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【JS/ Python両方OK!】「データ可視化」が歴史から実装まで体系的に学べるStanford講座の独習ノート

Last updated at Posted at 2020-08-12

CS 448B Visualization (2020 Winter)は、Maneesh Agrawala氏による、Stanford大で行われた、データの可視化に関する体系的な講義です。

2020年冬学期の講義スライド、Observable/ ColaboratoryによるJavaScript(Vega-liteベース)、Python(Altairベース)のハンズオン教材が公開されています。

全編英語であるため、他に取り組まれる方の索引的に使っていただければと思い、独習時の日本語メモをこちらにまとめます。なお、22年1月に、可視化の歴史に注目した「データ可視化の成り立ち・歴史・現在地 〜折れ線グラフの誕生からD3.js、Observableまで〜」という記事も書きました。

授業の構成

image.png

CS 448B Webサイトより

講義は2020年1-3月の10週にわたり行われたものです。最新の知見がカバーされていると言えるでしょう。多くの週は2回の講義があり、座学編は計16回分のスライド、ハンズオン編は6回分のノートブックがあります。

  • 座学編
    • 講義スライド
  • ハンズオン編
    • Observableノートブック(JavaScript)
    • Colaboratoryノートブック(Python)

以下に、リソースへのリンクをまとめます。

座学編

リンク先は講義スライドです。各講義でとりあげるトピックとまとめを後述します

ハンズオン編

環境構築不要・ブラウザ上でハンズオンが進められるよう、以下のリソースが用意されています。

余談ですが、ハンズオン編の作者はUW Interactive Data Lab (UWはUniversity of Washingtonの略)となっています。同Lab DirectorのJeffery Heer氏は、08-13年にStanfordでAssistant Professorだったようで、今も相互に繋がりがあるのかもしれません。 Heer氏の授業(CSE512: Data Visualization)も、StanfordのCS 448Bとよく似た構成をとっています。

Observableノートブック (JavaScript)

image.png

Vega-Lite公式Webより

JavaScriptをノートブック形式でインタラクティブに実行できるObservable上に、ハンズオン資料がホストされています。可視化用ライブラリとして Vega-Lite が使われており、入門からインタラクティブな図表作成までを、実行し、自分で手を加えながら学べます。

  1. Vega-Lite入門
  2. データ型、記号と視覚表現へのエンコーディング
  3. データの変換
  4. スケール、軸、凡例
  5. 複数のビューで構成する可視化
  6. インタラクティブな可視化表現

こちらは「インタラクション」のノートブックから、映画レビューサイト IMDb、Rotten Tomatoesのレビュー相関をインタラクティブに比較できるようにした例です。

observable-imdb.gif

出典: https://observablehq.com/@uwdata/interactio

本講義で取り上げているもの以外に、ObservableのUWアカウント下に、地理データの可視化などの他リソースがありました。ご興味を持たれた方は掘ってみてください。

image.png

US失業率(2008年 ) コロプレス図、カラースキームバリエーション
出典: Cartographic Visualization / UW Interactive Data Lab / Observable

Colaboratoryノートブック (Python)

image.png

Altair公式ドキュメントより

同じくPythonをノートブック形式でインタラクティブに実行できるColaboratory上に、ハンズオン資料がホストされています。こちらは可視化用ライブラリとして Altair が使われています。Vega-liteの文法を元にしたライブラリであり、こちらも、入門からインタラクティブな図表作成までを、実行し、自分で手を加えながら学べます。最終的にHTML/JavaScriptでのエクスポートも可能です。

  1. Altair入門
  2. データ型、記号と視覚表現へのエンコーディング
  3. データの変換
  4. スケール、軸、凡例
  5. 複数のビューで構成する可視化
  6. インタラクティブな可視化表現

こちらもGitHub上にuwdata/visualization-curriculumリポジトリが存在します。Observable同様、地理データの可視化などの他リソースがありました。

各講義のサマリ

以下はおおまかな各講義のカバートピックとまとめです。16回分のスライドについて、「どこから読み進めよう」と考える方へのインデックスとして活用ください。

個人的には、特にWeek1-1, 1-2, 2あたりの分野の成り立ちや歴史について、知らなかったことが多く、興味深く読みました。

Week1-1 可視化の目的

  • 扱うトピック
    • 可視化の目的
      • 情報の記録
      • 情報からの推論支援(分析)
      • 情報の他者への伝達(提示)
    • コース全体で取り上げる内容の紹介
    • コースの構成
    • テキストや参考リソース

Week1-2 データと視覚表現のモデル

データと視覚表現がそれぞれどんなモデルで、相互にどう対応づけられるかを見ていきます。

image.png

出典: CS 448B Visualization (2020 Winter)講義資料

  • 扱うトピック
    • データについて
      • データモデルとコンセプチュアルモデル
      • データタイプの類型。1D, 時系列, 2D, 3D, nD, ツリー、ネットワークと様々
      • 尺度について。 もとはS.S.Stevens 1946年のまとめ
      • 関係代数とSQL
        • 射影、選択、ソート、集約、結合
        • (SELECT, WHERE, ORDER BY, GROUP BY, JOIN等に対応)
    • 視覚表現について
      • 記号とビジュアル変数、構成のレベル
      • Levels of Organization
      • 視覚表現へのエンコード。データを、位置、色、数値といった視覚的な記号に変換すること
      • 構成要素の分解
        • 著名な1869 ナポレオンのロシア遠征の可視化を例にとりあげた解説
        • image.png

Week2-1 可視化のデザインと修正

  • 扱うトピック
    • 可視化の自動生成(自動デザイン)
      • APT(A Presentation Tool; Jock Mackinlay 1986. 現Tableau所属らしい)
    • デザインアルゴリズム
    • 手法の限界
    • Tableauを使った可視化の課題
    • 様々なチャートの紹介

Week2-2 探索的データ分析

  • 扱うトピック
    • データ・ラングリング(前処理)
    • データ品質の問題
    • EDA(探索的データ分析)の事例
  • まとめ
    • EDAのプロセス
      • 仮説にこたえるための可視化を作る
      • 答えを検証し、新しい仮説を考える
      • それを繰り返す
      • データを適切に変換する(逆順にする、対数軸の採用など)
      • "デザインのバリエーションではなく、データのバリエーションを示すこと" -- Tufte

Week3 空間を効果的に使う

  • 扱うトピック
    • グラフとライン
    • アスペクト比の選択
    • データのフィットと残差の描画
    • グラフィカルな計算
    • 地図のゆがみによる表現
  • まとめ
    • データを視覚表現にエンコードするため、空間をどう使うかは最重要
    • 空間の変換によってもたらされる幾何学的な属性は、幾何学的推論を助けてくれる
    • できるだけ大きな解像度でデータを提示できるようにする
    • 重要な情報を強調するために、ゆがみを活用する

Week4-1 D3入門

(他のD3入門リソースもあることから割愛)

Week4-2 D3チュートリアル

(他のD3入門リソースもあることから割愛)

Week5-1 インタラクティブな可視化

  • 扱うトピック
    • 実行のへだたりと評価のへだたり(Norman 1986)
    • ポインティング
    • ブラシとリンク
    • 動的なクエリ
  • まとめ
    • 多くの可視化はインタラクティブなものである
    • 可視化の良し悪しはタスクに依存する
    • インタラクションの基本テクニックを概観した

Week5-2 認知科学と可視化

  • 扱うトピック
    • シグナルの検知
    • 量の見積り
    • 前注意的な視覚処理
    • 複数の視覚表現を使う
    • ゲシュタルトグルーピング
    • ブラインドネスの変更

Week6-1 説明のための可視化

  • 扱うトピック
    • ストーリーを語る
    • ナラティブな可視化でデザインできる範囲
    • インタラクティブな文書
    • チャートの並び順

Week6-2 色の使い方

  • 扱うトピック
    • 色の知覚
    • 色の名前
    • 可視化に色を使うには
  • まとめ
    • 属性をコントロールする(暗さ、明るさ)
      • 可読性を担保する
      • 望まない強調表現が混入しないようにする
    • 色相のパレットを制限する(6色まで)
      • 飛び出す("pop out")色は注意して扱う
      • 知覚における色のグルーピングを意識する
      • 競合する色を使いすぎない
    • 自然な背景色の選択
      • 色のインパクトを制御する
      • コントラスト

Week7 アニメーション

  • 扱うトピック
    • 動きを理解する
    • 可視化における遷移アニメーション
      • アニメーションを実装する
  • まとめ
    • アニメーションは目立つ視覚効果である
      • 注意、オブジェクトの一貫性、因果、タイミング
    • コア(合同と不安: congruence and apprehension)に沿ってデザインする
    • 用途によって使い分ける
      • プロセスには、静的なイメージが好まれる
      • 遷移には、アニメーションの利点があるが、タスクとタイミングを十分に考慮する

Week8-1 ネットワーク図のレイアウト

  • 扱うトピック
    • ツリーの配置
    • ネットワークの配置
      • Sugiyamaスタイルの配置
      • 力学モデルを用いた配置
    • ネットワークの配置の代替
      • Matrix Diagrams
      • 属性ドリブンな配置
  • まとめ
    • ツリーの配置
      • インデント、ノードリンク、エンクロージャ、レイヤ
      • スケールの問題にどう対処するか
        • フィルタ、フォーカスと文脈のテクニック
    • グラフの配置
      • スパニングツリーによるツリー配置
      • 階層的な"Sugiyama"レイアウト
      • 最適化(力学モデルの活用)
      • 属性ドリブンな配置

Week8-2 ネットワーク分析

  • 扱うトピック
    • ネットワーク分析
      • 中心性の分析
      • コミュニティの構造分析
      • パターンを見つける
      • モデル
  • まとめ
    • 構造的な分析
      • 中心性
      • コミュニティの構造
      • パターンを見つける
    • さまざまなドメインに適用することができる

Week9-1 可視化を分解する

  • 扱うトピック
    • 分類
    • マークの抽出
    • データの抽出
  • まとめ
    • チャートは、データと記号表現をマッピングしたものの集合である
    • チャートのビットマップから、表現を再構築できる
    • こうした再構築により、リデザイン、再利活用ができる

Week9-2 テキストデータの可視化

  • 扱うトピック
    • データとしてのテキスト
    • 文書内容の可視化
    • 会話の可視化
    • 文書群の可視化
  • まとめ
    • 高次元データへの留意
    • 文脈と意味への留意
    • 抽象のモデリングへの留意
    • 現状は、bag-of-words(単語の出現頻度)から単語の埋め込みベクトル表現までが使われる

参考

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