はじめに
これまでの連載で、各SAP製品との統合手順を解説してきました。この記事では、SAP製品ではなくMicrosoft 365 Copilotとの連携を扱います。
Microsoft 365 CopilotのChat画面から、Jouleのケーパビリティを呼び出せるようにする機能です。すでにJouleを導入済みの環境に対して、追加で設定する位置づけになります。
前提条件
連携には、以下の条件を満たす必要があります。
- 最低1つのSAP business tenant(S/4HANA Cloud Private Edition、
SuccessFactorsなど)がJouleと統合済みであること
- Microsoft Entra IDとSAP Cloud Identity Services - Identity
Authenticationの間でTrustが設定済みであること
(EntraをOIDCベースのCorporate IdPとして登録する)
- Microsoft 365 Copilotから利用するすべてのユーザーが、SAP Cloud
Identity Services User Storeに作成・複製されていること
- Microsoft 365 Copilotのライセンスを保有し、対象ユーザーに
展開済みであること
Microsoft 365 Copilotとの連携は、既存のJoule環境に対する追加設定です。まずJouleが少なくとも1つのSAP製品と統合済みであることが前提になります。
統合手順
Entra側のアプリケーション設定
EntraとIASを連携させるために登録したEntraアプリケーションに、Joule連携用の権限とAPIを追加します。この手順は、SAPコミュニティブログで個別に案内されています。
Joule側の設定(BTP Cockpit)
1. Microsoft M365 Tenant ID(本番のM365 Copilot・Teams環境に
対応するテナントID)を確認しておく
2. BTP CockpitのSystem Landscapeで、システムタイプ
「M365 Copilot for SAP Joule」のシステムを追加する
(Step 1で確認したTenant IDを入力する)
3. Jouleを初めて設定する場合は、Joule Boosterの実行時に
Microsoft 365 Copilot統合を有効化できる
4. すでにJoule環境が稼働している場合は、BTP Cockpitから
M365 Copilotシステムを既存のJoule formationに追加する
Microsoft 365 Copilot側の設定
1. Microsoft 365 Admin Centerから、SAP Joule appをインストールする
M365 Custom Engine AgentのインストールとすべてのセットアップをM365 Admin Centerで完了させた後、M365 Copilot ChatからJoule Agentにアクセスできるようになるまで、最大2時間かかる場合があります。即座に反映されない点に注意してください。
データ処理に関する重要な注意事項
Jouleは生成AIによって動作するため、出力内容は利用前に必ず確認することが推奨されています。機密性の高い個人データや、処理されることを望まないデータは入力しないようにしてください。
また、Microsoft 365 Copilotで処理されるデータについて、SAPは管理していません。Microsoft 365 Copilotを利用するかどうかの判断は顧客側に委ねられており、その利用は顧客とMicrosoftの間の契約条件に従います。
この連携はSAP側とMicrosoft側、両方の利用規約・データ処理条件が関わる構成になっている点を理解しておく必要があります。
まとめ
- Microsoft 365 Copilotとの連携は、既存のJoule環境への追加設定という位置づけ
- 前提として、最低1つのSAP製品がすでにJouleと統合済みであること、EntraとIASのTrust設定が必要
- BTP CockpitのSystem Landscapeに「M365 Copilot for SAP Joule」というシステムタイプを追加する
- セットアップ完了後、利用可能になるまで最大2時間のタイムラグがある
- Microsoft 365 Copilotで処理されるデータはSAPの管理範囲外で、顧客とMicrosoftの契約条件に従う
次回は、SAP MDG-BP(マスターデータガバナンス)とのJoule統合について解説します。
用語解説
Microsoft Entra ID
Microsoftが提供するID管理サービス(旧Azure Active Directory)。M365 Copilot連携では、Corporate IdPとしてIASと信頼関係を構築する。
M365 Custom Engine Agent
Microsoft 365 Copilot上で、外部システム(この場合はJoule)の機能を呼び出すためのエージェント機構。
System Landscape
BTP Cockpit上で統合対象のシステムを登録・管理する画面。M365 Copilot連携では、ここに専用のシステムタイプを追加する。