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現代人特有の疎結合な人間関係には、プロキシが有効なんじゃない?という話

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1.はじめに

現代の人類は、人間関係がドライで閉鎖的な傾向にある。

全てが自己完結した人生は、弊害が無く常に安全である一方で、どこか寂しそうだ。

そんな現代人について、プログラミング界のオブジェクト指向に重ねて考えてみると、いろいろと面白い状況が見えてきた。

2.パッケージプライベートなオブジェクトと化した人類

まず前提として、私は現代人の他者との交流について、プログラミング用語で言うところの「疎結合」な向き合い方を積極的に選んでいるように感じている。

自分の属性に似たものとだけ交流し、それ以外とは極力関わらないようになっているのである。

そんな現代人を、プログラミング世界のオブジェクト指向に(無理やり)当てはめてみると、このオブジェクトはまさしく「パッケージプライベート」に該当するのでは?と気が付いた。

(パッケージプライベートとは、同じパッケージに属するオブジェクトからしかアクセスを許容しないように制限するアクセス修飾子である)

これは、現代人もだいたい同じで、つまりは限定的で保守的な関係性ばかり築きたがっているのだ。

それだけでなく、内向的な趣味ばかりを抱え込み、自分の個性を表に出すことすら恐れているのである。

動画のサブスクやオタク文化が流行しているのも納得だ。

自己開示が必要な趣味は極力持たず、自分と直接関係を持たない”サブスク動画”や”アイドル”、”二次元キャラ”という、さながら「誰でも呼び出せる便利なAPI」にばかり依存しているわけだ。

3.デメテルの法則とKISSの原則を体現した現代人

さて、少し発想を変えてみると、現代人の人間関係の在り方は「デメテルの法則」に似ているのではないか、と感じることがある。デメテルの法則とは、オブジェクト指向設計において、限られた相手とだけ関わるように設計する考え方だが、これを人間関係に置き換えても妙にしっくりくるのだ。

例えば、信頼できる限られた友人としか関係を持たず、プライバシーに対する他者からの介入を拒み、SNSでいつでもブロックして簡単に関係を絶てる距離感を保つことで、人間関係が常にドライであるように維持している点。

これは、「オブジェクトが他のオブジェクトの内部構造に依存しない」ことを目的としたデメテルの法則そのものではないだろうか。

さらに現代人は、個性(プロパティ)や独自のスキル(メソッド)を極力削ぎ落とし、あえて「誰でも代わりがきく存在」であることを目指しているようにも見える。これは、複雑な人間関係や自己主張による摩擦を避け、トラブルの少ない安定した生活を求める姿勢だ。

これは、KISS(Keep It Simple, Stupid)の原則に忠実な生き方と言えるだろう。

余計な情報を公開せず、他者と適度な距離感を保ち、可能な限り依存を避ける。

例えば、評価の高い飲食店ばかりに行ったり、SNSで流行しているネタやスタイルを模倣する投稿が増えていることからも、現代人が他者と似たスタンスをとる傾向が見て取れる。『ありふれた選択』がもたらす安心感や、『無難』であることが受け入れられやすい風潮が強まる中で、独自性よりも周囲との一体感が優先されがちである。このように、周囲と似た行動をとることで、摩擦を避け、シンプルで安全な生活を保つことが、現代社会でのKISS(Keep It Simple, Stupid)を体現しているといえる。

独自性を削ぎ落とし、「ありふれた存在」としてシンプルに生きることで、余計な摩擦を避け、円滑な社会生活を営むことができる。これこそ、現代社会においてKISSの原則を体現した、シンプルかつ安定志向の生き方だと言える。

こう見ると現代人はなんとも単純で寂しい存在である一方で、

オブジェクト指向の観点で見ると、デメテルやKISSの原則を体現した、きわめて優秀なオブジェクトではないだろうか。

人間社会というシステムを効率的に運用する上で、システムを形成する人類がそれらの原則を徹底したオブジェクトになること自体は、確かに合理的であり、そうなるのは必然に思える。

しかし、こんなに理想的なオブジェクトと化した人類であったが、各個人を見るとどう考えても幸せな生き方には思えない。自殺率は一向に減らず、SNSで不満を他者にぶつける現象は増える一方である。

どうやら、現代システムにおける人間オブジェクトの設計は、まだまだ最適解ではなさそうだ…。

4.Proxyパターンによる「代理人類」が我々に幸せをもたらす?

こんなに優れたオブジェクトである現代人が、今より幸せに生きる方法は何だろう。

これを改めてオブジェクト指向になぞらえて考えてみると、一つの答えが見つかった。

それは、代理で会話してくれる「Proxy」を構築し、運用することである。

Proxyとは、本来オブジェクトへのアクセスを制御しつつ、必要な情報だけを選別した上で呼び出し元にデータを渡すといった、「情報の橋渡し」の機能として用いられる用語であり、Proxyを利用した構造設計をProxyパターンという。これを人間関係に応用することで思わぬメリットが見えてくる。

具体例を挙げて説明してみる。

まず前提として、現代人は、自己の本質や感情をそのままさらけ出すことに不安を抱く一方で、承認要求や生殖本能といった衝動からも逃れられず、他者と関わることから完全に切り離されるのも耐え難い状態である。

この状況にProxyパターンを適用することで、自分のプライバシーは隠蔽したまま、必要に応じて柔軟で効率的な交流を実現することができるだろう。

さて、Proxyパターンの具体例として、自分独自のAIアシスタント(=チャットbot)を運用する方法が最も有効そうなので挙げてみる。

簡単に言えば、苦手な相手との会話を全てAIに任せてしまおうという案である。
そもそも、恋人や友人等の様々な人間関係についても、関係性を構築するまでのやり取りが億劫なだけで、自分にとって最適な関係性が構築されてしまえばあとは楽しいはずなのだから、それが構築されるまではAIにお任せしちゃえばいいではないか、という考え。
既にマッチングアプリでは最初のメッセージのやり取りをAIに代理で行ってもらうサービスも出始めているらしいし、今後もAIの発展に伴いマッチングアプリ以外の局面でも、こういったサービスが増えていくことが予想される。

ただし、ここで重要なのは、一般に広く流通する汎用的なAIに任せるのでは駄目で、自分の属性と好みを完全に理解したクローンのようなAIを構築する必要があるという点である。

最近、「デジタルツイン」という用語を良く耳にするようになったが、まさに自分自身のデジタルツインを作ればいいじゃない。

ただし、自分自身を適切に言語化して、習慣や話し方のクセなど、自分が持つあらゆるプロパティをAIに正確に学習させる必要が出てくる。

そのため、自分自身のあらゆる情報をAIに学習させる効率的な方法について、今後も研究が必要である。これについてもいつか記事を書こうと思う。

(KISS原則を体現した簡素なオブジェクトと化した現代人のデジタルツインなんて、そんなに難しくないんじゃないか?)

それはさておき、自分独自のAIを構築してチャットボットとして運用することさえ出来れば、自分のプライバシーへのアクセスは制限しつつも、安心安全に「自分らしさ」を適切に表現することができるのではないだろうか。

そして、場面や相手に応じて、さらに複数のAIアシスタントを構築すれば、より柔軟な関係が構築できるようになるはずだ。

例えば、社会人向けの真面目なキャラクターと、恋愛用のロマンチックなキャラクターを盛り込んだProxyをそれぞれ運用すれば、状況に合わせた適切な”人間関係”を勝手に構築してくれるようになるだろう。

5.まとめ

自分の真実の姿を隠しながらも、必要に応じて外部にアクセスできる便利なプロキシを構築することが、現代人の幸福に繋がるのかもしれないということが分かった。

ただし、「現代人」という大きすぎる主語が抱える悩みに対して、一つのデザインパターンが万事解決してくれることは実際には無いだろう。これはあくまで思考実験の一環に過ぎない。

しかし、このようにオブジェクト指向になぞらえて物事を考えてみるというアプローチは、やってみると意外と面白かった。

こんなふうに、現実で抱えている様々な問題を、オブジェクト指向のデザインパターンになぞらえて考えてみると、意外な解決策が見つかるかもしれない。

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