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「Java8からJava11」で何が起きたのか、どう環境構築すればいいのか

Last updated at Posted at 2020-01-10

この記事の目的

  • 「Javaの環境構築」で絶対にハマったり、錯綜する情報にいつも惑わされる人に向けた記事です。
  • 2017年以降のJavaは、移り変わりが激しい世界になりました。このことを認識し、「軸となる考え方」や「重要な動向」を把握できるように、調べた情報をまとめました。
  • 「5年ぶりに(Java|JVM言語)触るんだけど環境周りが全然わからん」とか、「CorrettoとかAdoptOpenJDKとか、みんな何を言っているんだ」という人(つまりちょっと前の筆者)が、「今後に渡って2度とハマらないための基礎知識を得られること」を目的にしています。以下の3本立てです:
    • ざっくりとした歴史
    • 2020年におけるローカル開発環境構築
    • 情報源と参考URL
  • APIや言語仕様の変更点には触れません(他の良い記事があります)。

I. ざっくりとした歴史

  • 2017年9月、OracleはJavaのリリース・モデルの変更を発表し、同時に「Oracle JDKの有償機能をOpenJDKで公開」することを発表した。すなわちJavaはオープン化されることになった(有償化ではなく)。
  • 以前から有償契約でサポートを受けていたクライアントは、引き続き有償サポートを受けられる。この場合に限り、JDKは"Open"ではない「Oracle JDK」として提供され、プロダクション環境での利用が有償となる(ここが誤解されがち)。

リリースサイクルについて

  • 毎年3月と9月にフィーチャー・リリースが提供され、メジャーバージョンが上がっていく。Ex: Java9 => 2017年9月、Java10 => 2018年3月、Java11 => 2018年9月、...
  • 全フィーチャー・リリースがOracle JDKのLTS(Long Term Support)というわけではない。Java9以降では、Java11, Java17がLTS対象。それ以外はnon-LTS。

  • 詳しくは、Oracle Java SE サポート・ロードマップを参照。

image.png

「8とそれ以降」

  • Java8は「リリース・モデル変更前の最後のバージョン」という位置にいる。Java8自体もオープン化され、かつOracle JDKのLTS対象になっている。
  • Java8からJava9に上がる際、Project Jigsawと呼ばれるモジュール化が採用され、設計に比較的大きな変更が入った。
  • つまり、「Java8以前とJava9以降」ではリリース・モデルの面でも、互換性の面でも大きな隔たりがある。移行に際しては両面を(混同することなく)意識したほうが良い。

ディストリビューションの分化

  • オープンソース化したことで、複数ベンダーがJDKをビルド、発表できるようになった。OpenJDKのソースを取り巻き、Linuxのように各社のディストリビューションが複数存在する状況が生まれた。 image.png (出典: 最適なOpenJDKディストリビューションの選び方
  • 2020年現在、主要なディストリビューションは以下:

    • Oracle OpenJDK (by Oracle)
    • Red Hat OpenJDK (by Red Hat)
    • Azul Zulu (by Azul Systems)
    • SapMachine (by SAP)
    • Liberica JDK (by BellSoft)
    • Amazon Corretto (by Amazon)
    • AdoptOpenJDK (Community Based)
  • 各社のOpenJDKディストリビューションは、「latestだけ」「OracleのLTS対象だけ」などバージョンを絞って公開・サポートすることがある。

    • 例えば2020年1月現在、Oracle OpenJDKは最新の13をGA(General-Availability Release)として公開。他バージョンもダウンロードは可能だが、使用は非推奨。
    • 同じく2020年1月現在、Amazon Correttoは8と11を公開。
  • ディストリビューションにお墨付きを与えるため、Technology Compatibility Kit(TCK)という一連のテストがOpenJDKコミュニティ(Oracleと要契約)によって用意されている。TCKをパスしたディストリビューションは、“Java SE compatible”と名乗ることができる

  • AdoptOpenJDKのように、TCKをpassしていないが比較的普及しているディストリビューションもある

どう選べばいいの?

  • サポート状況や、各ディストリビューションを取り巻くエコシステムで判断するのが現実的。

    • 例えば、Zuluのような有償ライセンス / サポートがあるか?
    • 例えば、インストーラはきちんと準備されていて、使いやすいか?
    • 例えば、公式Dockerイメージは用意されているか?
  • とはいえ、現状目立った差は少なく、選びづらい面もある。これから特徴が出てくるかもしれない。

II. 2020年におけるローカル開発環境構築

Iに書いたような状況なので、定まったベストはなく、しかもすぐに陳腐化する傾向にある。

=> SDKMAN!が現状のベストプラクティス。(2020.1.10 追記)

ここでは、「コマンドラインのみでインストールが終わること」「複数バージョンを切り替え可能な状態にすること」を重視し、以下2パターンの構築手順を例示する:

  • パターン1: SDKMAN!(推奨)
  • パターン2: Homebrew & jEnv

パターン1: SDKMAN!によるインストール

SDKMAN!は、Groovyの複数バージョン管理ツールであるGVMを前身とする。JVM言語やそのビルドツールを中心に多種多様なツールの複数バージョンの管理を実現してくれる。

SDKMAN!自体のインストールは公式を参照。導入後、Javaのインストールは以下のコマンドで完結する:

sdk install java      

このときインストールされるディストリビューションは、2020年1月現在はAdoptOpenJDKの11。

その他のディストリビューションに関しても、list, install, defaultの3つのサブコマンドで自由に確認・切替えできる。バージョンやディストリビューションの指定はリスト中のIdentifierを使用する。

sdk list java

================================================================================
Available Java Versions
================================================================================
 Vendor        | Use | Version      | Dist    | Status     | Identifier
--------------------------------------------------------------------------------
 AdoptOpenJDK  |     | 13.0.1.j9    | adpt    |            | 13.0.1.j9-adpt      
               |     | 13.0.1.hs    | adpt    |            | 13.0.1.hs-adpt      
               |     | 12.0.2.j9    | adpt    |            | 12.0.2.j9-adpt      
               |     | 12.0.2.hs    | adpt    |            | 12.0.2.hs-adpt      
               |     | 11.0.5.j9    | adpt    |            | 11.0.5.j9-adpt      
               | >>> | 11.0.5.hs    | adpt    | installed  | 11.0.5.hs-adpt      
               |     | 8.0.232.j9   | adpt    |            | 8.0.232.j9-adpt     
               |     | 8.0.232.hs   | adpt    |            | 8.0.232.hs-adpt     
 Amazon        |     | 11.0.5       | amzn    |            | 11.0.5-amzn         
               |     | 8.0.232      | amzn    |            | 8.0.232-amzn        
               |     | 8.0.202      | amzn    |            | 8.0.202-amzn        
 Azul Zulu     |     | 13.0.1       | zulu    |            | 13.0.1-zulu         
               |     | 12.0.2       | zulu    |            | 12.0.2-zulu  

...(中略)...         

 SAP           |     | 12.0.2       | sapmchn |            | 12.0.2-sapmchn      
               |     | 11.0.4       | sapmchn |            | 11.0.4-sapmchn      
================================================================================

なお、2つ目以降のJDKインストール時に、そのディストリビューションをデフォルトにするかどうかプロンプトで尋ねられる。

sdk install java 13.0.1-open # Oracle OpenJDK 13

Downloading: java 13.0.1-open

...(中略)...

Installing: java 13.0.1-open
Done installing!

Do you want java 13.0.1-open to be set as default? (Y/n): Y

Setting java 13.0.1-open as default.

デフォルトに設定すれば、その時点でJavaのバージョンは切り替わる。パスの設定等は一切不要。試しにjshellの起動確認をしてみる。

jshell
|  JShellへようこそ -- バージョン13.0.1
|  概要については、次を入力してください: /help intro
jshell>

jshellはJava9から追加されたJavaのREPLである。他の言語でお馴染みかもしれないが、標準APIのちょっとした動作確認などに重宝する。/exitで終了できるので、バージョンを戻して再実行してみる。

sdk default java 11.0.5.hs-adpt

Default java version set to 11.0.5.hs-adpt
jshell
|  JShellへようこそ -- バージョン11.0.5
|  概要については、次を入力してください: /help intro
jshell>

バージョンが切り替ることを確認できた。

パターン2: Homebrew & jEnvによるインストール

パターン2: Homebrew & jEnvによるインストール

SDKMAN!に比べて煩雑で、お勧めできない。裏側でどのようにパスが通されているかなどの参考にはなるかも

HomebrewでのJDKインストール

https://brew.sh/index_ja

  • 比較的最近(恐らく2019年11月)、Formulaeにopenjdkが追加された。したがって、brew install openjdkでインストール可能。
  • この時インストールされるディストリビューションは、Oracle OpenJDK。
  • Java8やそれ以前をインストールする必要がある場合、または他のディストリビューションを利用したい場合は、現状Homebrew Caskを使うことになる(この記事では割愛する)。
  • サポートされているFormulaeはここで検索するのが早い => https://formulae.brew.sh/formula/

インストールに成功するとCaveats(警告)が出ていることに気づく。以下はCatalina+zshで試したときのメッセージ。

==> Pouring openjdk-13.0.1+9.catalina.bottle.tar.gz
==> Caveats
For the system Java wrappers to find this JDK, symlink it with
  sudo ln -sfn /usr/local/opt/openjdk/libexec/openjdk.jdk /Library/Java/JavaVirtualMachines/openjdk.jdk

openjdk is keg-only, which means it was not symlinked into /usr/local,
because macOS already provides this software and installing another version in
parallel can cause all kinds of trouble.

If you need to have openjdk first in your PATH run:
  echo 'export PATH="/usr/local/opt/openjdk/bin:$PATH"' >> ~/.zshrc

さらっと書いてあるが、どのパラグラフも重要。環境によってはメッセージの細部や取るべき対応が違うこともある。

For the system Java wrappers to find this JDK, symlink it with...

"system Java wrappers"が何を指すか明確でないが、後述するjava_homeコマンドなどを動作させるために、シンボリックリンクの作成が必要。

openjdk is keg-only, which means it was not symlinked into /usr/local,...

/usr/local以下にsymlinkされていないということなので、つまりこの時点でターミナルでjavaと打ってもここでインストールしたOpenJDKが直ちに動作するわけではないと言っている。

If you need to have openjdk first in your PATH run:...

ここでインストールしたOpenJDKがパスとして最初に検索されるようにするためには、シェルの起動時にパスを追加する必要がある。

ただ、今回は複数バージョンのJDKを別ツールで管理する方針なので、Javaのパスを直接~/.zshrcに書くことは避ける。

以上を踏まえて、最初のメッセージが推奨する、シンボリックリンクの作成だけを実行する:

sudo ln -sfn /usr/local/opt/openjdk/libexec/openjdk.jdk /Library/Java/JavaVirtualMachines/openjdk.jdk

こうすれば、以下のコマンドが動作するようになってくれるはずだ:

java --version

openjdk 13.0.1 2019-10-15
OpenJDK Runtime Environment (build 13.0.1+9)
OpenJDK 64-Bit Server VM (build 13.0.1+9, mixed mode, sharing)
/usr/libexec/java_home

/Library/Java/JavaVirtualMachines/openjdk.jdk/Contents/Home

jEnvへの登録

http://www.jenv.be/

pyenvのように、複数バージョンのJDKの管理を楽にしてくれるツール。インストール手順は公式に譲る。brew installの実行後、パスを通す必要がある。

例えばpyEnvだとpyenv install 3.5.0などのコマンドでPythonをインストールできる。だがここまでの操作からもわかるように、jEnv自体にJDKをダウンロードしてくる機能はない。jenv addコマンドが引数として要求するのは、「ダウンロード済みのJDKのJAVA_HOMEへのフルパス」だ。このパスは先述のjava_homeコマンドで参照できる。

/usr/libexec/java_home

/Library/Java/JavaVirtualMachines/openjdk.jdk/Contents/Home

あとはこれを利用してJDKをjEnvに追加してやれば良い:

jenv add `/usr/libexec/java_home`

openjdk64-13.0.1 added
13.0.1 added
13.0 added

複数バージョンのインストール

上記の状態から、例えば、Oracle OpenJDKの11を追加でインストールする場合は以下のような手順になる:

# 1. JDKをインストールする
brew install openjdk@11

# 2. JavaVirtualMachines配下にsymlinkを作成する
# (brew install時にプロンプトに出てくるコマンドをコピペする)
sudo ln -sfn /usr/local/opt/openjdk@11/libexec/openjdk.jdk /Library/Java/JavaVirtualMachines/openjdk-11.jdk

# 3. jEnvの管理対象に加える
jenv add `/usr/libexec/java_home -v 11`

jEnvが複数バージョンを管理できるようになったことの確認と、jshellの起動確認をしてみる。

jenv versions

* system
  11.0
  11.0.5
  13.0
  13.0.1
  openjdk64-11.0.5
  openjdk64-13.0.1

バージョンを13に設定する。

jenv global 13.0 

jenv versions

  system
  11.0
  11.0.5
* 13.0
  13.0.1
  openjdk64-11.0.5
  openjdk64-13.0.1
jshell
|  JShellへようこそ -- バージョン13.0.1
|  概要については、次を入力してください: /help intro
jshell>

続いてバージョンを切り替えて同じことをしてみる。

jenv global 11.0

jenv versions

  system
* 11.0
  11.0.5
  13.0
  13.0.1
  openjdk64-11.0.5
  openjdk64-13.0.1
jshell
|  JShellへようこそ -- バージョン11.0.5
|  概要については、次を入力してください: /help intro

バージョンが切り替ることを確認できた。

ここまでやっておけば、ある程度ディストリビューションやバージョンの追加にも対応できるローカル開発環境と言えるはず。

III. 情報源と参考URL

以上述べてきたような経緯があるので、選択したディストリビューションによって開発者が参照すべき情報は異なってくる。

横断的に現状を把握できるページが見つかれば望ましいが、現状は、まずOpenJDKの開発をリードするOracle公式のロードマップを参照するのが良いだろう。

Oracle Java SE サポート・ロードマップ
https://www.oracle.com/technetwork/jp/java/eol-135779-ja.html

Red Hatなど、ベンダーが自社ディストリビューションのライフサイクルやポリシーを公開している場合もある。

OpenJDK Life Cycle and Support Policy
https://access.redhat.com/articles/1299013

その他 参考URL

(本記事はほとんど以下の記事からの抜粋と要約なので、より深く知りたい方はぜひ!)

JDKの新しいリリース・モデルおよび提供ライセンスについて

Project Jigsaw

これからのJDK 何を選ぶ?どう選ぶ? (v1.2)1

最適なOpenJDKディストリビューションの選び方

「Java 有償化」で誤解する人になるべく分かりやすく説明するためのまとめ

OpenJDK - Wikipedia

Oracle JDK vs. OpenJDK builds comparison

関連Qiita記事2

OpenJDKと各種JDKディストリビューションの情報源まとめ #minjava

Java のリリース日とEOLのまとめ


  1. 2020-03-09追加。 @yamadamn さん、ありがとうございます 

  2. 2020-12-17追加。 @yamadamn さん、ありがとうございます 

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