クイックのエンジニアリングマネージャー桃原(とうばる)です。
私たちが行っている組織づくりについて、今回は新卒採用をテーマにお話しします。
ソフトウェアエンジニアの採用を進める中で、「なぜ新卒採用なのか?」、「育成に時間がかかるのでは?」、「中途採用ではだめなのか?」といった疑問を持つ方は少なくないでしょう。
私もそう考えていた時期がありました。
しかし、組織づくりや採用活動を通して多くのことを感じ、「新卒採用と中途採用はそもそも目的が違う」という結論に至り、記事にすることにしました。
組織づくりや採用活動に関わるエンジニアの皆さんに、この考えが届くと嬉しいです。
なぜ今、新卒エンジニア採用なのか?
私たちは「組織は社会課題を解決し、その中で人が成長するための機会を提供する場である」と捉えています。特にAI技術が急速に進化する今、個人が学び続け、自分の強みを見つけ伸ばしていくことがより一層重要になっています。
そうした変化の時代において、技術力だけでなく、「なぜつくるのか」、「誰の課題を解決するのか」といった事業視点を持ったエンジニアを育てるには、経験の浅いうちからカルチャーや事業への理解を深め、チームでの実践を重ねていく新卒育成が最も効果的だと考えています。
私たちは、ただスキルを身につけるだけでなく、自律的に考え、学び、行動できる人材が社会的意義のある課題を解決していくと信じています。その最初の一歩として、新卒採用に大きな意味があるのです。
新卒と中途の共存から考える採用戦略
現代の技術環境は、生成AIやAIエージェントの登場により急速に変化しています。このような状況下で、私たちは新卒と中途、それぞれに異なるミッションを明確に持って採用しています。
中途入社者には、即戦力としてアーキテクチャ設計やサービス全体の課題解決、また外部視点を活かした問題解決アプローチを期待しています。育成や技術優位性の確立も重要な役割です。
一方で新卒は、柔軟な吸収力を活かして組織文化や事業ドメインを深く理解し、広く・長く育つ力を担う存在です。
なぜ中途ではなく新卒を採用するのか?という問いに対しては、「目的が異なるから」が答えです。
それぞれの強みが補完し合うことで、組織はより強くしなやかに成長できると考えています。
新卒採用がもたらす5つの価値
新卒採用を通じて、私たちは次のような価値を組織にもたらすと考えています。
- 事業ドメインを深く理解し、技術を手段として活用する力が身につく
- フロントエンド・バックエンド・インフラなど幅広い技術スタックに触れ、バランスの良い成長が可能
- 技術でプロダクトを成長させるという視座を早期に持てる
- 柔軟にカルチャーに馴染み、早期に価値観を共有できる
- 長期的なキャリアパスを見据えた育成ができることで、組織の中核となる人材へと育つ
年次グラデーションが育む「成長の仕組み」
毎年新卒エンジニアを採用することで、組織内に自然と年次のグラデーションが生まれます。
2年目の社員が1年目を支えるという循環が定着することで、“教える・導く”という経験を早期に積むことができます。また、後輩に教える経験は、言語化力や主体性を高め、自分の成長実感や自信にもつながります。こうした縦の関係性が、自律した個の成長を後押しする仕組みになっています。
年次のグラデーションがもたらすもう一つの価値は、「人間関係の中で育つ力」です。
新卒で入社したメンバーは、先輩に学び、やがて後輩に教える立場になります。この中で、「自分が理解したことを、他者にわかりやすく伝える」「相手の立場に立って接する」といった、人としての深い成長が促進されます。
また、うまくいかないことに対する悔しさ、後輩の活躍への焦り、自分の未熟さに向き合う瞬間。これらもすべて、内面的な強さや思考の幅を広げる貴重な経験です。
現時点でやれる能力よりも、「やりたい」と思って挑戦することそのものに価値を置き、クイックが大事にしている「出る杭は伸ばす」文化でしっかりと支えることを大切にしています。
そして、「教えることは、最も高度な学び」と言われます。
私たちは、毎年の新卒採用によって自然と生まれる「学び合いの関係性」に、組織としての大きな可能性を感じています。先輩が後輩に教えることで、自分自身の理解が深まり、学習姿勢も内発的なものへと変化していきます。また、後輩も相談・質問がしやすい空気があることで、安心して学び、挑戦することができます。
これは私たちが大切にする「オープンでフランク」な文化を支える土台です。階層や役職に関係なく、意見しあえる関係があるからこそ、個人とチーム、両方が成長できる好循環が生まれています。
まとめ:新卒採用は“未来の組織づくり”そのもの
ここまで述べてきたように、新卒エンジニアの採用は、単なる採用活動ではありません。
私たちが目指すのは、社会的意義のある課題に立ち向かえる、自律型の人材を育てること。
そのためには、技術だけでなく、カルチャーや事業理解、人との関わりを通じて成長していく機会が必要です。そして、その機会を組織としてどれだけ創り、用意できるかという組織づくりに繋がります。
その機会の中で得た知見をもとに、新卒エンジニアが時間軸で「私はビジネスや事業はこうあるべき」というビジョンを語り、事業・サービス・組織を牽引し、ユーザーに愛されるプロダクトづくりができると信じています。
「組織を使って人が成長する」
その思想を体現し、思考と実践を結ぶ新卒採用を、私たちはこれからも大切にしていきます。