CPUのまわりに、CTC(タイマー)、SIO(シリアルインターフェース)、DMA(ダイレクトメモリアクセスコントローラ)など今で言うチップセットが集まっています。写真だと見えにくいですが、DMAの上にあるLSIは、8255と呼ばれる24ビットのパラレルI/Oです。
左上のヤマハ製YM2149Fは、PSGと呼ばれる音を作り出すICです(AY-3-8910のセカンドソースらしいです)。ファミコンっぽい音が出ます。矩形波しか出ないので、ファミコンよりちゃちい音がでます。
左下に、64Kx4ビットのDRAM、LH2464が4つ乗っており、128KBのメモリを載せています(CPUが直接管理できるメモリは64KBなので、たぶんI/O空間に半分のメモリを割り当てていたと思います)。写真を撮影するのに使ったスマホは4GBですので、そのスマホの数10万分の1程度しかメモリが載っていません…。そもそも1枚の写真画像(JPEG)を読み込めたとしても、復号するのに多分数十分程度かかるほどの処理性能です。
グラフィックチップ
画面を表示するためのICとして、富士通製汎用CRTC(CRTコントローラ)、MB89321Bが実装されていました。
当時のパソコンは、テキスト用メモリを用意して、1文字1バイトで文字コードを書き込むと、CRTCが文字パターンをROMから取得して、文字を画面に表示する仕組みになっています。この文字パターンを自由に作成できるRAMを独自に持つPCG(プログラマブル・キャラクター・ジェネレータ)機能を持つことで、簡単に任意の位置にキャラクタが出せるので、ゲームが作りやすかったそうです。なお画面の画素数は最大640x400(または640x200,320x200)と、昔のテレビ(SD)程度の画質です。
このシャープのX1シリーズは、このPCGを用意したり、テレビの画像を背景に表示する機能(なので「テレビパソコン」と呼ばれている)などホビー向けの機能を売りにしていました。この機能を実現するために、すぐ上や右のシャープ製のカスタムチップで、PCGやテレビの画面を合成する機能を実現しているのかもしれません。
また、カスタムチップ左にDRAMのLH2464が6つあり、192KBの容量があります。メインのメモリは128KBなので、それよりも多くのグラフィック用のメモリが載っていて驚きです。
サウンドチップ
CPUの近くに、PSGが乗っていましたが、なぜかフロッピーディスクを制御する部品(MB8877A、MB4107A)の隣に、ヤマハ製のFM音源チップYM2151と、DACのYM3012を見つけました。
FM音源チップとは、言うなればちょっとしたシンセサイザが1チップに収まっている、ヤマハ恐るべし!な部品で、ゲームセンター向けのアーケードゲームに多く組み込まれ、その後小型化し携帯電話に組み込まれ、着メロ用としても活用されていたそうです。
検索したら、このX1Turboで鳴らした ゲーム音楽 を見つけました。すばらしい。
さいごに
物置きに埋まっていた1988年販売のパソコンを、30年経った2020年の今、なんとなく中を見て構成を確認してみました。
さて、現在のパソコンやスマホには、日本製・日本設計の部品は、ほとんど入っていません(ただ、傾きセンサの旭化成エレなど、特殊な技術を持った部品は、今でも日本メーカー製です)。このパソコンのように、日本製の部品が殆どを占める製品は、もう二度と出てくることはないでしょう。とは言え、この動かないパソコンを持っているほど部屋に余裕もなく、どうしたものかな、とか思いつつ部品を眺めているこの頃です。