始めに
合理的に物事を推し進める日常の中で、ふと気付くと見失ってしまうものがある。
そうならないための一つのノウハウに関する記事を書きたい。仕事はもちろんプライベートにおいても、考え方や視野を広げることによって、いざと言う時にそれが役立ったりするから。身体と心の健康を守ることが、結果としてより良い(エンジニア)ライフに繋がっていく。
以下の記事がとても好きで、たまに見に行く。
印象に残っているものをざっと挙げてみる(と思ったらほとんどだった)。
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人の話を聞くこと
- 「事実認定」と「価値判断」を分離すること
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寝てから考えよう
- あなたはロボットではない
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わ・ざ・と、ゆ・っ・く・り・、や・っ・て・み・よ・う
- ゆっくり動いていると、心の奥底で、誰かが慌てているのを見つける
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ロビンソン式悩み解決
- 自分で描いた幻想に怯えているだけかもしれない
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驚き、最小の法則
- 判断に迷った時は、相手の「驚き」を最小にするような選択を
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あなたは、そのままでいいんです
- 「そんなに頑張らなくてもいいのよ。あなたはそのままでいいのだから」
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人から信頼されるためにはどうしたらよいか
- 相手の信頼を得る方法は、相手と約束をしてそれを守ることに尽きる
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あなたはひとりではありません
- 今、世界のどこかに、あなたと同じ思いを抱いている人が必ずいる
合理的に行動することはあくまで手段であって、その先にやりたいことがある。その関係性を見誤ると、短期的には効果があるけれど、長期的には尻すぼみになっていくかもしれない。上に挙げたようなことを実践することは、最終的にそのやりたいことに繋がっているように思う。
では、前置きはこのくらいにして本題。
上記で触れたノウハウの観点から大事だなと思うことをメモ。
基本的には抽象的な言い回しが多いから、それを読んで各々個別具体の話に落とし込んでもらえたら。何か感じるものがあればぜひ読んでみることを勧める。
バオバブの種に気を付ける
王子さまの惑星には良い草と悪い草があり、それぞれに種がある。もし悪い植物とわかったら、すぐに抜いてしまわなければならない。中でもバオバブの種には気をつけないといけない。先延ばしにしても問題ないものもあるが、バオバブの場合は取り返しのつかないことになる。バオバブは抜くのが遅くなると、星全体を覆い根が星を貫通し、最後には星を破滅させてしまう。
そうならないために、日課として、毎朝、星の身繕いを丁寧にしてあげればいい。バオバブだと分かったら、きちんと抜く。手間は掛かるけど、とても大切なこと。
重要なこと
「トゲは一体何のためにあるの?」飛行機の故障が予想以上に酷いことが分かり、最悪の事態を考えていた最中の質問だった。それどころではないと適当にあしらい返事もせず、最後に「他に重要なことを考える必要があるから」と言い放った。
花はもう何百万年も前からトゲを生やしていて、それでも羊は何百万年も前から花を食べている。なのに、どうして花がトゲを生やしているのか考えるのは重要でないのか?もしも、誰かが何百万の星の中の一つの星に咲く花を愛していたら、その人は夜空を見上げるだけで幸せになれる。でも、もしその花が食べられて、その人にとって全部の星の光が消えてしまうことは重要ではないのか?
言葉と思い
王子さまの星には、一輪の美しいバラがいた。バラはあれこれとお願いしては文句を言い、王子さまは愛する気持ちがあったにも関わらず、徐々にバラのことを信じられなくなっていった。バラの言葉を真に受けては辛い思いをした。そして、王子さまは、バラを残して星を後にした。
後になって、王子さまはバラの存在の大切さに気付く。バラは王子さまの星を良い香りで一杯にしてくれたし、星全体を明るくしてくれた。バラの言葉ではなく、バラの振る舞いで物事を判断すれば良かった。嘘かもしれない話も、うんざりして聴くのではなく、もっと優しい気持ちになってあげるべきだった。あの小細工の陰に隠れた優しさを察してあげられたら。
酒浸りは瓶を開ける
ある星には酒浸りがいた。そこには、たくさんの空の瓶と酒の入った瓶があった。酒浸りは、酒を飲むことを忘れるために酒を飲んでいた。そして、また酒を飲むことを忘れるために瓶を開ける。
絡まった糸を解くべきところで、無理矢理引っ張れば、さらに絡まってしまう。自分自身で問題を増大させてしまうと、いとも簡単に悪循環に陥ってしまう。そうならないためには、今この瞬間ではなく、長期的かつ広い視野を持つことが大事なのだと思う。
ビジネスマンは忙しい
次の星にはビジネスマンがいた。自分は重要人物であり、仕事が山積みだから、くだらぬことに関わっている時間はない、と王子さまを一蹴する。ビジネスマンはひたすら星の数を計算していた。それによって、星を所有することが出来て金持ちになれる。そして、さらに星を買うことが出来る。酒浸りの理屈と似たようなものを感じる。
王子さまは毎日バラに水をあげたり、週に一回火山を掃除することで、バラや火山の役に立っている。一方、星を運用することで誰の役に立っているのか。本来は誰かの役に立つために仕事をする。そこを見失ってしまうところから、物事が不自然な方向に向かっていくように感じる。
点灯夫は今を繰り返す
その星には点灯夫がいた。その星はとても小さかったため、点灯夫は一分毎に点灯と消灯を繰り返していた。今までの星で出会った人とは違い、点灯夫は自分以外の誰かの世話をしていて、つまりその仕事には意味があった。点灯夫が点灯を点けることで星が一つ生み出され、点灯を消すことで星が眠る。
惑星が年ごとに前より速く回るようになったが、点灯の規則は変わらない。自分を取り巻く環境が変わっていく中、盲目的に規則に従う結果、休む暇が無くなり消耗している。何かしらの仕組みの中で人は仕事をする。仕組みの変化に応じて、自身の行動も変えていかないと、そこに軋みが生まれる。毎日同じことを忠実に継続することは大切である一方、その先にある目的は捉えつつその手段を改善すること。
キツネは"なつく"
地球で一匹のキツネに出会う。そして、”なつく”ことについて教わる。それは、絆を結ぶということ。絆を結ぶまで、キツネにとって、王子さまは他の十万の男の子と何も変わらないし、別にいなくてもいい。でも、もし絆を結めば、互いに無くてはならない存在になる。キツネにとって、王子さまは世界で一人だけの男の子になる。パンを食べないキツネにとって、以前は何ともない麦畑が、金色に輝いて見えて、王子さまの金色の髪を思い出す。そして、麦畑を渡っていく風の音まで好きになっていく。仮に別れが訪れても、麦畑を見れば王子さまがこちらを見て笑っていて、いつか悲しい気持ちが去ったら、王子さまに会えたことを良かったと思えるようになる。
それは実際に絆を結ばないとわからない。現代は時間がなくなり過ぎて、何もわからないでいる。お店では、出来上がったものを買うことしか出来ない。絆を結ぶために大切なのは、忍耐と時間。最初は少し離れて座っていて、時間をかけて日毎に少しずつ近くに座るようにしていく。言葉は誤解の元になるから何も言わずに。
肝心なことは目で見えない、ものは心で見る必要がある。地球にある多くのバラと、王子さまの星にあるバラは、自分にとって異なる存在だった。なぜなら、王子さまが水をやったのは、ガラスの覆いをかけてやったのは、衝立で守ってあげたのは、毛虫を取ってあげたのは、文句言ったり自慢をしたのは、時々黙り込んでいるのに耳を傾けてあげたのは、あのバラだったから。王子さまのバラをかけがえのないものにしたのは、王子さまがバラのために費やした時間だった。
そして井戸は見つかる
飛行機が不時着して一週間が経つ中、サンテグジュペリは修理を続けていた。持っていた水を飲み干し、修理が完了していない状況に焦りを感じていた。事態を把握していない王子さまの語りかけに苛立つ中、水を求めて井戸を探すことになった。
王子さまは話を続ける。大事なものは、目に見えない。星々が美しいのは、ここからは見えない花がどこかで一輪咲いていると思うから。同じように、砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているから。人は特急列車に乗っているのに、何を探しているのかわからずに、忙しく動いたり、同じところをぐるぐる回ったりしている。そんなことしなくていいのに。一つの庭園に五千もバラを植えているのに、探しているものを見つけられない。それは、たった一輪のバラやほんの少しの水のなかにあるのかもしれない。目で探すのではなく、心で探さないと。そうして歩き続けていると、井戸を見つけることができた。それは普通砂漠の中にある井戸とは違って、村にある井戸のように、滑車も桶も綱も全部揃っていた。
日常では様々なことが起こって、こんな綺麗事を言っていられないという場面はある。けれど、そんな場面にこそ、これらのノウハウが活かせるように思う。ついつい問題に囚われがちだけど、そもそもそれは問題なのか、という視点を与えてくれる。探しているものは、見方を改めることで、思わぬところにあることに気付くのかもしれない。
終わりに
最後に気付きを与えてくれた話を紹介しておく。
まずは、一つ動画を紹介。
無駄な時間の意味
星の王子さまを題材に、コロナ禍で捉え直した時間の意味についてのスピーチ。
「時間は命である」という言葉の捉え方が変わると思う。もし良かったら覗いてみると、新たな気付きがあるかもしれない。
もう一つは、本書の訳者の後書きを読んで。
自然に対して働きかけ、その過程を通じて真理の断片を得る。
書斎で黙想する哲学者ではなく、外に出て働きながら考える思想家。
これが彼の生き方の基本姿勢であり、だから彼はパイロットという職業を持つ文学者になった。
飛ぶことを通じて得たものを文学に持ち込んだ。そしてしばしば自分を農夫になぞらえた。空を開拓し、この広い畑を世話し、そこから収穫を得る。
...
「王子さま」はバラの世話を通じてバラを愛するようになる。
すべてはこの働きかけから始まる。
この自然への積極的な姿勢をこそキツネは「飼い慣らす」と呼ぶのだ。
頭だけではなく身体で体感したことだからこそ、その言葉に重みや深みが出て、それを受け取った人を変えるきっかけになり得る。頭だけの理解では分かった気になるだけなのかもしれない。
また、バラやキツネを固有の何かに置き換えて考えていたけれど、その対象はもっと自由な何かで良くて、きっと重要なのは、それらに対する姿勢、具体的に言えば「相互作用的な働きかけ」なんだろうな。