1.はじめに:なぜ PSPO II に挑戦したか
みなさんこんにちは!
私が PSPO II の受験を決めたのは、PSM II に合格した経験がきっかけでした。PSM II 合格後、私はプロダクトオーナー(PO)の「価値の最大化」という本質的な役割に強く興味を惹かれました。スクラムマスターとしてチームを支援する立場から、POがどのような視点でプロダクトを捉えているのか、その知識を深めたいと考えるようになったためです。
自身のプロダクトマネジメント能力を証明するだけでなく、スクラム全体をより包括的に理解するための重要なステップとして、実践的な知識が問われるPSPO II への挑戦を決めました。この合格体験記が、これからプロダクトオーナーを目指す方の参考となれば幸いです。
2.Professional Scrum Product Owner II とは
Scrum.orgが主催する認定試験の1つです。
PSPO II は、単なるスクラムの知識を問うのではなく、プロダクトオーナーとして直面する多様な状況において、どのように振る舞い、判断を下すべきかを問う実践的な試験です。PSM II がスクラムの「進め方」に対する深い理解を問うのに対し、PSPO II は「プロダクトの価値を最大化する」という観点から、プロダクトバックログ管理、ステークホルダーとの連携、プロダクトのビジョン策定といった領域における応用力が試されます。
3.PSPO 試験の種類・比較
Professional Scrum Product Owner 認定には3つのレベルがあり、それぞれ異なる知識と経験の深さが問われます。
試験の基本情報は下記です
種類 | PSPO I | PSPO II | PSPO III |
---|---|---|---|
レベル | 基礎 | 中級 | 上級 |
受験費用 | $200 USD | $250 USD | $500 USD |
合格点 | 85% | 85% | 合否判定 (採点基準非公開) |
時間 | 60分 | 60分 | 150分 |
問題数 | 80問 | 40問 | 24問 |
形式 | 複数選択 複数回答 正誤判定 |
複数選択 複数回答 |
エッセイ問題 (記述式) |
言語 | 英語・中国語 | 英語 | 英語 |
※PSPO II は PSPO I の知識を前提とし、PSPO III は PSPO II の知識と経験を前提としています。
PSM の時と同様に、学習コスト(期間、費用、労力)の観点からPSPO II の取得を目標としました。PSPO I の学習範囲は、PSM II の知識やWebサイトを活用することで十分に補完できると考え、また、PSPO III は英語での記述式試験であり、実務経験に基づいた高度な応用力が問われるため、現時点ではハードルが高いと感じ、まずはPSPO IIで基礎を固めることに集中しました。
PSPO II は、プロダクトオーナーとしての実践的な応用力が試される試験です。本試験では、「プロダクトの価値を最大化する」という観点から、プロダクトバックログの管理、ステークホルダーとの連携、プロダクトのビジョン策定といった領域における思考と判断力が問われます。
PSPO 試験詳細は公式サイトにてご確認ください。
4.合格のための学習方法と使用教材
学習期間は3週間程度ですが、PSPO II では、PSM II の学習で培った知識を基礎としています。プロダクトオーナーとしての視点を強化するために、私が合格のために実際に行った学習方法と、使用した教材についてご紹介します。
基礎知識の再確認と深化(PSM II 学習の延長線)
- スクラムガイドの徹底的な読み込み
スクラムの唯一の規範であるスクラムガイドは、PSPO II 対策においても引き続き重要な教材でした。PSM II の学習で深く読み込んでいましたが、PSPO II に臨むにあたっては、特にプロダクトオーナーの責任、プロダクトバックログの管理、価値の定義といった記述を、プロダクトオーナーの視点から改めて読み込み直しました。
試験の傾向はPSMと類似しているため、PSM 受験記のほうも合わせてご参考ください。PSM II の受験記については、下記にまとめています。
PSPO II に特化した学習と実践
公式の Professional Scrum Product Owner クラス(研修)は、コストの観点から受講を見送りました。以下に示す教材を活用することで、実践的な知識と応用力を身につけました。
- Scrum.orgの無料模擬試験
PSPO II に合格するためには、Open Assessment をやり込むことが重要です。PSPO II 試験では、下記3つの模擬試験を推奨しています。
・Product Owner Open (英語、中国語)
・Evidence-Based Management Open (英語のみ)
・Scrum Open (英語、中国語、日本語)
特にProduct Owner Open Assessment は、本番の試験に近い形式と難易度であり、何度も繰り返し解きました。単に正解・不正解を覚えるのではなく、なぜその選択肢が正解なのか、なぜ他の選択肢は不正解なのかを深く考察することで、プロダクトオーナーとしての判断基準を養うことができました。Scrum Open Assessment も推奨とされている点からも、PSPO II では、PSM II の知識を基礎としていることが確認できます。
- Udemyの学習コンテンツの活用
私はUdemyで評価が高かった「Product Owner II for Agile Intermediate: Certification Prep」コースを活用しました。
注意
このコースは、スクラムの考え方や原則を学ぶには良い教材です。しかし、本番の試験問題に特化した内容は少ないため、このコースだけで合格するのは難しいかもしれません。実際、私は模擬試験に特化した別のコースも併用し、高いスコアを出せました。残念ながらそのコースは現在削除されており、紹介することができません。Udemyのレビューなどを参考に、問題演習中心のコースも併せて受講することを強くお勧めします。
- Scrum.orgのブログや記事の参照:
私自身はそこまで深く参照しませんでしたが、Scrum.org の公式ブログには、プロダクトの価値最大化、プロダクトバックログの管理手法、ステークホルダーとの効果的な連携など、プロダクトオーナーに関する様々なケーススタディや具体的なプラクティスが掲載されています。多角的な視点から知識を深めるために参考になるでしょう。
これらの学習を通じて、PSPO II で問われる実践的な思考力と判断力が身についたと感じています。
5.試験当日:合格体験記
ここでは、試験当日の体験記として、試験の形式、時間配分、そして難易度について解説します。
試験の形式と環境
試験はWebブラウザ上で実施され、全問英語で出題されます。PSM II の受験経験があったため、試験中にGoogle翻訳を使用できることは知っていましたが、微妙なニュアンスが問われる問題では、直訳では意図を理解しにくい場面もありました。また、翻訳により画面表示が崩れることもありますが、Product Owner Open で事前に練習しておけば問題ないと思います。
なお、試験中は Webカメラによる監視等はありません。
時間配分との戦い:PSM II よりも厳しい条件
PSPO II は40問を60分で解答する必要があり、1問あたりわずか1分半という非常に限られた時間しかありません。これは、PSM II が30問を90分(1問あたり3分)で解答するのと比較すると、より厳しい条件です。各設問がより深い思考と状況判断を求めるため、時間管理は非常に重要でした。見直しを行う時間は確保できないと考え、残り時間を常に意識しながら解答を進める必要がありました。
合格ラインは85%以上と高い設定のため、時間と正確さの両方が必要となります。
難易度と感触
PSPO II の試験は、単なる知識を問う問題よりも、実際のビジネスシナリオやチームの状況に基づいた「プロダクトオーナーとして最も適切な行動は何か?」と問う問題が多数出題されました。例えば、「このような状況でステークホルダーとどのように対話すべきか」「プロダクトバックログのこの項目に対して、どう判断を下すべきか」といった、実践的な判断力を問われる内容でした。
どの問題においても、根底にはプロダクトオーナーの最大の責務である「プロダクトの価値を最大化する」という視点が問われていると感じました。正解の選択肢を選ぶためには、スクラムガイドの原則と、プロダクトオーナーとしてユーザーやビジネスに最大限の価値を提供するための視点から、冷静に状況を分析する必要がありました。
試験結果
PSM II の受験経験があったため、今回は比較的余裕をもって試験に臨むことができました。試験終了後、すぐに結果が表示され、無事に合格していることが分かりました。PSM II に続くPSPO II の合格は、スクラムマスターとプロダクトオーナー、双方の視点からスクラムを理解し、実践できる自信につながるものでした。
試験結果は、スコア:94.9% で合格できました。スコアの端数からも、複数選択肢問題では、部分点もあるものと想定されます。
試験結果と単元ごとの詳細は、Scrum.org の My Account の Assessment Results で、下記のように確認できます。これにより、自身の強みや弱点を客観的に把握し、今後の学習に活かすことができます。
6.まとめ
今回のPSPO II 学習と合格を通じて、プロダクトオーナーとして「プロダクトの価値を最大化する」という責任がいかに深く、多岐にわたるかを改めて実感しました。スクラムマスターとしての視点に加え、プロダクトオーナーとしてビジネス価値、ユーザー体験、技術的な実現可能性といった多様な側面を考慮しながら、プロダクトバックログを管理し、ステークホルダーと効果的に連携することの重要性を学びました。
今後は、この PSPO II で得た知識とスキルを実際のプロジェクトでさらに深く実践し、より複雑な状況下でのプロダクトオーナーシップを発揮していきたいと考えています。
この合格体験記が、これから Professional Scrum Product Owner II(PSPO II)の取得を目指す皆さんの、学習の一助となれば幸いです