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「良い命名」できていますか? ― ITの名前の由来をアルファベット順に集めてみたから、インスピレーションしてください。

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Last updated at Posted at 2026-06-12

はじめに

命名は大事だ。
変数名はわかりやすい方が良い。サービス名はキャッチーで覚えられやすい方が良い。社名は、アイデンティティをつくる。

命名は大変だ。
わかりやすい命名を考えると長くなる。キャッチーさに振ると、既存の言葉と重複する。思いが溢れすぎると、まとまらない。

でも、すべてのものに名前がついている。名前がついているから、認識出来るのかもしれない。
有名な会社やサービス、よく考えると、なんでそんな名前?と思ったりもする。
みんな、どうやって名前をつけているんだろう。

そんなわけで、社名・サービス名・OSS・変数名まで、ITの名前の由来をアルファベット順に集めてみました。

きっと、次の命名のヒントになる名前が、どこかにあるはず。

A

Amazon

最初の候補は Cadabra(abracadabra から)。でも弁護士が電話で "cadaver"(死体)と聞き間違えた。さすがにまずい、と Bezos が再考。

辞書の A の項を眺めていて Amazon にたどり着きました。「地球最大の川 = 地球最大の書店」。当時はウェブの一覧がアルファベット順だったので、A 始まりが有利だったのも理由です。

🔗 Amazon - Wikipedia / Brad Stone『The Everything Store』

Apple

Jobs がフルータリアン(果実食)中にりんご農園を訪れて、「楽しくて、威圧的でない」と感じた名前。Amazon と同じく A 始まりで名簿の上位に来るのも効いています(前職 Atari より前)。

ロゴのかじり跡を Turing の死と結ぶ説は有名ですが、デザイナー本人が否定しています(「りんごのサイズ感を出すため」)。

🔗 Apple Inc. - Wikipedia

B

Bash

Bourne Again SHell の略。Unix の標準シェルだった Bourne Shell(作者 Stephen Bourne)を置き換えるもので、"Bourne again"(ボーンの再来)= "born again"(生まれ変わった) を掛けた駄洒落です。

GNU 界隈の「ふざけた言葉遊びで名付ける」伝統の一例。Zsh とは別系統の命名です。

🔗 Bash - GNU 公式

Bluetooth

10世紀デンマーク王 Harald "Bluetooth" Gormsson から。Harald がデンマークとノルウェーを統一したように、PC と携帯を統一する、という比喩です。

ロゴは Harald の頭文字 ᚼ + ᛒ のルーン文字

🔗 Bluetooth - Wikipedia

C

C 言語

B 言語BCPL 由来)を改良したので、アルファベットの次の文字で C。雑なようで強い命名です。

ちなみに後継は C++(C の ++ インクリメント = 「C を一つ進めた」)。

🔗 C - Wikipedia

ChatGPT

Generative Pre-trained Transformer + ChatTransformer は2017年の論文 "Attention Is All You Need" 由来。最初から略語が実体で、捻りはありません。

🔗 Generative pre-trained transformer - Wikipedia

D

DeNA

遺伝子の DNA に、eコマースの e を割り込ませた造語。「eコマースの新しい遺伝子を広めていく "DNA" でありたい」という想いから。1999年、南場智子が創業。

🔗 会社情報 / DeNA - Wikipedia

daemon

Unix の daemon は、マクスウェルの悪魔(裏で黙々と働く存在)にちなむ比喩。"Disk And Execution Monitor" の略語説は後付けです。

決定的なのは、当時の責任者 Corbató 本人が略語説を否定していること。「初耳だ(a new one on me)」と。

🔗 List of computer term etymologies - Wikipedia

Dart

コードネームは "Dash"。2011年のリーク内部メールで確認できます。JavaScript を置き換える野心的なプロジェクトでした。

その Dash は、いまもマスコットのハチドリ Dash として生き残っています。ハチドリ = 速い言語、という象徴です。

JavaScript は倒せませんでしたが、Flutter のクライアント言語として居場所を得ました。Mozilla(後述)の反転ですね。

🔗 Dart - Wikipedia / Flutter Brand

Docker

dock(波止場)+ -er = 港湾労働者。貨物コンテナを積み降ろしする比喩です。

Kubernetes(操舵手)・Helm(舵輪)・Harbor(港)と、コンテナ界隈は海運メタファーで世界観が揃っているのが面白い。

🔗 Docker - Wikipedia

E

Eclipse

IBM が2001年に公開した Java IDE。名前は、当時の競合 Microsoft Visual Studio を "eclipse"(食 = 覆い隠す・凌駕する)するという意気込みから——と言われています。

裏の読みも効いています。もう一つの競合 NetBeansSun Microsystems 製。日食(eclipse)は太陽(Sun)を覆い隠す——この competitive な含みは「賢い人たちが見落とすはずがない」と関係者も認めています。

ただし「Microsoft を eclipse する」説は、2005年の EclipseCon で Lee Nackman が語ったとされるもので、"said, though not confirmed"(言われているが未確認) 扱い。別説では、初期メンバーの合宿で宇宙テーマのコードネームが多数出た中から Eclipse が残った、とも。

🔗 Eclipse (software) - Wikipedia

Ethernet

19世紀の物理学で「光を伝える宇宙の媒質」と考えられていた エーテル(luminiferous ether) から。Robert Metcalfe が1973年、ケーブルがビットを全ノードに運ぶ様子を、エーテルが電磁波を運ぶことになぞらえました。

このエーテル、Michelson–Morley の実験で存在を否定された概念です。「実在しない」と証明された物理用語を、新技術の名前にしたわけです。

🔗 Ethernet - Wikipedia

F

Firefox

レッサーパンダの英語別名 "firefox" から(中国語の 火狐 に由来)。改名史が複雑で、Phoenix → Firebird → Firefox と二度変わっています。

Phoenix は BIOS メーカーと、Firebird は OSS の DB と名前が衝突。三度目の正直で Firefox に落ち着きました。

ロゴは誰がどう見てもキツネ(fox)ですが、名前の由来はレッサーパンダ。「レッサーパンダと言われてもピンと来ないから」と、デザインはキツネに寄せたそうです。

🔗 Firefox Name FAQ - Mozilla 公式

Flutter

コードネームは "Sky"。2015年に Android 上の "Sky" として公開。描画エンジンは Google の Skia です。

Flutter(羽ばたき)+ Skia / Sky(空)で「空を羽ばたく」イメージが揃っています。

🔗 Flutter - Wikipedia

G

Git

英国スラングで 「嫌な奴・バカ」 の意味。作者 Torvalds の自虐です。

「俺は自己中な野郎で、プロジェクトには全部自分の名前を付ける。最初は Linux、今度は git だ」と本人が冗談を。man ページにも "the stupid content tracker" とあります。

🔗 Git - Wikipedia

Google

数学用語 googol(10の100乗)の綴りミス。1997年、Sean Anderson がドメインを確認しようとして "google.com" と打ち間違えた。Page が気に入って即登録。

元の名前は BackRub(被リンク解析だから)でした。

🔗 Origin of the name "Google" - Stanford

H

Haskell

論理学者 Haskell Brooks Curry から。コンビネータ論理ラムダ計算の研究が関数型言語の土台になっている人物で、1990年の言語設計時に名前を借りました。

面白いのは、ファーストネームが言語名 Haskell、ラストネームが currying(カリー化) と、両方が残っていること。カリー=ハワード対応の Curry も同じ人。ロゴの λ もラムダ計算由来です。

🔗 Haskell Report Preface - 公式

Homebrew

「Mac 上でソフトを自家醸造(home-brew)する」というビール醸造のメタファー。だからコマンドは brew。Max Howell が作りました。

ビール用語で世界観が統一されています。サードパーティのリポジトリ = tap(蛇口)、ビルド済みバイナリ = bottle(瓶)、パッケージの定義 = formula(レシピ)

🔗 Homebrew - Wikipedia

I

Internet / IP

Internet = inter(相互の)+ network。IP = Internet Protocol。そのままです。

🔗 Internet - Wikipedia

IntelliJ IDEA

intelligent(賢い)+ IDEAIDE(統合開発環境)と "idea"(アイデア)を掛けた、言葉遊びです。読みは "インテリジェイ・アイディア"。

🔗 IntelliJ IDEA - Wikipedia

J

Java

GreenTalk → Oak → Java の順。Gosling のオフィス外の樫の木から Oak でしたが、Oak Technologies の商標とぶつかり改名。最終的にインドネシア産 Java coffee から Java に。

🔗 Java - Wikipedia

K

Kotlin

サンクトペテルブルク沖の コトリン島 から。開発元 JetBrains の Kotlin チームがその近辺(サンクトペテルブルク)にいたことにちなみます。

Java が島(ジャワ島)の名前なので、それに倣った説も。島つながりですね。

🔗 The Advent of Kotlin - Oracle(開発者インタビュー)

Kubernetes / K8s

ギリシャ語 κυβερνήτης(kubernḗtēs)= 操舵手。"helmsman / pilot" を意味し、サイバネティクスの語源でもあります。K8s は K と s の間の8文字を数えた numeronymi18n と同型)。前身名は Borgスタートレック)。

🔗 Kubernetes Overview - 公式

L

Linux

当初 Torvalds は Freax(free + freak + x)にするつもりでした。でも FTP サーバーの管理者が置いたディレクトリ名が linux になり、そのまま定着。自分の名を冠するのは気恥ずかしかったとか。

OS 三大命名の対比が面白いです。Unix = 駄洒落、Macintosh = 好きなりんごの綴り変え、Linux = 偶然のディレクトリ名。意図ゼロ、借用、言葉遊び、と三者三様。

🔗 History of Linux - Wikipedia

Lua

ポルトガル語で 「月」。ブラジルの PUC-Rio 製で、前身言語 SOL(ポルトガル語で「太陽」) の後継だったので、対になる「月」を選びました。

"LUA" と大文字で書くのは誤り。略語ではなく「月」という名詞なので、Lua と書くのが正しい、と公式が明言しています。

🔗 Lua - Wikipedia

M

Macintosh / Mac

Jef Raskin好きなりんごの品種 McIntosh から。「コンピュータに女性名を付けるのは性差別的」と考えて、果物の名にしました。

綴りはわざと McIntosh → Macintosh に変更。オーディオメーカー McIntosh Laboratory との衝突を避けるためです。それでも発音が同じで商標は通らず、後に権利を買い取りました。

社内では Mac を "Meaningless Acronym Computer"(無意味な頭字語コンピュータ)と呼ぶ案も。Apple は Apple Corps(ビートルズ)に続き、りんご縛りで二度トラブっています。

🔗 How the Macintosh got its name - Macworld

Mozilla

Netscape の内部コードネーム。先行ブラウザ Mosaic を倒す "Mosaic killer" + ゴジラ のかばん語です。

🔗 Mozilla (mascot) - Wikipedia

N

npm

「Node Package Manager の略」だと思っていませんか? 違います。

npm 公式いわく、npm は "npm is not an acronym"(npm は頭字語ではない) の再帰的バクロニム。GNU("GNU's Not Unix")と同じ自己言及型です。

ちなみに前身は pm("pkgmakeinst" という bash 関数の短縮形)でした。

🔗 npm - npmjs.com 公式("npm is not an acronym")

P

Perl

元の綴りは Pearl(真珠)。Larry Wall が短くて良い意味の名前を、と付けましたが、PEARL という言語が既にあったので "a" を落として Perl に。

公式には略語ではないものの、"Practical Extraction and Report Language" などの backronym が後付けされています。Wall 自身は冗談で "Pathologically Eclectic Rubbish Lister"(病的に折衷的なゴミ列挙機)とも。

🔗 Perl - Wikipedia

Python

蛇じゃなくて、英国コメディ集団 Monty Python 由来。だから公式ドキュメントに spam / eggs がサンプルで出てきます。

🔗 General Python FAQ - 公式

Q

Qiita

我々が世話になっているこのサイト。2011年秋、プログラマ向け Q&A サービスとして始まりました。「Q&A だから Q で始まって A で終わる名前に」と決めて、Qiita(キータ) に。

その後 Q&A から情報共有サービスへ変わったけど、名前はそのまま。Q…A の制約だけが化石として残っています。

🔗 Qiita公式 (@Qiita)

S

Slack

Searchable Log of All Conversation and Knowledge(すべての会話と知識の検索可能なログ)の頭字語——ですが、これは典型的な backronym。先にコードネーム "linefeed" があり、2012年に Butterfield が Slack に差し替えました。

"slack"(たるみ・ゆとり)という普通の英単語に、後から仕事用ツールらしい意味を被せた形。daemon と同じ後付けですが、意味がサービスにハマっています。

🔗 Slack (software) - Wikipedia

Spotify

実は 聞き間違いです。Ek と Lorentzon が別の部屋から名前を叫び合っていて、Ek が "Spotify" と聞き間違えた。意味は元々ない。検索して空いてたので即ドメイン登録。

「ちょっと恥ずかしくて」後から spot + identify だと説明していた、と Ek 本人が語っています。

🔗 Why Is It Called Spotify? - HowToGeek

T

TeX

ギリシャ語 τέχνη(technē) = 技術・芸術。T E X はギリシャ大文字 tau, epsilon, chi です。X は chi なので "テック"(loch の ch 音)と発音するのが Knuth の指定。"テックス" は誤りです。

名前自体が「技術 = 芸術」を主張している。組版を芸術と言い切る命名です。

🔗 What is TeX? - TUG 公式

U

Unix

前身は野心的なマルチタスク OS Multics。これに嫌気がさした Thompson らが、もっと単純な OS を作りました。

名前 UnicsKernighan による Multics への駄洒落。"multi"(多重)に対する "uni"(単一)、しかも "eunuchs"(去勢された者)と同音。つまり「去勢された Multics」。後に Unix に。

🔗 History of Unix - Wikipedia

Uber

ドイツ語 über(〜の上に、超えて)。over / super と同根です。

🔗 Uber - Wikipedia

V

Vim

Vi IMprovedvi の改良版)。でも 2.0以前は "Vi IMitation"(vi の模倣) でした。

「模倣」から「改良」へ昇格した二段オチ。

🔗 Vim - Wikipedia

Vue.js

発音は "view"(ビュー) と同じ。View を担う UI フレームワークなので、そのまま。作者 Evan You の命名です。

フランス語 "vue"(= 英語の view)でもあり、発音と意味が一致。機能をそのまま名前にした優等生。

🔗 Vue.js - Wikipedia

W

WWW / Web

World Wide Web = 世界中に張られた蜘蛛の巣(web)。Tim Berners-Lee の命名です。

"WWW" は フルスペルより読みが長い(ダブリュー×3 = 9音節 > World Wide Web = 3音節)という珍しい略語。

🔗 World Wide Web - Wikipedia

X

X(旧 Twitter)

2023年に Twitter から改称。前史も濃くて、当初は母音抜きの "Twttr"Flickr 流行に倣う)。候補に FriendStalker もありました。

tweet(さえずり)は鳥の比喩で一貫していたのに、X 改称でその世界観を全部捨てました。

🔗 Twitter - Wikipedia

Y

Yahoo!

backronym "Yet Another Hierarchical Officious Oracle" が合う、と本人たちは言いつつ、選んだ理由は『ガリヴァー旅行記』Yahoo(粗野・無教養の意)が気に入ったから、と。

🔗 Yahoo! - Wikipedia

Yarn

JavaScript のパッケージマネージャ。"Yet Another Resource Negotiator" の頭字語——ですが、これも backronym 寄り。Facebook 製です。

"yarn"(毛糸)という普通の単語に意味を被せた形。npm の対抗馬として、毛糸 = パッケージを紡ぐイメージも効いています。

🔗 Yarn - Wikipedia

Z

Zsh

作者 Paul Falstad が1990年に Princeton で作成。名前は当時 TA だった(後の Yale 教授)Zhong Shao 氏のログイン名 "zsh" から。「シェルの名前に良さそう」と思ったらしい。

機能でも語呂でもなく、たまたま隣にいた人のログイン名。Linux よりさらに無作為です。

🔗 Z shell - Wikipedia

ZOZO

ZOZO = 想像(Imagination)と創造(Creation)、二つの「ZO」の造語。2018年にスタートトゥデイから改称しました。

前身「スタートトゥデイ」は、米ハードコアバンド Gorilla Biscuits のアルバム "Start Today" 由来(前澤友作がバンド出身)と言われますが、これは二次情報です。

🔗 社名変更リリース - ZOZO公式

おわりに

並べてみると、素朴に信じてる由来が実は後付けだったり、綴りミスや聞き間違いの事故から生まれたものが、思ったより多い。

名前は名前。本質ではない。
それでも。考え抜きたくなるのも、また人情。

面倒くさくてロマンティストなあなたのひらめきの一助に、この記事がなれると嬉しい。

間違い・追加ネタがあればコメントで教えてください。

番外編:ドットログ

弊社こと 株式会社ドットログ(.log) は、創業メンバーが当時勉強中だった JavaScript の console.log() にちなんで名付けた——というのは、あまりにも有名な話。

※ ( ) の中にいろんなものを入れて、世の中に沢山のものを出力していこう!という意味もあります。

当初はアパレル事業を展開していましたが、IT業界にピボットしたことで、命名と実態がようやく一致したのです。

めでたし、めでたし。

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