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AWS Site-to-Site VPN × Kyndryl Cloud Uplift 〜Static前提環境における冗長設計の検証と考察〜

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Last updated at Posted at 2026-03-02

1. はじめに

AWS とオンプレミス/他クラウド環境を接続する際、
Site-to-Site VPN は代表的な接続方式の一つです。

AWS Site-to-Site VPN は標準で:

  • 1接続あたり2本のトンネルを提供
  • BGPによる動的ルーティング対応
  • トンネル単位での冗長設計

といった高可用設計を前提としています。

図:AWS標準的な Site-to-Stite VPN 接続構成のイメージ

image.png

しかし、対向環境が Kyndryl Cloud Uplift(旧Skytap、以下KCU) の場合、
AWSの設計思想をそのまま適用できるとは限りません。

本記事では、

AWS Site-to-Site VPN を前提に、
KCU 側の制約下でどこまで冗長構成を設計できるのか

を実検証ベースで整理しました。

本検証の結論としては、
KCU VPNGW の制約下では AWS標準のActive-Active冗長は成立しないが、
設計パターンによって可用性の担保方法は複数存在します。


2. 前提(スコープ)

  • AWS側:Site-to-Site VPN(VGW終端)
  • ルーティング方式:Static
  • KCU側:KCU VPN Gateway(VPNGW)

※ 本記事は 2026年2月時点の公式ドキュメント仕様に基づきます。


3. KCU VPNGW の前提仕様(重要)

AWSと接続する上で、KCU側には以下の制約があります。

3.1. Static Routing のみサポート

  • BGP非対応
  • 経路自動交換不可
  • 経路優先制御機能なし
  • 経路制御による自動フェイルオーバー機能なし

3.2. Remote peer IPは1つのみ設定可能

  • 設定画面上、Remote peer IP(対向のPeer ip address)は1つしか登録できない
  • 複数トンネル同時指定不可

KCU VPNGW 設定画面(Remote peer IP)

image.png

3.3. Remote Subnets はVPNGW単位で静的定義

公式ドキュメントに「1アカウントあたり最大10 VPN接続可能」との記載あり
ただし、

  • 他VPNGWと経路共有なし
  • 同一のRemote Subnets(対向CIDR)を複数VPNGWへ同時設定不可

実際に同一CIDRを別VPNGWへ設定したところエラーとなりました。

エビデンス:CIDR重複設定時エラー画面

例)
KCU VPNGW#1(VPN01)で設定済みの Remote Subnet(10.20.0.0/16)を、
別の KCU VPNGW(VPN02)にも同様に設定した際のエラー画面

image.png


AWSとKCUをVPNで接続する際の設計上の整理

以上より、

  • AWSの2トンネル冗長を同時活用することはできない
  • 同一宛先を両系Active構成で保持することはできない

という設計上の制約があります。

そのため本記事では、Static前提環境において
切替時にどのような挙動となるかを検証し、可用性設計上の判断材料を整理します。

KCUサポートへの確認では、
VPN Gateway サービスは内部的に冗長構成で実装されているとの回答を得ています。
ただし、詳細なアーキテクチャは公開されていないため、可用性特性の評価は公開情報およびSLAに基づき判断する必要があります。


4. 単一VPN(Static)構成の検証

まずは単一VPN構成。

図:単一VPN構成図(検証環境)

image.png

4.1 構成概要

AWS 側:

  • Site-to-Site VPN
  • Customer Gateway(CGW)×1
  • VPN Connection(Static)

KCU 側:

  • VPNGW ×1

AWS 側の VPN Connection は内部的に 2 本のトンネルを持ちますが、
KCU VPNGW の仕様上、Remote peer IP を 1 つしか設定できないため、
本構成では 実質 1 本のトンネルのみを使用する構成となります。


4.2 検証結果(通常時)

  • AWS EC2 ⇔ KCU VM Ping疎通 :OK
  • Tunnel Status:UP
  • ルート設定:正常

以下の経路図のように、接続自体は問題なくEnd-to-Endの疎通が成立しました。

図:通常時の通信経路図
image.png

エビデンス:Ping結果
image.png

エビデンス:AWS Tunnel Status(Tunnel 1=Up / Tunnel 2 = Down)
image.png

エビデンス:AWS ルートテーブル
image.png

エビデンス:KCU VPN 設定(Enable + Remote Subnet)
image.png


4.3. 単一VPN構成の設計上の留意点

本構成では、可用性評価の観点から以下を考慮する必要があります。

  • AWSトンネル障害 / メンテナンス
  • 途中経路障害
  • ブラックホール(トンネルUPだが通信不可)

本構成だと自動フェールオーバーが出来ない

点に注意が必要です。


4.4 手動切替検証(Tuunel#2への変更)

前章では、単一VPN構成における設計上の留意点として、

  • Static構成では自動フェイルオーバーが存在しないこと
  • トンネル状態と実通信の健全性が一致しない可能性があること

を整理しました。

本章ではその続きとして、

利用中トンネル(Tunnel#1)からTunnel#2へ手動切替した場合の実挙動

を確認します。

目的は冗長構成の提示ではなく、

単一VPN構成において、実際にどの程度の操作で復旧できるのか

を把握することです。

4.4.1. 想定シナリオ

以下の状況を想定します。

  • AWSより利用中トンネルのメンテナンス通知があった場合
  • Tunnel#1 が Down した場合
  • トンネルは Up だが通信できない(ブラックホール状態)

単一VPN構成では自動切替は行われないため、
KCU VPNGW の Remote peer IP の設定 を Tunnel#2 に変更することで復旧を試みます。

図:手動切替後の通信経路イメージ
image.png

4.4.2. 切替手順(KCU側のみ)

切替操作は KCU側のみで完結 します。

  1. KCU VPNGW を一時 Disable
  2. Remote peer IP を Tunnel#2 の Public IP に変更
  3. KCU VPNGW を Enable
  4. AWS側トンネル状態を確認

※ AWS側ルートテーブルの変更は不要
※ VPN Connection設定変更も不要

4.4.3. 切替時の挙動

実検証では、以下の挙動を確認しました。

  • 手順3の設定変更後、1分程度で Tunnel#2 が UP
  • その後、AWS EC2 ⇔ KCU VM の疎通が再開
  • AWSルートテーブルの変更は発生しない

切替に伴い一時的な通信断は発生しますが、
操作箇所は限定的であり、手順は比較的シンプルでした。

エビデンス:切替後Ping再開確認
image.png

エビデンス:AWS Tunnel Status((Tunnel 1=Down / Tunnel 2 = Up)
Pasted_Image_2026_02_28__13_58.png

4.5 単一VPN構成の設計整理

✔ 単一VPNでも復旧は可能
✔ 操作はKCU側のみ

⚠ 自動ではない(瞬断あり)

本構成は、

「手動復旧が可能なStatic構成」

であることを確認する検証となりました。

5. Azure VPN Gateway中継による構成の検証

ここまでの検証により、単一VPN構成では

  • AWSの2トンネルを同時活用できない
  • 自動フェイルオーバーは機能しない
  • 手動切替が前提となる

ことを確認しました。

一方で、KCU(Kyndryl Cloud Uplift)は、Microsoft Azure のIaaS / PaaS(1st Partyサービス)を基盤として、その上に設計・運用・サポート機能を組み合わせて提供される3rd Partyサービスです。

このため、Azureの各種コンポーネントを標準的に活用でき、高い親和性と一貫性のある構成が可能となります。

Azureネットワーク基盤を活用することで、

  • Azure内部での安定したルーティング経路の利用
  • BGPによる動的ルーティングの活用
  • クラウド間接続のハブ構成の実現

といった設計の選択肢が考えられます。

そこで次の設計パターンとして、

AWSの2トンネル冗長を活かしつつ、KCUのStatic制約と両立する構成

を検証しました。

本アプローチでは、Azure VPN Gateway をルーティングハブとして利用します。


5.1 構成方針

今回の検証環境構成は以下の通りです。

図:Azure VPN Gateway中継構成図
image.png

  • AWS ⇔ Azure VPN Gateway:BGP接続
  • Azure ⇔ KCU VPNGW:Static接続

つまり、

  • AWS側はBGPによる動的冗長を利用
  • KCU側は従来通りStatic接続
  • Azureが中継ハブとしてAWSとKCU間のルーティングを担う

というハイブリッド構成となります。

5.2 検証目的

本検証の目的は以下の通りです。

  1. AWSの2トンネル+BGP構成がAzure経由で成立するか
  2. Azureを中継したEnd-to-End通信が可能か
  3. Static区間(Azure ⇔ KCU)を含んでもルーティングが成立するか

単なる疎通確認ではなく、

単一VPN構成の制約を補完する設計パターンとなり得るか

を確認することを目的とします。

5.3 検証結果

✔ E2E疎通確認

AWS EC2 から KCU VM への Ping が成功。
Azure VPN Gateway を経由した通信が成立しました。


✔ Azure側ルートテーブル確認

Azure VPN Gateway の有効ルートに、

  • AWS VPC CIDR (10.20.0.0/16)
  • KCU 側 CIDR (10.150.0.0/16)

の双方が存在することを確認しました。

Pasted_Image_2026_02_28__15_28.png

Azureが中継点として正しくルーティングしていることが確認できます。

KCU側CIDERがIBgpで受け取ってるように見えますが表示上の問題のようで、
KCU VPNGWとのルーティング接続はStatic設定となっています。


✔ AWS側ルートテーブル確認

AWS側ルートテーブルにおいて、

  • KCU側ネットワークがVPN経由で到達可能

であることを確認しました。

Pasted_Image_2026_02_28__15_33.png

5.4 Azure VPN Gateway中継構成の設計上の整理

本構成により、

  • AWS側はBGPによる2トンネル冗長を活用可能
  • Azureがルーティングハブとして機能
  • KCU側はStatic制約のまま接続可能
  • Azure VPN GatewayをActive-Standby構成で払い出すことで、対向(KCU)から見た固定IPを1つに集約可能
  • Azure側でインスタンス障害や計画メンテナンスが発生しても、自動フェイルオーバーによりKCU側での手動切替は不要

という設計が成立することを確認しました。

単一VPNでKCUとAWSを直接接続する場合、
障害・メンテナンス時には対向IPの切替など運用対応が必要となります。

一方、本構成ではAzure側で冗長性を吸収できるため、
運用負荷を抑えつつ可用性を向上させる構成といえます。

※ フェイルオーバー時には短時間の通信断が発生する可能性があります。
※ Active-Active構成を選択した場合はPublic IPが複数となるため、固定IP集約を目的とする場合は構成選択に注意が必要です。

6. まとめ

AWS Site-to-Site VPN は本来、

  • 2トンネル構成
  • BGPによる動的冗長

を前提としたサービスです。

しかし KCU VPNGW の仕様上、

  • Remote peer IP は1つのみ
  • Static接続のみ対応

という制約があります。


本記事では、これらの制約下で

  • 単一VPN構成における手動切替の挙動
  • Azure VPN Gateway中継によるハイブリッド構成

を検証しました。


単一VPN構成

  • 手動切替により復旧可能
  • 構成はシンプル
  • 可用性は運用に依存

Azure中継構成

  • AWS側のBGP冗長を活用可能
  • 設計自由度が向上
  • 構成は複雑化

可用性は「構成」だけでは決まらない。
要件・SLA・リージョン設計を含めた 全体設計によって決まります。

より高可用性を求める場合は、

  • AWS Direct Connect
  • KCU PNC(Private Network Connect)

といった専用線+BGPという選択肢も検討対象となります。

さいごに

本記事は、KCU VPNGWの制約下における
AWS Site-to-Site VPN設計の一例を整理したものです。

今後仕様変更や新たな設計パターンが確認できた場合は、
随時アップデートしていきます。

同様の構成を検討されている方の参考になれば幸いです。

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